なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第116話:ミリーさんとの帰り道

 虹の花をそこそこ摘んで、来た道を再び戻る。

 

 しかしディアナか……最初の聖女と呼ばれる傑物だが、ルシデルシアはディアナについてはあまり語ってくれない。

 

 最低限生い立ちや最後の出来事については教えてくれたが、生きてる時に何をしたのかについてはだんまりだ。

 

 俺が知った所で意味は無いだろうが、聞きたければ本人から聞けってスタンスらしい。

 

 そのディアナが復活するのは当分先だが、信徒が増えれば増えた分早くなる。

 

 今は地道な布教活動を続けるしかないだろう。

 

「サレンさんと二人きり……ふふふ」

 

 終始ご機嫌のミシェルちゃんだが、この後別れる時にどうなる事やら……。

 

 四層目と三層目は一度も魔物と会う事が無く、二層では二回だけ魔物と戦ったが、どちらもミシェルちゃんが一人で倒してしまった。

 

 流石に、前みたいに落とし穴に落とされることも無く、帰る事が出来そうだ。

 

 念のため今回は長い棒を武器としているので、落とし穴が開いたとしても何とかなるはずだ。

 

 だが、結局何も起きることなくダンジョンの入口まで戻って来てしまった。

 

 何かあるだろうと構えている時に限って何も起きないとは、運が良いのか悪いのか……。

 

「やっと外まで帰って来られましたね」

「……はい」

 

 ダンジョン内に居た時はルンルンとしていたミシェルちゃんは、ダンジョンの外へ出た事により一気にテンションが落ちる。

 

 俺と別れの時が近づいている事を思い出したのだろう。

 

 午後からダンジョンに入った事もあり、日が少し傾き始めている。

 

 廃教会に帰る頃には、少し暗くなっているだろう。

 

 足取りが重いミシェルちゃんを引きずって武器の返却や魔石の換金を済ませる。

 

 換金した金で花を入れておくバッグを買い、折れないように入れておく。

 

「今日は良い所に連れて来ていただき、ありがとうございました」

「……」

 

 ホロウスティアに帰るための馬車に乗った辺りで、ミシェルちゃんの霊圧が風前の灯火となる。

 

「また、会えますか?」

「はい。予定が合えばとなりますが」

「……明日は?」

 

 早い。早いよミシェルちゃん。

 

 もう出発まで直ぐなので、明日は王国と教国へ行くための準備をしなければならない。

 

 最低限の買い出しをシラキリに頼み、俺も自衛用の武器を買ったから大部分は問題ないが、それでもやっておかなければならない事がある。

 

「明日と言いますが、学園はどうしたのですか?」

「……あります」

「私に会いたいのは分かりますが、しっかりとやるべき事はやりましょう。悪い子は嫌いになりますよ?」

 

 絶望的な眼差しを向けてくるが、人としてやるべき事は出来るようになって欲しい。

 

 まだ子供ではあるが、子供であるからこそ分別をしっかりと持って欲しい。

 

 子供と言えば遊びと勉強で遊びを取るが、大人になれば遊びと仕事で仕事を選ばなければならない。

 

 勿論やるべき事をやった後に遊ぶならば何も言わない。

 

「――うぅ」

「前も言いましたが、同じ都市に住んでいるのですから、会おうとすればいつでも会う事が出来ます。ですから、ミシェルちゃんの未来の為にやるべき事はしっかりとやりましょう」

「……サレンさんって、本当にシスターなんですね」

 

 確かにミシェルちゃんの前では神官服を着ていないが、シスターだとちゃんと伝えてあるはずなんだがな……。

 

 いや、シスターって見た目じゃないのはこれまでの経験で理解しているが、面と向かって言わなくても……。

 

「はい。レイネシアナ様の教えを広めるために、日々シスターとして活動しています」

「神様か……そう言えば、ミリーさんって神様や宗教の話になると、少し嫌な顔をするんですけど、理由を知っていますか?」

 

 そう言えば、マイケル達とギルドで支払いについての話し合いをしている時、何やら不愉快と言うか、あまり良くない雰囲気を纏っていたな。

 

 酒場で演奏をして以降は、そう言った雰囲気を出す事は無かったが、ミシェルちゃんでも分かる位あのミリーさんが分かりやすく反応を示すとは、よほどの事があったのだろう。

 

 それでも俺に色々と良くしてくれた辺り、真面目な良い人なのだろうな……多分。

 

「いえ。何も話を聞いていませんね。何かあったのかとは思いますが、そのミリーさんが嫌いな宗教に私は属していますからね。私から聞く事も出来ません」

「……それもそうですよね。ミリーさんって何でもこなせて凄い人だけど、何だが放っておけないと言うか、何か気になる人なんですよね」

 

 確かにミシェルちゃんの言う通りだが、妙に気に引っ掛かる人なんだよな……。

 

 黒翼騎士団なんて闇の深そうな場所に所属している癖に、妙に感情が豊かだ。

 

 表で生活するために作り出したものかもしれないが、それにしては宗教を嫌ったり、俺の曲で涙を流したりしている。

 

 あれが全て作り物だとは、俺には到底思えない。

 

「あの人も一応大人なので自分に折り合いをつけているとは思いますが、一人のシスターとしては、やはり悩みを打ち明けて欲しいと思ってしまいます」

「――懺悔室……サレンさんと密室で二人きり……ふふ」

 

 何やらミシェルちゃんがいけない笑みを浮かべているが、正気に戻って欲しい。 

 

 シラキリもだが、人とは本当に変わるものだな……。

 

 

 

 

 

 

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「帰ってきましたね」 

「…………」

 

 青の庭園の最寄りである南冒険者ギルドで馬車が止まり、転移門のある部屋の前で別れを告げる。

 

 ミシェルちゃんは強く俺の服を掴み、別れたくないと言う意思を強く見せる。

 

 俺は東。ミシェルちゃんは北冒険者ギルドへ帰るので、転移門へ入る時間が違う。

 

 時間的に俺の方が先となるので、もうそろそろミシェルちゃんに手を放してもらわないと困る。

 

「ミシェルちゃん。馬車の中でも言いましたが、また会えるのですから大丈夫ですよ」

「分かってはいるんです……けど、どうしても寂しくて……あの、せめて夕飯でも……」

「私も夜までには教会に帰らないといけないので。それに、ミシェルちゃんも家族が待っているのではないですか?」

「…………はい」

 

 宥めるように頭を撫で続け、ようやく手を離してくれた。

 

 さっきから転移門にいる係の人の視線が痛い……。

 

「それでは、また会いましょう」

「絶対ですよ! 絶対ですからね!」

 

 そそくさと転移用の魔法陣の上に乗り、時間となったので東冒険者ギルドへと跳ぶ。

 

 中々濃い一日だったが、これで終わりだ。

 

「おっ、サレンちゃんじゃん。一人でなんて珍しいね」

「これはミリーさん。お久しぶりです」

 

 冒険者ギルドから出ようとすると、少し汚れているミリーさんとばったり出会う。

 

 今王国から帰ってきた所なのだろうか?

 

「さっき教会に寄ったら誰も居なかったんだけど、みんなお出掛けかい?」

 

 おや? 時間を考えれば誰かしら帰ってきても良さそうなものだが、一体どうしたのだろうか?

 

「いえ、誰かしら居てもおかしくないのですが……一緒に行きますか?」

「そうだね。ちょっとギルドに報告があるから待ってて」

「分かりました」

 

 ギルドに報告って、合法的に王国へ行くために何か依頼を受けていたのかな?

 

 確かに依頼を受けておけば痛くない腹を探られることもないし、何かあってもギルドの依頼だからと言い訳が出来る。

 

 その分報告の手間があるだろうが、流石諜報が出来るだけの事はある。

 

「お待たせー」

「お疲れ様です。私達のためにすみません」

「気にしなくて良いよ。王国については帝国も手を打とうと考えているからね。税金が掛からないで公爵家に痛手を与えられるなら、万々歳だよ」

 

 騎士団を動かして何かしようとすれば、相応の金が必要となるが、俺達だけならばミリーさんの人件費だけで済む。

 

 しかも秘密裏の作戦なので、帝国は何か言われてもシラを切ることが出来る。

 

 それにライラの言う通りならば、ライラが送った手紙は公爵の手で止まり、王様に話をしていないはずだ。

 

 気付いたら公爵家が一つ壊滅的な被害を受けていた。

 

 なんて落ちになるだろう。

 

「お待たせー。それじゃあ行こっか」

「はい」

 

 少しお疲れのミリーさんを伴い、今度こそ廃教会へ帰る。

 

「そう言えば珍しく私服だけと、どうしたの? 鞄もいつものじゃないし」

「ミシェルちゃんと少し出掛けてきました。王国へ行く前に会っておかないと、大変そうでしたから」

「ああね。出掛ける前に一度会ったけど、ああも変わるとは思わなかったよ。まったく、サレンちゃんも罪な女だよね」

「シスターとしてどうかとは思いますけどね……」 

 

 いや、本当に苦笑いしか出て来ない。

 

 男を垂らし込むならば分からないかもしれないが、俺の部下? 下僕? 仲間? 知り合いは女性比率が高い。

 

 シラキリに始まり、ライラやミリーさん。俺が魔改造してしまったスフィーリア。

 

 何をもってまともと言うか分からないが、全員普通とはかけ離れている。

 

 いや、唯一シラキリはまだ普通だとは思うが、どうもシラキリからは変な感じがする。

 

 多分、シラキリは俺の為となれば躊躇することなく人を殺せる……そんな気がする。

 

「まあサレンちゃんは、人を引き寄せるカリスマがあるからね。怖い顔をしてるのに」

「布教する上で怯えられる事も多いのが玉に瑕ですけどね」

「あはは。鞄の中身はミシェルと出掛けて何か買ってきたの?」

「いえ。青の庭園(ブルーガーデン)に行ったので、シラキリとライラにプレゼントするためのお花を摘んできました。良かったらいりますか?」

「お酒ならともかく、花はいいかな。花を貰って喜ぶなんて歳でもないしね」

 

 苦笑いを浮かべるミリーさんだが、俺も花よりも酒が欲しい側の人間なので、一緒である。

 

 軽く世間話をしている内にスラムの入り口に着き、あっという間に廃教会にたどり着く。

 

 みんな帰って来ていれば良いが……。

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