なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第138話:フラグ製造機

「関係……と言うのは、どういう事でしょうか? 聞いた話では、勇者は教国が選定している存在としか……」

 

 とりあえずホロウスティアで調べた内容を話す。

 

 聖女と呼ばれている存在はそれなりの人数が居るらしいが、勇者は今の所一人しかいない。

 

 聖女の能力で作り出せるのが勇者らしいが、シラキリの様子を見る限り、勇者と言われても今一ピンとこない。

 

 つまり、勇者と言われる存在はその強さで証明するしかないのだろう。

 

 おそらく、ちゃんとした聖女に選定された存在ならば、聖女に準じた能力が使えるのかもしれないが、シラキリにそんな能力が有るようには見えない。

 

「間違ってはいないけど、間違いでもあるんだよね」

「と、言いますと?」

「勇者って聖女の加護を持っている人の事を言うんだよね。つまり、聖女と勇者はセットなんだ。ならなんで勇者が一人しか居ないかについてだけど、物語に語られるような勇者なんて、普通有り得ないからなんだ」

「弱い勇者は勇者ではない……って事ですか?」

「宣伝したところでメリットは無いし、魔大陸と友好を結んでいる今となっては、いらない称号だからね」

 

 そこら辺の歴史的背景については、全く知らないのだが、言いたい事は理解できる。

 

 サレンディアナと共にルシデルシアと戦ったのも勇者らしいが、サレンディアナ以外の加護を受けていたのだろう。

 

 前に聞いた話では、サレンディアナは誰にも加護を渡してはいないと言っていたし、勇者の能力についても同じだろう。

 

 なんなら名前すら教えてくれないのだが、まあいない人間の事を気にしても仕方ない。

 

「まあ基本的に勇者って、異世界から召喚した人を指すことが多いんだけどね」

「それは首輪と言うことでしょうか?」

「だね。適当な聖女を宛がって、肉体的な親交を深めるのが一番理に適っている、楽だからね」 

 

 生々しい話だが、勇者が男ならばそれが手っ取り早いのだろう。

 

 ただ、召喚したのが女性だった場合、どうするのだろうか?

 

 今回は男女のセットで召喚されたので、問題としては別だが、少し気になる。

 

「ここで大事なのは、勇者は聖女が特別な加護を与えた存在であるってことだね。続いては勇者になるとどうなるのか……だね」

 

 いつの間にか二杯目ワインがなくなり、残りのワインをミリーさんと分けあう。

 

 相も変わらずニコニコとしているが、もうちょっと優しい話題で話をしてほしいものだ……。

 

「聞いている限りですと、勇者だからと言ってあまり特別なようには聞こえないのですが?」

「普通はね。勇者になったからって、急に強くなれるほど世の中は甘くないし、どうすれば強くなれるか知っていたとしても、これが中々難しい物でね」

 

 当たり前のように、ミリーさんは勇者が強くなる方法を知っているみたいだが、一体どうやってその情報を知ったのだろうか?

 

 まあ百五十年も生きていれば、物知りになってもおかしくないか。

 

 或いは、下手にルシデルシアやサレンディアナの事を調べられないように、教会関係を調べる際は逸らされていたか……。

 

 どの様にして、ミリーさんが天界に居る側の神と繋がっているかは分からないが、早々交信なんて出来ないはずだ。

 

 しているなら、俺を襲っているだろうしな。

 

「基本的には勇者が聖女側を信頼しているかって事なんだけど、全部が全部これに当てはまる訳でもないらしいんだ。神への信仰心を問われる事もあれば、貢ぎ物だったりするんだ」

「それならば簡単に、強くなれそうに思えますが…………神様の質でしょうか?」

「一説ではそうとも言われているね。前にサレンちゃんが言っていた通りなら、その通りかもね。強い神でないと勇者も強くなれないなら、今の現状も納得できる」

 

 その仮説については否定したいところだけど、シラキリを見ていると否定することが出来ない。

 

 ただの少女のはずが、今ではあれだからな……。

 

 元々強いならば、違法奴隷商に殺されそうにならないだろうし、孤児ではなかったはすだ。

 

「そんなわけで本題だけど、シラキリちゃんってさ、元々ただの孤児だよね」

「はい」

「私が調べた限り、特別なものは何一つなかったわけですよ」

「……はい」

 

 口調とイントネーションが少し気になるが、言いたいことは最初から分かっている。

 

 ミリーさんはミリーさんなりに、記憶の無い俺に色々と教えてくれようとしているのだろう。

 

 勿論俺から情報を引き出そうとしている面もあるのだろうが、互いに利があるので、文句はない。

 

 文句の代わりに不満はあるが、それはたまに酒をくれるので、呑み込んでおくとしよう。

 

「つまり、シラキリちゃんは普通の女の子だったのに、たった三ヶ月足らずであそこまで強くなるのは、普通では無いと私は考えるわけです」

「なるほど……」

「才能という一言で片づけられるかもしれないけど、獣人だとしても筋肉の発達や、思考能力が上がる速度は限度がある。片方だけに秀でているならともかく両方ともなると……ねぇ?」

 

 分かっているなら、自分から白状したらどうだ? とでも言いたそうに、ミリーさんは俺と視線を合わせる。

 

 誤魔化すのは決定事項だが、ここで受け答えを間違えれば、ミリーさんの好感度は落ちる事となるだろう。

 

 選択肢としては、俺もおかしいとは思っていたが、理由については知らなかった。

 もしくは原因について心当たりは無いが、おそらく自分だろうと白状する。

 あとは完全に天然を装い、多分俺のせいだろうと遠回しに白状する。

 

 他にもあるのはあるが、ざっくりこの三択だろう。

 

 どれを選ぶか悩ましいものだが、あまり悩んでいては不審がられてしまう。

 

 さて……。

 

「シラキリが普通ではないという事は薄々気付いていたのですが、私がシラキリを勇者にしてしまった……と言う事でしょうか?」

「そう考えるのが普通かなーと思うね。うん」

「その勇者の選定というのは無意識で行えるものなのでしょうか? それと、解除とかは出来るのですか?」

 

 選んだのは無難に一つ目の選択肢だ。

 

 シラキリが勇者となってしまったのは、ディアナの気紛れのせいだが、このままずっとシラキリを放置するわけにはいかない。

 

 力に溺れるなんて事にはならないと思うが、年相応とは言い難い強さとなってしまっているので、出来れば勇者としての力だけでも引き剥がせたらと思っている。

 

 ディアナが起きればディアナに頼むのだが、約十年も待っていれば、シラキリは大人となってしまう。

 

 出来れば今回の旅が終わり次第、どうにかできればと思っている。

 

 護衛はライラとアーサーが居れば大丈夫だろうし、何よりシラキリは学園に通う予定なのだ。

 

 流石に学生であの強さは駄目だろう。

 

 俺つえー系の主人公ならともかく、シラキリには普通の人生を歩んでもらいたいと思っている。

 

 俺に関わってしまっている時点で既に無理かもしれないが。

 

「うーん。聖女が神からの加護を失うか、勇者本人が死ぬか、聖女と勇者の仲が拗れたりして無くなったとかは聞くけど、任意で解除したって話はあんまり聞いた事がないね。与えた本人なら任意で解除できると思うけど……」

「おそらく私だとは思うのですが、身に覚えがない物でして……」

 

 困ったなー、と雰囲気を出しながら、肩をすくめる。

 

 本当に困った。

 

 ミリーさんの言うことは当たり前なのだが、与えた本人が現在寝ているので、解除のしようがない。 

 

 一応神的な存在であるルシデルシアでは手の施しようがなく、そもそもシラキリの異変に気付いたのは最近の事だ。

 

 近くにライラというチートな少女がいるせいで、シラキリの強さにあまり違和感を抱かなかった。

 

 ミリーさんやライラにはシラキリの異変に気付いて欲しかったが、今更文句を言った所で仕方ない。

 

 最初はそこそこ強かった程度だが、決して異常と言う程ではなかった。

 

 もしかしたら墓場の掟で深層へ落とされた時にミリーさんが居れば、気付けたかもだが、あの時はまだルシデルシアと話す事が出来なかったので、それはそれで困った結果となっただろう。

 

「一応その辺りの事も、向こうに着いたら調べておこうか。学園に入る予定だしね」

「そうですね。できればシラキリには、健やかに育って欲しいですから」

「あー。それは無理じゃないかな?」

 

 ミリーさんはどうしてなのか、何故なのか話さずにじっと俺を見る。

 

 うん。俺が居る限り無理だと言いたいのだろう。

 

 俺もそう思う。

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