なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第145話:屋台のお肉

 色々と調味料や保存食等を買い込み、ついでにワイングラスや酒の肴になりそうなのをこっそりと買い込む。

 

 包みの中に調味料と一緒に隠し、ライラの目を欺けるようにしておく。

 

 持ってきていた鞄も一杯になり、一度アーロンさんの家へと帰る。

 

 朝怒られた事もあり、ミリーさんはあれこれ言うが、流石に一人で何処かに行くこともなく、何事もなく帰ってこれた。

 

「帰って来たか。色々と買い込んだようだな」

「はい。結構品揃えが良く、予定していないものも買っていましたら、結構増えてしまいました」

「そうか。後で確認しておくので、端に置いておけ」

 

 家に入ると、ライラはバケツと雑巾をもっており、頭には頭巾をしていた。

 

 何をとか本人には問わないが、どうやら掃除をしていたみたいだ。

 

 まあ人様の家だし、世話になっているので掃除位するのは当たり前かもしれない。

 

 何なら大人二人が揃って何をやっているのかと罪悪感を感じてしまうが、今はライラよりもミリーさんの方が重要なので、心の中で謝っておく。

 

 何となく、昔女をとっかえひっかえして、最後は包丁で刺された同級生の事を思い出す。

 

 何故思い出してしまったのかは忘れるとして、あいつは包丁で刺された後、何とか相手を宥めて救急車を呼び、病院へ搬送された。

 

 俺の同級生を刺した女性は色々とあって不起訴となり、同級生は色々とあってオカマバーで勤めるようになった。

 

 本人から経緯を聞いた時は酒も入っていたので笑ったが、話している時に下半身を弄ってきたので、飲み終わった後は切り上げて店を出た。

 

 女に懲りたからと、男に走るのは止めてほしかった。

 

 そんな過去の事はゴミ箱に捨て、鞄と鞄に入りきらなかった物を、ライラに言われた場所へ置いておく。

 

 後はライラが気付かないことを祈るだけだ。

 

 おっと、ライラに伝えておかないといけないことがあったな。

 

「ライラのお昼を買ってきましたので、後で食べてください」

「助かる。シスターサレンはこの後も出掛けるのか?」

 

 さらっとミリーさんが無視されているが、俺が出掛けるという事は、ミリーさんも出掛けると言うことだ。

 

 俺だけに聞くのは、間違いと言うわけではない。

 

「はい。折角なので、色々と見て回ろうかと」

「そうか。何かあればそれを囮にして逃げるのだぞ。殺してもどうせ死なんのだからな」

「死ぬ時は死ぬよ!」

 

 貶したいだけなのだろうが、本当に殺しても簡単に死なないのがミリーさんなんだよな……。

 

 ミリーさんはミリーさんで笑いながら受け流すが、懐が広いと言うかなんと言うか……。

 

「何かあれば、ミリーさんと協力して解決します。怪我をしても癒すことが出来ますからね」 

「そうか。武を以て解決出来るならば良いが、法が相手となれば我等では分が悪い。それだけは注意しておけ」

「心配していただきありがとうございます」 

 

 ライラはニヒルに笑ってから、掃除を再開する。

 

 頭巾をしていなければ頭でも撫でてやったのだが、そろそろ出掛けるとしよう。

 

「それでは行きましょうか」

「そうだね。どこぞの令嬢は放っておいて、庶民の私たちは安い定食屋でご飯でも食べに行こうか」

「行くならさっさと行け。斬るぞ?」

 

 ミリーさんがライラを怒らせたので、休む間もなく再び街へと繰り出す。

 

 本当にライラとミリーさんは水と油だな。

 

 喧嘩するほど何とやら言うが、俺としては普通に仲良くしてもらいたい。

 

 無理だろうけど。

 

 このまま酒場とかに行っても良いが、その前に行きたい場所がある。

 

「一度国境の門を見てみたいのですが、どうでしょうか?」

「良いよー。見ておくのも勉強になるだろうからね」

 

 にこやかに返事をしたミリーさんは俺の横に並び、手を頭の後ろに組んで歩く。

 

 ミリーさんから話を聞いてずっと不思議に思っていたのだが、国境を越えるだけで五日も掛かるのは、流石におかしくないだろうか?

 

 もしもこれが普通ならば、ミリーさんは王国との行き来をあんなに早く出来るはずがない。

 

 何も説明してくれないので、五日位が普通なのだろうと思っていたが、その理由を調べようと思う。

 

 聞けば答えてくれるかもしれないが、聞いたからと国境を越えられる日にちが早まるわけでもない。

 

 国境の門までは結構な距離があるが、ホロウスティアの様にバスみたいに走っている馬車は無い。

 

 やはりあの街……実質的に都市と言うか独立国みたいなものなのだが、あそこがおかしいだけなのだ。

 

 結構な距離と言っても、廃教会から東冒険者ギルドに徒歩で行くよりは近いがな。

 

 

 

 

 

 

 

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「あそこが国境の門だね。そこで並んで居るのが待機列で検査毎に門を開け閉めしているんだ」

 

 大きな通りを何回か曲がりながら進んでいると、立派な城壁と門が姿を現す。

 

 門の前は広場の様になっており、そこには結構な人が屯しており、また屋台などが開かれている。

 

「ついでに教国から王国に入るための門は向こう側だよ」

 

 ミリーさんが指を指した方を見ると、うっすらと門が見える。

 

 一方通行にすることにより、混雑を避けているのだな。

 

「流通で言えばもっと検問に割く時間を省いた方が良いんだろうけど、教国は色々と煩いみたいでね。お返しとばかりに王国も入念に検問しているんだ」

 

 元の世界みたいに一分一秒を争うような世界なら、間違いなく暴動が起きかねない遅さだが、移動手段が馬車のこの世界ならそこまで急いで移動する必要もないのだろう。

 

 パスポートの様な身分証を一般人が用意できるわけないし、一々調べるしかない。

 

 まあ国からの許可証的な物があれば、一々並ばなくても良いのだろうな。

 

 何事にも例外は付き物だ。

 

「なるほど。例外とかはあるのですか?」

「あるにはあるけど、他国の人間である私達だと無理だね。因みに王国と帝国の国境はあからさまに怪しくなければ、十分位で越えられるよ」

 

 五日に比べれば十分はかなり速いな。

 

 帝国から王国に不法入国する際に山を越えたのだが、あの時は二日かかっていた。

 

 しかも山賊のおまけ付きである。

 

 後ろめたいものがないのならば、普通に国境を越えた方が良いだろう。

 

 国境の門の周辺には結構な人数の兵士がおり、城壁の上にも見回りをしているであろう兵士が居る。

 

「それにしても立派な城壁ですね」

「それでもライラちゃんなら一撃で壊せそうだけどね。正確には過去に、山断ちで何回か壊されているけど」

 

 ライラのグランソラスならば確かにやれそうだが、そんなことを今すれば騒ぎになってしまうし、一般人もかなり巻き込むことになるだろう。

 

 それに、ライラの山断は王国では有名らしいので、直ぐに誰がやったのか調べられることになるだろう。

 

 それに、クシナシャガナにあまり俺達の事を知られたくない。

 

 グローアイアス領の出来事を鑑みるに、ミリーさんから俺の情報は漏れていないみたいだが、なるべく隠密行動をする方が利口だ。

 

「さて、小腹も空いたし、屋台で軽く食べていかない?」

「良いですね」

 

 屋台の飯は高いと相場が決まっているが、どうしても惹かれてしまう。

 

 これも日本人の血のせいだろう。

 

 祭りと屋台はセットであり、俺は祭りが好きだった。

 

 キンキンに冷えた缶ビールを片手に、焼きたての焼き鳥を頬張る。

 

 あの背徳感は一度嵌れば抜け出せない。

 

 まあホロウスティアならともかく、流石にこんな辺境では無理だし、最近は少し肌寒いのでビールより熱燗が良い。

 

 そして熱燗と言えば、やはり温泉だろう。

 

 温泉に入りながら飲む酒は格別だ。

 

 まあ、この世界でそんな事をするのは無理だろうけどね……。

 

 一旦酒の事は忘れて、ミリーさんと一緒に屋台を見て回る。

 

 串に刺した料理が一番多く、次に飲み物の屋台。雑貨屋も何店舗かあり、珍しいのではうどんの屋台などがあった。

 

 因みに飲み物の大半は酒である。

 

 適当に数本串焼きを買い、広場の端で食べる。

 

 場所が場所なだけあり、ベンチやごみ箱がちゃんと設置されているので、ありがたい。

 

「塩焼きだけど結構おいしいね」

「はい。お肉の方も新鮮なのか、臭みもあまりないですね」

 

 適当に肉串を買ってみたが、どうやら当たりを買えたようだ。

 

 串焼きに使う肉は柔らかくて油が滴る肉よりも、歯ごたえがあり赤みが多い肉の方が適している。

 

「これで一杯やりたいけど、流石に昼間から飲むと、後が怖いからねー」

 

 ミリーさんが視線をあらぬ方向に向けるので、その先を追って見ると、うさ耳が人混みに紛れていた。

 

 ついでに、逆ナンされているアーサーも近くに居る。

 

 あまり目立ってはいけないのだが、アーサーは俺が嫉妬する程度にはイケメンだ。

 

 世の中はイケメンに優しく、フツメンに厳しいのだ。

 

 まあ、今となっては顔なんて関係ないがな。

 

 男じゃないし。

 

「迷惑になりそうですし、食べ終えたら移動しましょう」

「だね。まったく、何やってるんだかね」

 

 残っていた肉を食べて、ゴミ箱へと串を捨てる。

 

 それなりに時間も潰せたし、この後は良いものがあるか探しに行くとしよう。

 

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