なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第168話:お店探し

 香辛料と干物を買い終えて、次の店で瓶詰めや米等の日持ちする食料を買った。

 

 大体一週間程持つのを目安として買っているが、五人となれば結構な量となる。

 

 まあ重さについては俺が居るので問題ないが、嵩張ってしまうのはどうしようもない。

 

 拡張鞄を使う事は流石に出来ないからな。

 

 信用出来る出来ない以前に、少しでも情報が外に漏れると俺が困る。

 

 実際に使っていて思うが、これは世界を変えうる物だ。

 

 基本的に魔石専用とはいえ、ギルドもよく貸し出しをやっているものだと思う。

 

 帝国がどうやって解析した結果、俺が持っている奴が出来たのか知らないが。

 

 見た限り、王国や教国の移動手段は馬車で止まっているが、ホロウスティアでは既に魔導馬車という名の自動車を開発済みである。

 

 その内バイクも開発するだろうし、そうなれば帝国は移動と輸送の二つの手段が近代化する。

 

 一応魔力を無効化する結界もあるが、帝国も馬鹿ではないだろうし対策くらい考えているだろう。

 

 戦力としても、このまま行けばライラが帝国の戦力となる。

 

 一人で攻城兵器となりえるし、生死なんて関係なければ砦なんて一撃で壊せる。

 

 たった一人とはいえ、チートにも程がある。

 

 まあ帝国が他国を侵略すると決まっているわけでもないし、今心配する必要もないだろう。

 

「……あの、本当に大丈夫ですか? 良ければ持ちますよ?」

「大丈夫ですよ。この程度ならば、まだ倍は持てますから」

「そ、そうですか」

 

 現在一度馬車がある宿屋へ向けて歩いているのだが、荷物の大半を俺が持っている。

 

 命を狙われているマヤに荷物を持たせるのは護衛の観点から愚策であり、ライラとロイも同じである。

 

 少しは持って貰っているが、動きを阻害する程ではない。

 

 すれ違う人達が二度見してくるが、重さで言えば百キロもないので、見た目はあれだが重いと言うほどではない。

 

 体験入団の時に背負った荷物よりは重いが、鎧を加味すれば同じくらいだろう。

 

 それにペインレスディメンションアーマーの攻撃に比べれば、これ位苦でもない。

 

「シスターサレンについては心配しなくても良い。それよりも、飲料以外での買い忘れは大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。予備も含めて買ってはいますので、仮に忘れていても大丈夫です」

「なら良いが、念には念を入れておくことをおススメする。毒が仕込まれていたり、荷物だけを狙いに来る可能性もあるからな」

 

 暗殺と言っても、直接命を狙ってくる奴らもいれば、狩りの様にじわじわと外堀を埋めて行き、弱った所を暗殺するような奴らもいる。

 

 一番気を付けなければならないのは、馬車を壊される事態に陥る事だろう。

 

 そうなればせっかく買った物資は運ぶことは出来ず、更に移動の時間が掛かる。

 

 木製の馬車なんて火矢や魔法で簡単に燃え上がるので、対策をしておかなければならないのだが……まあ火についてはシラキリが居れば何とかなるし、そもそも馬車に火が付く前に打ち落とせばいいので大丈夫だろう。

 

 それに、どうせ暗殺者と言ってもフリーの奴らばかりだろう。それならばそこまで怯えなくても良い。

 

 ライラの心配や、俺の考えている事が実際に起きる事はまずないだろう。

 

 アーサーみたいな、お抱えの暗殺者は本当にヤバい。

 

 不調状態だったとは言えライラを殺せるのだから、お抱えの暗殺者とはヤバいのだ。

 

 ミリーさんが手を貸したのか知らないが、最終的にライラとシラキリによりコネリーの暗殺者は倒された。

 

 だからと言って楽観視できる相手ではない…………と思う。

 

 何故言い切れないかだが、俺が見たのは両腕を切り落とされて芋虫になっていたアーサーだけだからだ。

 

 ライラとシラキリは、俺が危ない事に関わらないようにしているので、実際どれ位危ない相手だったのかは俺の想像でしかないのだ。

 

「分かっています。人とすれ違う時や、死角についての注意も怠っていません」

「ふっ、そうか。ならば周りだけではなく、我らにも注意を払っておけ。意味は分かるな?」

 

 言い返してきたロイにたいして、ライラが意味ありげに笑う。

 

 ロイが一瞬ムッとした表情を浮かべるが、流石に馬鹿ではないのでライラの言いたい事が分かったのであろう。

 

 年下……子供の言葉なんてと聞き流せるものではない。

 

 俺も一体何でかと思ったが、俺達は護衛をお願いされたとはいえ、ただの他人なのだ。

 

 それに依頼料は後払いとなっているため、今の俺達はただ働きをしている事になる。

 

 つまり、ライラは俺達が裏切る可能性も考慮しろと言っているのだ。

 

 勿論裏切る気なんて無いが、俺達とマヤ達の間に繋がりなんてものは無いのだ。

 

 ふとした瞬間にライラがマヤの心臓に剣を突き刺す。

 

 なんて事が起こり得る可能性もある。

 

 あくまでも可能性であり、俺がマヤを裏切らない限りライラがそんな事をする事はないが、だからと言って気を抜いていいわけではない。

 

 まあロイがいくら気を付けたとしても、ライラに勝てる可能性はゼロであり、ここにシラキリかミリーさんが居れば、どう足掻いても逃げることは出来なくなる。

 

 身構えるだけ無駄なのだが、それを言うのは酷というものだろう。

 

 諦めたらそこで試合終了って奴だ。

 

「そう……だな、忠告感謝します」

「あまり脅してはいけませんよ。イノセンス教は敵対されない限り、手を上げないのですから」

 

 ここまで考えておいてなんだが、イノセンス教の教義的に、俺からマヤを裏切る事は無いのだ。

 

 これは大金を積まれようが、人質を取られようが変わる事はない。

 

 一時的に仕方なくってのはあるかもしれないが、命を奪うまではしないだろう。

 

 俺は。

 

「ふっ、確かにそうだな。イノセンス教の一信徒としてあるまじき発言だった。すまなかったな」

「いえ、その忠告は正しいものですから。忘れないように覚えておきます」

 

 ロイはライラに頭を下げて、笑みを浮かべる。

 

 少々険悪になりそうな会話だったが、終わってみればお互いの信用が増すだけの結果となった。

 

 マヤの能力は希有なものであり、聖都に着くまでは有効活用したい。

 

 特に調合は覚えられるだけ覚えておきたい。

 

「着きましたので、一旦荷物を置いてきますね。食事はどうしますか?」

「飲料を買うついでにどこかで食べませんか? お店は知りませんが、折角ですから」

「分かりました。少々お待ち下さい」

 

 昼については朝決めていた通りで良さそうだな。

 

 さて、荷物は一旦纏めて俺達の方の馬車に載せ、空いている木箱の中に入れておく。

 

 こうしておけば、簡単には分からないだろう。

 

 一応宿屋の店員? 警備員? の目があるとしても、信用は出来ないからな。

 

 腹も減ってきたし、さっさと戻って飯を食べに行こう。

 

「戻りました。それでは、食べに行きましょうか」

「ああ。待っている間に、飲食店のある通りを聞いておいたから、向かうとしよう」

 

 流石ライラだ。仕事が早い。

 

 新卒の頃の俺とは大違いだ。

 

 あの頃は如何にしてサボろうかとしか考えてなかったので、色々と粗があった。

 

 先輩にも迷惑を掛けたものだ。

 

「ありがとうございます。因みに、何か有名な料理とかあったりするのでしょうか?」

「あっ、それならば私が知っています。此処は流通路となっているだけあり、特産と言うよりは様々な品を織り交ぜた料理が主流となっています。その中でも一番なのはマーズディアズ教国から運ばれてきている魚介類ですね」

 

 歩きながらマヤによる美味しい物講座が始まり、お昼は魚介物を食べようという話になった。

 

 魚介と言っても焼き魚や煮魚。それと干物やフライなどであり、日本の様に生魚を食べるなんて事はない。

 

 一応マーズディアズ教国にある港では生魚を食べる文化があるようだが、内陸寄りのこの辺では危険なので、そんな食べ方はしていない。

 

 因みに教国の並びは、マーズディアズ教国を茨城とした場合、栃木がアレスティアル教国で福島がサタニエル教国となる。

 

 そして王国は群馬と新潟を足した感じだ。

 

 あくまで並びだけだが、そんな感じだ。

 

 ついでに帝国はその下にあるが、領土はこの四つを足した位の広さがある。

 

 侵略国家だからこその広さと言えるだろう。

 

 しかし、魚介か……ホロウスティアに居た頃はよく焼き魚を食べていたが、一体どんな味付けの料理があるのだろうか?

 

 料理はどうしても合う合わないがあるのだが、マヤに任しておけば大丈夫だろうか?

 

「……それでですね。魚の干物から出汁を取ったスープなどもあり、そこに旬の野菜を入れて飲むのが美味しかったりします」

「色々とあるのですね。折角ですので、お店を選ぶのを任せても良いでしょうか?」

「私がですか?」

「そうだな。我らが選ぶよりも、知識がある者が選んだ方が、ハズレを引く可能性は低くなるだろう」

 

 俺の言葉にライラも同意し、マヤが首を傾げながら悩んだ後に頷く。

 

「分かりました。この私にお任せください」

 

 ポンと胸を叩き、満足気に歩き始める。

 

 これで変な店を選んだらそれはそれで面白いのだが、果たしてどうなるだろうか?

 

 

 

 

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