なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第17話:新たな武器と鍛冶屋のドーガン

 部屋を出た後マチルダさんに、今日は依頼を受けないことを伝えたところ、昨日の新人が礼を言いたいとの事で、可能なら午後にまた顔を出してくれと言われた。

 

 会社に勤めていた時のように、時間に追われているわけでもないので、また戻るとマチルダさんに伝えた。

 

 期せずして家賃分の金も手に入ったし、心にも少し余裕が出来た。

 

 信徒の証とやらの作製と、戒律や偶像についても考え始めても良いだろう。 

  

「いやー、あぶく銭だけど、あれだけの戦いで五万は大きいね。サレンちゃん達はこの後、武器を買いに行くんでしょう?」

「はい。私はともかく、ライラとシラキリには武器が必要でしょうから」

「我は持ってはいるが、この剣は少々特殊故、普段使い出来る武器が欲しいのだ」

「私はサレンさんを守るために、武器が欲しいです!」

 

 ライラの付き添いでシラキリも冒険者ギルドに登録したが、何故かやる気が凄い。

 昨日の夜も眠るまで、強くなって俺を守るんだとか意気込んでいた。

 

 軟な日本人である俺の代わりに、頑張って欲しいものである。

 

「なるっほどねー。二日酔いを治してもらったお礼に、良かったら案内しようか?」

 

 ありがたい申し出だな。

 

 この都市の事を知っているのはシラキリだけであり、一々見回るよりは案内してもらった方が安心である。 

 

「そうですね……。私達はこの都市についてあまり詳しくないので、教えてもらえると助かります」

「任せたまえ。腕の良い鍛冶屋を知ってるから紹介しよう。二人は欲しい武器とか決まってる?」

「我は値段次第だが、魔法の触媒にも出来る魔法剣が欲しい」

「私はミリーさんと同じにします」

 

 魔法剣と聞くと、僅かばかりの厨二心がくすぐられる。

 

 まあライラが欲しいのは剣に魔法を宿すのではなく、魔法の発動を補助してくれる剣だ。

 

 剣に魔法を纏わせても良いが、ぶっぱなした方が倒すには効率がいいようだ。

 

 シラキリは今のミリーさんと同じ、ショートソードの二刀流が良いらしい。

 

 兎の獣人が首を切り裂くのは、とあるゲームに出てくる殺人兎を思い浮かべるが、実際に仲間になると夜が少し怖くなる。

 

 それはおいといて、センス自体はあるらしいので、今後に期待だ。

 

「任せたまえ! 場所は馬車を二回乗り継いだ所だから早速向かおう」

「分かりました」

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 

 早速割引の恩恵に預かり、馬車に揺られること一時間。

 

 職人街的な所にやって来た。

 

 スラム程ではないが人通りは少なく、少々熱気を感じる。

 

 ミリーさんはシラキリと手を繋ぎ、腕をブンブンと振りながら道を歩き、その後ろに俺とライラが続く。

 

 これは個人的な感想だが、ミリーやライラはナンパされてもおかしくないレベルだ。

 

 しかし、誰一人として声を掛けてこない。

 

 正確に言えば少し近寄った後、俺の顔を見てからすごすごと退散する。

 

 折角なら一度位ナンパされてみたいものだが、なんか悲しくなってきた。

 

 少しだけショボくれていると、ミリーさんが足を止める。

 

「到着! 此処が私の武器をよく頼んでいる鍛冶屋だよ。おやっさーん! 生きているかーい!」 

 

 ミリーさんは店の扉を豪快に開け、中へと入って行った。

 

「叫ばなくても聞こえている。今日は何の用だ? まさか前の奴が折れたとか言うんじゃないだろうな?」

「今日は客引きだよ。良さそうな後輩を見つけたから連れて来たんだ」

 

 少し呆気にとられてから店内に入ると、厳ついおっさんが居た。

 

 エルフが居たので、おそらくドワーフだろう。腕が丸太の様に太く、身長も低いからな。

 

「なるほどねえ。しかし、そこの悪人顔の神官様もかい? うちに鈍器の類はないぞ」

「私はただの付き添いです」

 

 怖いではなく、とうとう悪人顔と言われることになるとは……。

 後でフード付きのローブでも買って顔を隠すかな?

 

 酒場に行くのにも使えそうだし。

 

「そうかい。俺はドーガンってもんだ。見ての通りドワーフで武器を作っている。お前さんらは?」

「ライラだ。魔法剣の購入を希望している」

「シラキリです! ミリーさんと同じものが良いです!」

「サレンディアナと申します」

 

 ドーガンさんは俺達をじろじろと見た後に、ミリーさんを見る。

 

「小娘、ちょいと耳貸せや」

「ほいほい」

 

 何やらドーガンさんとミリーさんが内緒話を始めたので、軽く店内を見回す。

 店内にある武器は、おそらく見本なのだろう。

 

 柄の部分がどれも汚れており、刀身に対して不相応だ。

 

 刀剣の類だけではなく複合弓と言われるものや、よく分からないものなど、様々のものが置かれている。

 

「待たせたな。先ずはそっちのグラデの嬢ちゃんから決めていこう。武器の大きさや属性の相性。それと予算はどれくらいだ?」

「大きさは何でも構わん。属性は水と光以外なら全て良い。予算は四万だ」

 

 流石に全額ではなく、一万は残すか。

 

「……まあその髪なら当然か。ちょいと手を出しな」

 

 ライラは手をドーガンさんに差し出し、ドーガンさんがその手を握る。

 

 パッと見事案だが、異世界だからノーカンか。

 

 ドーガンさんは何度か握った後、手を離す。

 

「小さいのに鍛えられた良い手だ。予算が心許ないが……まあ試してみてだな。付いてこい。面白い武器を紹介してやろう」

「ふむ。そうか」

 

 ライラはドーガンさんに連れられて、店の奥へと行ってしまった。

 

「待っている間、シラキリちゃんの武器でも探そうか」

「そうですね」 

 

 ついでだし、俺でも使えそうな武器も探してみよう。

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

 

 ドーガンに連れられて店の奥へと向かったライラは、武器の試し斬りをするために作られた裏庭に居た。

 

「こいつだ。持ってみろ」

 

 ドーガンがライラに渡したのは、奇っ怪な刀身の剣だった。

 

 ライラはあまりの形に顔をしかめるが、言われるままに手に取り、軽く振るう。

 

「重い……が、悪くない」

「そいつに火から順番に魔力を流してみろ。水と光は無視して大丈夫だ」

 

 ライラは頷いてから魔力を流すと、剣から剣が剥がれ落ちた。

 

 最終的に剣はライラが握っているのも合わせて六本に分かれた。

 

「そいつの名前は、七曜剣グローリアだ。様々な属性。様々な場面での戦いを想定した複合魔導剣…………の試作だ。そいつはどの剣も組み合わせることが出来るが、魔法の安定性や重心の位置が完成とは言い難い。更に作ってみてから気付いたが、そもそも複数の属性を使えるようなエリートは大体騎士団の規格品の武器を使っているから、こんな不格好な…………長くなっちまったな。先ずはちゃんと使えるか、そこの木人を斬ってみてくれ」

 

 ドーガンがとある人物の依頼で作っていたのがこの七曜剣グローリアになる。

 六属性プラス無属性の計七本からなる、常軌を逸した大剣であるのだが、開発費や実際に使う際に求められる技量や魔力量の関係で、開発を中断しなければならなくなった。

 

 そんな時に、一部では有名な髪の色をしているライラが現れたのだ。

 

 折角丹精込めて作ったのに、死蔵させるのは勿体ない。

 

「心得た」

 

 ライラは一度全ての剣を合体させ、元の状態に戻す。

 全ての剣が合体されている時の刀身の長さは百センチ程もあり、ライラの様な少女では普通、振るのは勿論、持つのも困難だろう。

 

 初めから身体強化の魔法を前提とした剣だ。

 

 ライラはそんな剣で薙ぎ払い、木人を半分に斬る。

 

 続いて剣を分離させながら更に木人を切り刻み、最後に剣先を木人だった木片に向ける。

 

「インフェルノ」

 

 剣から放たれた業火が、木人の残りカスを全て灰と化し、風に飛ばされていった。

 

 ライラは不敵に笑いながら、剣を眺める。

 

「一部魔力の通りが悪いが、これだけの種類の剣が使えるのは面白い」

「こいつの開発に協力してくれるってんなら、四万で譲ってやろう。どうする?」

「買わせてもらおう。因みに、一つ一つの剣に名前はあるのか?」

「そこまでは考えてないな。強いて言えば、属性ごとの精霊の名前か?」

 

 ドーガンは、武器は作っても命名についてはそれぞれの使用者に一任していた。

 この七曜剣グローリアもただの開発コードであり、正式な名前ではない。

 

 もしも今の七曜剣グローリアに正式な名前を付けるならば、試作複合魔導剣だろう。

 

「そうか」

 

 ライラはそれだけ言うと、七曜剣グローリアを三分割にした。

 魔法を発動させる事は出来ないが、光と水の魔力を流すことは出来る。

 この二属性だけは使い方を考える必要があるが、正にライラ向きの武器だろう。

 

「この状態での鞘を頼む。二つは背中。一つは腰でだ。それくらいはサービスしてくれるだろう?」

「それ作るのに五百万位掛かってるんだが、まあ良いだろう。その代わり、定期的に持ってきてくれよ」

「無論だ」

 

 七曜剣グローリアは特殊な金属と高ランクの魔石、更に高度な魔法陣が刻まれているため、もの凄く高い。

 仮に全損しようものなら、新たに作るなど不可能に近い。

 

 そんな物騒な物を、ライラは気負うことなく使おうとしている。

 

「念押しするが、盗むなんてマネをするんじゃねえぞ?」 

「我の矜持に賭けて、恥ずべき事はしないと誓おう」

 

 生まれた国では散々な目に遭ってきたが、ライラは祖父の教育により根っからの貴族である。

 

 約束を違える事はしないのだ。

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