なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第170話:シラキリ。護衛になる。

 若干変な空気になったものの、最後は穏やかな空気で食事を終えた。

 

 それから水と旅用の薄めのワインを買い、再び馬車へと戻って来た。

 

「やあ、そっちの買い物は問題なかったかい?」

「恙なく。マヤさんの案内で、美味しいお昼を食べられるくらいは満喫していました」

 

 馬車に着くとシラキリとミリーさんが出発の準備をしていた。

 

 そして俺に気付いたシラキリが俺にタックルをしてくるのだが、現在荷物を持っているため、気合で受け止める。

 

 見た感じ何も問題なく買い物が出来たようだな。

 

 何かしらちょっかいを掛けてくる奴が居ると思ったが、どうやらお互い無事に買い物を終える事が出来た。

 

 ついでではあるが、軽くミリンの作り方をマヤから教えてもらった。

 

 何故知っているのか謎だが、もしかしたら将来的に役に立つ可能性がある。

 

 …………多分。

 

「ほうほう。それは良かったね。確認だけど、買い忘れとか大丈夫?」

「はい」

 

 ニヤニヤという言葉に合いそうな笑みを浮かべてから、ミリーさんはマヤ達の馬車へと歩いて行く。

 

 俺もさっさとこの荷物を分けないとな。

 

 飲み水は正直買って来なくても大丈夫な様にしているのだが、マヤ達が居る手前それなりに準備をしている様に見せておく必要がある。

 

 最悪の場合の予備として考えれば悪くはないが、荷物が増えるという事は、それだけ動きが遅くなる事に繋がる……普通ならば。

 

「ライラ。半分は拡張鞄の中に入れて、残りは木箱へとお願いします」

「分かった」

 

 持っていた荷物を馬車へ載せて、ライラに仕分けをお願いする。

 

 それから腹に張り付いている、シラキリの頭を撫でてから引っぺがす。

 

「シラキリ。寂しかったのは分かりますが、あまり甘えすぎてもいけませんよ」

「はい」

 

 ……あ、閃いた。

 

 マヤ達の戦力であるロイ達は決して弱くないと思うが、相手が悪すぎる。

 

 ただの賊や弱い魔物程度ならともかく、本職を相手には先日みたいに不利になる。

 

 一応移動中は一緒に行動しているとはいえ、馬車と馬車ではそれなりの距離が開いてしまうし、寝ている時となれば更にだ。

 

 なんて建前はいくらでも考える事が出来る。

 

「シラキリ。私は今からお願いを言います」

「……はい」

 

 シラキリの耳が萎れていき、落ち込んでいるのが良く分かる。

 

 ここで嫌と言わないのは、俺の頼みが自分のためだと理解しているのだろう。

 

「聖都に着くまで……いえ、マヤさん達と別れる時まで、護衛として向こうに行っていただけますか?」

「……分かりました」

「終わったらちゃんとお礼をしますので、宜しくお願いしますね」 

 

 枯れた花の様に萎れていたシラキリの耳に少しだけ活力が戻り、少しだけピンと立つ。

 

 表情を見なくても何を考えているのか分かるのは、見ていて面白い。

 

 シラキリを連れてマヤ達への馬車へと向かうと、タイミングよくマヤが馬車から下りてきた。

 

「マヤさん。少し宜しいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「此処から先は更に危険が待っている筈です。なので、暫くの間護衛として此方のシラキリを傍に置いてください」

「……宜しいのですか?」

 

 シラキリを一度見てから、マヤは心配そうに俺へと問いかける。

 

 若干耳が垂れていて、顔から少し生気が抜けているが、多分大丈夫だ……多分。

 

 シラキリならば何が起きてもどうにかしてくれるだろう。

 

「少し幼いですが、腕についてはかなりのものですので、安心してください。魔物で言えばBランク程度なら倒せますので」

「それは……いえ、お気遣い感謝します。シラキリちゃんと呼んでも?」

「大丈夫です……」

 

 若干不服そうだが、大丈夫そうだな。

 

 それと一応会った時も伝えてあるが、念のためもう一度伝えておこう。

 

「仕方なくこんな格好をさせてしまっていますが、大事な子なのでよろしくお願いします」

「任せて下さい!」

 

 任されるのはシラキリの方だが……まあいいや。

 

 最後にもう一度シラキリの頭を撫でておき、自分達の馬車へと戻る。

 

 出発の準備はもう終わっている感じだな。

 

 次に寄る予定の街は、マーズディアズ教国の端にある街になる。

 

 そこまでいけばマヤの命を狙ってくる連中は居なくなるだろうが、今度はマヤを攫おうとする連中が出てくるかもしれない。

 

 正確には割合的に攫う方が増えるだけで、命を狙おうとする奴らが全員消えるというわけではない。

 

「良いのか?」

 

 馬車の荷台に乗ると、ライラが話しかけて来た。

 

 シラキリを向こうに任せて良かったのかと聞いているのだろう。

 

「可愛い子には旅をさせろと言いますから。それに、シラキリが手に負えない事態になったとしても、シラキリならば上手くやってくれるでしょう」

「そうだな。我等が居る限り、そうそう最悪の事態にはならないだろう……が、可能性がゼロではない限り気を付けておいた方が良い」

 

 ライラの言う事は最もだが、ミリーさんを助けるついでにマヤへ恩を売り、あわよくば連れ帰ろうなんて考えている俺にとって、マヤが死ぬのは論外だ。

 

 そして死ぬ事さえなければ、助ける事が出来る。

 

 それにシラキリならば立場上マヤの所に居てもおかしくないので、油断を誘う事も出来る。

 

 ライラは……目立ちすぎるし、一般人ならばともかく裏の人間ならばライラの髪を見れば相応の対応を取り始めるだろう。

 

 それでもライラならば皆殺しにして情報を渡さないようにしてくれるだろうが、これはシラキリの成長のためなので、ライラはお留守番である。

 

「いざとなれば私が壁を作りますから、ドラゴンでも現れない限り大丈夫でしょう」

「その時はよろしくお願いしますね」

 

 ミリーさんが馬車の運転をするという事で、アーサーが荷台に乗ってきて話に加わる。

 

 攻撃魔法ではマヤ達を巻き込んでしまう恐れがあるが、土魔法で壁を作るならば巻き込む恐れはない。

 

 山奥ならばともかく、街道でドラゴンが出るなんて事はまずありえないし、アーサーに任せておけば大丈夫だろう。

 

 仮にドラゴンが現れたとしても、ライラが本気を出せば倒せてしまう筈だ。

 

 奥の手もあるしな。

 

「準備は出来てるー? ……って、あれ? シラキリちゃんは?」

「護衛としてマヤさん達に貸し出しました」

「ふーん……ああ、そう言う事ね。サレンちゃんって結構ちゃっかりしてるよねー」

 

 ミリーさんは勝手に納得し、運転席へと戻り馬車を出発させる。

 

 あの様子では、俺の考えの大半が分かっていそうだな。

 

 ホロウスティアの時もだが、ほんの少しの情報から答えを導き出していた。

 

 黒翼騎士団が特別なのもあるだろうが、ミリーさんに隠し事をする場合は、黙っているしかないのだろう。

 

 そして先程の俺とミリーさんのやり取りを見てから、ライラがジーと俺を見てくる。

 

 怪しんでいるのだろうが、シラキリのためを思っているのは本当であり、理由の八割ほどだ。

 

「ライラ。そちらの方はどうでしたか?」

「それなりの監視があったな。流石に手を出しては来なかったがな。そっちは?」

「幾人かはミリー様がお話をしたらしいですが、情報らしい情報は無かったようです」

 

 出発して早々、ライラとアーサーが怪しい話を始めた。

 

 俺が気付いていないだけで、監視が居たのか……。

 

 それにミリーさんは……穏便じゃないお話をしたんだろうなー。

 

 相手だってそう簡単に口を割らないだろうし。

 

「お前が知っている奴は居たか?」

「いえ。おそらく教国の者だけかと思います。王国の方は大分減りましたから」

「ホロウスティアの時を含めて大分減らしたからな。だが、やはりか」

「居たのでしたら、間違いなくこうも穏便にはいかなかったでしょうね」

 

 あの、俺が居るのにそんな事を話して良いんですかね?

 

 確かに王国では色々と派手に動いたとはいえ、ホロウスティアでは一応気を使っていたよね?

 

 一応俺のイノセンス教は邪教ではないので、殺しを是とはしていないのですけども?

 

 これってツッコみを入れた方が良いのか?

 

「襲ってくると思うか?」

「いえ。先ずは魔物を嗾けて様子見をしてくると思います。短絡的な手は失敗すると学んでいるでしょうから」

「しかし、一枚岩というわけでもないのだろう?」

「最低でも十程かと。規模的に言えばライラの時よりも優しいですが」

 

 そう言えば俺が知らないだけで、大量の暗殺者が居たってミリーさんが言ってたな。

 

 相手は公爵だし、物量は勿論力量も相当な物だったはずだ。

 

 俺は何も知らないけど。

 

 結果だけミリーさんから教えて貰っただけだけど。

 

 これはもういっその事、寝たふりとかした方が良いのだろうか?

 

 裏の事は裏で話して頂きたい。

 

 ルシデルシアがやらかしてしまったが、俺はただの一般市民だ。

 

『余に責任を押し付けるでない。余の結果はサレンのものであり、サレンの結果は余のものでもある』

 

(それこそ責任の押し付けでは?)

 

 俺のやらかしなんて定食屋の味が気に入らず、自分で作った位だ。

 

 後の事は大体ルシデルシアかディアナが原因となっている。

 

 完全にただの押し付けだ。

 

『余達は一蓮托生だ。そう逃げるではない。カッカッカ!』

 

 無駄に高笑いされてむかつくが、一蓮托生ってのはなー。

 

 どうせ別れるのも男の身体に戻るのも不可能とは分かってはいるが、無性に殴りたくなる。

 

 まあ殴ろうとしても避けられて、カウンターをされる可能性が高いのだが……。

 

 全ての性能において俺の方が低いからな。

 

 とりあえず、ライラとアーサーの会話は無視してひと眠りするとしよう。

 

 何が起きたとしても、俺が出る幕は無いのだろうからな。

 

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