なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第176話:第一回聖都滞在会議

「全員居るね。それじゃあこれからについて話そうか」

 

 荷物を置いてからアーサーの部屋に集まり、これからについての話し合いを始める。

 

「先ずは滞在期間だけど、一ヶ月を目安にだね。それだけあれば、国家間の情勢は落ち着くと思うよ」

 

 滞在予定は約一ヶ月。

 

 マヤ達の護衛をしたとはいえ、必要となった日数は予定とそこまで変わっていない。

 

 なので、これは予定通りである。

 

「それで、此処に居る間の目的だけど、勇者と聖女の情報を探るのがメインだね。後はサレンちゃんに迷惑をかけている人物の捜索かな」

 

 表向きは情報収集のためにきているので、一応その通りに動く予定である。

 

 ただこれには問題があり、メインで動けるのはミリーさんとアーサーだけとなる。

 

 シラキリは奴隷という名目上一人で出歩くことは出来ず、ライラは目立ってしまう。

 

 そして変装をしたとしても、子供であるライラでは、出来る事は少ないだろう。

 

 なので、子供組と俺は平時ではあまり出来る事は無い。

 

「聖女達の情報は、神殿に潜入でもしなければ手に入らないのではないか?」

「少しだけ聞いた話だけど、たまに街に出かけているみたいだよ。重要な情報は無理だけど、ちょっとした情報は集まると思うよ。時間はあるし、先ずは地道にってね」

 

 間違いなくミリーさんのこれは建前だろう。

 

 ミリーさんが本当に欲しい情報は間違いなく下には……街中で拾う事は不可能だ。

 

 何なら知っているのは、教皇や聖女クラスの人物だけの可能性が高い。

 

 一応国としての体制があるため、枢機卿なども居るらしいが、知っていても一人くらいだろう。

 

 とは考えてみたものの、直ぐの直ぐに神殿に潜り込むことは、流石のミリーさんもしないはずだ。

 

 建前通り、街中での情報収集が基本となるだろう。

 

 多分。

 

「承知した」

「一応アーサー君はシラキリちゃんと動いてもらって、表向きの商売を一応やっといてね。歩き回るのは私とライラちゃんでやるからさ」

「はい。それとなく話を聞いて情報を集めておきます」

 

 大まかな流れはこれで決まったが、話はこれだけでは終わらない。

 

「私達についてはこんなもんだね。一応ライラちゃんは髪を隠すようにね」

「分かっている。外出の時にはフードを被る予定だ」

「シラキリちゃんは手を出されてもやり返さないようにね」

「大丈夫です」

「そしてサレンちゃんは…………どうする?」

 

 そう、俺が何をするかだ。

 

 ……いや、基本的に外に出る事が出来ないので、何もすることは出来ないのだが。

 

 だが、出ようとすれば一人で出かけることも出来る。

 

 個人的には護衛が欲しいが、いなくても大丈夫だろう。

 

 建前としては基本的に宿屋で待っているつもりであり、全員が出掛けている隙をついて、俺は俺で動く。

 

 一先ずはこんな所だろう。

 

 そして全く進展がなければ、神殿へと忍び込むのも止む無し……って感じだ。

 

 まあそもそも俺の欲しい情報は、どうせ神殿に行かなければ手に入らないだろうけど。

  

「基本的に宿屋で待機していようと思います。戦闘は無いと思いますが、何があるか分かりませんから」

「了解。大丈夫だとは思うけど、一人では出歩かないようにね?」

「分かっています。イノセンス教の事について指示した人物が居るならば、私の姿を見ればバレてしまいますからね」

 

 今更になってというか、これまで旅をしていて思ったのだが、多分俺がイノセンス教のシスターと知っているのはそこまで多くない。

 

 SNSで顔写真が拡散されたならばまだしも、よくても似顔絵程度の筈だ。

 

 更にホロウスティアまでの片道が約一週間と考えれば、情報の伝達スピードもそんなに速くない。

 

 俺が思っていたよりも、危険性は低いのではないかと踏んでいる。

 

 サクナシャガナ本人は分からないが、見つかり次第暗殺なんて事にはならないと思う。

 

「それが無難だね。知られたからって手を出してくる勢力はいないと思うけど、サレンちゃんだからね」

「まあ、シスターサレンだからな。注意しておくに越したことはない」

 

 ミリーさんとライラの信頼がとても辛い……。

 

 まあ、反論は一切出来ない実績があるので、俺に出来るのは苦笑いする事くらいだろう。

 

 何せ、シラキリすらも頷いて同意しているのだから。

 

「色々と迷惑をかけてすみませんね」

「サレンちゃんにはお世話になってるから、気にしないで良いよ。問題が起きなければ、また一週後に会議をする感じで良いかな?」

「大丈夫だと思います」

「うむ」

「はい」

 

 会議はとりあえず終わり、解散となる。

 

 時間的に夕飯を食べるにはまだ早く、俺を除いて出掛けて行った。

 

 一人だけ部屋に戻るのは少し寂しいが、ミリーさんがいない内に準備やルシデルシアと打ち合わせをしておこう。

 

 拡張鞄から体験入団の時に使ったパーカーと、ライラとシラキリに不評でほとんど履けていないズボンを他の鞄に移しておく。

 

 ズボンだとポーションショルダーが使えないので、二の腕に一本だけ巻けるタイプも取り出しておく。

 

 後はお小遣いを確認して出掛ける準備は終了だ。 

 

 ……終わってしまったな。

 

 日記は特に書く事は無いし、保存食を食べたら少し寝てルシデルシアに、会いに行くか。

 

 

 

 

 

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 一人寂しくおやつ兼早めの夕食を食べ、シャワーを浴びてから布団に入り目を閉じる。

 

 すると意識が沈んでからまた浮上するので、目を開けるとそこにはルシデルシアが居る。

 

 部屋の大きさに変化はないが、時々調度品が変わったり、ピアノの練習をするようになってからはピアノが置かれたままになっている。

 

 因みに俺の意思ではこの部屋に来ることが出来ないのだが、此処はルシデルシアが間借りしている場所なので仕方ない。

 

 大家さんとは言え、勝手に貸している部屋に入るのは犯罪だからな。

 

 俺の場合マスターキーすらないけど。

 

「来たか。まあ座れ」

「どうも」

 

 今日は椅子ではなくてソファーか。

 

 そして飲み物はワイン。香りからすると、ライラに飲ませてもらった奴だろう。

 

「一先ず奴の牙城まで来られたが、状況はあまり良くない可能性が高いな」

「その理由は?」

「この地から感じられる神気が元を辿ると一つしかない。懸念していた通り、他の神を取り込んでいるのは間違いないだろう」

 

 前話していた通りという事か。

 

 もしかしたら使役するか奴隷の様に使っているのならば、解放する手も取れたのだが、現実は甘くない。

 

「それと数人程度ではなく、最低でも中級神が十人は食われているな。何を司っているかまでは分からぬが、殺した後は何かしらの異常が起こるだろう」

 

 サクナシャガナを倒す事による被害は結構大きくなるが、倒さなければそもそも世界が滅ぶので、選択肢は無い。……いや。

 

「グランソラスで取り込んでも、権能はどうにもならないのか?」

「神本人を殺せるならばともかく、取り込まれて変質された権能では流石の余でも無理だな。出来るのは神力の回収位だ」

 

 神力ねぇ……そう言えば、本物のエリクサーは神力の回復が出来ると言っていたな。

 

「気になったんだが、マヤが作ったエリクサーって神力を回復させることっで出来るのか?」

「む? あれでは無理だな。言い忘れていたが、あれは確かに万能薬の名に恥じぬエリクサーだが、貴様が想像するよりも効果が低い」

 

 ……エリクサーって一種しかないのではないか?

 

 ルシデルシアの言い方では、まるで複数種類がある様な言い方だが……。

 

 いや、ポーションだって下級とか中級とかあるのだし、エリクサーにも等級があるのだろうか?

 

「それは等級があるって事か?」

「その様なものだな。余も実物については知らないが、使われている素材の質が低いせいか、間違いなく効果は低い。無論、今持っているのでは神力の回復は出来ない」

「因みに、俺がエリクサーを作る事は出来るのか?」

「無理だな。あれはただの調合ではなく、神の御業があってこそ完成するものだ。だからこそ、奴はマヤを呼び寄せたのだろう」

 

 自分で作れるならば、一々マヤを呼び寄せる必要は無いもんな……。

 

 しかし、そうなるとマヤの価値はかなり高いな。

 

 種を撒いておいて良かった。

 

「なるほど。その効果の高いエリクサーを作る素材って手に入るのか?」

「それについては、エリクサーを飲まないと何とも言えんな。余が知っているのは全て人伝だから、実際に何が違うのか確認しなければ分らん」

 

 エリクサーが俺のならば躊躇せずに飲めるのだが、一応これは俺達のものだ。

 

 勝手に使うのは流石にな……。

 

 物が物だし、ミリーさんだって……いや、助けた後ならば多分くれるだろう。

 

 上手くマヤを助ける事が出来たなら、また作ってもらう事も出来るだろうし。

 

 だが……。

 

「成る程。その神力すら回復するエリクサーを、マヤは作れるのか?」

「おそらくな。多少作り方は変わろうとも、大きく変わることはない。まあ詳しくは全てが終わってからで良かろう。確か、鬼が笑うとか言ったか?」

 

 来年の事を思えば鬼が笑うって奴か。

 

 まあその通りなのだが、過程で犠牲が出るとしても、ルシデルシアが負けることは無いはずだ。

 

 それに考えてるのは来年ではなくて、一ヶ月先の事だ。

 

 そこまでおかしい話ではない。

 

「そうだな。とりあえず一週間は、大人しくしているとしよう。ミリーさん達が情報を集めてくれるだろうからな」

「うむ。聖女や勇者も気になるが、焦る必要は無い。ゆっくりと休むが良い」

 

 俺の悪い所だが、仕事ややる事があると、余裕があっても直ぐに終わらせようとしてしまう。

 

 決して悪い事ではないのかもしれないが、何事もいき過ぎれば、ストレスや疲れとして身体の負荷となってしまう。

 

 だからと言って予定ギリギリまで先延ばすのが良い事とは思はないが、とにかく今は休む時という事だ。

 

「分かった。それじゃあ寝るから戻してくれ」

「残念ながら、もうミリーが帰ってくる。寝るのではなくて起きる時間だ」

「……そうか」

 

 ならば、起きて飯を食って話をしてから寝るとしよう……はぁ。

  

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