なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第179話:聖女VS似非聖女(シスター)

(我ながら運が良いのか悪いのか……どっちだと思う?)

 

『運が悪いのだろうな。そうでなければ、余やリディスはここにはおるまい』

 

 俺達の関係は中々複雑だから、運の良し悪しで語るのはナンセンスが。

 

 こっそりと街を散策していた日から二日後、アオイとの約束通り噴水がある大広場のベンチに座り、屋台で買った焼き串を食べる。

 

 偶然とは恐ろしいもので、酒場で酒を飲んでいたら、ルシデルシアが急に唸りだし、そのタイミングで一人の少女が店に入って来た。

 

 更に偶然相席になり、ルシデルシアが少女の事を看破したのでカマを賭けてみた所、なんと召喚された聖女だった。

 

 その場から逃げようとも思ったが、ルシデルシア曰くサクナシャガナとの繋がりはそこまで太い物ではなく、一緒に居た所でサクナシャガナ側に気付かれる恐れはないらしい。

 

 正直なところ、情報源としてアオイは物凄く美味しい存在だ。

 

 特にミリーさんを助けるためには、今のサクナシャガナの情報は少しでも多く欲しい。

 

 おそらくアオイにはつらい現実を突き付ける結果となるだろうが、運が悪かったと……いや、そもそも何故俺は聖女と勇者を殺すと決めつけてしまっているのだろうか?

 

 やはり魂が混ざってしまった影響が、また出てしまっているな。

 

 一応慈悲深いディアナが眠っている関係で、俺の思考はルシデルシアの思考に似てきてしまっているのかもしれない。

 

 サクナシャガナだけは殺さなければならないが、だからと言って絶対に勇者と聖女を殺す必要は無い。

 

 サクナシャガナを殺した結果、連鎖的に死んでしまったり、操られでもしたら仕方ないが、積極的に殺しにいくのは日本人として駄目だろう。

 

 日本で食べたことがあるような醤油タレの焼き串のおかげで初心を取り戻すことが出来た。

 

「あの……」

 

 おっと、悩んでいる内にアオイが到着したか。

 

「お待ちしておりました。宜しければ一本どうですか?」

「……」

 

 ふむ。酒場の時も思ったが、結構精神的に参っているようだな。

 

 男ならば結構な確率で喜びそうなシチュエーションだと思うのだが、相当良い生活を送れていたのだろうか?

 

 俺もこんな身体にさえならなければ、異世界に来られた事を素直に喜べたんだがな……。

 

 アオイが焼き串を受け取ってくれなかったので、残っていた一本を一気に食べてから立ち上がる。

 

「どうやら、色々と抱えてしまっているようですね。お話が出来る所に案内しますので、ついて来て下さい」

「……はい」

 

 案内するのは俺達が泊っている宿屋……ではなくて、事前にミリーさんにそれとなく話題を振って教えてもらった、個室のある喫茶店だ。

 

 何があるか分からないので、流石に宿屋に連れて行くのは危険だからな。

 

 アオイの立場的に監視が居てもおかしくない。

 

 俺もアオイもフードで顔を隠しているので、前から見なければ顔を見られる心配はないが、最低限拠点を知られない努力位はしておかなければ、後でミリーさんとかに怒られかねない。

 

 ミリーさんに貰った地図を見ながら歩き、目的地となる外見は普通の喫茶店に入る。

 

「いっらっしゃいませ」

「二人ですが、端から三番目の隣の個室は空いていますか?」

「はい。ご案内します」

 

 ミリーさんに教えてもらった符丁だが、ちゃんと合っていたようだな。

 

 この喫茶店……正確にはレストランだが、通常の個室の他に防音の個室が備え付けられているらしい。

 

 ついでに料理や飲み物も普通に美味しいとか。

 

「あの、此処は?」

「知り合いに教えてもらったお店です。お話をするのに丁度良いと思いまして。色々とお話したい事があるんでしょう?」

「それは……はい」

 

 アオイは俯いたまま歩き、店員に案内してもらった個室に入る。

 

 扉は結構厚く、魔石が埋め込まれている。

 

 鍵も取り付けられているので、勝手に開けられる心配もない。

 

 個室の中は普通の四人掛けのテーブル席だが、テーブルの幅が結構広い。

 

 勿論窓もなく、壁の中も音が漏れないように細工されているのだろう。

 

「お飲み物は如何なさいますか?」

 

 酒……といきたい所だが、流石にこれ以上アオイの神経を逆なでるのは止めておこう。

 

 確かココアには精神を落ち着かせる効果があったな。

 

 甘いもので頭も回るし、丁度良いだろう。

 

「ココアを二つ。それと、軽く摘まめる揚げ物をお願いします」

 

 店員が注文の確認をし、部屋を出たのを確認してからフードを取ると、アオイも同じくフードを取る。

 

 髪の色は黒ではないが、何かしらの魔導具を使っているのだろう。

 

「注文したものが来るまでは、軽く世間話でもどうですか?」

「……そうですね。サレンさんは、一人で来たんですか?」

「いえ、私を含めて五人ですね。それと、道中で知り合った方とですね。最近神殿に若い少女が来ませんでしたか?」

「確か他宗教の聖女を招いたと話を聞いたような……。会ったことはないですが、凄い人だと聞いた気がします」

 

 噂が流れているって事は、まだ問題なさそうだな。

 

 自分の教会に帰ったとか、行方不明だとかの噂が出たら、サクナシャガナが本格的に動き始めた可能性が高い。

 

 出来ればサクナシャガナが動き始めてからの方が、マヤを掻っ攫う時に怪しまれないで済む。

 

 エリクサー次第では此方が不利になるかもしれないが、それよりもマヤを仲間に出来るメリットの方が大きい。

 

「そうですか。もしも見かけたら、私が気に掛けていたと、お伝えして頂いても良いですか?」 

「分かりました」

 

 聞かれても問題ない程度の話で場を濁していると、ココアと軽食が運ばれて来た。

 

 どうやら外から中に音を伝える方法があるらしく、音を聞いた後に此方から扉を開けた。

 

 今更だが、ココアと揚げ物の喰い合わせは失敗だったな。

 

 まあ糖分と塩分を両方取れると考えれば良いか。

 

 ポテトを摘まみ、それからココアを飲んで一息つく。

 

 アオイはココアは飲むものの、揚げ物には手を付けない。

 

「ふぅ。さて、先ずは何から聞きたいですか?」

「サレンさんは、日本人なのですか?」

「難しい所ですね。この身は確かにこの世界の物ですが、知識としては地球の知識の方が馴染み深いです。有り体で言えば、ハーフみたいなものですね」

 

 俺の肉体と魂。それとルシデルシアとディアナの魂が合わさった存在。

 

 ハーフと言うのも嘘ではない。

 

 死んだわけではないし。

 

「……転生ですか?」

「どちらかと言えば転移ですが、私の場合は少し複雑な理由があり、こんな姿となっています。それと、アオイさんは召喚された時何を話されましたか?」

 

 少しだけムッとしたが、アオイは召喚された時の事を詳しく話してくれた。 

 

 やはりと言うか、色々と言いくるめられていたようだな。

 

 ありきたりな、魔王と神の敵に打ち勝つために力を貸してくれと願われ。終われば帰すと言われたそうだ。

 

 ついでに生活の保証もするので、軽くお願いを聞いてくれ……と。

 

 アオイ達は、完全に良いように扱われているのだろう。

 

 アオイ達……俺を呼び寄せたのはサクナシャガナの判断だが、現れたのは全くの無関係だった。

 

 扱いを教皇等に任せていたところ、ミリーさんが動き始めたので、色々と扱いを変えたのだろうか?

 

 裏の背景を全て抜きにすれば、使い捨ての駒と言ったところかな?

 

 悪趣味な奴らだ。

 

「成る程。その様な事になっていたのですね」

「あの……私達って元の世界に帰ることってできるんですか?」

 

 話し終えたアオイは心配そうに俺を見てくるが、下手に長引かせるのも可哀想だし、さっさと現実を教えてやるとしよう。

 

 少しだけ前置きはするけど。

 

「これは私が調べた限りですが、元の世界に戻れた方は誰も居ません」

「それって!」

「召喚のシステムが関係しているのですが、分かりやすく言えば一方通行となります。引き返すことは出来ず、無理に引き返せば全く別の世界に繋がるでしょう」

「嘘よ! だって……それじゃあ、お母さんは! 学校の皆だって……」

「気持ちは分かります。そして今すぐに証拠を出すことは出来ませんが、証拠がしっかりとある事実です。少し教国について外から見た現状をお話しますね」

 

『ふむサクナシャガナの奴が勘付いたか? 此方で上手く誤魔化しておく故、適当にやるが良い』

 

 全ての元凶が何やらほざいているが、ルシデルシアが壮大な自殺を計画しなければ、犠牲者は俺一人で済んでいたんだからな?

 

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