なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第183話:朝ラーメン(吞んでは無いです)

「こうやってサレンちゃんと一緒に出掛けるのは、王国の国境の街以来だね」

「そうですね。あの時は看板が落ちてきたり、賭けをすることになったりと、色々とありましたね」

 

 偶然立ち寄った店で、あんな事になるとは夢にも思わなかった。

 

 だが、シープビギニングはとても美味しかった。

 

 単品としての完成度も高いが、羊の肉にとても良く合っていた。

 

 また行く機会があれば、肉と酒を楽しみたいものだな。

 

 立地的に行けるのはかなり先になりそうだが。

 

「おかげで予定以上の予算も手に入ったし、ライラちゃんやシラキリちゃんが貯めといたお金には、ほとんど手を出さなくて済んだし、結果としては良かったでしょ?」

「直ぐに稼ぐ事が出来ると言っても、あまりあの子達を当てにし過ぎるのも悪いですからね」

 

 必要経費はライラ達に稼いでもらったのを使っているが、俺やミリーさんが飲んでいる酒は一応自分達で稼いだ分を充てている。

 

 必要経費はともかく、娯楽費として使うのは流石の俺も良心が痛む。

 

 おかげでこうやって出掛ける事も出来ている。

 

「中央の通り辺りで適当に食べて、それから反対側にある楽器が売ってる場所を目指すって事で良い?」

「食べるのはサンドイッチですか?」

「今日はラーメンの気分かな。ホロウスティアとはまた違った感じで、美味しいらしいからね」

 

 過去に召喚者や転生者が居た関係と、近くに港があるので聖都では結構な種類のラーメンが売られている。

 

 ホロウスティアでもラーメンは売られているが、無難な醤油や味噌ラーメン位だ。

 

 だが、聖都では魚介系ラーメンや家系ラーメンなんかも売られている。

 

 家系なんかは匂いが凄い事になるのだが、そこは魔法でカバーしているらしい。

 

 話を聞いただけで俺はまだ食べた事はないので、折角だし食べてみるのもありだ。

 

 流石に朝からラーメンは重たい気もするが、この身体なら大丈夫だろう。

 

「それは良いですね。話には聞いていましたが、宿屋の食堂では流石に売っていなかったので、楽しみです」

「一部のラーメンは臭いが独特だからね。他の国から来た人が泊る宿じゃあ流石に提供できないよ」

 

 それもそうか。

 

 作る過程の臭いはどうにかできても、食べている時は流石にどうしようもない。

 

 それにスープなどの管理を考えれば、流石に宿屋で作るのは厳しいか。

 

「聞いた話では色々と種類があるそうですが、何を食べますか?」

「朝から匂いがキツイのは辛いし、魚介系のサッパリしているのなんてどう?」

 

 サッパリ系か。昼に食べるならばどろりとした濃厚な奴が好きだが、流石に朝からはな……。

 

 あれって喉に絡みつくし、運が悪いと咽てしまったりするし。

 

 だが海苔をスープで浸した後にご飯と一緒に食べると、これがまた堪らないほど美味しい。

 

 それと、酒を飲んだ後に濃い目のラーメンは鉄板だ。

 

「良いですね。ホロウスティアのは数度しか食べた事はないですが、どう違うのか楽しみです」

「深酒して徹夜した後に食べるラーメンって美味しくてねー。流石に今回は無理だけど、あれはヤバいよ」

 

 どうやらミリーさんも、酒の後のラーメンの破壊力を知っているらしい。

 

 ホロウスティアでは一緒に食べに行ったことがなかったが、朝方までやっているラーメン屋は流石になかったので仕方ない。

 

 ミリーさんと飲みに行く場合、大体朝までコースなので、流石のホロウスティアでもほとんどの店が閉まっている。

 

 正確にはギルド関連以外の店はやっていない。

 

 一昼夜を通してやらなければならない仕事なんて今の時代にはなく、店も個人店がほとんどなので、交代して勤務なんてする事は無い。

 

 そもそ二十四時間営業したところで、儲けなんてほとんどない。

 

 戦争とかで一時的ならばともかく、連日やっていては赤字になるだろう。

 

「それは一度やってみたいですが、ホロウスティアですと朝方までやっているお店はないですからね」

「大体日を跨ぐ前に店仕舞いだから、私達の場合はねー」

 

 せめて二時位までやっていれば、ラーメンを食べに行くのも候補に入る。

 

 たが、大抵は遅くても二十一時に閉まってしまうので、俺とミリーさんの都合上行くことが出来ない。

 

 何せ、大体日が昇り始める位の時間に解散となるからな。

 

「適当に開いてるお店に入ろうか。そうそう外れなんてないだろうし」

「そうですね」

 

 ミリーさんの案内でラーメン屋か多い通りに来ると、のれんやのぼりが目についた。

 

 これならばどんなラーメンを売っているのか分かりやすいが、とても違和感を感じる。

 

 例えるならば、ローマの神殿に冷やし中華始めましたののぼりがあるような感じだ。

 

 軽く雑談しながら歩いていると、あっさり煮干しラーメンと書かれたのぼりが見えた。

 

 丁度ドンピシャなので、ミリーさんと一緒にのれんを潜る。

 

「いらっしゃい。空いてる席にどうぞ」

 

 店内は、どこにでもあるラーメン屋って感じだな。

 

 まだ朝の八時半位なので、店内には二人しか客がいない。

 

 長居するつもりもないので、カウンター席に座る。

 

「お客さん達は旅行客?」

「そうだよー。今朝着いたばかりだから、聖都の名物を食べようと思ってね」

「それはありがたいね。此方のメニューだから、決まったら呼んでくれ」

 

 何て事のない受け答えだが、答え方次第では神官用のメニューに変わるのだろう。

 

 今のミリーさんのだと違いなく通常のだが、多少の値段の差異程度は問題ない。

 

 メニューを覗くと、ラーメン屋あるあるで、そんなにメニューの種類があるわけではない。

 

 トッピングやサイドメニューはそこそこあるが、ラーメンは大きく分けて四種類だけだ。

 

「ラーメンはこれにするとして、他はどうする?」

「私は煮卵と白髪ネギをトッピングしようかと」

「りょうかーい。お願いしまーす」

 

 呼んだ店員に注文をして、しばらくするとラーメンが運ばれてきた。

 

 見た目は日本でもよく見るラーメンであり、匂いも嗅ぎなれたものだ。

 

 異世界でここまで日本らしい物を食べられるとは思わなかったな。

 

 ただのラーメンや和食ならばまだ分かるが、そこから派生したものとなると、また違った感覚に陥る。

 

 とりあえず店員の視線が無い事を確認してから祈りを捧げ、一口食べてみる。

 

 …………うむ。普通に美味しいラーメンだな。

 

 出汁は煮干しと貝類だろうと思うが、のぼり通りサッパリとしているが、しっかりと味がする。

 

 煮卵も半熟で味が染みついているし、白髪ネギもしゃきしゃきで瑞々しい。

 

 一瞬だが、此処が日本だと勘違いしてしまいそうになる程、ラーメンとしての完成度が高い。

 

「美味しいですね。朝に食べるならば、これくらいサッパリしているのが丁度良いです」

「だね。それに、ホロウスティアだと中々味わえないから、新鮮でしょ?」

「はい」

 

 あっという間に一杯食べ終えて、お冷を飲む。

 

 程よく身体も温まり、ホロウスティアへ帰る前に、もう一度食べたいな。

 

「ごちそうさまー。お会計宜しく」

「ありがとうございました! またお待ちしております!」

 

 支払いを終えて、ラーメン屋らしい元気な挨拶を聞きながら店を出る。

 

 いやー、食べた食べた。

 

「美味しかったですね」

「この味をホロウスティアでも味わえれば良いんだけど、流石に値段がねー」

 

 今食べたラーメンは、帝国の貨幣に直すと大体九百ダリアとなる。

 

 だがこのラーメンをホロウスティアで味わおうとした場合、最低でも二千ダリアまで跳ね上がる。

 

 勿論仮定の値段だが、海が遠いホロウスティアでは、海魚はどうしても値段が上がってしまうのだ。

 

 まあこれも拡張鞄が出回れば下がるだろうが、それは数十年から数百年先だろう。

 

 今の拡張鞄は流通よりも、戦争の隠し兵器の面が大きいからな。

 

 使っていて思うが、物凄く便利である。

 

 この旅が終わった後も俺が持っていて良いのだが、この拡張鞄の存在はずっと隠していかなければならない。

 

 他国に知られたら、今度はライラではなくて俺が命を狙われることになるだろう。

 

 ついでに俺の命が奪われずに拡張鞄だけ奪われた場合は、他国ではなくて帝国から命を狙われる事になるだろう。

 

 宿屋を出た時は少し寒かったが、温かいラーメンを食べたおかげで丁度良く感じる。

 

「ホロウスティアと比べて、此処はどう?」

 

 楽器を売っている通りを目指していると、何気なくミリーさんが聞いてきた。 

 

 ホロウスティアに比べてか……。

 

 建物は白を基調としていて見栄えが良く、外装はともかく内装は日本に似ている感じがある。

 

 ホロウスティアの様に雑多とはしていないが……。

 

「活気も有り、食べ物が美味しくて良い場所とは思いますが、どことなく歪な感じがしますね」

 

 下手に異世界……俺やアオイ達が居た世界の雰囲気を取り入れてしまっているせいか、まるで異世界の異世界みたいに感じる。

 

 これが馴染んでいるならば良いが、違和感を感じてしまう。

 

 それと、国境の街程ではないが、大通りから一本外に出ると、徐々にゴミや汚れが目立っている。

 

 奥やスラムまで足を延ばしてはいないが、おそらく俺が想像するような不衛生な場所だろう。

 

「どの国にも言える事だけど、身分はどうしてもピラミッドになってしまうんだ。その中でも極悪なのが此処だね」

「……なるほど宗教に入れれば一定以上の身分が手に入りますが、宗教にとっては身分の低い人が必要……って事でしょうか?」

「その通りさ」

 

 笑顔のミリーさんだが、その裏には憎しみの様なものを感じだ。

 

 

 

 

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