なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

193 / 203
第193話:聖都滞在会議

「さて、どこぞの誰かがやらかしてくれたようだが、会議をするとしよう」

 

 ミリーさんと一緒に正座をさせられるなか、ライラが会議の司会を始める。

 

 コンテストの打ち上げはつつがなく……問題なく……誰も死ぬことなく終わり、ミリーさんと朝帰りをした。

 

 そして仮眠をしてから午後にヘンリーさんの店を訪れて、二日酔いで苦しんでいるヘンリーさんから、サイモンからの伝言を聞いた。

 

 控え室で話していた通りだったから良かったが、その後宿まで帰ってきた後に、俺とミリーさんが朝帰りしていたことがライラにバレた。

 

 ライラが全くの他人ならばともかく仲間なので、フロントで俺達の記録を確認した結果、バレてしまった。

 

 俺だけならばともかく、ミリーさんと一緒に出掛ける都合上、部屋の鍵を返す必要があり、その結果今に至る。

 

 俺が一人で出掛けて、酒を飲む旅をしていたことがバレなかったのは不幸中の幸いだろう。

 

 てか、俺が一人で出掛けたことを知られるのは本当にヤバイので、聖女の事以外はゲロった。

 

 内容としてもヴァイオリンを新しくするために出かけて、なし崩し的にコンテストに出ることになり、その後打ち上げで朝まで飲んだところだけだ。

 

 ライラが怒るのも当たり前の事だが、怒るだけで済む内容である。

 

 シラキリが、正座している俺の膝の上に乗るのも許容範囲内だ。

  

「それでは私から。マヤさん達ですが、街では既に帰ったと神官達が噂していました」

「似たようなのをギルドで聞いたな。おそらく嘘であり、マヤは神殿が囲っているのだろう。奴の加護は何やら重要らしいからな」

 

 俺がアオイから聞いた情報か。

 

 わざと広めることで、アリバイを作っているのだろう。

 

 悪どい奴らだ。

 

「重要そうな情報はそれくらいですね。後は一部の商品の価格が上がり始めてますね」

「魔石の買取価格も微量だが変わり始めているのも合わせて、本格的に準備を始めたのだろうな」

 

 戦争には物資が必要であり、買い集めれば品薄となり値段が上がっていく。

 

 兆候が分かりやすく出ているってことは、俺の件がなくてもミリーさんの予想は当たっていたかもしれない。

 

 普通の戦争ならば事前に宣戦布告したり兵の動きを読むことも可能かもしれないが、教国は奇跡を使う事前提で動いているらしく、人の動きが多いものの、証拠らしい証拠を掴めないでいる。

 

 ホロススティア側の守りについては一応ミリーさんが手を回しているみたいだが、詳しくは知らない。

 

「奴隷商の所でですが、最近奴隷の売れ行きが良いと言っていました。それと、一部の獣人が無理矢理連れてこられたと泣いていたのも聞きました」

「教国と連合国は完全に敵対しているけど、違法奴隷とは危ない橋を渡っているようだね」

 

 連合国……正式名称はモーリス連合国だったかな?

 

 様々な獣人達が集まって収めている国であり、マーズディアズ教国とは敵対国となっている。

 

 客観的に見れば悪いのはマーズディアズ教国だが、宗教として獣人を受け入れる事は出来ないので仕方がないとも言える。

 

 単純に国対国ならば、どちらかが途中で負けを受け入れ、属国にしたり従属国にするのだろうが、マーズディアズ教国は滅ぼそうとしているため、モーリス連合国が負けを受け入れる事はない。

 

 逆にモーリス連合国としても宗教が残っている限り戦わなければならないので、仮にマーズディアズ教国が負けを受け入れても、滅ぼすだろう。

 

 まあ、マーズディアズ教国はもう直ぐ俺達とサクナシャガナの手で滅びるので、たらればの話だが。

 

 サクナシャガナが居なくなった後、信徒達がどう動くか分からないが、出来れば馬鹿な真似だけはしてほしくない物だ。

 

「今に始まった事ではないが、シラキリの耳に届く程度には表に出始めている話となると、面倒な問題だな。我等には関係ないが、連合国が下手な動きをしない事を願おう。これまでの情報からするに、直ぐにでも教国から出た方が良いと思うが、どうなのだ?」

「それなんだけど、明日サレンちゃんが神殿から呼び出しをされているんだよねー。それと、シラキリちゃんとアーサーくんに少し相談があるんだ」

 

 おや? 何やらミリーさんの雰囲気が変わったな。

 

 正座しているせいで恰好はつかないが、どうしたんだ?

 

「なんですか?」

「ライラちゃんはどうせ気付いていると思うけど、情報集め以外にも私にはやらなければいけない事があってね。サレンちゃんには既に話が付いているから、明日協力して欲しい事があるんだ」

 

 ああ、俺が話そうとしていた事を、話してくれたのか。

 

 俺が話すよりは分かりやすいだろうし、俺が話すとシラキリが反応する可能性があるのでありがたい。

 

「お願いしたい事とは何でしょうか?」

「明日だけど、間違いなく戦闘が起こる事になるんだ。それで神殿から異様な雰囲気を感じたら、神殿の周りを壁で囲い、敵を倒して欲しいんだよね。ライラちゃんも含めて」

「……それってサレンさんが危険な目に遭うって事ですか?」

「多分だけど命の危険性はサレンちゃんが一番低いから、その点は安心して良いよ。ただ、相手が相手になるから、流れ弾で死ぬなんて事にならないように、注意してほしいんだよね」

 

 この中で一番死ぬ可能性が高いのは、サクナシャガナと戦う予定であるミリーさんだろう。

 

 どんな怪我すら治せるとは思うが、即死してしまった場合はどうしようもない。

 

 そんなへまをミリーさんがするとは思はないが、神ってのは理不尽の権化だ。

 

 安心できる要素は、欠片もない。

 

「何故……とは聞かんが、死ぬ気ではないだろうな?」

「少し前まではそうなる予定だったんだけど、サレンちゃんに窘められてね。今は死ぬ気はないよ。やりたいことも出来たし」

「ほぉ……」

「ふーん」

 

 あっ、ライラとシラキリがミリーさんを睨んでる。

 

 何故かと思ったら、ミリーさんが怪しい目で俺を見ていた。

 

 このままでは不味そうなので、話を切り替えよう。

 

「明日ですが、囚われていると思われるマヤさんの救出と、場合によっては召喚された聖女の救出も行う予定なので、殺さないようにお願いします」

「えっ? 召喚された聖女を助けるの?」

「はい。少々気になることがありまして、助けられそうならば助けたいと考えています」

「シスターサレンが助けたいと言うならば、我はそれに従おう。だが、向こうが敵対するのならば、我は容赦しないからな」

 

 話の流れに乗ったおかげか、どうしてと理由を聞かれる事無くライラは受け入れてくれた。

 

 シラキリは少し不服そうだが、頭を撫でて機嫌を取り、アーサーはライラが文句を言わなければ基本的に煩く言ってこないので問題ない。 

 

 まさか聖女であるアオイに直接会ってたなんて話せば、全ての矛先が俺へと向く事になるので、後はミリーさんが口を滑らせないことを祈るだけだ。

 

 ついでに、ライラがグランソラスの事を話さないでくれるとありがたい。

 

 その話をすると、今度はミリーさんが怒りそうだし。

 

「ありがとうございます。助けたいのは本心ですが、ライラ達を危険に晒したいわけではないので、何か起こればライラの考えで行動してください。シラキリとアーサーも無理をしないようにお願いしますね」

 

 特にライラからはグランソラスを借りるので、いざという時のライラの切り札を俺が奪う形になる。

 

 あの魔導剣だけでも大丈夫だとは思うが、少しだけ心配である。

 

「さて、何にせよ明日動き始めるというわけだな。やっと家へと帰ることが出来ると思えば、やる気も湧いてくる」

「あっ、馬車はホロウスティアまで持って帰るから、適当に商品を詰め込んどいて」

「承知しました。話が終わりならば、私は準備をしてこようと思いますが?」

「私からはこれ以上無いですね」

「右に同じく」

 

 アーサーからの質問に答え、ミリーさんが便乗してくる。

 

 聖都の酒は沢山飲んだし、サクナシャガナがいなくなっても酒が無くなることはない。

 

 今度は港まで行って、刺身と一緒に酒を味わいたいものだ。

 

「それでは解散だな。我もギルドに行って、途中になっているクエストを終わらせて来るとしよう」

「シラキリは私の手伝いをお願いします。何店舗か店を回らなければならないので」

「分かりました」

 

 俺とミリーさん以外は準備があるので、出かけていく。

 

 やっと正座から解放されたが、よく誰も文句を言わずに聞き入れてくれたものだ。

 

 仕事で言えば、今日納期の仕事を午後一で投げ渡すくらいの悪行だ。

 

 本当に良い仲間を持ったものだ。

 

 アーサーの部屋から自分達の部屋へと帰り、軽く足を解す。

 

「あいたたた……毎回やらされるけど、正座は辛いねー」

「そうですね。短い間ならばともかく、会議の間ずっとというのは流石に痺れてしまいそうでした」

「朝まで騒いじゃった私達が悪いんだけど、あれは仕方ないよねー。偏屈な人が多いと思ったけど、案外良い人達だったし」

 

 コンテストの後の飲み会は、今思い出しても面白い物だった。

 

 ミリーさんの言う通り、職人とは偏屈な性格をしているのが大半だが、逆に言えば熱を持っているとも言える。

 

 分かりやすく言えば、オタク友達みたいなものだ。

 

 知識や何も知らない奴に対しては冷たいが、逆に知識があり褒められる点がある相手に対しては友好的に接してくれる。

 

 ミリーさんも長年生きているだけあり、それなりの知識や腕がある。

 

 俺はコンテストで優勝しているだけはあり、それなりに楽しい夜だった。

 

 強いて残念な点があるとすれば、誰も俺と演奏をしてくれなかった点だろう。

 

 俺に弾いてくれと頼む癖に、セッションだけは皆頑なに断って来たのだ。

 

 寂しくはあったが、酒を飲む時間を確保できたと思えば、溜飲も下がる。

 

 その結果が先程までの正座なのだが、終わった事なので忘れるとしよう。

 

「さて、サレンちゃんには悪いけど、私も少し出掛けてくるよ。直ぐ帰ってくるから、また抜け出したりしないようにね」

「はい。日記を書いたり、ヴァイオリンの手入れをする予定なので、抜け出したりはしません」

 

 疑わしそうな表情をしたミリーさんは、手を振ってから部屋から出て行った。 

 

 さて、ミリーさんに言った通り、日記を書いたりして時間を潰すとしよう。

 

 ここで抜け出せば、何を言われるか分からないからな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。