なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第201話:惨劇の地下

(次は何所に向かえば良い)

 

『まっすぐ進むと突き当たるので、その壁を壊せ。そうすればショートカット出来そうだ』

 

 アオイを助け、マヤも何とか助けた後、残るのはタリアだけとなる。

 

「サレンさん。地上では今何が起きているのですか?」

 

 小走りで進んでいると、大きなバッグを持ったマヤが話しかけてきた。

 

「神とその聖女が戦っている」って状況だが、流石にこの事をそのまま話す訳にはいかない。

 

 いや、どうせ一蓮托生なのだから大丈夫かもしれないが、態々不安にさせる情報を教えなくても良いだろう。

 

「正体不明の集団が神殿を襲っています。私はヴァイオリンの演奏のために神殿へ来たのですが、巻き込まれたついでに、行動した形になります」

 

 後ろからついて来ているアオイに視線を送り、マヤもつられて見る。

 

 流石にヴァイオリンケースを持って、更にユウトを背負った状態で戦うのは無謀なので、ヴァイオリンケースはアオイに持ってもらっている。

 

 今はユウトも起きたので大丈夫だが、蹴りで天使を倒すのは流石に無謀だ。

 

「そうだったのですね。ですが、どうしてサレンさん一人だけが? それに、その剣は……」

 

 ケースを見てマヤは納得した様に頷くが、ふと首を傾げた。

 

 おっと、こんな物を持っていて巻き込まれただなんて言うのは、流石に無理があるか……。

 

 見た目もそこら辺で売っている様な鉄の剣ではない。 

 

 「私からしたら敵地のため、念のためにライラから借りてきました。目立たないようにしておいたのですが、流石に鞘から抜くと……」

 「確かに、何とも……」

 

 宗教関係者が持つような神々しい物とは程遠く、禍々しいと言う言葉がピッタリ当てはまるグランソラスを見て、マヤは言葉を濁す。

 

 奇跡で作り出したと言い訳しても良かったが、どうせライラと会った後にバレるので意味は無い。

 

 なので、持ち主位話しても問題ないだろう。

 

 どうせこの剣の詳細が分かる人間は、殆ど居ないのだし。

 

 軽く話しながら走っていると、ルシデルシアの言っていた壁に突き当たる。

 

「行き止まり……ですか?」

「いえ、この壁の向こうがタリアさんの居る地下牢に繋がっています」

「それは……でも、どうやって……あっ」

 

 壁を前にして悩む素振りをしたマヤは、俺の手元に視線を落とす。

 

 自分がどうやって、あの部屋から出たか思い出したのだろう。

 

「これで破壊しますので、アオイさん達と一緒に離れてください」

「はい」

 

 三人がしっかりと後ろに居るのを確認してから、グランソラスに魔力を流す。

 

『四角くくり貫き、押せば通れるようになるだろう。先程の扉とは違い、この壁に魔法は使われていないようだからな』

 

(了解)

 

 言われた通りにグランソラスを振って壁をくり貫く。

 

 マヤが閉じ込められていた扉は抵抗を感じられたが、ただの壁なので簡単に刃が通る。

 

 ……いや、まあ普通に考えればおかしいことなのだが、グランソラスと俺ならばこの程度出来て普通なのだ。

 

 何なら俺のパーティーなら、シラキリ以外は同じことが出きる。

 

 いや、最近のシラキリがどの程度かわからないが、もしかしたら出来るかもな。

 

 シラキリだし。

 

「す、すげぇ……」

「こら、ユウト」

 

 ユウトの驚き、それをアオイが嗜める。

 

「行きましょう」

 

 壁が崩れたことで、奥の方から音が聞こえてきた。

 

 鉄と鉄がぶつかる音に、人の悲鳴。

 

 もっと急いだ方が良いかも知れないな……。

 

 

 

 

 

1 

 

 

 

 

 

「これは……まさか……いえ……ここまでですか」

 

 マヤの人質としてタリアが閉じ込められているのは、神殿にある地下牢の一室だが、人質としての配慮はされており、他の牢に比べて質が高い。

 

 それもあり、地下牢のある通路の一番奥に牢がある。

 

「クソ! 何なんだ! 止めろ! 来るな! 来るなーー!」

「化け物め! これがマーズディアズ教のやることなのか!」

 

 大きな揺れと共に聞こえ始めた戦闘音と、囚人達の悲鳴。

 

 そして微かに鼻を突く血の匂い。

 

 それは徐々に大きく近くなっていく。

 

「マヤは……いえ。選んだのは私でしたね……」

 

 タリアはマヤと共に教国を目指すことを決めた時点で、己の死を受け入れている。

 

 既に六十を過ぎていて、マヤの一件以外タリアは思い残すことはない。

 

 何が起きているかわからないが、死期が近付いてきているのは確かなのだろう。

 

 戦闘の心得はあるが、タリアにはあまり生き抜く力は残されていない。

 

「くっ! ……これは……なるほど、天使ですか。長生きはしてみるものですね」

 

 牢屋の一画が吹き飛び、そこから白い翼の生えた生き物……天使が二体現れた。

 

 その身体は返り血により、所々が赤く染まっている。

 

 過去の文献で天使の事を知っているタリアは正体を見破り、微かな笑みを浮かべる。

 

 天使を召喚できるのは相応の位が必要であり、過去にエデンの塔が壊れ、とある魔王が暴れて以降はその姿を見たものはいない。

 

「さあ、殺しなさい。それで終わりです」

 

 タリアは床へ座り、首を差し出す。 

 

 天使は位にもよるが、最低でも魔物のCランクはある。

 

 仮にタリアが全力で抵抗したとしても、武器のないタリアでは一瞬で殺されて終わる。

 

 無駄な抵抗をするくらいなら、潔い死を選ぶ。

 

 それが聖職者である、タリアが選んだ道なのだ。

 

 タリアの動きに対して天使達は何の意思も示す事は無く、持っていた剣を振り上げる。

 

 その剣がタリアの首を落とす……その寸前

 

「えっ?」

 

 どこからか飛んできた禍々しい剣が天使を斬り裂いて壁へと突き刺さり、天使は姿を消す。

 

 残っている一体はタリアを無視して翼を広げ、剣が取んできた方へと飛んで行こうとするが、今度は飛んできた岩により吹き飛ばされる。

 

 流石に岩で死ぬ事は無かった天使だが、今度はどこからか現れた赤髪の女性が壁に突き刺さっている剣を振り抜き、反撃をする暇もなく天使は姿を消した。

 

「ご無事で何よりです……と言うにはギリギリでしたね」

「あなたは――サレンさん……」

 

 助けに来てくれたサレンに、タリアは動揺を露わにする。

 

 これまでのサレンとの付き合いで、サレンが前線で戦うような人物ではない事を、タリアは十分に理解している。

 

「タリア! 無事ですか!」

「マヤ! ああ、あなたも無事で……」

 

 マヤの声が聞こえ立ち上がろうとするタリアだが、緊張の糸が切れたせいか、よろけてしまう。

 

 その様子を見たマヤはタリアが倒れる前に抱き締め、お互いの無事を喜び合う。

 

 だが、その時間を長く続けることは出来ない。

 

「サレンさん! また来ます!」

 

 向かってくる天使を見つけたアオイは、サレンを大声で呼び、サレンはタリア達と話す暇もなく天使を倒しに行く。

 

「聖女様と勇者様も一緒ですか……一体何が起きているのですか?」

「私も詳しい事は何も……ですが、逃げ出すのならば今しかないです」

 

 逃げる……どれだけの騒動が起きているのか、タリアはまだ全容を把握していないが、此処に勇者と聖女が居る時点で、かなりの大事なのは理解した。

 

 タリアはマヤから視線をアオイ達へと移す。

 

 何故サレンと共に居るかは分からないが、表情を見るに無理矢理連れてこられたのではなく、自分の意思で共に居るのだろうと察する。

 

 そして、なし崩し的ではなく、サレンの目的がこの二人なのではと考える。

 

 召喚された者は仮に加護がなくても、能力や知識があるとされているので、もしも味方に付ける事が出来れば、大きな力となる。

 

 ただ、聖女の加護は通常神の意思以外で解くことは出来ない。

 

 的外れであるのだから、サレンの目的が何なのか悩むことになる。

 

 敵ではないのは確かだろうが、だからと言ってこの騒ぎの原因がサレンならば、許せるような行為ではない。

 

 マヤが生きているのならば、マヤを守るために行動する。

 

 それがタリアの意思だ。

 

「戻りました。残念ながら、此処以外は全滅のようですね。ギリギリでしたが、本当に間に合って良かったです」

「いえ、此方こそマヤと私を助けて頂きありがとうございました。ところで……」

「言いたい事は分かりますが、先ずは避難しましょう。いつ崩れるか分かりませんから」

 

 ミリー達が戦っている場から離れているとはいえ、タリアの居る地下牢も壁にヒビが入っている。

 

 サレンの言う通りに、移動を優先した方が良いだろう。

 

「……そうですね」

「それでは行きましょう。地上まで行ければライラ達が居るので、そこまで行けば何とかなります」

「あの子達もですか……いえ、分かりました」

 

 ライラ達が異常に強いのはタリアも知る所である。

 

 だからこそそんな彼女達が何故ここに居るのかが気になる。

 

 やはり騒動はサレンが煽動したものなのか……。

 

 国を相手取っているというのに、サレンに緊張の様な物は見られない。

 

 背筋に冷たい物が流れようとしたところで、マヤに促されて立ち上がる。

 

 そして自分の目的を思い出した。

 

 サレンに何があるにしても、マヤが助かるのならば、それ以上望むことはない。

 

 後の事は後で考えれば良い。

 

「先頭は私が進みますので、付いて来て下さい」

 

 サレンが小走りで通路を走り出し、その後を四人で付いて行く。

 

 しかし……。

 

「くっ!」

「きゃあ!」

 

 一際大きい揺れが起こり、サレン達が来た方の通路が崩れる。

 

 それを見たサレンはミリーの事を心配するが、マヤ達四人を助ける事も大事なので、四人に怪我が無いか聞いて、再び走り出す。

 

 地下に居るから地上の惨状を知らないで済んでいるが、もしもタリアを見捨てて建物の中を移動していた場合、アオイとユウトの命が無くなっていただろう。

 

 地下が揺れるという事は、地面まで衝撃が伝わる程の出来事が起きているのだ。

 

 通路の途中にある、鍵のかかった鉄格子をグランソラスで斬り裂き、サレンは地上を目指す。

 

「これは……」

「うそ……」

 

 地上へと繋がる階段まで来たサレンとマヤだが、階段は瓦礫で埋まり、上がる事が出来なくなっていた。

 

 

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