なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第204話:ミリーの戦い

「えっ」

 

 ミリーは、目の前に現れたものに困惑をした。

 

 ルシデルシアが行使した神喰の能力。それは、神力からとある武器を作り出す物であった。

 

 この能力を使えるのは神喰を作ったルシデルシアだけであり、ルシデルシアもこの能力を使う気は毛の先程も無かった。

 

 しかしキスをした事によりミリーの今内情を見たルシデルシアは、少しだけ感化されたのだ。

 

 サレンのため……というのもあるが、ミリーの諦めきれない心に、在りし日のディアナの面影を感じたのだ。

 

 ルシデルシアの作り出した武器。それは……。

 

「その杖を使え。魔力を流せば、後は導いてくれよう。――貴様ならば、その資格がある」

 

 一本の杖……と呼ぶには少し独特な形をしたものだった。

 

 先端に向かい螺旋を描くように絡まり合い、先端は花のつぼみの様に膨らんでいる。

 

 ミリーは杖を掴み、言われた通りに魔力を流し込むと、先端が開き空中に丸い水晶状の物が現れ、その周りに外殻の様な物が纏わりつく。

 

「それは! その武器は!」

 

 完全遺姿を変えたサクナシャガナは、ミリーの持つ武器を見て、大声を上げる。

 

 そしてその声と共に様々な魔法や奇跡が襲い掛かってくるが、それをルシデルシアは打ち払う。

 

「やはり覚えているようだな。模造品ではあるが、貴様には因縁深いものだろう?」

 

 ミリーを襲っていた重圧は一気に軽くなり、杖の名称や使い方が頭の中へと流れていく。

 

 そんなミリーを無視するように、サクナシャガナは剣を召喚し、ミリーへと襲い掛かるが、ルシデルシアが攻撃を防ぐ。

 

「それ、早く攻撃したらどうだ? 今ならば、動けるだろう?」

「……ソウルオブゼファー」

 

 杖から放たれた風の刃がサクナシャガナへと襲い掛かり、サクナシャガナは防御することなく後ろへと跳んで避ける。

 

 風の刃は地面へと衝突するが、サクナシャガナが避ける様な威力は無く、小さな傷をつけるだけの威力しかない。

 

 しかしサクナシャガナは強くミリーを睨みつけ、空を飛んで魔法の雨を降らす。

 

 威力で言えば戦略級を優に超え、この場が異空間でなければ、聖都を軽く吹き飛ばす威力がある。

 

 けれど、ルシデルシアには無意味である。

 

 ほぼ全てを神喰の一振りで吹き飛ばし、毅然とした態度でサクナシャガナを見上げる。

 

「そのまま斬られてしまえば面白かったものを」

「……それが神を殺すために存在している事位知っている。態々当たる愚行をおかす必要はない」

 

 ルシデルシアが作り出した杖。

 

 それは生前にルシデルシアがディアナへと渡した、フローレンシアと呼ばれる杖であった。

 

 一から作り出したものではなく、神喰から作り出した模倣品であるので、性能は下がってしまっているが、それでも破格の物となっている。

 

 フローレンシア。その杖を一言で言えば、神への特攻能力を持った杖である。

 

 その杖から放たれる魔法は神性が高ければ高いほど、受けるダメージが大きくなる。

 

 当時の肉体があった頃のルシデルシアは名実共に最強の神性を持っており、受けるダメージだけならば、当時の神喰よりもフローレンシアの方が大きかったほどである。

 

「強ければ勝てる。それだけで勝てる程、余は甘くはないぞ?」

 

 余裕の笑みを浮かべるルシデルシアだが、それにはしっかりと理由がある。

 

 今のルシデルシアの魂。つまり神力や魔力の貯蔵量は、三つの魂が混ざっているために、生前より大きくなっている。

 

 神力だけはディアナの状態が状態のため少ないが、神喰がその分を補っている。

 

 千年前から比べて、更に強くなっているといっても過言では無い。

 

 ある意味、生前のルシデルシア対勇者と聖女の様な構図になっている事に、ルシデルシアは気付き、今も眠っているディアナへと語りかける。

 

「確かに……確かにその様だな。その杖がある以上、常に注意をしなければならない。あなた様だけと戦う事も出来ず、捕まればそれまでかもしれません……ですが」

 

 サクナシャガナが翼を一枚掴み、背中から引きちぎる。その翼を空へと投げると、二体の人型へと姿を変える。

 

 それは取り込んだ神の一部であり、魔物で言えばSSSランク以上の強さがある化け物であった。

 

「私はあなた様と同等以上に、神を取り込んでいます。あいつならばともかく、その出来損ない程度ならばどうとでもなる」

「言ってくれるな。聞けばその出来損ないを、百年も放置したそうではないか。それ程までに、地上での情報は捉えづらかったのか?」 

「さて……どうしてでしょうね。そうかもしれませんし、そうでは無いかも知れない」

 

 サクナシャガナが産み出した二体の人型はミリーへと接近し、ルシデルシアはミリーへと視線を送る。

 

「あれは任せたぞ。貴様とその杖があれば、問題はない」

「……うん」

 

 ルシデルシアは空を飛び、向かってくるサクナシャガナと切り結ぶ。

 

 涼しい顔で戦うルシデルシアではあるが、幾つかの問題点を抱えている。

 

 一つ目は、得意である殲滅系の魔法を下手に使えない事だ。

 

 異空間とはいえ、サクナシャガナに大きなダメージを与える魔法となれば、どの様な影響を及ぼす事になるかは分からない。

 

 外にはライラやシラキリ。ヘンリー等のサレンが失いたくない人間が居るのだ。

 

 昔みたいにやりたい放題とはいかない。

 

 二つ目は、肉体の限界だ。

 

 幾ら魂が特別製であると言っても、身体は異世界の一般人から作られたものである。

 

 この世界の基準で言えば強靭ではあるが、ルシデルシアからしたらあまりにも脆い。

 

 権能にて治す事が出来ると言っても、流石に限度がある。

 

 そして最後の三つ目は、神喰でサクナシャガナを倒さなければならない事だ。

 

 剣術も下手な達人よりも上だとルシデルシアは自負しているが、相手も神喰を警戒しているせいか、簡単には行かない。

 

 ルシデルシアとは違い、サクナシャガナは被害を気にしないで魔法や奇跡を行使し、ルシデルシアは最低限迎撃して、被害を抑えなければならない。

 

 態々煽っているのも、サクナシャガナの隙を作り出すためなのだ。

 

 なるべく優雅に動き、余裕を見せているルシデルシアだが、一方でミリーはとんでもない戦いを強いられていた。

 

 SSSランクの魔物一体ならば、武器と相手次第手は何とか戦いに持ち込む事が出来る。

 

 しかし相手はそれ以上であり、更に二体も居る。

 

 これまで戦いで培っていた勘や、フローレンシアの力を使って互角に持ち込んではいるものの、一つのミスがそのまま死につながる様な状況だ。

 

(全く……どこからこんな魔杖を取り出したのか知らないけど、私の柄じゃあないなー)

 

 ミリーの得意な戦いは、一対多数のゲリラ戦だ。

 

 使える物は何でも使い、確実に殺していく。

 

 しかし魔法については、極力使わないようにしていた。

 

 身体強化や軽い魔法ならばともかく、強力な魔法を使えば直ぐに位置が知られてしまう。

 

 なので、純粋に魔法のみの戦闘というのは、ミリーはあまり経験していない。

 

 サクナシャガナやルシデルシアの様に理不尽な方法ではなく、風の魔法を使うことで空を飛び回り、二体の人型と戦う。

 

 本来ならばライラや天使が居るはずなのに、何処を見ても広がるのは瓦礫と荒野だけであり、違和感を感じながらも、ミリーは相手の動きを見極めていく。

 

 ミリーは杖から放つ魔法と、自分で放つ魔法を使い分けたり、動きをわざと単調にしたりすることで、人型がどんな存在かなのか当たりをつけた。

 

(攻撃や魔法は脅威だけど、複雑な事は出来ないみたいだね。それに、お互いの位置が被らないように動いてるし…………そろそろ決めようか)

 

 確かにサクナシャガナが産み出した人型は強い。

 

 しかし、戦いの土俵に上がることが出来るのならば、ミリーに取っては敵ではない。

 

 経験や覚悟はサクナシャガナに敵わないかも知れないが、ミリーにはルシデルシアが――サレンが居るのだから。

 

 人型の一体に急接近したミリーは剣での攻撃を誘発し、受け流しながら後ろへと回り込む。

 

 二体目は射線が被らないように移動を開始し、ほんの僅かだが確実に一対一となる状況を作り出した

 

「ソウルオブゼファー!」

 

 先程サクナシャガナに使った様な風の刃を飛ばすのではなく、自分を中心にして全方向に風の刃を放つ。

 

 殺傷能力こそ低く、致命傷にはならないものの、ミリーの近くにいた人型は避けきる事が出来ず、少し動きが鈍くなる。 

 

「ルインブレード」

 

 杖の石突側に風の刃を灯して人型を両断し、駄目押しで更に斬り付ける。

 

 四分割した一部をもう一体の人型へと蹴り飛ばし、体勢を崩させる。

 

 そして風の刃を突き刺し、同じく四分割に切り刻む。

 

 一息ついて、ルシデルシア達の戦いを見ようとするミリーだが、急な眩暈に襲われる。

 

 フローレンシアやルシデルシアにより緩和されてはいるが、ただでさえ今は身体を加護で急成長させたり、身の丈に合わない敵と戦ってきた。

 

 本命では無いとは言え、戦いを終えた事で気が緩み、疲労が襲ってきたのだ。

 

 何とか魔法を維持し、墜落だけはしないようにして地面へと着地する。

 

「――えっ」

 

 フローレンシアに縋り付く様に何とか立ち、ルシデルシア達が戦っている方を見るが、そこには予想外の光景が広がっていた。

 

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