なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第207話:門を一刀両断……はしない

 戦いは終わったが、ここからホロウスティアを目指さないといけないんだよな……。

 

 終わったからと気を抜くことは出来ないが、俺が戦わなければならない事態に陥る事はないだろう。

 

 見た限りライラのグローリアはボロボロ……とまではいかないが、所々欠けてしまっている。

 

 一応グランソラスを返したので、戦力としては問題ない。

 

 アーサーは聞いた話では直接戦闘をほとんどしてこなかったので、此方も戦力としては問題なし…………なんだかやつれている様な気もするけど。

 

 唯一シラキリだけは武器を殆ど消耗し、メイン武器の小刀も片方が折れてしまったが、代えの武器は一応あるので、Aランクの魔物が現れない限り後手に回る事はないだろう。

 

 ミリーさんは目が覚めるまで大丈夫なのか分からないが、ミリーさんだし多分大丈夫だろう。

 

 一応加護はそのままらしいし、魔法を失ったとかではないので、問題ないはずだ。

 

 直ぐに気を失ってしまったので正直不安もあるが、最悪はルシデルシアの加護を授ければ良い。

 

「それでは解除します」

 

 軽い打ち合わせが終わり、アーサーが壁を解除する。

 

 俺が来るまでに外に誰も居ないのを確認していたらしく、大通りだと言うのに、見る限り人が居ない。

 

(生き残りって居るのか?)

 

『居るぞ。大多数が生け贄とされてしまったらしいが、ダンジョンの方に人の反応がある』

 

 なるほど。ダンジョンの方には信徒以外も沢山居るらしいので、流れで避難して行ったのだろう。

 

 目に入る建物も結構壊されたりしているし、立て籠るくらいならば、逃げて固まった方が生き残れる確率が上がる。

 

「このまま真っ直ぐ進むとしよう。見つかった場合は……シラキリ、アーサー」

「はい」

「お任せください」

 

 ライラが指揮を取り、何名か心配そうにしている中走り出す。

 

 ライラの言い方ではまるで見つけ次第殺すみたいだが、その点は流石に弁えているので問題ない。

 

 単純に気絶させたり、意識を逸らして見つからないようにしてくれと言っているだけだ。

 

 まあライラ達と天使の戦いを見ていたらしいので、勘違いしてしまうのは仕方ない事だろう。

 

 このメンバーの中で一番身体能力が低いのはアオイであり、アオイに合わせたペースで走る。

 

 一応元の世界では陸上部だったらしく、こっちにきてからも体力作りはしていたらしく、男だった頃の俺以上には体力があるだろう。

 

 しかしそれでもマヤよりも下なのは、魔力が関係している。

 

 この世界に呼ばれたって事は、アオイとユウトにも魔力が備わっているだろうが、現状は神喰で無理矢理加護を奪ったので、元の世界と同じ状態になってしまっている。

 

 この世界で鍛えた分は付いているが、今は文字通りただの人だとルシデルシアが言っていた。

 

 一応何かしら固有の能力もあるらしいが、ここら辺の問題も先ずは逃げてからだ。

 

「これ程とは……あちこちに血も……」

 

 走りながらマヤが呟く。

 

 大通りは瓦礫が散乱し、あちこちに血が散乱している。

 

 死体が見当たらないが、そう言えば地下牢でも死体が見当たらなかったな。

 

 天使に殺されたのは、吸収でもされていたのだろうか?

 

(そこら辺はどうなっているんだ?)

 

『考えている通りだ。ついでにこの一帯は神力が充満している。神喰も吸っているが、マヤにも吸収されているようだな』

 

(……それって大丈夫なのか?)

 

『体調に支障をきたす事は無い……が、マヤを通して神の力が強まるだろう』

 

(それで?)

 

『神の力が増す事により、マヤの加護が強くなる。予想だが、調合にかかる時間が短くなり、品質も向上するだろう。必要ないだろうが、例の神力を回復させるエリクサーも簡単とまでは行かないが、作る事も可能だろう』

 

 聞く限りで良い事尽くめだが、少々怖いな。

 

 ルシデルシアみたいに身体を乗っ取ったり、サクナシャガナみたいに降臨なんてしなければ良いが……。

 

 それに神力が充満していると言ったが、聖都に居る聖女はマヤ以外にもいる筈だ。

 

 その全員が神力を吸収し、神の力が増すって事は、新たな火種になりそうな厄ネタな気がする。

 

(因みにだが、他の聖女とか分かったりする?)

 

『離れているから無理だな。だが、無関係……とまではいかないが、マヤですら吸っているってことは、他も同じ現象が起きているだろう。なに、気にする程問題は起こらんし、このまま神力が充満している方が問題だ』

 

(まあそこら辺の神関係は俺には分からないし、ルシデルシアの判断に従おう。ところで、ディアナの方はどうなっている?)

 

 態々神喰で殺したのは、ミリーさんとパスを繋ぐためなのもあるが、一番はディアナを起す時間を短縮するためだ。

 

 ルシデルシアは過去の行いで事件を起こしているが、ディアナは自分から問題を起してきている。

 

 今の所ルシデルシアよりもディアナの株は下だ。

 

『そうだな……かなり短縮されたと思うが、安定するまではなんとも言えんな。流石に一年未満とまでは言わんが、数年以内には目覚めるだろうとは思う』

 

 数年……まあ早まってはいるし、後は俺の頑張り次第だろう。

 

 信徒が増えれば、その分早まるわけだからな。

 

 これでライラとミリーさん。ついでにアーサーの件は片付けたので、当分はゆっくりと出来るはずだ。

 

 シラキリを学園に入れてしまえば、俺が直近でしなければいけないことは無くなる。

 

 ……いや、教会の建て直しや、土地の問題も残ってはいるが、ミリーさんが居るので、黒翼騎士団とのやり取りは円滑に進めることが出来るはずだ。

 

 今のミリーさんは(多分)完全に俺の味方なので、俺の不利益になることはしない……はずだ。

 

 まあ俺としても基本的には誠意には誠意で応えたいと思っているし、それはアランさんも同じはずだ。

 

 そう言えば、スフィーリア達は元気にしているだろうか?

 

 手紙とか送る暇はなかったし、向こうの現状を知る術はなかった。

 

 俺がホロウスティアを出ていく時はまだまだ教国の関係者が多く、アランさんの助けがあるとはいえ、狙われる可能性は大いにある状況だった。

 

 今はサクナシャガナが消滅したので、実質的に三つの教国の内二つは、トップが居なくなる事になる。

 

 おそらく帰るまでの間に、色々と起きていることだろう。

 

 残ったアレスティアル教国の一強となるかも知れないが、マーズディアズ教で神力を手に入れた神が台頭してくる可能性もある。

 

 まあサクナシャガナの加護が無くなった影響は、教国に留まらず帝国や王国にも出ているだろうが、神なんて他にも沢山居るのでどうにかなるだろう。

 

 俺は知らん。

 

「門は……閉じていますね。どうしますか?」

 

 門が見えるところまで来たが、なんと門は閉まっていた。

 

 辺りに人影は見えず、門の奥からもそれらしい気配を感じない。

 

 俺達が戦っていた時間を考えれば、門で並んでいた人たちも天使に襲われ、全員逃げたのかもしれない。

 

 街の様子から見るに、無差別に襲っていたようだし、一般人や普通の冒険者では天使に勝つのは無理だ。

 

 俺の時は閉所だったので、飛ばれることも強い魔法を使われることもなかったが、こんな開けた場所では良い的だろう。

 

 それに空を飛んでいる敵に攻撃を当てるのは難しいし、ただの弓矢程度では天使達にダメージを与えるのは無理だ。

 

 一応聖都の近隣にはそれなりの数の町や村もあるので、逃げられた人達はそこに向かったと思う。

 

「そうですね……ライラ、開閉させるのと壊すのではどっちが早いですか?」

「門の開閉装置は少し離れた所にあるとミリーさんから聞いている。門自体も特殊な作りでかなり頑丈らしいが……これがあれば問題ない。どうもやる気があるみたいだからな。任せておけ」

 

 ライラはグランソラスを片手に持ち、門の前に立つ。

 

 サクナシャガナが持っていた神力はグランソラスを通してルシデルシアが回収したのだが、どうもやる気か殺る気なのか分からないが、かなり元気な状態になってしまっている。

 

 しっかりとライラの事を使い手として認めているので、ルシデルシアから離れても問題ないが、当面の間ライラは苦労する事になるだろう。

 

「貫け!」

 

 黒い魔力が込み上げるグランソラスで門を斬り付け、人が通れるだけの穴を開ける。

 

 門を一刀両断するのかと一瞬思ってしまったが、ちゃんと被害を最小限に抑えてくれたようだ。

 

 ……まあ安心しているのは俺だけらしく、門がどんなのか理解していると思われるタリアは目を見開いて驚いている。

 

 門の厚みは目算で、二十センチ位ありそうだ。

 

 素材もどう見ても木ではなく、何か硬い物である。

 

 おそらくサクナシャガナの加護を使って作られていると思うので、直すのは不可能だろうが、どうせ国としては崩壊しているし、誤差の範囲内の被害だろう。

 

「ふむ、思いの外簡単だったが、まあ良いだろう。アーサー。馬車まで案内を頼む」

「承知しました」

 

 予定ならばアーサーが神殿の近くまで持って来た馬車で、ここまで馬車で来ることが出来たのかもしれないが、道は瓦礫が散乱していたし、馬も間違いなく殺されていた。

 

 探しに行くのも時間の無駄なので、仕方なく走って来たのだ。

 

 アオイやユウトには疲れが見えるが、後少しの辛抱なので、頑張ってもらおう。

 

「お二人共、後少しなので、頑張りましょう」

「はい」

「……ありがとうございます」

 

 若干ユウトの俺を見る目が変だったが、ミリーさんを担いで走っているのに、息を乱していない事に驚いたのだろう。

 

 なんなら汗すら流していないが、少し煙の臭いが服に沁みついてしまったな……。

 

 早くシャワーか水浴びをしたい……。

 

 

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