なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第208話:みんな揃って食事の時間

「……あれ? ここは?」

 

 馬車が隠してあるところに着き、出発の準備をしていると、ミリーさんが目を覚ました。

 

「聖都から出て、馬車を隠しておいた場所です。体調は大丈夫ですか?」

 

 背中から降ろすが、ミリーさんはもたつく事もなく軽く立ち、手足を動かす。

 

「うん。大丈夫だよ。なんだが人数が多い様だけど、サレンちゃんの方も成功したんだね」

「はい。危ない場面もありましたが、見ての通りです。イノセンス教としての役目もしっかりと果たす事が出来ました」

「それは良かったね。私もやる事はやったし、見届ける事が出来たから満足だよ」

 

 いつもより大人びた笑顔を浮かべて、ミリーさんが遠くを見つめる。

 

 他人の考えなど分からないが、あの短い間でもミリーさんとサクナシャガナの因縁を感じ取ることが出来た。

 

 最後にサクナシャガナ……いや、多分最後に声を出したのは、依り代となった少女だったのだろう。

 

 その少女が口に出した名前。

 

 それが本当はミリーさんの名前なのだろう。

 

 そしてミリーというのが、あの依り代となった少女の名前なのだろう。

 

 このことについてミリーさんに聞こうとは思わないが、間違いなく重い過去があるに違いない。

 

「準備が出来たので、乗ってください」

 

 アーサー達が準備を終えたので、ミリーさんと一緒に乗り込む。

 

 流石に四人も増えれば狭くなってしまうが、来る時は積んでいた木箱の大半を処分し、荷物の一部を運転席へと移動させ、何とかスペースを確保した。

 

 ヴァイオリンの箱だけは荷台の方に積んで、俺の近くにおいてある。少し場所を取ってしまうが、これ位ならば良いだろう。

 

 増えたのが皆細身だからマシではあるが、もしもコング達が居たら何人かは馬車の上に乗って貰うことになっただろう。

 

 たまにミリーさんやシラキリは上で日向ぼっこしていたので、乗り心地自体は悪くないらしい。

 

 ただ、時期的に寒くなり始めているので、日が出ていない時は辛いだろう。

 

 魔法でどうにか出来るらしいが、流石にずっとは無理みたいだし。

 

「やあどうもどうも。マヤちゃん達は久し振りだね。そっちの二人は、召喚された被害者だね。サレンちゃんから軽く話は聞いてるよ」

 

 軽くミリーさんが話すが、微妙にライラがミリーさんを睨んでいる。

 

 マヤ達はともかく、アオイ達の事はライラに遠回しにしか教えていない。

 

 ミリーさんだけが知っていることに、イラっとしたのだろう。

 

「あの、あなたは?」

「私はミリーだよ。サレンちゃんの友達で、今回の発起人って所かな。まあ詳しくは後にするとして、今は休もうっか。みんな疲れているでしょ?」

 

 ミリーさんも少し寝たとはいえ、まだまだ疲れは取れていないだろうし、神殿の跡地からこの場所までも結構距離があった。

 

 ミリーさんが寝ている間に、俺達は身体を拭いたりしたので、汗による不快感はない。

 

 つまり、寝ようとすれば寝られる状態である。

 

 因みにミリーさんは、シラキリに拭いてもらった。

 

 少し嫌そうにしていたが、俺が拭くのは少しアウトな気がするので仕方ない。

 

「一応私が起きておきますので、ミリーさんも休んで頂いて大丈夫ですよ」

「なら上で休ませてもらおうかな。そうすれば少しは広くなるだろうし」

 

 さっそく天井に行くのか。

 

 まあ夜まではまだ時間はあるだろうし、外に居れば直ぐに対応が出来る。

 

 武器は代えのをミリーさんが引っ張り出し、そのまま登って行ってしまった。

 

「我も休ませてもらうとしよう。回復してもらったとは言え、無理をして良い事はないからな」

 

 ライラは毛布を取り出し横になり、シラキリも俺の太ももを枕にして横になる。

 

 あまり甘やかしては駄目なのは分かっているが、今日くらいは頑張ってもらったので、別に良いだろう。

 

「この馬車はあまり揺れませんので、布に包まって横になっても大丈夫ですよ。どうしても寝られないのでしたら、一つだけベッドみたいなものがあるので、お貸しします」

 

 マヤやタリアは大丈夫だろうが、アオイとユウトは旅の経験なんて無いだろう。

 

 現代人が硬い床の上で寝るのは、流石に辛い物があるだろう。

 

 布団代わりの毛布はあるが、それだけだ。

 

 俺も廃教会の硬いベッドに慣れるのは、数日掛かった。

 

 まあ何度か……それなりの回数路上や公園で夜を明かした事があったので、柔らかい布団が無くても普通に寝る事が出来たが、学生だった二人にはやはり辛かろう。

 

 安眠木箱は一つしかないので寝られるのは一人だけだが、あの中ならばアオイ達でも普通に安眠できるだろう。

 

 何なら、俺が働いていた時に寝ていた布団よりも寝やすい。

 

「俺は大丈夫ですので、アオイに貸して貰っても良いですか?」

「…………いえ、私は大丈夫だから、ユウトに……」

 

 二人はお互いに譲り合い、微妙な雰囲気になる。

 

 日本人の悪い癖が出ているな。

 

 早くしろと言いたいが、ここは大人として俺が決めてしまうとしよう。

 

 ……アオイと言いたいところだが、ユウトの方が良いな。

 

 今はまだ気を張っているから気付いていないのだろうが、ここに居るのはユウト以外全員女性だ。

 

 どう見ても思春期であるユウトにとっては、辛い環境だろう。

 

 やんわりと伝えて、ユウトには木箱で寝てもらおう。

 

「でしたら、ユウトさんが先に使って下さい。血を流していますし、アオイさんのために気を張っているのでしょう? もう大丈夫ですから、今はゆっくりと休んでください」

「……分かりました」

 

 早めに新たな馬車を手に入れる事が出来れば、ユウトのハーレム状態も少しはマシになるだろう。

 

 それまでにユウトが今の状況に気付かず、ミリーさん辺りが茶化さない事を祈る。

 

 横になったシラキリには悪いが、少しどいてもらい、例の木箱の箱を開ける。

 

 初見では躊躇してしまうだろうが、横になればあっという間に夢の中である。

 

「あの、これですか?」

「はい。見た目こそ少し悪いですが、一度横になればあっという間に寝られると思います。私達が聖都に来る時も使用しましたが、とても寝心地は良いです」

 

 訝しむユウトだが木箱の中で横になると、直ぐにうとうとし始める。

 

 放っておけば、直ぐに寝てしまうだろう。

 

 マヤやアオイと話す事はあるが、今はゆっくりとするとしよう。

 

 シラキリの所に戻り、再び膝枕をする。

 

 日差しはまだ暖かく、丁度差し込んで来るので寒くはない。

 

 聖都の人達には悪いが、後は頑張って欲しい。

 

 

 

 

 

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 空が赤く染まり始め、聖都が見えなくなる。

 

 やはりみな疲れていたのか、ライラでさえも起きることなく、馬車が止まる。

 

 アーサーも馬車を止める時はいつも声をかけるのだが、今日は何も言わない。

 

 まだ日が出ている内に、野営の準備をしなければな。

 

 シラキリを膝の上から退けて、馬車から降りる。

 

 音もなくミリーさんが降りて来て少し驚くが、声を上げないですんだ。

 

「みんなぐっすりみたいだね」

「はい。起こす前に、準備をしてしまいましょう。ミリーさんは拡張鞄から荷物を出してください。それと、アーサーには見回りをお願いしておいて下さい」

「了解」

 

 直ぐにミリーさんは拡張鞄を持ってきてくれたので、慣れた手付きで準備を進めていく。

 

 薪用の木の枝は前に集めておいたのが残っており、集めるのはまだ後で大丈夫そうだが、料理を作っている間にミリーさんに集めに行ってもらう。

 

 火を起して鍋に水を注ぎ、あれこれと材料を入れて煮込む。

 

 シラキリが作ったパンはないが、買い置きしておいたパンがあるので、鉄板で焼き目を付けて行く。

 

「良い匂いだな。シスターサレンの料理を食べるのも久々だな。何を作っているのだ?」

「マヤさんが作っておいてくれたスパイスを使った、カレー風スープとパンになります。パンはシラキリが作った物ではないですけどね」

「焼きたてというのもあるが、シラキリの作るパンは美味しいからな。帰る途中でもまた食べたい物だ」

 

 追っ手なんていないだろうし、襲ってくるのはもう魔物だけだろう。

 

 なるべく急いで帰った方が良いのかもしれないが、もう急がなければならない理由はない。

 

 お金についてもまだまだ余裕があり、この人数でもホロウスティアへ帰る間に尽きるなんて事は起こりえない。

 

 個人的にまたシープビギニングを飲みに行きたいところだが、帰りのルートは王国を経由しないので、飲みに行く事は出来ない。

 

 ホロウスティアへ帰った後に、シープビギニングを買ってきてもらう依頼を出すのもありかもしれないな。

 

 二パーティー程、俺の依頼を断れないパーティーが居るので、誰も依頼を受けないなんて事は起こらないし。

 

「そうですね。もう直ぐ出来上がるので、皆さんを起してきてもらって良いですか?」

「分かった」

 

 そこそこ煮たタイミングで味見をするが、マヤが作ったスパイスなだけあり、とても美味しい。

 

「おっ、良い匂いがするねー。薪は纏めて置いといたから、後で拡張鞄に入れておいてね」

「ありがとうございます。もうできますので、お待ちください」

 

 本来この時期に落ちている枝は、まだ薪としては不十分なのだが、ライラやミリーさんの手にかかれば直ぐに薪として使用する事が出来る。

 

 一応シラキリの水魔法でも水分を奪う事は出来るらしいが、効率が悪いので、基本的に二人の内のどちらかに任せている。

 

 魔法とは本当に便利である。

 

 皿にスープを注いでいると、馬車から全員降りてきた。

 

 一番大きな鍋を使って作ったが、足りるだろうか?

 

 

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