なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第210話:マヤ達の自己紹介と報酬

 アーサーの自己紹介は恙なく終わったが、ユウトのアーサーを見る目が少し怪しい。

 

 あの目はあれだな。アーサーがイケメンなので、アオイが取られないか心配なのだろう。

 

 街で顔を晒せば、アーサーは女子に騒がれるくらい顔が良い。

 

 ホロウスティアではそこまででもないが、単純に俺やライラが近くに居るせいだろう。

 

 一人で行動している時は騒がれているかもしれないが、俺に迷惑が掛からないならばどうでも良い。

 

 そう言えば、アーサーの年齢っていくつなのだろうか?

 

 シラキリとライラはギルドへ登録する時に年齢を見たが、アーサーについては知らない。

 

 ミリーさんは年齢不詳だったりするが、ギルドに登録されている年齢って事で良いだろう。

 

 まあ、多分何回も作り直しているんだろうけど。

 

「それでは次は私が。コノハミヤ教の聖女をしています、マヤと申します。表向きは調合の教授のために聖都へと招かれましたが、実際は……」

 

 マヤの自己紹介が始まり、途中で言葉を切る。

 

 俺が助けに行った時、マヤは地下に幽閉されていた。

 

 しかも扉は普通の物ではなく、グランソラスが無ければ簡単には壊す事が出来なかったとルシデルシアが評価していた。

 

 物理的な方法でも壊せなくはなかっただろうが、もしもマヤの所で時間をかけてしまっていたら、タリアを助けることは出来なかっただろう。

 

 鍵でもあればもっと楽だったのだろうが、持っているであろう教皇を探しに行くのは遠いし、マヤの所に着くまでの間に人は誰もいなかった。

 

 天使へとなった時に、鍵も一緒に消えてしまった……のだろう。

 

 そう言えば教皇がどうなったのか、まだミリーさんから話を聞いていなかったな。

 

 多分アオイの所へ行く途中に見えた、あの光に巻き込まれて死んでいそうだけど。

 

「とある薬の調合のために、幽閉されていました。マーズディアス教の教皇に我がコノハミヤ教は脅迫を受けており、選択肢はありませんでした。それどころか、サレンさん達に道中会う事が出来なければ、私以外は命を落としていたでしょう」

 

 マヤの告白にアオイとユウトはショックを受ける。

 

 召喚された後に、それなりに甘い蜜も吸っていたのもあるだろうが、そこまでの事をしているとは思わなかったのだろう。

 

 裏には神であるサクナシャガナが居るが、指示をしていたのは教皇だ。

 

 一種の人攫い。或いは人身売買とも言える行いであり、元の世界の常識からすれば、考えられない物だ。

 

 ……そう言えば、アオイとユウトには洗脳を受けていた可能性があったな。

 

 後で確認をしておくとしよう。

 

 それと……。

 

「ミリーさん。マヤさんですが、ホロウスティアで普通に暮らすことは出来ますか?」

「うーん。名前を変えて、聖女じゃなくてシスターと名乗っておけば、そう簡単にバレることは無いと思うよ。他人の空似なんてよくあるし、別にマヤちゃんが犯罪者ってわけでもないからね。まあ、そのままでも大丈夫だとは思うけど」

「名前……ですか」

 

 悩ましそうに呟き、一瞬だけタリアを見た。

 

 人にもよるが、名前とは大きな意味を持つ。

 

 ライラが本名を名乗りたく無かったり、ミリーさんが友人の名前を受け継いでいたり。

 

 そして俺みたいに過去の名前を捨てたり……。

 

 マヤにとっても、その名前は大事なのだろう。

 

「まあ時間はあるし、ゆっくりと考えなよ。戻ることも出来ないだろうし、一人じゃ生きていけないでしょう?」

「そう……ですね。わかりました」

 

 ミリーさんはそう言うが、マヤならば最低限の元手さえあれば、案外一人で生きていけると思う。

 

 商人顔負けの話術を持ち、物の良し悪しを見抜く審美眼も持っている。

 

 加護で調合も出来て、無くても普通に色々と作れるらしいので、やはり大丈夫だと思える。

 

 まあミリーさんとして……黒翼騎士団としてはマヤを手に入れたいというのが正直なところだろうし、逃げられないように言いくるめているのだろう。

 

 勿論俺もマヤの力が必要なので助けたので、ここで離脱でもされようものなら、物凄く落ち込む自信がある。

 

「あ、サレンさん。渡したいものがあるので、少しお待ちください」

 

 マヤの話も終わりかと思った所で、マヤは馬車まで走り、小箱を持って来て俺の前に立つ。

 

「こちらが、あの時の約束の物になります。神殿に有った材料で作っていますので、品質も高いはずです」

 

 小箱を渡されて中を見ると、そこには光り輝く液体の入った小瓶が鎮座していた。

 

「これは……エリクサーですか?」

「はい。サレンさんには必要ないかも知れませんが、売れば相応の値段になると思います。命に比べれば安い物となりますが、受け取って貰えると嬉しいです」

 

 ふむ……エリクサーの相場が分からないが、多分桁外れた金額になるのは確かだろう。

 

 視線をミリーさんに向けると、かなり驚いているのが分かる。

 

「うわ。それって貰って良い物なの? 国次第じゃあそれ一本で爵位が買える代物だよ?」

「はい。元々決めていた事ですから。それに材料は高価な物ばかりですが、材料さえあればまた作る事が出来ますし、出来る限りのお礼をしようと思っていましたので」

 

『ほぉ、見る限り中々の品質の物みたいだな。最上級までとはいかないが、上級クラスはある。若い人間の身でこれ程の物を作れたことは、賞賛に値するだろう』

 

 急にルシデルシアが称賛の声を上げる。

 

(お前が褒めるなんて珍しいな)

 

『なに。材料が良いからと言ってこれほどの物を作れる訳ではないからな。このレベルならば、神代の頃でも問題なく通じる』

 

(それはつまり、神力を回復させる効果もあると?)

 

『あると見て良いだろう。余に鑑定の権能があればもっと正確に調べられるのだが、持っている奴らは中立の神ばかりでな。態々余と戦うような酔狂なのは誰もいなかった』

 

(自分から戦いには行かなかったのか?)

 

『それではただの破壊者でしかない。貴様には分からぬだろうが、強者には強者の矜持があるのだ』

 

 ゲームや小説的な考えに当て嵌めれば、ルシデルシアが言いたい事も理解は出来る。

 

 理解は出来ても共感は出来ないのだが、魔王とは自ら動くものではないのだろう。

 

「それでは、ありがたく頂きます。ですが、マヤさんは大丈夫なのですか?」

 

 助けるには助けたが、残念ながら金銭的な援助は基本的に出来ない。

 

 予定では相互扶助の関係として、同じ協会にて暮らそうと思っているが、教会の建て替えに土地の購入。

 

 更に道の整備と金はいくらあっても足りない状況である。

 

 ライラの実家から盗み出した金銭で足りれば良いのだが、まだ何の見積もりもしていないし、黒翼騎士団との土地の受け渡しもどうなっているのか、まだ知らない。

 

 教会の建っている場所だけなのか、それとも大通りから教会に続くまでの道なのか……。

 

 ミリーさんに頼んで、なるべく安く済む事を祈る。

 

「はい。逃げる際にあの地下室から様々な物を持ちだしたので、調合用の鍋や容器さえどうにかなれば、ポーションとかも作れるので、大丈夫だと思います」

「それは何よりです。後でホロウスティアでどうするか話そうと思っていますが、これを渡したせいでマヤさんが苦境に立たされては、私も心苦しいですから」

 

 マヤは自分が座っていた所に戻り、自分で作ったハーブティーを飲む。

 

 タリアさんが少し心配そうにしているが、年寄りにはあまり心配をかけない方が良い。

 

「次は私ですね。コノハミヤ教にて司祭をしていましたタリアと申します。聖都ではマヤの人質として、地下牢に居ました。あの時は、本当にありがとうございました」

 

 改めてタリアは、頭を下げながらお礼を言う。

 

 タリアを助けたのはついでではあるが、マヤのメンタルのために助けられて本当に良かった。

 

 個人的にはマヤ以外全員司教によって、殺されている可能性も視野に入れていたので、タリアだけでも助けられたのは運が良かった。

 

「それとロイとコングについてですが、私が人質になる事で、逃げる事が出来ましたので、安心して下さい。連絡を取ることは出来ませんが、マーズディアス教にとってあの二人はそこまでの価値は無いはずなので、生きていると思います」

「それは……本当に良かったです」

 

 あの二人は生きているのか。

 

 タリアの言う通り、一々タダの護衛を殺す必要は無い。

 

 下手に殺しても後処理が面倒だろうし、口止めをして住んでいた場所に、戻らないように見張っておく位が妥当だろう。

 

 完全に死んだものだと思っていたが、良かった良かった。

 

「私はこのままマヤと共に居ようと思っているのですが、大丈夫でしょうか?」

「はい。問題ありません。既にお二人を縛るものはありませんから」

「ありがとうございます」

 

 再び頭を下げて、タリアの自己紹介……いや、報告は終わりとなる。

 

 タリアの正確な年齢は分からないが、既に高齢の筈だ。出来る限り望みを叶えて上げるのも、シスターとしての役目だろう。

 

 それにわざわざ助けたのは、これからもマヤを支えてもらうためなのだ。

 

 もしも重荷になりたくないとか言って逃げようものなら、面倒だが説得をしなければならなかった。

 

 この流れは俺としてもありがたい。

 

 最後はアオイとユウトの番になるのだが、明かりが焚き火しかないので分かり難いが、二人共あまり顔色が良くないように見える。

 

 聞いていた内容が内容なのだから仕方ないのだろうが、聖都でミリーさんやライラが集めた情報では、この二人は悪い事をしていない。

 

 なので俺の被害者なのは勿論、この世界の被害者でもあるのだ。

 

 落ち込むのは分かるが、今の所帰る事も出来ないので、開き直ってしまった方が、まだ気が楽かもしれない。

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