なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第212話:現代に汚染されているルシデルシア

「あの、今の声は?」

「いや、うん。人間の国で限って言えば確かに問題ないけど、モーリス連合国って獣人国がねー」

 

 ……そう言えば獣人の国と争っているというか、一方的に敵視していると聞いた事があった様な、無かったような……。

 

 これ幸いと、教国を攻める可能性が無いとも言えないのか。

 

 アオイがおろおろとするが、ミリーさんの方はあまり慌てていないので、何とかなる算段があるのだろう。

 

 忘れていたのは確かだろうが、今はからかっているだけと見た。

 

「そんなに慌てなくても、直ぐの直ぐ如何にかなる事は無いよ。マーズディアス教国は港もあるから、下手な事をする国が現れれば、外周国も黙っては見ていないだろうし、宗教の力はとても大きいからね」

「……はい」

「落ち込まない落ち込まない。他の心配よりも、先ずは自分の心配だよ。ね、サレンちゃん」

「……そうですね。ホロウスティアに帰れたからと言って、それで終わるわけでもありませんから」

 

 金の心配は勿論、建築の依頼やバッチの手配。

 

 更に中央の役所での手続き等、やることは山盛りだ。

 

 ああ、シラキリを学園に入学させるのも残っていたな。

 

 将来の酒造りのノウハウや、信徒達との付き合い方。

 

 そしてディアナが目覚めた後の事。

 

 既にディアナが、ルシデルシアと同レベルでポンコツなのは分かっているので、さっさと

 目覚めて貰って色々と問いただしたい。

 

 それと、シラキリの勇者の加護も解いてもらわなければならない。

 

 順番はともかく、ホロウスティアに帰ってからが本番と言えよう。

 

「ホロウスティアまではどれ位掛かるのですか?」

「途中で馬車を買ったり、旅慣れしていないアオイちゃんやユウト君の休みを取る事を考えると、大体二週間前後かな? 最後の森をどれ位で抜けられるかで変わってくるね」

 

 マヤの質問にサクッとミリーさんが答えるが、あの森か……多分ルシデルシアによって作られた破壊の後は、まだ残っていそうだな。

 

 土の魔法とかで埋めたりはしただろうけど、植物や木の成長には時間がかかる。

 

 植物関係の奇跡や魔法があれば別だろうが、そこまでする価値はあの場所には無いだろう。

 

 教国に行くための道からはかなり外れているし、森を壊したからといって生態系が酷く乱れたり、ホロウスティアまで魔物が来ることもない。

 

 放置しておいて、これといって問題はないのだ。

 

「長かった旅も、ようやく終わりを迎えるわけだな」

「ライラちゃんのあれも、良い値段になっていると良いけどねー」

「そうだな。最後の置き土産位は、我の役に立ってもらわなければな」

 

 置き土産と言うよりはただの窃盗品なのだが、ライラがされた仕打ちを考えれば、ああなるのも仕方ないし、金があるのは俺としてもありがたい……てか当てにしている。

 

「最低限話すことは話したし、今日は早く寝ようか。まだまだ帰るまで時間が掛かるからね」

「そうですね。もう急ぐ必要もないですから、ゆっくりとしましょう」

 

 起きていることはまだ可能だが、だからと言って起きている必要はない。

 

 寝られる時に寝ておくのが、旅においては必須だ。

 

「アーサー君とサレンちゃんには寝て貰うとして……」

 

 全員をぐるっと見渡し、考え込む。

 

 不寝番をどうするか悩んでいるのだろう。

 

 もう魔物以外は気にしなくても良いので、二人一組を作る必要はない。

 

 だからと言って一人では暇になるので、二人セットの方が良いだろう。

 

 だが……そうなると一人足りないのだ。

 

 一人ずつ入れ換えるのも手だろうが……どうなのだろうが?

 

 とりあえずアオイとユウトは、旅が今回初めてであり、慣れていないのにやらせるわけにもいかない。

 

 まあ俺達の内誰かと組むことになるので、危険はないだろうが、野生の神が襲い掛かって来ないとも限らない。

 

 …………いや、ありえないけど。

 

 後はマヤかタリアのどちらかだが……。

 

「タリアさんは不寝番って出来る?」

「はい。見ての通り長く生きていますので、問題ありません」

 

 まあその選択になるか。

 

 俺としてはマヤでも良かったが、ミリーさんの決定に逆らう気はないので、何も言わないでおく。

 

「決まりだね。最初は私とシラキリちゃん。次にアーサーくんタリアさんって事で、最後はあまりの二人で宜しく」

「それでは私は先に失礼させて頂きます」

 

 夕飯を作るのに使った鍋や容器を全て片付け、毛布に包まって近くの木に背を預ける。

 

 馬車の中は座って寝るならそれなりの人数が入れるが、横になって寝るとなれば人数が限られてくる。

 

 マヤはともかく、アオイとユウトは野宿自体が初めてなので、馬車で寝て貰った方が、体調を崩さないで済む。

 

 出来ることなら、ミリーさんと祝杯を挙げたかったが、今日は大人しく寝るとしよう。

 

 

 

 

 

 

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「来たな」

 

 ……まあ今日の今日だし、ルシデルシアに呼び出されるのは織り込み済みだ。

 

 元社会人として、残業はお手の物さ……。

 

「とりあえず、サクナシャガナの件は完全に片付いたと考えて良いんだな?」

「ああ。得られた神力から察するに、天界に居た方も一緒に殺せているのは間違いないだろう。あの依り代となっていた少女のおかげでもあるが、転生も不可能と見て間違いない」

「どういうことだ?」

「サクナシャガナの持っていた権能の数は、余を除けば最多であった。権能とは命の数の様なものであり、神喰でも一瞬で全てを喰らう事が出来るわけではない」

 

 ルシデルシアの言わんとする事は分かる。

 

 悪役が最後っ屁に自爆するように、サクナシャガナにも何か悪あがきをする時間があったのだろう。

 

 そしてその時間があれば、サクナシャガナは逃げる事が出来たかもしれない……と。

 

 妙にあっけないと思ったが、あの少女……と呼ぶには実年齢はミリーさんと一緒なのだろうが、あの子のおかげか。

 

 この事は、ミリーさんに話さない方が良さそうだな。

 

 終わった事を蒸し返す必要は無いし、結局の所、ミリーさんはタダの被害者だ。

 

 これ以上悲しみを背負わせる必要は無い。

 

「一応確認だが、あの少女がサクナシャガナを抑え込んだって事か?」

「ああ。依り代とサクナシャガナの魂は余達の様に混ざっていた。だが、主導権はサクナシャガナ側であり、全てを取り込まれている物だと思っていたが……よく意識を保てたものだと称賛を送りたい位だ。復讐か。それとも愛か。面白いものだ」

 

 ニヒルに笑い、ワイングラスのワインを飲む姿は、どう見てもゲームのラスボスだな。

 

 ルシデルシアの気紛れ次第では、この世界はとっくに滅んでいたわけだし、ラスボスに間違いはないのだが……。

 

「面白がるのは良いが、犠牲の上での勝利はどうなんだ?」

「あそこで逃げられたとしても、再起に掛かる時間より、余達が探し出す方が先になる。それに混ざった魂とは、分離することは不可能だ。結果として依り代の死は変わらん。あるのは無意味な死か、意味のある死のどちらかだけだ」

 

 結果が変わらないのなら、より良い結果を模索する。

 

 そこに悲観も無ければ、厚情もない。

 

 本人の選んだ選択に対し、ありのまま受け入れて評価する。

 

 何とも神様らしく、そして魔王らしい価値観だ。

 

 だが、ルシデルシアの機嫌が良い辺り、依り代の選択に満足はしているのだろう。

 

 ただの人が神に歯向かい一矢報いる。

 

 ルシデルシアの好きそうなシチュエーションだ。

 

「何はともあれ、危険が無いならそれで良いさ。それで、ディアナは?」

「今は神力を与えている状況だ。体感だが、七割位は修復が進むだろう。時間で言えば後数年で目覚める可能性がある」

 

 サクナシャガナを倒して直ぐの時に、言っていた事と一緒だな。

 

「その数年も俺次第と?」

「ああ。だが、そう心配する必要は無い。流れ込んでくる信仰は日々増えている。早まる事はあれ、遅くなることは無いだろう」

 

 …………うん?

 

「増えてるってのは、王国で活動したからか?」

「いや、この感じはホロウスティアからだな。感じられるくらい増えているのを思うに、最低でも百人から千人単位だろう」

 

 …………つまり、スフィーリアがしっかりと活動をしているという事か。

 

 ありがたい事ではあるが、少し心配でもある。

 

 間違いなく他の教国に目を付けられていたので、ギルドの庇護があったとしても、安心できる状態ではなかった。

 

 下手に布教活動をしていけば、思い切った行動をされないとも限らない。

 

 そのために護衛も居るが、ライラやミリーさんの様にもの凄く強いわけではないので、万が一は起こる可能性がある。

 

 なので現状維持だけをしてもらえていれば良かったのだが、ルシデルシアが言う通りならば、俺の言いつけを守っていない事になる。

 

 スフィーリアだけは死ねば、加護を通じて直ぐに気付く事が出来るが、それ以外についてはホロウスティアに着くまで安否は分からない。

 

 まあ増えてるってことは、問題が起きていないとも捉えられるので、そう思っておこう。

 

「頑張っているようだな。帰るのが楽しみだ」

「それはフラグという奴なのではないか? クックック」

 

 うん。やはりファンタジーの人間に、元の世界の友達みたいなノリで返されると、脳がバグりそうになる。

 

「そう言えば、ルシデルシアは俺の生活を見ていたから染まっているのは分かるが、ディアナの方はどうなんだ?」

「ふむ。正直に言えば分からぬな。一応こちらの様子を分かっている様だが、それがどの程度のものかは分からん。だが、それなりに分かっているのは事実だろうな。奇跡を起こし、余達をこちらの世界に送ったのは奴なのだからな」

 

 それを言われると怖いのだがな……ルシデルシアの話すを聞く限り、ディアナはお転婆みたいだし、変な知識に染まっていないと良いが……。

 

 まあ目覚めたら先に説教をして、出鼻を挫くとしよう。

 

 生きられているのはディアナのおかげだが、散々迷惑を掛けられているからな。

 

「怖いがディアナが目覚めない限り、俺も安定しないからな……今日は疲れたし、もう寝かせてくれ」

「そうだな余も少し乱されたせいか、妙な違和感が残っている。今日はお開きとしよう」

 

 再び目を閉じると、今度は普通に意識が落ちていく。

 

 明日からはまた旅の日々だし、頑張るとしよう。

 

 

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