なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第220話:壊れ始めている教国

『朝だぞ』

 

 毎度おなじみのルシデルシア目覚ましで目が覚める。

 

 ……妙に暖かいと思ったが、そう言えばシラキリと一緒に寝ていたんだった。

 

 他の二つのベッドは膨らんでおらず、流石のミリーさんもまだ帰ってきていないようだ。

 

 まあ馬車で片道二日の距離であり、更に偵察をするとなれば、それなりに時間が掛かるだろう。

 

 シラキリはすやすやと寝ているが、俺が動き出せば直ぐに起きるだろう。

 

 起き上がろうとすると、シラキリの耳が立ち上がり、本人も目を擦りながら起き上がる。

 

「おはようございます。シラキリ」

「おはようございます……サレンさん」

 

 どうやらかなり眠そうだが、旅で時間感覚が狂ってしまっているんだろうか?

 

 今回泊っている宿は聖都程ではないがかなりグレードが高く、シャワーも部屋に併設されている。

 

 勿論グレードの高い部屋だけだが、お金はまだまだ余裕があるので、今回取った部屋は全てシャワー付きである。

 

 ホテルで言えばスイートルームという奴だ。

 

 現代の感覚に当て嵌めればギリギリスタンダード位となるが、まあ異世界なので仕方ない。

 

「眠いならまだ寝ていて大丈夫ですよ。私は少しシャワーを浴びてきますので」

「………………はい」

 

 長い葛藤の後、シラキリはベッドへと倒れた。

 

 どうやら睡魔には勝てなかったようだ。

 

 見ている人は誰もいないので、適当に服を脱ぎ、着替えを用意してからシャワーを浴びる。

 

 ルームサービスとかあれば、先に珈琲の一杯でも頼んでおくのだが、それは贅沢だろう。

 

 それにしても、今のところ宿屋で外れを引いていないな。

 

 何か選び方のコツとかあるのだろうか?

 

 値段が高いからといって、良い場所とは限らないので、目安か何かがあってもおかしくない。

 

 さっぱりとした後は髪を乾かし、いつもの感じで髪を結ぶ。

 

 早くいつもの神官服に戻りたいものだ。

 

 ウィンプルがある分、今みたいにしっかりと髪を結ぶ必要はない。

 

(俺以外に起きている奴は居るか?)

 

『ライラとマヤだけは部屋にいないみたいだ。それ以外分からん』

 

 時間は……七時半か。

 

 まだ寝ていてもおかしくない時間だな。

 

 アーサー辺りは起きていてもおかしくないと思ったが、おそらくユウトが起きるまでは部屋で待っているのだろう。

 

 ミリーさんが帰ってくるまでは自由だし、シラキリは寝かせたままで、先に朝食を食べてしまうとするか。

 

 ――だが、宿にある食堂で食べるのは少し寂しいものがあるな。

 

 一応戦いも終わり、昨日見た街の様子は平和そのものだった。

 

 …………よし、たまには一人で出掛けるとするか。

 

 拡張鞄からお金と普通のバッグを取り出し、外出用の服に着替える。

 

 護身用の鉄扇もしっかりと袖に仕込み、ついでにシラキリに書置きを残して、宿を出て行く。

 

 七時半は現代人の感覚すれば、丁度出社中の時間であり、とにかく混雑している時間帯だ。

 

 もしも平日の休みだとすれば、もう一時間位してからではないと、何かしらの渋滞に嵌る事になる。

 

 が、この世界で七時半は既に働いて居る時間であり、ひな鳥の巣なんかの営業開始時間も六時半からとなっている。

 

 そんなわけで、既に住人達は働き始め、良い感じの活気が漂っている。

 

 この街は四方に街道が伸びており、その先にもそこそこ大きい街が存在する。

 

 そのため交通量が多く、様々な物が売っている。

 

 行きの時は警備の関係もあり、なるべく小さい街に寄る様にしていたが帰りはあまり気にしなくても良いのと、アオイ達の事もあり、街に寄れる時は寄っている。

 

 さて、まずは朝食だが……軽く屋台や食堂を見た感じ、山菜系の店が多い。

 

 山菜うどんや、シイタケと思われるキノコの焼き串。

 

 よく分からない名前の肉と野菜の炒め物。

 

 …………最近は買う物を任せたり、誰かと一緒に居るのが当たり前だから忘れていたが、地味に料理や食べ物の名前が違うんだったな。

 

 知っているのもちゃんとあるが、これならば下手な冒険心なんて出さずに、誰か連れてくれば良かったな。

 

 それと、せめて帽子くらいは被っていた方が、もう少し落ち着いて散歩できたかもしれない。

 

 

「すみません。焼き串を一本お願いします」

「へい! 毎度……ありがとうございました!」

 

 気の良さそうなおっちゃんの下がった頭を見ない振りして、キノコに肉を詰めた物を串に刺したものを食べる。

 

 キノコの見た目はシイタケであり、味も想像通りだ。

 

 肉は豚なのか牛なのか分からないが、肉の臭みをシイタケが中和し、肉汁も良い感じに吸ってくれているため、とても食べやすく美味しい。

 

 串を捨てたあと、山菜の天ぷらを串に刺したのを売っている屋台があったので、これまた一本買ってみる。

 

 こちらも美味しいのだが、とてもビールが欲しくなってきた。

 

 日本酒でも良いが、天ぷら酒のコンビは、赤ワインとチーズ並みに良いものだ。

 

 だがここで飲んで帰れば、シラキリにどんな目で見られるか分からないので、ぐっと堪えてうどん屋に入り、山菜うどんを啜る。

 

 出汁が少し微妙だが、これも中々美味しい。

 

 折角山菜が入っているので、もう少し甘口の方が山菜の苦味に合うと思う。

 

 串を二本とうどんも食べてお腹も膨れたので、朝食としてはこれくらいで良いだろう。

 

 そう言えば、この街にもギルドがあるらしいので、折角なので見に行ってみよう。

 

 依頼を受けたりは出来ないが、情勢を確認するには結構適している。

 

 サクナシャガナの信徒が居なくなった分、医療関係や街の守りについては少なからず問題が出ている可能性がある。

 

 確かに表面上は活気のある街だが、僅かだが物価が上がっている様に見えたし、行きの時と違って神官の姿はかなり少ない。

 

 これは他の街でもだが、国境からそこまで離れていないのもあり、この街では皆無と言っても良い。

 

 招集されているのか、はたまた加護が無くなった事を憂いて何かしているのか……。

 

 自殺した人間も少なからず出ていそうだ。

 

「すみません。ギルドは何所にあるのでしょうか?」

「ギルドですか? 店を出たら左にまっすぐ進むと広場に出ますので、そこを右に曲がってしばらく歩くと着きます」

「ありがとうございます」

 

 代金を支払い、ギルドに向かって歩き始める。

 

 念のため多めにお金を持って来たが、正解だったようだ。

 

 言われた通り、広場に着いたら右へ曲がり、しばらく進むとホロウスティアのよりもこぢんまりとしているギルドがあった。

 

 レンガ造りで中々趣のある建物だ。

 

 こぢんまりとしていると言っても、ホロウスティアにあるギルドが大きすぎるだけであり、目の前にあるギルドも町の会議所位の大きさはある。

 

 それなりに人の出入りはあり、流れに乗るようにしてギルドの中に入る。

 

 受付やテナントの店。それからいくつかの掲示板がある。

 

 大きさの大小はあれ、基本的に内装は他のギルドとかと一緒なのだろう。

 

 強いて言えば、技研ギルドも一緒になっている位だろうか?

 

「国境の方はどうだ?」

「なんでかしんねーけど、帝国には行けない状態が続いているな。マーズディアス教の神官に聞いても、誰も答えてくれない」

「やっぱりか。かといって王国を経由するとなると時間がな……」

 

 ふらふらしながら話し声に耳を傾けると、やはり国境関係の問題はあるようだな。

 

「この依頼、ちょっと買い取り金額が安すぎないか?」

「街の物価も上がっているし、これだと試算がねー」

「ダンジョンで魔石や宝箱を狙うのが無難か……一体何が起きているんだ?」

「神官がいない? ポーションも何故三割も上がっているんだ! 俺達を殺す気か!」

 

 あー、そう言えば教会とギルドは、相互扶助の関係にあったんだったな。

 

 最大手の神官達が奇跡を使えなくなったシワ寄せは、ギルドが一番受けているのだろう。

 

 ポーションは神官ではなく錬金術の分野となるので、おそらくまた別の要因だろうが、全くの無関係という事はないだろう。

 

 それにマヤが調合をしていたように、ポーションの利権を教会側が持っていた可能性もある。

 

 ポーションの値段の高騰については神官の数が少なくなり、冒険者が素材を取りに行けなくなったからという見方も出来る。

 

 ポーションの素材を取りに行き、怪我をしてポーションを使う。

 

 なんて自転車操業が起きているのかもしれない。

 

 薬草集めなんてのは初心者向けの依頼だが、魔物と戦うことになるし、怪我をしたならば直ぐに治さないと、血の臭いで魔物を誘うことになる。

 

 ならば出てくる魔物に負けない程度の、強い冒険者が取りに行けばとなるが、次は採算が合わなくなってくる。

 

 切羽詰まれば緊急依頼なんて事になるかもしれないが、まだそこまでではないのだろう。

 

 

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