なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第228話:懐かしの肉じゃが+α

 作戦会議も終わり、街道ではなく山の中をゆっくりと馬車が進んで行く。

 

 前回は獣道だったが、今回はアーサーによって道を作りながら進んでいるため、揺れはあまりない。

 

 結構派手にやってしまっている気もするが、通った道はしっかりと元通りにしているので、多分大丈夫なのだろう。

 

 前回この方法を使わなかったのは、単純に時間が掛かるのと、アーサーに負担が掛かるからだろう。

 

 乗っている身としてはとても楽だが、大変そうに見える。

 

 四時間ほどすると目的地に着いたのか、馬車が止まる。

 

 馬車から出ると、空には黒い煙が上がって居るのが見える。

 

 幸い匂いや音は何もないが、今も戦っているのだろう。

 

「森の中なのに、何だか嫌な空気ですね……」

「おそらく人が近くで死んでいるからでしょう。それも、望まぬ死に方で……」

 

 空を見上げながら、マヤは悲しそうな顔をする。

 

 俺は似非シスターであり、他人の死についてはあまり関心は無いが、それでも空気が重いのを感じる。

 

 聖都の時も多数の死者が出ていたが、あれらはサクナシャガナに吸収されてしまったせいか、聖都全体の違和感はほとんどなかった。

 

 おまけに神力が溢れてしまっていたせいで、今の様な重い感じを感じる事は無かった。

 

「いやー、結構離れている筈だけど、どうやら思いの外ドンパチしているみたいだね」

「追い詰められた者ほど、なにをしでかすか分からんからな。シラキリ。気を付けるのだぞ」

「はい」

「あれ? 私は?」

 

 ライラとミリーさんの漫才はおいといて、これからしばらくはここが拠点になる。

 

 アーサーがサクッと地均しと隠蔽工作をしてくれたので、居心地の悪さはない。

 

 馬用の飼葉もしっかりと準備してあるので、何が起きたとしても、二週間くらいは問題ない。

 

 ミリーさん達の出発は夜になってからとなるので、最低限の準備を終えたら仮眠を取り始めた。

 

「サレンさん。これはどう使うんですか?」

「最初に魔石をセットして、それから目盛りが赤いところまでいったらボタンを押してください。そうすれば水が貯まります」

 

 どうせ暇になるので、アオイに魔導具の使い方を教えながら拠点の準備を進める。

 

 これまでは移動を優先していたため、休憩とかはあったものの、余裕自体はなかった。

 

 折角時間が取れるので、魔導具の使い方以外にもやることがある。

 

 空は少しどんよりとしているが、ライラ曰く当面の間は雨が降らないらしい。

 

 ついでに雨が降ったとしても、ライラならば雨雲を吹き飛ばす程度は簡単だったりする。

 

 やった場合は間違いなく教国や帝国に気付かれる事になるので、やることは出来ないけど。

 

 とりあえず雨の心配もなく、それなりの広さがあるので、生活しやすいように色々と準備をしている。

 

 水場の設置や、焚火とコンロの設置。

 

 それから仮設テントや汗を流すための簡易シャワー室。

 

 設備の質だけならば、現代でのキャンプと同等くらいだろう。

 

 拡張鞄があってこそできる贅沢だが、流石にフルで準備となると手間がかかる。

 

 いつもはコンロと焚火位なので、今回初めて使う魔道具もある。

 

 水関係はシラキリが居たので問題なかったが、今回の作戦はシラキリも駆り出されるため、水関係の物も用意しなければならなかった。

 

「軽く辺りを見て回ったが、山菜が豊富だな。野生動物もそれなりにいるから、食べるに困る事は無いだろう。それと、これが枯れ枝だ」

「ありがとうございます」

 

 見回りから帰って来たライラから焚き火用の枯れ枝を受け取り、いつでも焚火が出来るように準備をしておく。

 

 近くで戦争をしているのに焚火をして大丈夫かと疑問があるが、焚火程度の煙なら大丈夫だと眠る前にミリーさんが言っていた。

 

 確かに今は現地で火事とか起きている中で、外の煙なんて分からないのかもしれない。

 

 そもそも距離としては五キロ位は離れている様なので…………いや、五キロってそこまで離れていない様な気もするが、ミリーさんが大丈夫と言っていたし、大丈夫なのだろう。

 

「焼き釜の組み立て出来ました」

「ありがとうございます。それではクッキーを焼きましょう」

 

 ユウトに釜の準備をしてもらい、これがあればクッキーやパンなどが作れる。

 

 いつもはアーサーが一から作り上げ、シラキリがパンを焼くために使っていたが、今回は手作りである。

 

 一部はライラの魔法を使用したが、これも経験というやつだ。

いうやつだ。

 

 何故かマヤが買っていたバニラビーンズと思われる物を貰い、バニラ風味のクッキーを作る。

 

 記憶が正しければ、バニラビーンズはかなり手間の掛かるものであり、結構高かった気がするのだが、マヤはそこまで高くなかったと言っていた。

 

 拡張鞄があるので、卵があればカスタードなんかも作れたりするが、衛生的な観点からホロウスティア以外の奴は使いたくない。

 

 多分浄化とかすれば大丈夫だろうが、念には念をである。

 

 一応カスタードを作る過程で熱を加えているが、正直作るのが面倒なのもある。

 

 そんなわけで、皆でクッキーを焼き上げ、タリアさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら一息つく。

 

「ふぅ……とても美味しいですね」

「それは良かったです。気分が落ち込んでいる時は、甘いものが一番ですからね」

「甘いだけではなく、香りもとても良いな。紅茶にとても良く合う」

 

 いつもはそこらの木を適当に切って作るテーブルも、今回はそこそこしっかりとしたものをユウトとライラが作ってくれた。

 

 サバイバル関係の事は、ライラがとても頼りになる。

 

 頼りになるのだが、この歳でここまで色々と出来るようになった理由が理由なので、素直に褒めにくいところだ。

 

 一息ついところで、夕飯について考えないとだな。

 

「夕飯は何かリクエストとかありますか? 時間に余裕がありますので、大抵の物は大丈夫です」

「我は譲るとしよう。シスターサレンの料理ならば、何でも構わないからな」

「私も若い子達に譲ります。これと言って食べたい物もありませんから」

 

 ライラは何でも構わないと良い、それにタリアも乗っかる。

 

 残された三人はお互いに顔を合わせ、相談を始めた。

 

 そこまで悩まずに、適当に言ってもらえれば良いのだが……。

 

 この三人も、旅の中で結構仲良くなったな。

 

 立場的にマヤはかなり大変な目に遭ったはずなのに、常にアオイ達に気を配っていたし、アオイ達もマヤを邪険に扱う事は無かった。

 

 まあマヤの薬に助けられた恩もあるのだろうが、マヤは正に聖女らしい聖女と言える。

 

 ホロウスティアに居る馬鹿な神官たちにも見習ってほしいものだ…………あっ。

 

 そう言えばホロウスティアにはサクナシャガナの信徒が結構いたはずだが、今頃どうなっているやら……。

 

 他にも沢山というか大量の宗教があるが、少なからず影響が出ていそうだな。

 

 自殺者とか、神に見放されたとか言って暴れる事で。

 

「その……肉じゃがとか作れたりしますか?」

「肉じゃがですね……」

 

 肉じゃがか……作り方自体は全く問題無いが……肉がなあ……。

 

 今買ってある肉は牛っぽいのと鶏っぽい奴であり、豚っぽいのが無い。

 

 個人的に肉じゃがといえば豚肉なので、そこがネックなのだ。

 

 肉の味だけで言えば牛でも良いのだが、汁の味を考えると豚の方が好きなのだ。

 

 一応この世界で牛肉はデイラッシュという名前があり、鶏も一般的にはフーランシャって名前があるが、呼びにくいので頭の中でこの名前を使うのは止めた。

 

 まあ個人的な好き嫌いはおいといて、肉じゃがを作ること自体は問題ない。

 

「大丈夫ですね。他に何か作らなくても良いですか?」

「じゃ、じゃあ唐揚げとか作れますか?」

「はい。ユウトさんが知っている味になるかは分かりませんが、作れますよ」

「本当ですか!」

 

 ユウトだけではなく、アオイも一緒になって喜びの笑みを浮かべる。

 

 唐揚げ自体は作るのが簡単だし、鶏っぽい肉もあるので問題ない。

 

 作り方や調味料で結構派閥があるが、個人的には生姜が多めの奴が好きだ。

 

 出来ればニンニクも入れたい所だが、ミリーさん達に食べてもらう事を考えれば入れることは出来ない。

 

 ニンニクの匂いを漂わせて潜入は、流石に無謀だろうからな。

 

 後はレモンがあれば良いのだが、あんなものを旅で持ち歩く事はないので、諦めるしかない。

 

 熱々の唐揚げにレモンをかけ、ハイボールと一緒に食べる。

 

 味変にマヨネーズとかあればなお酒が進むのだが…………ホロウスティアに帰ったら一杯キメるか。

 

「それでは私は下準備の方を進めてきますね。ライラ、後はお願いします」

「任された。とは言っても、教えるのは我も初めてだからな」

 

 纏まった時間が取れるという事で、ライラによる魔法講習が行われる事となった。

 

 受講者はアオイとユウトとなるが、俺と違って魔法が使えると良いのだがな……。

 

 

 

 

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