なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第237話:帝国へレッツゴー!

 屋敷での突発的な一夜を過ごした次の日。

 

 帝国の騎士団からこれと言って接触も無く、教国の残党がテロを起こす事も無く、普通に朝を迎えた。

 

 やはりふかふかのベッドは何度寝ても良いものだ。

 

 今回は一人一部屋であり、鼻を擽られる事無く起きる事が出来た。

 

 しかし、冷やしパスタに熱燗は結構マッチしていたな。

 

 少々飲み過ぎてしまった気がするが、瓶ではなく徳利から注いで飲んでいたので、多少は誤魔化せていたと思う。

 

 屋敷なだけあり大浴場も完備されているが、頭の事もあるので泣く泣く部屋に備え付けられているシャワーで寝汗を流す。

 

 自分の事ではないが、帝国に帰って来た以上誰かが誰かに命を狙われる事態はまず起こらなくなる。

 

 心なしか、気分も軽い気がする。

 

「おはようございます」

「……おはようございます」

 

 朝食の準備のために厨房に行くと、シラキリがパンを作っていた。

 

 外で作るよりも、しっかりと設備が整っているここで、保存用のパンを作ろうとしているのだろう。

 

 設置してあるオーブンは温度と時間の設定が出来る奴なので、感覚に頼る必要もない。

 

 やはり文明の力とは素晴らしいものだ。

 

 折角シラキリがパンを焼いてくれているし、朝はパンで良いだろう。

 

「シラキリ。朝食の分もお願い出来ますか?」

「任せて下さい」

 

 コネコネとしているシラキリの頭を撫でて上げたいところだが、料理中は衛生的に駄目なので、後で撫でてやるとしよう。

 

 この前作ったなんちゃってコンソメスープを温めながら具材を追加し、ゆっくりと煮込み、肉の塊をグチャっとしてハンバーグのタネを作っていく。

 

 いつもの時間よりも余裕があるので、パンが焼き上がるまでシラキリと一緒にマヤのお茶を飲む。

 

「ホロウスティアに帰ったら学園ですが、大丈夫ですか?」

「ちゃんと勉強しているので、多分大丈夫です」

 

 いや、学力や強さについては一ミリも心配していない。

 

 シラキリの強さは平の騎士より既に上だし、殺しだけの腕ならば悲しいことにミリーさんに近いものがある。

 

 俺が心配しているのは、ちゃんと友達を作れるかどうかだ。

 

 アオイやマヤ達とはそれなりに話せているが、シラキリの同世代と言えるのはライラだけであり、そのライラはかなり特殊な部類だ。

 

 なんなら俺やミリーさんより大人と言える。

 

 俺と出会ってからは、基本的に年上としかシラキリは出会って来ていない。

 

 同世代に合わせられるか。

 

 それが俺の心配だ。

 

 気付けば一人か二人行方不明になっていたとしても、俺は驚かない。

 

「勉強だけが学園の全てでは無いですよ。友達を作ったり、遊んだりするのも学園では大事な事です」

「……大丈夫です」

 

 声から感情が無くなったが、無理と答えないだけマシだろうか?

 

 程よく時間を潰せたところで、シラキリのパンが焼けるタイミングに合わせてハンバーグを焼き始める。

 

 ハンバーグというよりはパテみたいな感じだが、素人の俺にとってはどっちもあまり変わらない。

 

 確か使う材料の違いだった気がするけど、何だったかは覚えていない。

 

「後は私がやりますので、皆さんに集まるように伝えて来て貰えますか?」

「分かりました」

 

 シラキリに全員を呼びに行って貰い、その間にカートを使って食事を食堂まで運ぶ。

 

 カートとか初めて使ったけど、大人数の食事を運ぶのが楽だな。

 

 使う事はもうないだろうが、少し欲しいと感じてしまった。

 

「おはようございます。どうぞ座って下さい」

「おはようございます……今日も美味しそうな料理ですね」

 

 最初に食堂に来たのはマヤだった。

 

 最初に来るのはミリーさんかライラ辺りかと思ったが、マヤの事なので朝から色々とやっていたのだろう。

 

 料理の匂いに混じって、仄かにハーブの匂いがするので、合っていると思う。

 

 それからすぐに全員が集まり、朝食の時間となる。

 

 このメンバーで食事をするのも、残すところ後少しか……。

 

「馬車の用意は既に済んでいますので、直ぐに出発することが出来ます」

「一応屋敷の掃除もしといたから、文句を言われる事もないよー」

 

 流石アーサーといざという時は役に立つミリーさんだ。

 

 確かに屋敷はそのままで良いと言われたが、掃除をしておいた方が行動としては正しい。

 

 立つ鳥跡を濁さずともいうし、会う事はもうないだろうけど、あの団長さんに悪い印象を与えたままというのも良くない。

 

「ありがとうございます。それでは三十分後に出発ということで宜しいでしょうか?」

「大丈夫だよー」

 

 ミリーさんの返事を皮切りに全員が返事をして、出発の時間が決まった。

 

 シラキリと共に食器を片付け、厨房もしっかりと綺麗にしておく。

 

 そんな事をしていればあっという間に三十分経ち、出発の時間となった。

 

「それじゃあ改めて帝国へレッツゴー!」

「……あの、既に帝国ではないんですか?」

 

 意気揚々と出発の合図をするミリーさんに、アオイが疑問の声を上げる。

 

 アオイが困惑するのも仕方ないが、国境を越えて帝国に入った時ミリーさんは居なかった。

 

 なので、今改めてって奴だろう。

 

 俺と初めて会った時もミリーさんは、色々と印象に残る事をしてくれていた。

 

 単純に人が驚いた様を見るのが好きなのもあるのだろうが、そう言った行動をミリーさんは好む。

 

 微妙な感じでミリーさんは「気にしないでー」と言い、馬車を出発させた。

 

 昨日と同じく道は大変混んでいるが、外に向かうにつれて道が綺麗になっていく。

 

 壊れた建物自体は多いが、ここら辺で戦闘はほとんど起こらなかったのだろう。

 

「速度を落として下さいねー。身分証か身元が分かる物がありましたら準備してください」

 

 門が見えて来ると、帝国の騎士が交通整理をしており、呼びかけを行っていた。

 

 とは言っても外に向かう馬車や人の数は多くなく、直ぐに俺達の番が回って来た。

 

「これで宜しくー」

「こっ! ……いえ、失礼しました。検問は大丈夫ですので、どうぞお通りください」

「どうもねー」

 

 荷台からは見えないが、この紋所が目に入らぬかー! ってやったのだろう。

 

 ミリーさんの声はとても楽しそうだ。

 

 そのまま調べられる事もなく門を抜け、街道を進み始める。

 

「これからは、怯える必要はないのですね」

「無闇に命を狙われる事は、まず起こらないはずです。ですが、大都市ゆえの問題もあるので気を付けてください」

「……はい」

 

 マヤが一息ついたところ悪いが、ホロウスティアでは命の危険が無い代わりに、問題……課題が色々とある。

 

 聖女としての立場を捨てる事になるが、マヤは宗教家としての活動を続ける事だろう。

 

 そうなれば、役所が定めた人数の信徒を集めなければならないし、手続きなどもしなければならない。

 

 名目上俺のイノセンス教の下部組織というか、相互扶助の関係となるので、俺の時よりも手続きはスムーズだろうが、やらなければいけない事がある。

 

 ギルドでも登録しといた方が良いだろうし、教会の立て直しもあるので、宿の代金などもどうにかしなければならない。

 

 まあ俺が貸し出せばそこは大丈夫だし、マヤならば直ぐに金を稼ぐ事も可能なので心配はしていないが、大変なのは確かだろう。

 

 ホロウスティアは他とは違い結構近代的だし、物凄く広いからな。

 

 それにしても、帝国側は道がしっかりと舗装されているな。

 

 ただでさえ揺れが少ないのに、今は音すらもほとんどしない。

 

 王国に向かう時も最初はこんな感じだったが、途中から獣道や道なき道を進んでいたので、あまり覚えていない。

 

 朝一で出た事もあり、昼になる前には国境の町は見えなくなり、森へと続く道だけが広がる。

 

 シラキリと話す事は話したし、ライラの機嫌もしっかりと取り、ミリーさんともこれからの事についても……軽くだが話した。

 

 ミリーさんは俺というか、ルシデルシアの加護を止めるか、即死をしない限り死ぬ事が無い。

 

 これから一番の付き合いとなるだろうから、気を付けなければならない。

 

「このまま、無事に帰れれば良いが……敵は全員倒しているので、大丈夫か……」

 

 ポツリとライラがフラグめいた発言をするが、敵という敵は全員倒しているので、突発的に発生したダンジョンでもない限り、問題ないはずだ。

 

 いや、仮にダンジョンからの高ランクの魔物が現れたとしても、ルシデルシアが居る以上負ける事は無いが、単純に帰るのが遅くなってしまう。

 

 もう寄り道せず、真っ直ぐ帰りたいものだ。

 

 

 

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