なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第238話:帰って来たホロウスティア

 危惧していた事は何も起きず、例の森を越えてホロウスティアまで後少しという所まで来た。

 

 体験入団の時は全く気にしていなかったが、ホロウスティアから森へと続く道は途中で分岐があり、あの日は真っすぐではなくその分岐したルートで森へと進んでいた。

 

 あの森は北側に広がっているとは聞いていたが、俺が思っているよりも相当広いのかもしれない。

 

「ここまで帰って来たねー」

「はい。出る時はまだ暖かいと感じていましたが、随分と涼しくなりました」

 

 ミリーさんは荷台に寝っ転がり、小さくなっていく森を見ながら呟く。

 

 出る時はまだ暑い感じがしていた様な気がするが、日中でも随分と涼しく感じるようになった。

 

 出る時が夏の終わりならば、今は秋の真ん中を過ぎたくらいだろうか?

 

 野宿をするには少し寒いが、焚き火があれば割りと快適に感じる位だ。

 

 遅くても明日にはホロウスティアに着くが、安心感よりも若干不安が勝っている。

 

 そう、送られてくる神力のせいで。

 

 出る時よりも信徒が増えたという事だが、あの日ルシデルシアから送られてくる神力の様子を確認するように頼んだところ、微量だが日に日に増えていっているらしい。

 

 俺としては、あくまでもイノセンス教を形だけでも残してくれれば良かったのだが、スフィーリアは色々と頑張ってくれているようだ。

 

 嬉しくもあるのだが、急激に勢力が大きくなるのはとても困る。

 

 歴史が証明しているが、宗教の勢力が大きくなり過ぎれば、それに付随して沢山の問題が出てくる。

 

 おそらくホロウスティア全体で見れば、まだ一割にも満たない勢力だとは思うが、どうなっているのか今から不安だ。

 

 これからまだ数百年も生きる事となるし、名前が知れ渡れば常に宗教家らしくしていなければならなくなる。

 

 まあ帝国内に浸透するには、それこそ数十年単位で時間が掛かるだろうから大丈夫か?

 

「ホロウスティアに向かう人達って多いんですね……」

「それでもこっち方面は少ない方だけどね。まあダンジョンに向かうのもあるから、一概に全員が外から向かってるって訳じゃないけどね」

「ホロウスティアってあんな車が普通に走ってるんですね……」

 

 アオイとユウトはどちらも似たような事だが、やはりあの車には驚いたようだな。

 

 実質的にただのバスだし、何なら少し小さい分馬車よりも乗り心地が良い。

 

 ついでにこの馬車よりもかなり速い。

 

「魔法も技術も、ホロウスティアが一番進んでいるからね。馬を使わない分いつでもどこでも走れるし、微調整も出来る優れものだよ。燃費は悪いけど」

 

 最後だけはアオイ達に聞き取れないくらい小さな声だったが、ホロウスティアにあるものは大体が試作品であり、性能は良くてもそれ以外が駄目ってものが多い。

 

 魔導車もその内改良されていくだろうが、魔石の需要次第では燃費が悪いのが使われたりするかもな。

 

 あるいは他国に売りに出される可能性もあるか。

 

 もしかしたら戦争で使われる可能性もあるが、弱点がわかっている分相手にするのは楽だろうし、批難する良い材料にもなるだろう。

 

 まあ帝国に戦争を吹っ掛ける国なんてまず無いだろうけど。

 

「ホロウスティアと言えば、ダンジョンが沢山あると聞きますが、どれくらいあるのですか?」

「うーん。数十個あるのは確かだけど、正確には知らないね。増えたり減ったりするから」

 

 タリアの質問に起き上がりながらミリーさんは答え、爺臭い仕草で首の骨を鳴らす。

 

 増えたり減ったり、なんなら作ったりしてるからな……。

 

 ギルドならば正確な数を把握しているだろうし、ミリーさんならば潜入してちょちょいと調べれば知ることが出来るだろう。

 

 知る必要の無い知識なので、多分そんなことはしないだろうけど。

 

 俺としてもダンジョンに興味が無いわけではないが、体質的に入る事が出来ないので、興味を持たないようにしている。

 

「皆さん。ホロウスティアが見えてきましたよ」

 

 運転しているアーサーの声に惹かれ、アオイとユウト。それからマヤが顔を出す。

 

「あれが……」

「は、端が見えない」

「本当に広いのですね……」

 

 三人共驚いているのがよく分かる。

 

 日本だと北海道とかで似たような感じを味わう事が出来るが、ホロウスティアの場合は城壁が広がっているので、これはこれで圧巻というか、圧倒される風景だ。

 

 更にホロウスティアの城壁はこれだけ広いというのに、結界も使われているので、技術的にも優れている。

 

 そして見えて来たとは言っても、まだまだ距離があるので、途中でお昼休憩を挟むことになるだろう。

 

 ホロウスティアに入ってからも時間が掛かるし、北区から東区まで馬車で行かなければならない。

 

 転移装置が使えればあっという間だが、手続きやら何やらが面倒なので諦めるしかない。

 

「距離的に後二時間から三時間って所かな? 入る前に一度休憩を入れる?」

「そうですね。東区まで馬車で移動する事を考えれば、一度休憩を入れておいた方が良いと思います。中で食事をしたいですが、報告や時間の事もありますので、食事も済ませておいた方が良いと思います」

「そうだな。混雑具合にもよるが、教会に戻る頃には夕方になる可能性もある。その方が良いだろう」

 

 ライラも賛同してくれたので、門が見える位まで行ったら休憩を取る事になった。

 

 

 

 

 

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「あの……何をしているのですか?」

「うーん……嫌がらせ?」

 

 最後となる料理を作っていると、ミリーさんがホロウスティアに向かって風を起こし、アオイが控え目に何をしているのか聞いた。

 

 門番をしているのは赤翼騎士団であり、おそらく顔だけは知っている可能性がある。

 

 そしてその赤翼騎士団とミリーさんは少々因縁というか、繋がりがある。

 

 時間的にお昼位になるので、丁度お腹が空いてくる時間だろう。

 

 空きっ腹に飯の匂いは辛いものだろうな。

 

 ライラとユウトため息をついているが、俺も苦笑いをしたい気分だ。

 

 何でマヤの作ったカレー風のスパイスを使った料理をお願いされたのか疑問だったが、この嫌がらせをするためだったのだろう。

 

 カレーってかなり匂いがするからな……。

 

 そんなわけでほぼカレーなスープを作り、シラキリのパンと余っていた野菜で野菜炒めを作る。

 

 サラダでも良かったが、嫌がらせの関係で態々火を通している。

 

 温かい料理の方が気温的にも良いが、作るのが多少手間である。

 

 まあ良いんだけどさ……うん。

 

 ミリーさんの嫌がらせだが、門には門番以外にも通行人が居るため、二次被害を出している様に見える。

 

 街道からはそれなりに距離を取っているが、あからさまに俺達を見ている人達が多い。

 

 全員ホロウスティアに入った後、飯を食べに行きそうだな。

 

「いつ食べても、サレンさんの料理は美味しいですね……」

「ホロウスティアではあまり作る機会が無かったのですが、美味しい料理が作れてよかったです」

 

 出来上がった料理を食べていると、マヤがポツリと言葉を漏らす。

 

 廃教会には台所なんてものは無く、ライラ達が住んでいる小屋も台所の後はあるものの、器具は何も無い。

 

 ついでに外食の際の支払いはほとんど無いので、外食をした方が安上がりという理由もあり、ひな鳥の巣で新作の料理を研究する時以外では料理をすることが無かった。

 

 新しく建て直す際は厨房を組み込み、いつでも料理を出来るようにしておきたい。

 

 炊き出しとか、孤児についても考えないといけないからな。

 

 辛い物を食べた事で身体も温まり、テキパキと後片付けを終えて出発する。

 

 馬車内がカレー臭くなるが、マヤが消臭のお香を焚いているので、暫くの我慢だろう。

 

「……目的と人数を教えください」

 

 門まで来ると、門番が物凄く嫌そうな顔をしながらミリーさんに質問をする。

 

 他の街に比べてかなり緩いが、これも結界があるからこそだ。

 

「ギルドの依頼から帰ってきたのと、移住者が四人追加で、計九人だね。これ依頼書」

「……確認した。それと、魔法で匂いを送る行為をしないように」

「了解~」

「………………通ってよし」

 

 青筋を浮かべながらも職務を全うする姿は、流石帝国の騎士だと感じられる。

 

 普通に殴られても、文句を言えないだろうし。

 

 ホロウスティアは相変わらず賑わっているが、やはり神官服を着た人が大幅に減少しているように思える。

 

 途中で北区のギルドの前を通る時も、出る前はあれだけ道を塞いでいた勧誘の人達がいなくなっている。

 

 とは言っても大体半分くらいなので、元通りになった位だろう。

 

 マーズディアス教の勢力は大きな物だったが、潰れた所で新たな勢力が台頭するのがホロウスティアだ。

 

 三つの教国が主流なだけで、小さな宗教はそれこそ星の様にある訳だし。

 

「東区まで帰ってきましたね」

「はい。やっと家に帰れます」

 

 数時間掛け、東区に入る。

 

 家という名の廃教会まで後少しだ。

 

 

 

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