なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第240話:一時的な活動拠点

「ここだね。流石に国境で泊まった屋敷よりは小さいけど、まあ中身はそれなりのはずだよ」

 

 出て行った時と同じく窓から飛び降りて帰って来たミリーさんは、直ぐに馬車を走らせ、泊まる予定らしい家の前で停まった。

 

 泊まる家に停まる。

 

 …………いかんな。こんなしょうもないギャグで笑いそうになってしまった。

 

 やって来た家は屋敷以下ではあるが豪邸と呼べる程度には大きく、馬車置場や馬用の小屋も完備されている。

 

 内装については見た目はともかく、性能自体はこっちの方が上だろう。

 

 アオイとユウトは少し残念そうにしているが、中に入れば驚くはずだ。

 

 ただ、名目上マフィアでもあるアランさんから家を借りるのは、少し怖いものがある。

 

 ミリーさんが居る以上後々法外な金額を請求される事はないとは思うが、やはり最初のイメージか先行してしまう。

 

 鍵を開けて家に入ると、見た目通りそこそこ広いが、流石にこの人数では少し狭い。

 

 先に部屋割りを決めてから必要最低限の荷物を取り出し、リビングへと集まる。

 

「えー。少し予想外の事もあったけど、これで旅も終わりだね。それからは自由って奴だけど、マヤちゃん達はこれからどうする?」

 

 全員に飲み物を配り、お疲れ様会的なものが始まる。

 

 これから日常が戻る……と言いたいところだが、とりあえず教会の建築が終わらないことにはどうしようも無かったりする。

 

 予定としては帰ってきて直ぐに始める予定だったから構わないのだが、なんか思いの外足場の範囲が広かった様な気がする。

 

 そこまで大きな教会を作るつもりはないのだが…………明日しっかりと確認しよう。

 

 なんかもう手遅れな気もするが、図面の確認と内装についての確認。

 

 それから孤児院とか固定資産税についての確認もしないとか……。

 

 戦いが終わって平和にはなるが、やる事が尽きる事は無い。

 

 学園に関しても俺がシラキリの保護者となるので、入学が決まったら色々と準備をしなければならない。

 

 ギルドの方にも顔を出して宗教関係の状況を確認しないとだし、例の懺悔室もスフィーリアだけに頼むは忍びない。

 

 ……おかしいな。なるべく楽して生活をしたいのに、手続きやらが多いせいで、当分楽を出来る未来が見えてこない。

 

 アオイはともかく、マヤとタリアには手伝ってもらったほうが良さそうだな。

 

 ああ、後バッジの作成も残っているんだったな。

 

「サレンさんと共に、一から始めていこうと思います」

「私もあまり長くないのですが、マヤと共に頑張ろうと思います」

 

 予定通りなので、これについては問題ない。

 

 逆にこれでさよならと言われたら困る所だった。

 

「御二人とも、これから宜しくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 マヤと頭を下げ合い、ミリーさんは満足そうに頷く。

 

「問題なさそうだね。手続きやら何やらはまた今度話そうっか。それで、アオイちゃん達はどうする? どこか宿を借りて住んでも良いし、一旦サレンちゃんの所に下宿なんて事も出来るけど?」

「出来ればしばらくの間はサレンさんの所に居られたらと……あまりこの世界の事も都市の事も分かっていないので……」

「俺もです。それと、訓練もして貰えれば……」

 

 アオイ達も俺の予想していた通り、暫くは一緒に暮らす事になったか。

 

 このホロウスティアであれば世間知らずの転移者であっても生きていけるだろうが、折角助けたのだし、助けた分は働いてもらおう。

 

 ……あっ、良い事を閃いた。

 

「宜しければですが、ホロウスティアの学園に入ってみてはいかがですか? 世界の事を知るのは勿論。強くなることも可能かと」

「それは良い考えだね。折角シラキリちゃんと一緒に勉強をしてたんだし、しっかりと勉強すれば新学期に間に合うと思うよ」

 

 アオイとユウトは顔を見合わせて、少しだけ話し合ってから一緒に頷く。

 

「学園に行ってみようと思います」

「分かったよ。後で資料とかは貰ってくるから、勉強はシラキリちゃんに見て貰ってね」

「……はい」

「……わかりました」

 

 二人揃って少し気落ちするが、年下のシラキリに教えられるというのは、恥ずかしいものがあるのだろう。

 

 数字については元の世界の知識が使えるが、それ以外は役に立たない。

 

 そしてその役に立つ数字……算数や数学と言った知識さえ、シラキリの方が上だったりする。

 

 昔居た異世界の人間のせいだろうが、普通に方程式とかもあるし、建築にも流用されて強度計算とか比重とか諸々もある。

 

 勇者となった影響なのか、持ち前のセンスなのか、シラキリの記憶能力は凄まじく、電卓が無くても大抵の計算が出来る。

 

 残念ながら俺よりも頭が良い。

 

 なので、勉強について俺は一切関与しないと決めている。

 

「まあ方針も決まったし、今日はもう休もうか」

「そうですね。夕飯は残っている物で軽く料理をしようと思います」

「私も手伝います」

 

 シラキリを伴って台所に行き、夕飯の支度をする。

 

 何故か色々な調味料が用意されており、乾燥系の麺や肉も保管されている。

 

 いつから用意されていたのか分からないが、見た限り問題なく、シラキリに匂いを嗅いで貰ったが、腐っていないみたいだった。

 

折角なのでパスタを茹でて、昼の残り物のカレーにちょい足ししてカレーパスタを作る。

 

 折角借りた家をカレー臭くするのは気が引けるが、消臭用の魔導具が置かれているので問題ない。

 

 この魔導具があれば、キムチ鍋で匂いに困る事も無いが、残念ながら今の所キムチを見たことが無い。

 

 転生や転移でやって来たのは基本的に日本人と見て良いが、外国人も居た形跡がある。

 

 マッコリっぽい酒とか異世界だからって早々作れるものではないし。

 

 なのにキムチはない……解せぬ……。

 

 そんな事を考えている内にカレーパスタが作り終わり、シラキリが作ったサラダと一緒に出す。

 

「おっ、パスタかー。美味しそうだね」

「お昼の残りですが、パスタがあったのでパスタにしてみました」

 

 いつもの祈りを捧げてから食べるが、無難な味だ。

 

 ギリギリ中辛に届かない程度の甘口だが、唐辛子もあるので辛さの調節が出来る。

 

「サレンちゃんは明日どうするの?」

「スフィーリアさんに会うのと、教会の確認をしようかと。まさか帰ってくる前から工事が始まっているとは思わなかったので……」

「あれは驚いたねー」

「はい。後はドーガンさんに顔を出したり、ギルドで報告を聞いてこようと思います」

 

 念のためスフィーリアの護衛をお願いした、マイケルとオーレン達に帰って来た報告をするのと、襲撃が無かったか聞いておかなければならない。

 

 スフィーリアの様子を見た限り大丈夫だとは思うが、俺が居ない間にホロウスティアで何があったのか聞くついでだ。

 

「なるほどね。ライラちゃん達は……まあ聞かなくても良いか。あっ、馬車は返しちゃうから、明日出て行く前に荷物は降ろしといてね」

「分かりました」

 

 ライラとシラキリは武器の修理のためにドーガンの所に行かなければならないが、俺も行く予定なので、一緒に行くことになるんだろう。

 

「私は明日一日居ないけど、何かあればシラキリちゃんを走らせて。今なら私を見つけられるでしょ?」

「任せて下さい!」

 

 えっへんと胸を張るシラキリだが、それって仕事モードのミリーさんと同程度の力量を持っているって事だよな……。

 

 既に手遅れだろうが、ディアナには早く目覚めて貰って、シラキリを勇者から解放しないとな……。

 

「マヤちゃん達は明日一日休みって感じかな?」

「その方が良いと思います。手続等がありますが、明日は用事の方を先に済ませておきたいので」

 

 案内や観光。それからギルドの登録とかしなければならないが、流石に明日は自分の用事を全て終わらせてしまいたい。

 

 ホロウスティアならアオイやマヤの事を知っている人はまずいないのと、犯罪率は日本よりも多分低いので、明日は自由にしても問題ないのだ。

 

「あの、出歩いても大丈夫ですか?」

「はい。余程のことが無ければ問題ありませんし、警邏の見回りもあるので、明日は自由にしていただいて構いません。お金も置いておくので、良ければ外でご飯を食べてみて下さい」

「分かりました」

 

 お金で思い出したけど、そう言えば例のピアノがあったな。

 

 ヴァイオリンも新調して、ピアノも新しくなったので、誰かとデュオをしてみていが、このヴァイオリンはおそらく俺にしか弾けない。

 

 だれかがピアノを弾いてくれれば良いが……ライラかシラキリに仕込んでみるとするか。

 

 出来る事ならミリーさんが一番だが、あの人は基本的に聞き専だからな……気持ちは分かるけど。

 

 とりあえず明日はいつもの面子でお出かけって訳だ。

 

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