なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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これにて最終話となります。長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。


第241話:プロローグ

 夕飯の片づけを終え、シャワーを浴びて寝る前に、ふと日記を開く。

 

 王国や教国での長い旅の間も書いていたが、見返すことはしてこなかった。

 

 毎日書いているわけではないが、既に二冊目に入ってしまっている。

 

『これで本当に一段落だな』

 

(そうだな。ようやく気ままに生きることが出来る)

 

 日記の最初の方は異世界についての考察や、愚痴で埋まっている。

 

 精神的な不調もあったのだろうが、やはり知らない場所というのはストレスとなっていたみたいだ。

 

『気まま……か。自由とは良いものだが、人でいたいならば枷も必要だ。貴様は問題ないだろうがな』

 

(あー、ミリーさんが居るからな。そう言えば、俺が寿命で死んだらルシデルシア達はどうするんだ?)

 

『何百年先だと思っている…………そうだな。魂を漂白し、新たな世界に旅立つのも一興だろう。消滅するのも余としてはありだが、ディアナが煩いだろうからな』

 

 転生までの時間を稼ぐために俺に憑依したのに、まさかの連れ戻された訳だからな。

 

 だが……。

 

(魂が混ざっているんだが、分離できるのか?)

 

『貴様が寿命まで生きればな。まあ、やろうとすれば三人一緒に転生も出来ようが、先の事を今から考えても仕方あるまい』

 

 ……それもそうだな。

 

 先の事はシラキリとライラと別れて(死別)から考えれば良い。

 

 親って訳ではないが、拾ってしまった手前最後まで面倒を見るのが大人って奴だ。

 

 それにしても、混ざってどうしようもないと言っていたが、よくよく考えればルシデルシアの言い分も理解できる。

 

 ルシデルシア達の格は確かに高いが、俺は本当にただの一般人だ。

 

 混じったとはいえ、先に限界が来るのは俺だけなので、そうなれば分離も出来るって事だろう。

 

 詳しい原理は分からないが、出来ると言ってるから出来るのだろう。

 

 将来の事をどうするか今考える意味は無いが、死後どうするかもその内考えよう。

 

 そこそこの社畜だったせいか、どうしても予定を立ててからではないと気が済まないのだが、気を張り詰めていては先に心が駄目になってしまう。

 

 ……いや、大丈夫か。

 

(そうだな。しかし、こうやって見返していると、一年も経っていないのに、波乱万丈な人生だな)

 

『怠惰に過ごすよりは良いだろう。時間とは毒であり、過ぎれば過ぎる程効いてくる厄介なものだ』

 

(経験者は語るって奴だな。長くても寿命が百年の人間とは比べられん)

 

 軽口を返しながら、読み終わった日記の最後に、今日の分を書いてから閉じる。

 

 長い内容ではなく、ホロウスティアに帰って来たことと、教会へ今日帰れなかった事を書いただけだ。

 

『飽きが来てからは地獄だからな。まあ、もう飽きる事は無さそうだがな。クックック』

 

 魔王というか、邪神らしい笑い声だな……。

 

 今日はゆっくりと寝るといきたいところだが、折角帰ってきた事だしピアノを弾きたい気分だ。

 

 基本的にルシデルシアに呼び出されない限り夢の中で演奏をする事は無いが、たまには自分から演奏してみるのも悪くない。

 

 なんて考えながら布団に入ろうとすると、扉を叩く音がした。

 

「どうぞ」

「やあサレンちゃん。帰国のお祝いに一杯どう?」

 

 入って来たのは、お酒の瓶を二本持ったミリーさんだった。

 

 片方はおそらくミードであり、もう片方はワインの銘柄だ。

 

 ミリーさんの事だしレッドドライとか持ってきそうだったが……丁度良いし、あれをプレゼントしておくとしよう。

 

「頂きます。どうぞ中へ。渡したい物があるので、座ってお待ちください」

「了解」

 

 拡張鞄からこっそりと食べるために作っておいたおつまみと、カットグラスの入った木箱を取り出して、ミリーさんの対面に座る。

 

 少し狭いが部屋は一人一部屋あり、テーブルも完備している。

 

 流石に部屋の中にシャワーやコンロは無いが、三人位までなら窮屈に感じない位の広さはある。

 

「おつまみどうもね。その箱は?」

「ミリーさんへのプレゼントになります。帰りに立ちよったお店で買いました。ミードを飲むのに丁度良いと思いまして」

「へー」

 

 木箱の封を解いたミリーさんは、中に入っていたカットグラスを取り出して、ライラと同じ様に目を見開く。

 

「これはまた随分と凄いね……」

「たまたまですが、安く譲って頂きまして。色々と終わった記念にどうぞ」

「いや……えっ、本当に良いの?」

 

 これまたライラと同じ反応だが、買ってしまった以上勿体ないし、転売なんてもっての他だ。

 

 あの露天の人に悪いし、恩を仇で返すようなことはしたくない。

 

「はい。ミリーさんのために買ったものですので」

「……はぁー。本当にサレンちゃんはずるいなー。もっと早くサレンちゃんに会えてれば良かったよ」

 

 酒を飲む前から顔を赤くするミリーさんだが、折角の一杯目はお互いに注ぎ合う事にした。

 

 それから乾杯をして、ワインを飲む。

 

「いやー。こうやって二人でゆっくりとお酒を飲めるなんて、人生分からないものだねー」

「そうですね。物語で言えば、これにて一件落着と言ったところですね」

「確かにその通りだね。犠牲も無いし、得るものは得たし。私達は誰も不幸にならない結果だったよ」

 

 つまみとして出した炒り豆を食べながら、ゆっくりと酒を楽しむ。

 

 ここ最近はずっと焚火を見ながらだったか、普通に飲むのは少し新鮮に感じる。

 

「明日は仕事の関係ですか?」

「そうだね報告書は出したけど、確認とかあるし、ホロウスティアについてもどう変わったか情報収集をしておかないとだからね。私一人抜けただけで、結構ガタガタみたいでさ」

 

 チャライというか、軽い感じのミリーさんだが、その仕事ぶりはかなりのものだからな……。

 

 今回の旅も馬車の手配から始まり、国境を越える方法や宿の手配もしてくれていた。

 

 なんなら手放すに手放せない拡張鞄もミリーさんが用意してくれたのだ。

 

 それだけミリーさんは本気であり、俺達の事を信用してくれていたのだろう。

 

「まあ私は少しの間忙しくなるけど、基本的に仕事は趣味になるから、私の部屋の用意もよろしくね」

「部屋は多めに作るようにお願いする予定なので、大丈夫だと思います」

 

 俺が住んでいた教会は教会としての機能だけに特化させ、居住機能はライラ達が住んでいた孤児院側に移す予定だが、最低限は教会側に残す予定だ。

 

 とりあえず俺用の私室兼寝室と、孤児院側に泊める事が出来ない人用の部屋を二つほど作る位か?

 

 後は台所と出来れば風呂も欲しいが、そこは要相談だな。

 

 折角ならばと金を掛けるのも良いかもしれないが、立地を考えればなるべく質素な方が良いだろう。

 

 イノセンス教のホロウスティア支部となるので、本部というわけではない。

 

 本部がある訳ではないが、いつかは本部を作らなければならない。

 

 ミリーさんが味方に居るので、支部の方が最初出来た事を隠すことは出来るだろうが、いっその事ここが本部だとしてしまった方が良いかもしれない。

 

 五十年も経てば人の認識なんてあやふやになるだろうし。

 

「それは良かったよ。ずっと宿暮らしだと結構お金が掛かるからねー」

「ミリーさんはお友達ですから、この程度は問題ありません。ライラ達と一緒になるので、あまりふらふらとされては困りますが……」

「ライラちゃんもシラキリも私に当たりが強いからね。折角色々と鍛えて上げたのに、お姉ちゃんは悲しいよ」

 

 ミードを飲みながらミリーさんはよよよと嘘泣きをする。

 

 実質的に身内となるので、俺を除いた場合一番年上はミリーさんとなる。

 

 姉と名乗るのは分からなくもないが、年齢からすれば姉ではなくおばあちゃんだ。

 

 あれだな、ロリババアって奴だ。

 

 ライラ達からの需要は無いが、世間一般からは需要がありそうだ。

 

 ――つまりアドニスはババア専だった?

 

 ……考えるのは止めておこう。

 

「丁度反抗期でもおかしくない年齢ですから。大人になれば、きっとミリーさんの好感度も上がると思います」

「………………多分上がらないだろうね」

 

 うん、俺も変わらないと思う。

 

 その内また正座させられるだろうし。

 

「サレンちゃんはどれ位ホロウスティアに居るつもりなの?」

「そうですね……とりあえずシラキリとライラが大人になるまでですね。その後は旅に出ようかと。」

「へー。私もついて行って良い?」

 

 ミリーさんとか……居れば楽になるだろうが、シスターとしての仮面を被っていなければならない。

 

 まあもう板についてしまっているので、完全にこれが自然体であるのだが…………まあ居れば便利だし、別に良いか。

 

 流石にライラとシラキリには独り立ちをしてもらいたいので駄目だが、ミリーさんなら問題ない。

 

「私からお願いしようと思っていたので、ぜひお願いします」

「流石サレンちゃんだね。分かってる~」

 

 軽く酔っているのか、いつもよりも柔らかい笑顔をミリーさんは浮かべる。

 

 それからお互いの酒が無くなるまでゆっくりと酒を飲み、夜も更けてきたところでお開きとなる。

 

「それじゃあまたね。おやすみ」

「――はい、おやすみなさい」

 

 ミリーさんは部屋を出る時に俺の頬へキスをし、更に顔を赤くしてから去っていた。

 

 やれやれ、まったく可愛らしい人だ。

 

 

 




平素よりお読みいただきありがとうございます。

今日を持ちましてなんちゃってシスターは神を騙るは完結となります。

作品としてはこれからホロウスティアでの日常が始まるという所ですが、人気が上がらないだろうという事で、第一部完となります。

構想としてはシラキリの学園編やサレンの宗教拡大編。ライラの就職やミリーの甘い生活などあったのですが、この次の止め時となると文字数が倍プッシュとなるので、切りよくって感じですね。

続きに関しましては、魔法少女がいくの時とは違い、書いても番外編位になると思います。こんな話を書いて欲しいとかありましたら、コメントを頂けると幸いです。

本作品はシスター×TSが無かったからと書き始めたものですが、それなりにでも楽しんで頂けたのならば幸いです。

個人的な思い出としては、神を騙るとタイトルにあるのに、身体に神を居候させているのはどうかな~なんて思ってたりしました。

まあ基本的にその場で思いついた事を書いているので、ご愛嬌という事で。

また、一応ヒロインであったシラキリの名前ですが、多分分かる人には分かると思いますが、あの二人から取っています。

最後にですが、既に四作品目の構想があり、処女作とは違うTS魔法少女モノを考えています。

タイトルも今の所既出は無いので、書くまでに同じタイトルの作品が出ない事を祈っています。


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