なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第35話:不運な冒険者

 俺の知っている懺悔とは違い、何故かお悩み相談室だった気がするが、十人程の懺悔を聞き、終わりの時間となった。

 

 ちなみに給料は一万ダリアだった。

 

 懺悔室が終わってもまだミリーさん達は帰ってきておらず、貰った給料でジュースを買い、椅子に座ってロビーを眺める。

 

 ベルダさんへの支払いまで十日。その後に役所へ行って……ああ、今日はこの後ひな鳥の巣に行くんだったな。

 

 ついでに家賃の支払いも、忘れないようにしておかないと。

 

 裏社会の人間に借りを作るのは不味いからな。

 

「すみません……」

 

 こんな所で酒を飲むわけにもいかず、リンゴジュースっぽいのを飲んでいると、後ろから声を掛けられた。

 

「はい。何でしょうか?」

 

 そこに居たのは、 茶髪のじょ……中性的な男だった。

 コートの様なものを着ており、ベルトに数本のナイフが装備されている。

 

 俺の顔を見た瞬間に顔色を悪くしたが、逃げられてはいないのでセーフである。

 

「あ、あの、あの、あのの……」

 

 あっ、アウトかもしれない。

 

「落ち着いて下さい。私に何か用でしょうか?」

「は、はい! 僕はオーレンって言います。マチルダさんの紹介で声を掛けたんですが、今は大丈夫ですか?」

 

 マチルダさんからね……。

 

 受付に居るマチルダさんの方を見ると、手を振っていた。

 

 まあ待っている間は暇だし、少しくらいなら良いか。

 

「大丈夫ですよ。お座りください」

「ありがとうございます」

 

 身長は俺よりも低く、コートのせいで身体の線が分かり難いが、結構細そうだ。

 そう言えば、俺って女性にしては背が高い方だよな。

 

 多分百七十から百七十五位はあるだろう。

 

 脱線はこの位にしておいて、話を聞いてやるとするか。

 

「それで、どのような要件でしょうか?」 

「はい……どこから……いえ、初めからお話ししますね。始まりは昨日、パーティーでダンジョンに行った時のことでした」

 

 中身はいいから、結論だけさっさと話せといいたいが、取り敢えず全部聞いてやった。

 

 このオーレン君は幼馴染み二人を含めた三人でパーティーを組んでいる。

 全員Dランクであり、コツコツとお金を稼いでいる。

 

 年齢は全員十五歳で、ホロウスティア内にある学園に通っているとか。

 

 今更だが、俗にいう一ヶ月は五十日であり、一週間は十日だそうだ。

 七つの月があり、一年が三百五十日となる。

 月の呼び名は、シラキリが言っていた歩ノ月とかであり、俺が知っているものとは違う。

 

 そこら辺については、追々覚えていけば良いだろう。

 

 気を取り直して、事件が起きたのは、いつも通りダンジョンに潜った時だった。

 

 少し纏まったお金が欲しかった三人は、定期的に行っているダンジョンではなく、墓場の掟(リビングルール)と呼ばれるダンジョンに足を運んだ。

 

 墓場の掟は名前の通りアンデッド系が多いダンジョンで、浅い場所ではボーン系の魔物しか出てこないので、鼻に優しい。

 

 オーレンのパーティーはオーレンが錬金術師で、残りが魔法戦士と神官となる。

 

 アンデッドなので光や火に弱く、相性も良かった。

 

 お金を稼ぐため自分達が戦えるギリギリの所で戦い、特に負傷することなく帰ろうとした…………その時だった。

 

 不幸なことに、戦っていた魔物がダンジョンの罠に引っ掛かり、酸性の毒物が噴き出してきたのだ。

 

 魔法戦士の幼馴染みがオーレン達を庇ったので、被害は一人で済んだが、魔法戦士の顔は爛れ、見るも無惨な顔となってしまった。

 

 怪我をしたなら治せば良い。

 

 幸いオーレンはポーションが作れ、もう一人も神官なのだ。

 

 それで終わるはずだったのだか、事態は思わぬ方向に転ぶこととなる。

 

 なんと、魔法戦士が浴びた酸には呪いが込められていたのだ。

 更に酸による怪我はかなり酷く、オーレンの作れるポーションや神官では元通りに治すことが出来ない。

 

 直ぐにダンジョンから帰還した三人は、神官の少女が所属する教会へと向かった。

 

 更なる絶望を、突き付けられるとは知らずに。

 

 魔法戦士を治す場合の治療費は、四十万になると言われたのだ。

 

 どうにかお願いしますとオーレン達は頼むが、教会側は首を横に振るだけだった。

 

 一応治療をしても良いが、一週間以内に払えなければ犯罪奴隷として売ると提案もされた。

 

 オーレンはその提案を呑もうとしたが、魔法戦士が断った。

 

 大怪我ではあるが、死ぬわけではない。

 

 だから大丈夫だと言ったのだ。

 

 掛けられた呪いについてだが、復元の呪いと言われるもので、治しても怪我をしていた状態に戻るのだ。

 

 しかも戻る度に怪我をした時の痛みが走り、かと言って治さずに放置していても常に痛みが走る。 

  

 何とか治せる手段はないかと相談に来たところ、俺を紹介されたのだ。

 

 因みにオーレンが払えるのは、最大で五万ダリアだそうだ。

 

 基本的に、大手の教会は割引なんて事はしない。

 信徒だろうが一般人だろうが、同じ喜捨を巻き上げる。

 

 勿論表向きって言葉が付くが、まあいいだろう。

 

 さて魔法戦士の呪いと怪我だが、俺なら問題なく治すことが出来るだろう。 

 

 だからと言って五万で治すのは、悪い前例となる恐れがある。

 

 一応相手によって金額を決めると書いておいたが、今回はそれでは駄目だと、俺の中の何かが言っている。

 

 何を対価にしようか……。

 

「なるほど。話は分かりました。私なら治すことも、解呪することも出来ます。大きな宗教ではないので、喜捨についても相談に乗ることは出来ます」

「本当ですか!」

「ですが」

 

 オーレンの言葉をわざと割り込む。

 そしてじっと見つめる。

 

「相応の対価を払っていただきます。良いですね?」

「――はい。治していただけるなら、僕は何でもします」

 

 女っぽいのに、良い面構えだ。

 

 こいつが最初から俺に話を持ってきたならもうちょいやりようがあったが、他の宗教にも話している様なので、安い喜捨だけで治すわけにはいかない。

 

 間違いなく他から妬みや、不興を買うことになる。

 

「そうですか。明日の朝。またギルドで会いましょう。あなたにレイネシアナ様のお導きがありますように」

 

 タイミングを見計らったかのようにして、ミリーさん達が帰ってきた。

 

 さてと、夕飯を食べに行こう。

 

 

 

 

 

 

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 戻ってきたミリーさん達と合流し、互いに何をしていたのかを話しながら、ひな鳥の巣へと向かう。

 

 今回ミリーさん達は武器を強化するのに必要な魔石を集めに行っていた。

 

 数は少しで良いが、必要な魔石は最低でもCランクだ。

 

 更に突発的なため、いくら優先的にダンジョンに入れると言っても限度がある。

 

 今日初めて知ったが、ダンジョンは予約制となっているそうだ。

 

 ダンジョンに入る量をしっかりと管理する事により、冒険者の帰還率を上げたり、ダンジョン内の冒険者を飽和させないようにしている。

 

 そう言えばネグロさんがちょこっと話していた気がするが、完全に忘れてしまっていた。

 

 因みに、ダンジョンをここまで厳しく管理しているのはホロウスティア位らしい。

 

 他は出入り位しか見ていないそうだ。

 

 そして俺の話だが……。

 

墓場の掟(リビングルール)ねー。あそこの魔物はちゃんと対策をしておくと楽だけど、厄介なトラップが有ったりするんだよねー」

「そうなんですか?」

「うん。アンデッドって基本的に闇の属性関係なんだけど、あそこのダンジョンって闇属性系じゃなくて、呪術系のダンジョンなんだよ。折角だし、ダンジョンの成り立ちについて少し話して上げよう」

 

 得意げにミリーさんは笑い、一度「コホン」と咳払いをしてから話し出した。 

 

 ダンジョンとは魔力溜まりに、ダンジョンコアと呼ばれる魔石が出来る事によって生まれる。

 ここまでは教えてもらった事だが、これには続きがある。

 

 ダンジョンコアには魔法と同じく、属性的な物がある。

 

 正確には属性と言うより系統と表す事が多いのだが、まだ研究している分野のため、呼び方が正式に定まっていない。

 

 例えば火の関係でも、火山系統だったり、マグマ系統だったり、少し呼び方が異なるモノの場合がある。

 

 似たようなダンジョンでも浅い場所ならともかく、深い場所に行けば行くほどダンジョンの系統の影響が出てくるので、ちゃんと覚えておいた方が良いそうだ。

 

 なので、闇系統のダンジョンなら光の魔法さえ用意しておけば何とかなるが、呪術となると変わってくる。

 

 呪いは毒とは違い、治すには神官による治療が必要となる。

 しかし神官が居るからと油断していると、強い呪いを受けてしまい、取り返しのつかない結果となる場合がある。

 

 オーレン達にとって運が悪かったのは、連れて行った神官では治す事の出来ない、強い呪いを受けてしまった事だろう。

 

「酸でどれ位酷い怪我をしたか分からないけど、四十万は妥当かな。で、どうするつもり?」

「はい。ドーレンさんがシラキリやライラと結んだ契約を、マネようと思います」

「なるほどね。選ぶのはサレンちゃんだけど、あまり他の教会を挑発するようなことはしないようにね」

 

 ついでに魔法が使えない事と、マチルダさんが話した事を話した。

 

 シラキリは特に反応しなかったが、ライラとミリーは首を傾げた。

 

「歳だけ取っているエルフの言葉だし、あながち間違いじゃないのかな?」

「あれだけの怪力と祈りが出来るのならば、ある意味仕方のない事なのかもしれんな」

 

 異世界なのに普通の魔法が使えないのはやはり落ち込んでしまうが、気持ちを切り替えているので問題ない。

 

 そんな事を話していると馬車は止まり、目的地に着いた。

 

 後少し歩けば、ひな鳥の巣に着く。

 

 時間的に言えば、既に日は沈んで夕飯を食べるには少し遅い時間だろう。

 

 酒場ではないひな鳥の巣ならば、ピークも過ぎているはずだ。

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