おじさん、ファンタジーはもうこりごりなんだけど   作:ピンク髪大好きニキ

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更新遅れてすまんな……


10話「馴染みの顔を見るのはやっぱりいいな、と思うおじさん」

 

 

 

次の日、先生と一緒にアビドスに直接転移……をするのではなくてアビドスにある転移用の拠点から徒歩で学校へと向かっていた。

 

なんでわざわざそんなことをするのかと言うと……単に、先生が道を覚えたいからだ。 まぁ遭難したんだししゃーない。 あの後シャーレに戻ってセリナにチクったら鬼のような形相してたもんな、俺でもセリナ怒らせないもん。

 

 

”アロナ、道は記録出来てる?”

 

『ばっちりです! カナタさんが用意してくれたドローンも用いて上空からも逐次撮影しています!』

 

「これを機に主要な個所は更新しておいた方がいいだろ、ただでさえ何年アビドス方面の地図が更新されてないって話だし」

 

 

アロナや先生とそんな話をしながら歩いていると、ふと前方に人影を見つけた。 アレは……セリカか。

 

 

「よぉ、猫耳ちゃん」

 

「セリカよ!! 昨日名前教えたのに何で猫耳ちゃん何て呼ぶのよ!」

 

「歳だからな、おじさんは人の名前を覚えるのが苦手なんだ」

 

「……」

 

「あれ、何も言わないんだな」

 

「いや、その……」

 

 

てっきり何か言い返してくるもんだと思っていたら急に黙り込んだセリカ。 一体何事と先生も不思議そうに様子を窺っていると、セリカは複雑そうな表情で口を開く。

 

 

「……その、何かホシノ先輩みたいだなって」

 

「ホシノぉ? そりゃまた一体どうして」

 

「ホシノ先輩も自分の事をおじさんだとかもう歳だねぇなんて口癖みたいに言ってるから」

 

「ふーん……って、何だよ先生そんな顔して」

 

 

隣にいた先生がなんかニマニマと言うような顔でこちらを見ていた。 口には出さないけどその顔まあまあキモイぞ?

 

 

”いや、ホシノは誰に似たのかなぁって思って”

 

「普通にユメだろ」

 

「でも口癖はアンタみたいだけど」

 

「まぁ、おじさん呼びは確かに俺かもだけど……」

 

”憧れとか、気になるものを真似したがるのはよくある話だよ”

 

「こんなおじさんを真似るってのはどうなんだ」

 

 

いやまぁ、理由は知ってるけどね? 自分から言ったら自意識過剰っぽく見えちゃうしなにより年齢が離れてるから事案みたく見えてキツイのよ。

 

 

「それはそうと、今から学校か?」

 

「生憎と今日は自由登校日だから行くかどうかは私の自由なの! ……昨日の話もあるし、午前は行くけど午後は帰るわ」

 

”何か用事でも?”

 

「先生に逐一報告しなきゃいけない決まりでもあるわけ? そんなこと言ってる暇があるならさっさと学校に行けば?」

 

「コイツ午後からバイトだってよ」

 

「何で知ってるのよ!? ストーカー!?」

 

「心を読みました」

 

 

視たら『本当は朝からだったのに大将に頭下げて午後からにしてもらったんだから……もう、なんでこんな大人に』って出たしな。 でもセリカは信じてないようでこっちを睨みつけている。

 

 

「何それ、中二病?」

 

「こんな歳にもなって中二病なんてダメ大人じゃない!」

 

「ッ!!???」

 

「何か変なことを言ったか?」

 

「分かった、心読めるって信じるから!! というか勝手に覗くなんて変態じゃない!」

 

「論より証拠だろ、謝るけどもさ」

 

 

セリカはなおも鼻息荒くこちらを見ていたが……やがてふんっと可愛らしく鼻を鳴らして歩いて行ってしまう。 よし、ここは……

 

 

「先生、転移で先に学校に行こう」

 

”え、セリカも一緒じゃなくていいの?”

 

「置いて行ったはずの先生たちを校舎に転移させて、セリカを怖がらせましょう!」

 

”何処かで聞いたフレーズだな……”

 

 

未来ではコレが流行るんだろ? どうせ寿命短いだろうけど。

 

 

 

────────

 

 

 

「さーて、昨日の話の続きと行きましょうか」

 

「………」

 

「セリカちゃん、どうしたんですかそんな渋い顔をして」

 

「……何でもない」

 

 

ふふ、怖かろう。 自分が置いて行ったはずの俺達がお前より先に校舎前で「やぁ☆」って言ってくるのは。 転移できるの知ってるからわざわざ転移を使ってまでそれがやりたかったのかって引いてるんだろう。

 

 

「さて、まず決めるのは……司会進行役だな」

 

「カナタさんしかいないのでは???」

 

「知ってた。 じゃあ本題入ります。 まずはみんなで共通して知っておかなければならないアビドスの借金についてだな」

 

”借金? 借金があるのかな?”

 

「あるんだなこれが。 ちなみに今の時点でどれくらい?」

 

「あ、はい……今の時点で7億2318万円です」

 

「昔は9億くらいあって、月々の利子の返済で手いっぱいだったんだけどね。 そこはカナタさんに感謝だよ」

 

”カナタ、何かやってるの?”

 

「あぁ、うん。 ユメをお飾り代表にした会社を建ててな……そこの儲けで返済してる」

 

「平均で月々3000万円前後の返済ですね。 本当にありがとうございます」

 

 

先生が驚いたような顔をしてこっちを見てくる。 口には出してないけど「何かヤバいことしてないよね」ってのが心を視なくても聞こえてきそうだ。

 

 

「先に答えとくとちゃんと合法だぞ? 製薬会社だ」

 

”製薬……?”

 

「アビドスの土地を買い取って、そこに薬草とかその他諸々植えてるんだ。 で、それをポーションとかに加工して売り出してる」

 

「不思議ですよね、飲んだり振りかけたりするだけで怪我が治るんですから」

 

「ファンタジーアイテムだからな、そりゃそうよ」

 

”ポーション! ゲーム定番のアレだね”

 

 

そう、昔見つけた土地が丁度アビドスの端の部分にあったのでそこの権利を正式に購入して、きちんとした建物や設備も整えた。 後は働いてくれそうな不良生徒を適当に雇って、その一番上にユメをぶち込んだ……不良生徒は安定した収入が入る上に真っ当な生活が出来る、ユメはお飾り(と言っても交渉や調合など一通り出来るからお飾りとは言えなくなってきたが)でも収入が出来てアビドスの借金を返せる。

 

アビドスは借金を返せるし俺は働かなくても金が入る、何せ薬草類は腐るほど持ってるからな。 誰も損をしない楽な仕事である。

 

 

「そんなわけで、アビドスには借金があるというのは分かったな?」

 

”分かったよ。 でも、何でそんな大金になったのかな?”

 

「それはこの土地の気候が関係してるからかなぁ」

 

 

先生の疑問に、俺じゃなくホシノが答える。

 

 

「ここって砂漠でしょ? 昔から砂嵐とかが酷かったんだけど……」

 

「厳密に言えば、数十年前の大きな砂嵐の影響で至る所が砂に埋もれてしまって、それをどうにかするために多額の資金を必要としたんです」

 

「で、こんな片田舎にお金を貸してくれる所がなかった結果、悪徳金融会社に……」

 

「砂嵐も毎年巨大な規模で発生して、それをどうにかするために借金、そしてまた砂嵐……その繰り返しをしてたら、驚くくらい借金が膨れ上がってしまった」

 

 

そんなところです、とアヤネが区切って話が終わる。 先生は難しい顔をしながら眉を寄せ、セリカは悔しそうな顔で俯いている。

 

 

「まあ、そういう背景があったからセリカは俺や先生に当たりが強いってわけだな。 クソみてぇな大人に搾取されるしアビドス以外ほとんど話を聞いてくれなかったんだ、気持ちは分かる」

 

”そう、だね……ごめんね、セリカ”

 

「……別に、先生が謝る必要ないでしょ」

 

「いいや、ある。 いい年して子供から搾取しようだなんて腐った性根の大人は、これまた同じ大人がどうにかするべきなんだよ本来は」

 

”カナタの言う通り、大人は自分の行動に責任を持たなきゃいけない。 ……と言っても、私には悪徳とはいえ会社として正式に登録されているのであれば、要求できることは少ないだろうけども”

 

「今から壊しに行くか? 範囲攻撃は苦手だけど」

 

”待って待って待って、流石に洒落にならないから”

 

 

 

軽い冗談で場を解しつつ、もう一つある問題について話していく。

 

 

「さて、次の話に移ろうか。 昨日のヘルメット団の一件と、カイザーに関してだな」

 

”えっと、昨日はヘルメット団の不自然な行動については話したよね”

 

「学校の占拠が目的なら夜間にすればいい」

 

「それと装備品が新しく資金が潤沢なのが変」

 

「最後にその装備品の大本がカイザーだった、ってところですね♧」

 

 

シロコ、セリカ、ノノミの順番で昨日挙げた不審点を話していく。 改めて聞くと本当に分からない、何が起こっているのか? きちんと話し合ってみようって訳だな。

 

 

「まあ、ヘルメット団の目的が占拠じゃないってのは当たってるだろ。 重要なのは借金してるアビドスを、カイザーが潰そうとしてる理由だな」

 

「カイザーが本当に関わっていたらの話だけどね」

 

「十中八九間違いないと思うぞ、じゃなかったら何処から資金援助されてるんだって訳だし。 わざわざアビドスを潰せ、資金援助はしてやるってもの好きな奴が他にいるか?」

 

「アビドスの関係者を考えるとカイザー以外ないですけど……」

 

「個人的な恨みだとしたらお金をかけすぎだしね。 そもそも私達にそんな心当たりがない」

 

 

みんなが思い思いの事を口に出して思案している中、俺はふと頭に何かがよぎった気がした。 何と言うか、大事なことを忘れているという感覚に近いだろう。

 

……何か見落としている? 一体何だ? この感覚は……もしかすると

 

 

「────アビドス校舎が、目的じゃない?」

 

「……どういうこと?」

 

「いや、すまん。 俺の直感だ」

 

「直感って……そんな曖昧な事で」

 

「待って、セリカちゃん。 普通ならそう言いたくなるけどカナタさんのは……」

 

「私の覚えてる範囲でも、外れたためしがないんだよねぇ」

 

「ちょっと……冗談でしょ?」

 

 

否定したくなるセリカだが、自分より長く俺の事を見ているホシノとユメの発言の為かみるみる顔が強張っていく。 セリカ以外もだ、ノノミとシロコも二人よりは短いが、俺の直感の事は知っているからな。

 

 

”校舎じゃないとしたら、何かな?”

 

「分からない。 ……でも、何かを見落としてるって直感が働いてる。 目的は別、のはずなんだが」

 

「その肝心の別の目的が分からない、ってことだね」

 

「じゃあ結局何も変わらないじゃない」

 

「そうだな。 でも他の可能性が高いって事が分かったってだけ収穫はあった。 ならまだ来るであろうヘルメット団を〆て情報を抜き出すしかないだろ」

 

「また来るでしょうか?」

 

「ほぼ間違いなく。 何せ相手は物資が枯渇するまで襲って来たんだ……今回のがまぐれだと思って、更に投入してもおかしくない」

 

”それに、ここまでやってるのに失敗したからって引くとは思えない、ってところかな”

 

「ああ、だから警戒は怠らない方がいいと思う」

 

 

俺と先生の言葉に気を引き締める対策委員会の面子。 背後関係がどうあれ、自分たちの通う学校を奪わせやしないと燃えているんだろう。

 

俺だってそうだ、少なからず思い入れのある校舎に仲のいい生徒。 子供から搾取して贅沢の限りを……なんて奴らは、異世界でも嫌になるほど見て来た。

 

思い通りになんてさせるかよ、そうじゃなきゃ……顔向けできないからな。

 

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