おじさん、ファンタジーはもうこりごりなんだけど 作:ピンク髪大好きニキ
厳密に言えば小説書いてる知り合い? 友達? マブダチ? に特定されたんでプロフとか色々弄りましたが名前は今のが気に入ったんでそのままです
ほんまごめん、正直この小説見てもらうよりpixivに投稿してるブルアカまとめSS読まれるほうが嬉しいまである
物部カナタからあうとろーちゃんと呼ばれている彼女──陸八魔アルにとって、カナタと言う人物は『カッコいい人』の一言で説明できるだろう。
初めて会ったのはアルが便利屋を始め僅かながら依頼をこなし始めていた時の事、その日アル達は依頼こそ達成したものの不良生徒に難癖をつけられて襲撃を受け……ブラックマーケット内で包囲された、まさにそんな時だった。
「なぁ。 ちょーっとその襲撃、待ってくれない?」
まるで今散歩中ですとでもいうくらい軽い足取りでアル達と不良生徒の間に割り込んで──否、空から降り立ってきた時は一体何事かと思ったが、アル達を背に不良生徒へと交渉を持ち掛けていた。 だがブラックマーケットにいるような不良生徒がそんな一言で止まるはずがない。 それどころか件の人物はキヴォトスでも見かけない同世代の男だ、ドロップアウトして倫理観の欠如した彼女たちにとっては……鴨が葱を背負って来るようなものだろう。
襲撃は止めない、アル達を襲う前にまずは味見でもしてやる……そんなことを下心が丸見えな表情で語りながらする彼女達を見て、カナタは頭をガシガシ掻きつつぼやく。
「おじさん、あんま女子供は甚振る趣味はないんだけどさぁ」
「人として最低限守るべきラインってのがあるじゃん? それすら守れなくなったら何処までも堕ちていく。 それはもう人じゃなくてただの獣なんだよ」
心底面倒くさそうに、事もなさげにカナタは語る。 しかしその言葉には確かな重みがあり、先程まで楽しそうにしていた不良生徒たちの足取りは重くなった。
「そんな言葉も理解できないくらい堕ちきったクソボケなら……まぁ、遠慮する必要はないか」
そういった瞬間、カナタはその場から消えた。 ……いや、消えたと錯覚するような速度で一人の不良生徒を殴り飛ばしていた。
腹を殴られて地面から平行に吹き飛んでいく不良生徒。 後ろにいた複数の少女を巻き込んでもなお勢いは止まらず、10人を超えた辺りで漸く壁に叩きつけられて止まったのを見る限り、その威力は計り知れないだろう。
「お前らは自分の事を悪党かなんかだと思って誇ってるのかもしれないけど……悪党ってのはさぁ、悪党なりにルールがあるんだよ」
「アウトローって分かるか? 昔は無法者、ならず者って意味で使われてきた言葉だ」
アウトローという単語に、思わずアルは反応してしまった。 一日一惡だの色々やったりしているが、便利屋68というのは一流のアウトロー(アル談)なのである、多分。
いやごめん、分からん。 多分アウトローを目指しているとかそんな感じじゃないんだろうか。
「ちきゅ……にほ……ゴホン、俺のいた所じゃな、アウトローってのにはまた別の意味があるんだよ」
「既存の価値観に囚われず、自分の信念を貫く──そういう意味だ。 もう少し他にもあるけどな。 いや本当にそんな意味だったか? こうなるならもう少し勉強を頑張ればよかったか……」
「……まあ、いいか。 分かるか? 筋が通らねぇもんには頭を縦に振らない、自分の信念に反するなら例えどんな極上の褒美があろうが相手に噛みつく。 ──お前らみたいなのが、軽々しく悪党を語るなよ」
異質な力を見せつけたカナタに、不良生徒達は後退りする。 この辺りで気付いたのだろう、彼女達が触れてはならない物に触れてしまったのだと。
「引くなよ、お前らが始めた物語だろ? まだ始まったばかりなんだ……カーテンコールまで付き合ってやるよ」
一歩、また一歩と不良生徒たちに近づいていくカナタ。 恐れず、孤高に、大胆に……そんなカナタの背中を見てアルは
「──か、カッコいい……ッ!!!!!」
「アルちゃん?」
何かもうアルの中でのアウトローメーターが振り切っていた。 アウトローメーターって何だ……?
まあそんなのがアルたちとカナタのファーストコンタクトだった。 その後も依頼やらはたまた別に理由はないがカナタの経営する店にアルたちが入り浸ったり……色々なエピソードがあるのだが、一先ずはここで区切られることになる。
────────
ミレニアムサイエンススクール、その中のC&Cに所属するエージェント──美甘ネルと言う存在にとって、カナタと言う人物は『絶対にぶっ倒したいあんちくしょう』と言う認識だった。
ネルはミレニアムにおいて最強……約束された勝利の象徴とされている。 そんなネルがカナタと出会ったのは、あるオークションの現場だった。
依頼自体は何らおかしなところはない、ただの盗品を取り返す→そして会場を制圧して関係者を確保し、背後関係を洗うこと。 いつもと変わらない依頼のはずだった。
──あの男と、出会うまでは。
(……何だよ、アレ)
会場に突入してすぐ、ネルはその異質な気配に気付いた。 常人なら気にも留めない、どこにでもいそうな雰囲気を醸し出していたが……ネルには、いや戦闘経験が豊富だったC&C全員が、その異質さに気付いた。
そこにいるのが当たり前のような感覚が、逆に薄気味の悪さを際立たせる。 言語化が難しくなんとも気持ちが悪いが、この時点ではネルたちは認識阻害のスキルを知らないためこれ以上の表現が出来なかった。
(放っておくなんて選択肢は無ぇ、ここは……)
「──まずは依頼優先だ、ブツの確保とターゲットの確保!」
「おっけー!」
コールサイン01、一ノ瀬アスナが盗品の確保に。 そして03の室笠アカネがターゲットの確保に。 02の角楯カリンは会場の外で今もなお援護射撃の状態を保っている。
依頼からしてあの二人が向かえば問題はないだろう。 故にネルはフリーとなり、先程から此方を視認していた件の男に向き直る。
「……よぉ、そこの奴。 ちょっといいか?」
「あれ、おかしいなぁ……阻害できてない? 薄くとはいえ自信があったんだけどな」
「なに言ってんのか良く分かんねぇが、今の状況を理解できてるか?」
「まぁ、それなりには。 でも俺は無関係だぞ? 俺は依頼人の護衛でここにいるだけだし、件の依頼人は既に外に逃がした。 それに依頼人が出品した物だって盗品じゃないことは既に『視て』るからな」
「それをハイそうですかって信じてもらえるとでも思ったか?」
「まあそうだよなぁ……でも信じてほしいんだって。 俺だって無駄にケガ人増やしたいわけじゃないんだし、見逃してくんない?」
「……へぇ、言うじゃねぇか」
まるで自分が負けないとでも言うかのような言葉、その自信にあふれた言葉に、ネルは口角が上がるのを自覚した。
別に自分がバトルジャンキーと言う訳じゃない、と自分では思ってる。 だが自分の肩書とこれまでの実績を思い返し──舐められた態度をとられて、面白く感じるわけがない。
だからこそ
「なら全部終わってから改めて聞かせてもらう──ぜっ!!!」
愛銃「ツイン・ドラゴン」を即座に構え、躊躇うことなく引き金を引いた。 それを見た男──当たり前のことだがカナタは、驚いた顔をしながら回避する。
「いや、ちょっ……思い切りが良すぎるにも程があるだろ!?」
「言うことを聞かねぇお前が悪いんだよ! 嫌なら抵抗せずにこっちの用事が済むまで大人しくしてな!!」
「それこそ──」
「あぁ? 消え………ガッ!!?」
今の今まで視認出来ていたはずのカナタが消え、一瞬動きが止まったネル。 そんなネルの側頭部に、思いもしない威力の蹴りが叩き込まれ頭上のヘイローが明滅する。
「──ハイそうですかって、なるわけないだろ」
瞬間移動と見間違う速度でネルへと接近し、その側頭部へ蹴りを入れたカナタ。 カナタ自身それなりの威力で叩き込んだこともあり沈んでくれるかと思っていたのだが……
「……の、やろ……ッ!」
「ッ!? 復帰が早すぎるだろ……マジでヤバいなキヴォトスの生徒ってのは……!」
蹴りを入れた足を、意地か何かで意識を取り戻したネルに掴まれそうになり、カナタの背筋に冷たいものが走る。
その手を避けようとわずかに身じろぎをしようとした時、何を感じ取ったのか分からないが大きく回避行動をとる。 今しがたカナタのいた場所に銃弾が叩き込まれ、ネルはカリンの援護射撃だと瞬時に理解した。
「ッ、カリン! そのまま射撃継続、当てようとしなくていいから逃げ道を塞げ!」
『了解』
「アスナ! もう用事は済んだろ!! さっさと手伝え!」
『りょうかい! リーダーが手こずるなんて初めてじゃない?』
「無駄口叩いてんじゃねぇよ! おらアカネ! カバーは任せた!」
『ふふ、お任せを』
フルメンバーとなったC&C、その息の合った攻撃にカナタは徐々に退路を失っていく。 この時点ではネルたちには知る由もなかったが、カナタは本気を出すことはなかった。 まだ力加減を測り損ねていたという理由もあるが……単に、事を大きくしたくない。 だがそんなこともC&Cの攻撃で言っていられなくなる。 故にカナタが取った行動は……
「いやもう、マジで四の五の言ってる場合じゃなさそうだなこりゃ」
「ンだよ、諦めて投降する気に……ッ!」
「──悪いけど、大怪我させちゃったらごめんな」
「ッ!! お前ら、下がれっ!!」
「【拡散】【増幅】【昇華】……凍っとけ、【壊氷】」
何かを呟いたカナタに、ネルの生存本能が全力で危険信号を送ってくる。 その感覚に引きずられるようにしてC&Cごと下がった瞬間──目の前に、銀世界が広がった。
「……は?」
予想できなかった光景に、思わず足が止まる。 法則だとか現象だとか難しい専門用語が頭に浮かぶわけでもないが……何もないところに突如氷の塊が現れるなんて、意味不明なことが起こっていいはずがない。
やがてパキリ、と音を立てて粉々に砕け散っていった後には、カナタの姿は見当たらなかった。 上手く、いやまんまと逃げられてしまったらしい。
「……ちっ、クソッたれ」
依頼自体は盗品の回収とターゲットの確保、それは既に完遂している。 だがネルは無意識に負けたと感じていた。
(試合に勝って勝負に負けた、って言えばいいのかこれは)
今回の一件でC&Cの実績が悪くなることはないだろう。 しかしネル自身が今回の結果に納得できない、次は必ず倒してやると心に誓う。
「覚えてろよ……次は吠え面かかせてやるからな」
……なお、この数日後にミレニアムに何事もなかったかのようにカナタがやって来てまたひと悶着あるのだが、出会いと言う点ではこれ以上語られることはない。
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