やがて子供たちは1か月くらいで私たちと同じサイズにまでなった。
高校生サイズだよ。この辺がどうも標準らしい。
ここまでもう超たいへんだったけど、まあもう大丈夫……
大丈夫のはずだ。
あと、子供たちに隠れてスケベしてたら、見つかっていたらしく普通にそれも真似された。
私は……これは特に禁止しないことにした。
いや、数が増えすぎるのがヤバいのはわかるんだ。
でも、長期的に見たら性欲を禁止する方がはるかにヤバくね?と人間社会を見て思ったよ。
生物として当たり前の欲求や生態を嫌悪したらそりゃ生きにくくなるに決まってるんだ。
「と、いうわけで……そうなったらさあ、乱婚制を採用せざるを得なくない?」
「まあ、そうなるね。となると浮気が推奨されて、むしろ嫉妬が罪になるわけだが……どうなんだろうね実際。その時になってみないと私もわからないよ。嫉妬するのかどうかね」
「だよなあ……なんかゴメンね……これは明確に私の弱さなんだけど、効率重視で人間社会の対立と憎悪を入れるのは普通に嫌だわ」
ロゴスが私の胸をつねつねしてる。
気持ちいいけどもう一回しようって体力じゃないよ~。
そう、私たちはピロートークで政策を決定していた。
いいのかこれ……?
「一夫一婦制を取り入れて性を嫌悪するよりはたぶんマシさ。しかたない……とはいえ、歴史的には厳密にどちらかに振れていた時期の方が短いと思う。うまく間を取っていこう」
「……そうだね。じゃあ余裕出来たらさあ、結婚式あげちゃおっか。ふたりでウエディングドレス着て『私のだぞ』ってみんなに宣言するやつ」
「乱婚制の中に個人間の契約としてやるのかい?」
「よくない?自由にやれるからこそ、誓約って大事になるだろ」
「……それはすごくいいね」
とにかく、そのためにも食糧増産しないとな……
みんなに狩りを教えて、少し遠出できるようにしないとな。
「また考え事かい?」
「ああうん、みんなに飯食べさせなきゃだからね……」
「大丈夫さ。最悪、一時的に図書館を置いて遊牧民のように島内を回遊したっていいんだ。人間にできたんだ。私たちにもできるさ」
「……そうだね」
「君は海を泳いでここに来たんだろう?見てみたいな。私も、海を」
「いいねー。そのうち行こうね。図書館を誰かに任せてさ……綺麗な青い海を二人で泳いで……星空を見たり……」
「うん、きっといけるさ。そのうち……」
ロゴスが油と紐、ビンで作ったオイルランプを吹き消した。
私たちは抱きしめあいながら、窓から見える夜空を見上げる。
青く光る大きなクラゲが星のように空を舞っていた。
そもそも星空も天の川銀河、そのミルキーウェイが見える。
きれいだ……でもそれは、人類たちの灯がなくなったからだ。
私たちの灯はまだこの建物一つだけだ。でも……きっと、いつかは。
■
食料集めは順調だ。ため込めるだけはため込んだと思う。
そんな時に、グラフィがなんか映写機見つけてきた。
しかもUSB式だぜ!?つまり、スマホの中のものが全て映せる!
これだ!
私はさっそく朝の30分や夕食後の1時間くらいに動画をちょっとづつ流し始めた。
朝は「みんなのうた」から始めて、文字の学習やサバイバル動画を流す。
目が覚めて頭すっきりしてる時点で流すほうが覚えるだろ。
夜は金曜ロードショーだ!
とりあえず有名どころを流す。倍速でもまあ見れるんだけど一応等速で。
「酔拳2」だろ「ラッシュアワー」だろ「コマンドー」に「ライオンハート」に「トゥルーライズ」だ。
「なるほどね、実に教育的だ」
ロゴスがミサイルにくくり付けられて星にされてる悪役を見て冗談めかして言う。
「刺激的すぎるってのは気にしすぎじゃない?だって私たち野生に生きなきゃだし。当分は。このくらいの野蛮さがちょうどいいよ」
私たちは映写室にそれぞれ椅子を持ち込んでおやつの魚の塩漬け食べながら呑気に映画を見ていた。
ちょうど教室くらいで、まさにこうやって使われてたんだろうね。
子供たちは大喝采よ。さすが人類の娯楽だぜハンパねえ。
大画面の等速で見ると迫力が違うね。
「……たしかにね。シンプルな勧善懲悪は最初に見せるのにうってつけだ。ただ、もう少しバラエティを出していくのもいいかも」
「OK。じゃあリクエスト受け付けるよ」
「そうだなあ、『メッセージ』に『アンドリューNDR114』をまず見せたいね」
「いいねー。あれも感動的だよね。家族の絆とか愛って感じ」
たしかそんな話だったはずだよ。ロゴスはロマンチストでいいね。
子供に見せていいチョイスだからそうもなるか。
「あ、じゃあ私も……見せたい映画が……フヒヒ」
「いいよ何?」
「『スピーシーズ』に……」
「だいぶ攻めてんな」
あれって殺人エロエイリアンが主人公じゃなかった?
ドチャクソエロかった記憶あるよ。
「『スプライス』とか……」
「あったっけそんなの?」
「ギレルモ・デルトロ監督ので……」
「アウトだろそれは……今度!今度に回そう!もうちょっと段階を置こう!」
スマホになんつうもん入れてんだよママ。
いやまあ、これも人類の文化遺産でいい映画には違いないか……
「アルマはなんかオススメある?」
「そうねえ、じゃあまず『崖の上のポニョ』に……」
「いいね、ファンタジーな感じ」
「『パプリカ』とか……」
「流れ変わってきたな」
「『パンズ・ラビリンス』とかいいかもしれないわ!」
だいぶコアなファンタジーだな……
なんだろう、悪夢みたいなハチャメチャな感じが好きなんだ。
意外な趣味だなアルマ……
「あー、なるほどそういう系か……よし!ロゴスとアルマのおすすめを挟んで最後にグラフィのを見せよう。あー、もっとモニターがあればな」
「きっとこの島にもあるはずよ。電気店が。どんどん探検しましょうよ」
「そうなるよね……まあ、見終わるころには遠征も行けるはずじゃない?」
どんどん表情豊かになっていく子供たちを見て、私はそろそろ冒険に行くべきだと感じていた。
とにかくこの島でできるだけの資源は活用したいしね。