とりあえず、しばらくはアダマの群生地の湖畔で過ごし、自然にこちらに興味を示したものを10人ほど確保することにする。
するが……その前に双方の派閥の首脳陣には言っておくべきことがある。
「これから10人ばかり攫うけど、これは私が私の責任でやることで、お前たちのせいじゃない。その上で言っておくけど……私はこれを『何も知らぬ関係ない相手を私の都合で利用している』と思っている。だって、あいつらにはここでそのまま生きる権利が本来あったはずだからな……」
真っ先に反応したのはテクノクラートのNo.2であるベティだ。
「王はそう思うかもしれないが、私たちはそう思っていない……あのまま、あんな泥の塊だった私たちにあなたは知性をくれた。私たちはそれを後悔していないし、仮に選び直せるとしても、何度でもこの道を選ぶと断言できる」
ベティらしい実直な意見だ。そうかもしれない。
それでも、私はそれを私が背負うべき罪と考えたいんだよ。
その次がヴァンガードのNO.2のヴァネッサ。
「そうですとも!オレはこうやって喋ったり考えたりできることがうれしいですよ!王ともあろう方が何を弱気な!オレたちに気を使う必要なんてありませんとも!王は王らしく好きになさればいいんです!ねえフリージア?」
こいつ太鼓持ちをする自分が何より好きな奴だからあんま信用したくねえんだよな。
お世辞言う相手のことより、お世辞を言う事で自分がアガることが楽しい奴だから。
なお、こいつは私に近い中背タイプで派手派手しい赤い浴衣を着ている。
全身でお調子者ですと主張してるようなそんなやつだ。
悪い奴じゃないんだよ。悪い奴じゃ。でもそばに置いときたくねえ。
「そうだとも!ヴァネッサの言う通りだぞ!?どの道、私たちにここを見逃す道などないのだからな!」
おっ、ちょっとはまともな事言うようになったじゃん。
まあ、そうなんだよ。ここを使わない手はないんだ。
「……たしかに、相手は選ぶことができない状況であなたが責任を感じるのはやむを得ないことです。ですが、ならば彼女らに後悔させないような治世をすればいいのです。それが私が王に求めることですよ」
リアは相変わらず理解度が高いよ。でも止めてはくれないんだな……
まあ、まあそう。その通りだ。でも今ここで言わなきゃいけない事だった。
「まあ、お前らの言う通りだよ。悪いな~とは思ってるけど私はこれを見逃すことはできない。生きるために必要だからだ。だからまあ、結局やることは変わんないんだけど……でも覚えておいてくれ。これは私のエゴであり、私の責任だ。お前らもそうだけど、いつか知性を持ったことを後悔する日が来たなら……それは私のせいなんだ。そう思ってくれ」
みんな困惑してるよ。でもまあ、言っておくべきことだから。
「……あなたがどう思っているかはわかりました。それでもテクノクラートのリーダーとして言いますが、仲間に加えるべきです。彼らを……私はこの行動に賛成しますよ」
「何をごちゃごちゃと!母様がこれが罪だというなら、私達も共犯だ!そうだろう!?」
全員うなずきやがるの……
ありがたいことではあるんだけどな。
「……わかった。景気悪い話して悪かったな。じゃあまあ、やろうか。人攫い」
そうして勧誘というか捕獲というか、そういう感じのがはじまった。
今回は一気に連れていくわけにもいかないから、湖畔でしばらく普通にキャンプしてゆっくり覚醒をうながしていく。
メンバーは私は残るが、他はみんな入れ代わり立ち代わりだ。
娘たちであるメティスとテミスも来たし、最初の四人でしばらくぶりにのんびり過ごしたりもした。
綺麗な湖畔でみんなとゆっくり話せてよかったよ。
そして、年末近くまでで12人が仲間になった。
それぞれに進路を聞いて、8人がヴァンガード、4人がテクノクラートになった。
どういうわけかみんな女の子らしい感じで、そのうち出産ラッシュが来るだろうな。
■
帰ってきてみたら、ベティが面白いもんを作ってた。
「ラジオを分解して、ラジオ局を作りました。いずれ他の島にも遠征する以上は必要でしょう。さっ、王。よければあなたがDJ第一号になってくれますか?」
「マジで!?すごくない!?そうか、最初は私か~!粋なクリスマスプレゼントだなあ」
そういえばそろそろクリスマスなんだよ。
私はスイッチを入れると放送を始めた。
「メリークリスマス!こちらは図書館。聞こえてるか?よう、私だぜ……」
無線からは聞こえてるという返事が響いた。
成功だ……!
私はクリスマスソングとして「諸人こぞりて」を歌って一応放送を終わった。
これでそのうち島の外にも通信が届くようになる。
そうしたら、人口が十分に増えたら行こう。新しい島に。
さらなる開拓に……!