人外娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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安定

 それからささやかなクリスマスパーティーをして、少しづつ季節は過ぎていった。

 なお、クリスマスパーティーは「冬至祭」ということにしておく。

 ある意味、本来の形だ。一神教をそのまま取り入れるのはさすがにヤバいからな。

 いずれ法と宗教の制定もしなきゃいけないだろう。めんどくさいな……

 

 一度に10人づつくらいゆっくりと「原産地」からさらってゆき、36人から50人、50人から80人……と増やしていき、とりあえず200人で打ち止めとした。

 まだあの滝つぼにはいっぱいいるし、なんなら妊娠でも増えていってるんだけどね。

 人が一時に把握できる限界人数……ダンバー数がどのくらいなのか試してもみたいし、あまり乱獲しても不味いだろうからあとは自然増に任せようかなとも思う。

 たぶん私のダンバー数はもうちょい余裕ある感じだしね。

 

「だいぶ安定して発展できるようになったね。たぶん文明レベルで言えば20世紀初頭くらいだろう。一旦ここで立ち止まった方がいい」

 

 ロゴスが窓の外を眺めながら私に言う。

 図書館の高層階。元はオフィスとして使われていた場所は今は「王宮」となっていた。

 事務用品は現場に運び出され、代わりにまだきれいなサルベージ品の家具や自作した家具が運び込まれたり、グラフィが壁に壁画書いて模様替えしたりして、わりと品がありつつもくつろげるリゾートホテルみたいになっているんだ。

 

「だろうね。テレビとネットは……ちょっと危険だわ。むしろ文明をどう持続可能にするか考えたほうが良いな」

 

 私は「玉座」から窓の外を見る。

 これすげえんだぜ、超デカい木編みの一人用ソファ!

 派手だなあと思ったけど座り心地がいいんだ……

 

 窓の外では走り烏に乗って移動する同胞や、少しづつ整備されてきた道。

 スパイスや根菜を栽培する畑に、牛代わりのクソデカヤシガニを放牧してる牧場。

 ほかのビルも無事そうなやつはすでに電気の灯りがついている。

 

 人間で言えば安定して牧場や農場があって、ラジオや電灯の恩恵が受けられる時代くらいだ。

 違いと言えば、エアコンというか冷房は出来たんだよね。

 水冷式だから5℃くらいしか下がらないけど、この島では十分だ。

 どうやるかといえば、無数の素焼きの筒に常にちょっとずつ水を垂らして、そこに扇風機で風を当ててる。

 気化熱を利用するわけだ。もちろんこの「王宮」でも涼しい風が来てる。

 ダクトをつなげまくってな……

 

「そうだね、発展の方向を地盤固めに向けよう。まず紙と写植印刷を作って……季刊雑誌でもつくろう。文明を先に進めるんじゃなく、横に……今ある物を見るように。私も書きたい事ができたしね」

「いいね、何書くの?」

「図書館の本はだいたい読んで覚えちゃったんだよ。だから残すべき技術をまとめて、書き留めておきたいんだ。私たちがいなくなっても大丈夫なようにね」

「だなあ……誰がやってもってのは無理だとしても引継ぎ書類はつくっておきたいね」

 

 窓の外の灯りは人類のつくったビルだけじゃない。

 ブッシュクラフトで木の枝を組み合わせて作った家や、レンガ造りの倉庫とかもある。

 道は雑草を牧草に使い、土嚢を埋めてしっかり突き固めたりして少しづつ開けていっている。

 熱帯のジャングルの中に街ができ始めてるんだ……

 

「あとは法と宗教を作って……それが終わったらさ。家族みんなで「外遊」いかない?ヴァンガードたちの漁村いこうよ。ビーチでゆっくり休みたいよ」

 

 私が言うと、ロゴスは微笑んでうなずいた。

 

「いいね。それはとてもいい……」

 

 

 そういうわけでできたわ法と宗教。

 テクノクラートとヴァンガードの幹部とも頭突き合わせて作ったよ。

 

 最初はスゲーシンプルにした。まずは「同胞を害するなかれ」だ。

 「人が嫌がることはしちゃいけません」ってわけで白銀律だなこれは。

 でもぶっちゃけ法の根幹ってそれじゃねえの?

 

 その上で具体的にこれしたらおしおきでこれするよ、ってのを列挙してだな。

 要するに同胞を殺すな奪うな騙すな犯すなだ。

 貨幣システムがないから罰金作れなくてややこしいんだよね。

 最終的には市中引き回しとか死なない程度の鞭うちが重めの刑で。

 もうどうしてもだめな場合、要は殺人は追放って言うか「流刑」にした。

 つまり「おい、こいつにボートを用意しろ」ってなるわけ。

 

 でもこれ……私が鞭打ちしなきゃいけないの…?マジで?

 嫌だなあ~!!

 

 宗教はアニミズムを採用した。

 万物に神は宿るから自然の恵みに感謝しようねってやつ。

 死んだらお盆に帰ってくるんじゃねえの?くらいの。

 

 いやだって、熱帯の熱くなく寒くなくしかも食物はいっぱいあるけど腐りやすいって環境で一神教する意味なくない?

 アレがあそこまで戒律と崇拝にがちがちなのは権威がなきゃ団結できないからだろ。

 でも食料が豊かならそもそもあんま団結する必要ないんだよ。そう、熱帯ならね。

 なんなら多神教でもやべえよ。

 あんまり宗教狂いになってほしくねえんだ。

 だから神に具体性を持たせないことにするよ。

 後世で争いの元になる物をあんま作りたくないんだよね。

 

 そのへんのことをラジオで流してこれが法だよ、これが宗教だよと広めた。

 

「法も宗教もできたね。さあ、行こうじゃないか「外遊」ってやつに」

「海に行くのは初めてだわ。楽しみね、お母様」

 

 うおっ、ロゴスとメティスがもう水着着てる。

 白いワンピースタイプだ。ハイグレの角度がエグイね。

 目の保養になる……

 

「わ、私たちも一緒に行っていいですか……?フヒ」

「テミスも試食ばっかりしてると太るわよ?たまには違う場所に行ってみましょうよ」

「あー、めんどくさいけど海産物は生で食べると美味しいらしいから行くじゃない」

 

 アルマとグラフィも乗ってきたわ。

 まあ……行くか!初期メンと子供たちで!海に!

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