「それでなんかアテとかあったりする?」
「それなんだけどね、この通りをしばらく行ったところに誰かがいるらしいんだ」
私たちが歩いているのは緑に沈んだ都市だ。
ガラスはひび割れ黒ずみ、かつて白かっただろう壁にはツタがびっしり。
どの植物も熱帯性らしくガジュマロみたいにぐねっとしてる。
ここは植物までとろけるトロピカルな熱帯なのだ。
「とりあえず贈り物から始めたいから食えそうなフルーツとか探していこう」
「いいね、お互い危険そうな実を知っていれば教え合えばいい」
町中がジャングルだからさあ……そこら中に木の実が成ってはいるんだけど……
色が派手なんだ。蛍光色とかパステルピンクとか……暖色系なんだけど派手だ。
このうっすら緑に輝いてる丸いのとか、綿あめみたいなのなんだよ!?
まあ食ったらうまいけど。
「とりあえずリュックに入るだけは入った……同族がいそうなのって、アレ?」
「アレだよ」
ビルの壁面に果実とかを絞って描いただろう派手な絵があるんだよね。
なんだろう、すごいビビッドカラーでセンスがストリートアートだ。
白い人型も描かれてるから多分同族だと思う……
「じゃあまあ、歌おうかな。宴だよ」
「いいね、私も動画でダンスを見たんだ。やってみよう」
作戦はシンプルだ。宴をしておびきよせて仲よくなろう、だ。
なんかロゴスとだとあんまそういう前提情報いらないんだよね。
同族だから共感覚的にわかるものなんだろうか?
「『長く短い祭り』『目抜き通り』でいこう。椎名林檎の」
「多分聞いたと思う。楽しげでいいと思うよ」
私は二の腕にスピーカーを生やし、ギターを生成して手に持つ。
で、どっかり座って弾き始めた。
最初はアコースティックでリズミカルに。
やがてトランペット音を多用した派手でジャジーなやつに。
この曲宮本さんとのコラボだからすんごいパワフルに歌えるんだよね。
この前、スマホで測ってみたらなんと130デシベルいったんだよ私。
どこに隠れてても聞こえるだろ。
『我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?』
『その答えは我々が往生したときようやく現れるものなのだろうか?』
おっ、ロゴスはバレエ踊るのか。
背ちっちゃくて手足細いから似合うよね。
私の周りで飛び跳ねる動きが妖精みたいだ。
妖精見たことないけど。なんなら私たちはそっち側だけど。
『あの世でもらう批評が本当なのさ。デートの夢は永い眠りで観ようか』
ロゴスが手を差し出すのでさっとその手にキスする。
これで楽し気な雰囲気をわかってもらえるとうれしいんだけど。
『最期の日から数えてみてほらご覧!飛び出しておいで目抜き通りへ!』
トランペットの音が派手にフィナーレを飾る。
そういえばここもかつては目抜き通りだったんだな、と思ってたら……
来たわ。同族。
「ア、アー?ンン……?」
「フヘ、フヒヒ……イヒッ」
なんか言語がちいかわみたいだけど、見た目は私よりちょっと大きい。
どっちも女性型2体でまあ、全裸だ。体に果物の汁で模様描いてる。
こういうのもスケベだよね。
髪はふたりともかなり長い。肩甲骨くらいまでかな?
「エ……?エッ?」
ちいかわになってるのがスタイルいい巨乳。
長いストレートヘアを腰の上まで伸ばしててゴージャスだね。
「フヒ……ウウン」
フヒフヒ言ってるのがちょっとだらしないスケベな体してる。
ワカメヘアーっていうか、ぼさっとした髪質だ。
「おーい、大丈夫だよ。おいでよ。ほら、食べよう!歌おう!」
「おいで、仲良くしたいんだ」
私たちは可能な限り笑顔でリュックの中から果物を出すと、ブドウっぽいやつを一粒たべて残りを与える感じで差し出した。
相手は困惑の表情でそっと建物の影にかくれようとした。
私はほほえみを維持したまま次の『獣行く細道』を歌う。
二人ともまた出てきたわ。
「ロゴス、もうちょい曲調かえて続けるわ。適当におどってあげて」
「わかった。結構楽しいねこれ」
歌うのは「Radiant Dawn」に「The Disaster of Passion」だ。
ギルティギアだよ悪いか!私たちギアとかみたいなもんだろ。
問題はこれどっちもたぶんBPM230以上あるから本気で弾かないとうまくできない。
でも本気で魂込めて弾くからこそ伝わる物もあるはずなんだ。
『夕暮れの空、黄金の花の咲く場所で 闇が恐怖を呼ぶ前に 私の手を取って』
『砂が風に運ばれる すべてが変わった 束縛も涙もない 暁の淑女!』
『すべてが変わった 幸せな場所が呼ぶ 皆でもたらした 輝く夜明け』
明るくてまさに夜明けのような曲なんだよ……
このパワフルなギターとドラム。花が咲くような可憐なピアノ。
弾いてて楽しいねえ!笑顔になっちゃうよ!指がいてえ。
「ワッ……ワァ……」
「フヒ……ワオ……」
また二人が近づいてきた。
私たちはけっこう疲れながらも笑顔でうなずいて手を差し出す。
『太陽が東に沈むのを望んでも何も変わらないわ。瞼の裏の世界は悲しいまま』
『でもあなたに会うために必要な過去ならば、私は受け入れる』
『そこにはないの、私が今より欲しいものは』
そこからはもう必死だよ。
私はめっちゃ頑張って弾いたし、ロゴスはめっちゃがんばって踊った。
そこに巨乳の子が踊り、フヒフヒ言ってるのが私の横で果物食べ始めた。
「どう?楽しい?友達になりたいわけ。だから宴しよう」
「んー?あ……ソレ!ソレ!ジャカジャカ!」
「ああうん弾けって?いいよ」
そこから20曲くらい弾いてまあ……打ち解けた。
指つりそうだよ!本当は関節ないのに!