「そうなの。ふたりとも近くにすんでるのね!」
「うん。よければだけど……できるなら後で一緒に行かない?場所だけでも知っててほしいし」
数時間話したらかなり流暢に話せるようになってきた。
巨乳の子は踊り疲れてお土産に渡した果実をパクパク食べてる。
そうそう、名前なかったからロゴスに相談したらいい名前つけてくれたんだ。
「もちろんいいわ。グラフィもだいじょうぶ?」
「あ、アルマがいっしょなら……フヒ」
巨乳の子は体表を硬質化させて鎧にしたりできるからアルマ。
鎧が語源だね。
だらしない体の方は絵が好きだからグラフィと名付けた。
グラフィは元々陰気で奥手な性格なのか警戒心が若干ある。
でも私たちに拒否感はないようだ。
「そうか。君たちと仲良くなれて本当に良かったよ。私たちはもっと数を増やしてより安全に暮らしたいんだ。仲間になりたいんだよ」
「よくわからないけど、トモダチ?っていうのでしょう?わたしとグラフィみたいなかんじよね。いいわよ!」
「あー、まあ。大雑把に言えばそう。助け合うことができたらなって言うわけだよ。ここがそう?」
「あ、はい……私たちはここに住んでるんです……すごいでしょ、これ……」
今は私たちは二人の住処である廃教会に来ている。
これはすごいね。
ちょうどよく天井が崩れて、正面に聖母子像が光を浴びてる。
大理石の白いその像はたしかに白肌の私たちにとって神々しく見えるわ。
「あ、あなたはこれを作った人たちのこと、わかるんですよね……?これが何か、わかりますか?わたし、わたし、これを見たらなんだかわくわくして、描かずにはいられなかったんです……フヒ」
あーそれでね。教会の壁にはグラフィティもあった。
だからコイツの絵はそれを模倣したものなんだな。
「これは聖母子像。この子供は……まあ、神様に遣わされた人で、いろいろスゲエ事をしたと伝わっているんだ。その人に対する尊敬を現した像だね。それで抱えてるのはその母のマリア。この子を産んだ人だ」
「かみさま……?うむ……?よくわからないですけど、この小さい人はすごい事をしたんですね?フヒ……なにか、すごいものを感じるんです……これが誰かの手で作られたものなら、何か……何か強い思いがあった気がするんですよ」
うおっ、これがオタク早口か!
一気に流暢にしゃべるようになったな?!
「私たちはここでよく寝てるの。これ、この……はっぱ?を集めて。ところでこのたくさんある物は何かわかるかしら?」
アルマが指さしているのは苔むして草やキノコが生え放題のベンチだ。
教会だからいっぱいあるね。
「椅子だね。本当は人が座るものだ。ここにはかつて多くの人がやってきたんだよ」
「ここにいっぱいになるくらい人がいたの?すごいわ……」
アルマが驚くと、ロゴスがスッと会話に入ってきた。
「私たちも同じくらいに増えたいと思っているんだ」
「それはいいことね!でも、どうやって?」
あっ、ロゴスがこっち見た。マジ?マジでやるの?
「これからすることをすれば、いずれ新しい仲間を産むことができるさ。増えるんだ、私たちは」
「面白そうだわ!なにするの?」
「あっ、私もきになります」
「マジ?ロゴスまじでやるの!?今!?ここで!?」
「ああ、しようじゃないか。性教育を、実地で。君は嫌じゃないだろうそういうの」
「まあ……わりと好きよりかな……見られるの……」
犯罪臭がすごいよ~!
たしかに体は私たちよりそだってるけど、いいのかこれ!?
何も知らない子たちにpornhub直伝のやつを見せちゃっていいのか!?
「あら?そのひらひらしたのって外せるの?」
「な、なにがはじまるんでしょうね……フヒ」
まあ、正直興奮したよ。
最終的にはアルマとグラフィもはじめちゃったからね。
い、いいのかこれ!?いや、種族の始めだ。今までの道徳は置いておこう。
倫理観はこれから作るんだよ!私が!
■
狂乱の一夜が明け、朝が来た。
考えてみれば教会の中でやっちまったから罰当たりどころじゃない。
に、人間じゃないからセーフで!ならないかな、ならないよな……
「すごく気持ちよかったし、しあわせな気持ちになったわ!ありがとう!」
「フヒ……すごかったですね……わたし、感動しました……フヒヒ」
アルマとグラフィは仲良く手をつないでもたれ合って座っていた。
「お、おう。そう言ってもらえるとうれしいよ……」
いいのかなあこれ!?大丈夫かなあ!?
「オルテア、気にしてるのかい?」
「まあ、ちょっとね……いいのかなあって」
「オルテア、そもそも貞操という観念は人間が便宜的に作った物だ。それを採用するかどうかは君が決めていいんだよ」
私が微妙な顔してると横に寝ていたロゴスがそっと耳元でささやく。
吐息がかかって朝から変な気分になるからやめようよ。
いやでもそうか……貞操観念そのものを採用するかどうかも私の権利と義務だ。
そういえば昨日はそう言う事を私も考えてたっけ。
「それはそう……だけどさあ……」
「じゃあ、いい話をしてあげよう。一夫一婦制に貞淑というのはそもそも後からできた概念さ。こういう十分に食料のある亜熱帯では乱婚制が採用されていた。フリーセックスだね。そう言う社会はライオンみたいに男が怠けて女が働くようになる。村の誰もが父親であり、誰も父親でない以上、常に女が男に価値を提供する必要があるからさ。ある意味真の男女平等だし、争いも深刻化しにくい。すべては一長一短で、どれを採用するのか君は決めていいんだ」
うおっ、早口だ。いやでもまあ……わかるよ。
価値観も含めて私は今、社会制度を設計できる立場にあるんだな。
「社会制度の設計か……人間社会そのまま流用するのはスゲエ嫌だな……」
人間の憎しみに満ちた世界を知った後ではね。
「そうだろう?私たちと人間は同じじゃない。少なくとも私たちはどちらにでもなれる。なんにでもなれる。話し合おうじゃないか、たびたびこうやって考えていこう」
そう言ってロゴスはちゅっと私の耳にキスをして立ち上がった。
私も起きるか~。
「そうだね……そうやって問題と参考文献をキュレーションしてくれるのはすごい助かるわ」
「さしあたっては、まず今日何するかから考えることだね」
「それはそうだね」
あれっ、なんかアルマとグラフィがこっちを尊敬の目で見てる。
なんで?
「なんだか……よくわからないけど、すごそうなお話ね!」
「か、かしこいんですね……フヒ。何を話してたんですか?」
「ん~、そうだなあ。これからどうしよっかって話」
だいぶはしょった。端折ったし大雑把だけど間違ってないだろ。
「じゃああなたたちのお家に行ってみたいわ!」
「いいね。じゃあみんなで食べ物取りながら行こうか」
「もちろんよ!」
なんか……みんな素直ですごい助かるけど、何かだました感あるよね。
ママもきっとこんな感じだったんだろうなあ。
■
道すがらお互いの狩りでさらに仲良くなることになった。
私がアトラトルという細工した投げ槍や、ボーラなんかの簡単な狩具でデカい鼠やら鳥を狩って見せれば驚かれたし、アルマとグラフィは素の力と装甲でどでかい蜘蛛かダニみたいな形態の虫を狩ってた。
3mはあるよこれ。色も赤と白でジェネリックヤシガニだよ。
私たちのパワーすんげえ~。
「ところでどこをどうやって食うのこれ?」
「これは皮をはがして足の中の肉がいちばんおいしいわ」
「へー、いいね。やってみよう」
なんだろう。生の……ロブスター?そんな感じなんだろうねこの味。
ママが出してくれたエビに似てる。
「フルーツで口直ししよう。そのうち焼いてその肉も焼いて食べようね」
「このフルーツも食べられるの?」
「たぶんそう。こないだちょっと食べたけど平気だった」
これたぶん元はスターフルーツなんだろうね。あの独特の形してるんだよ。
でも色が黄色じゃないんだ。メタリックな虹色だよ。中もそう。
まあ美味しいからいいや……
空を見ると超デカいクラゲみたいなのが群れを成して飛んでる。
ここはもうそういう世界だ。そして私たちもそういう生物の一つだ。
私たちは、この星を征服できるだろうか?
そう考えたら人間の偉大さが分かった気がした。
いやでも……そそられるな!まるで未知の世界を私たちが冒険できるんだぜ?
やろう、やっていこう……この4人から。