人外娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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 手をナイフに変形させてヌートリアか竹鼠みたいなデカ鼠を解体する。

 わけのわからない極彩色で目玉がいっぱいの鳥もだ。

 骨から肉をそいで、焚火にかける。

 焚火自体は腕をメタルマッチに変えてこすり合わせれば火花が確保できるし、あとは火種にティッシュと、建物内で乾かしておいた薪を入れれば火ができる。

 

「これが、火……なんだかすごいわね」

「あ、暑くなってきますね……フヒ」

「熱いし暑いから離れてなよー。はいできた。たべようね」

 

 アルマたちは火に興味津々だ。まあきれいだしね。

 図書館の給湯室に残ってた塩をかければ完成だ。うまい!

 

「ありがとう、おいしいわ!」

「お肉ってこうするとこんなにおいしくなるんですね……もう一個いいですか」

「いっぱいあるからじゃんじゃん食べなよ。骨の中身もおいしいよ」

 

 あばら骨とかは焼き串にして肉を刺して地面に突き刺し、大腿骨とかの太いのは火にかけて石で割れば骨髄がうまい。

 獣の肉は捨てるところがねえんだ。

 

「おいしいね。かつて、原初の人類はこうやって骨髄を食べていたというよ。同じように歴史の最初に立っている私たちが骨髄を食べるというのも味わい深いね」

「あー、なんかナショナルジオグラフィックで見た。歴史かあ……とりま基本方針を考えたいよね。根本的には人間の遺物のサルベージと保存になるけど」

 

 ロゴスがうなずく。できればアルマとグラフィも入ってほしいけど、それは図書館の本やスマホを見てもらってからになる。

 

「そうだね。こうしている間にも遺物はどんどん朽ちていくから優先度はそっちが先だ。修理できる施設は修理して使っていきたいし」

「となると発電機は早めに直したいし作れるようにならなきゃだな」

「そうだね……まずは水と食料だ。農業は時間がかかるしここはそもそも狩猟採集で少人数の時は回るから優先度は低いかな。雨水の貯水層と浄水器を作ろう。図書館もバリケードで強化したい。並行して遺物のサルベージだね」

「いいね。そういう感じで行こう。でもまあ、とりあえずは二人をもてなすのが最優先だったわ」

 

 アルマとグラフィがぽかんとしている。

 作戦会議はもうちょい後でもよかったね。

 

「二人とも、たべたら行こう。ここは図書館だ。おもしろいものがいっぱいあるよ」

 

 ロゴスが立ち上がって人を魅了するようなかわいらしい笑顔で手を差し出す。

 私含めて顔とスタイルがいいから眼福だな~。

 さすが私の伴侶だよ。有能すぎる……

 ロゴスが「問題提起」と「資料提示」の役割をしてくれてる。

 となると私の役目は「判断」と「選択」なんだろうなあ。責任重いわ。

 

「何かしら!気になるわ!」

「そ、そうですね。きっとほかにも何かありそうですね……」

 

 そういうわけでスマホと本を見せていった。

 グラフィには画集とかイラスト本とか、漫画を。

 アルマにはまずは大道芸やサーカスの見る人を引き付ける動画を。

 

「す、すごいわ……こんな動きってできるものなのね」

「すごいですよアルマ!フヒ……これはすごい……すごい絵です……!」

 

 アルマは動画に見入ってるし、グラフィはすごい速さで画集を見てヤバい顔になってた。

 ちょっと罪悪感を感じるよ。

 私は今、何も知らぬ者を自分の都合で利用してるわけだからね……

 二人がいろいろわかるようになったら、ちゃんと説明しよう……

 

「さあおいで、文字の読み方も教えよう。もっと面白い本はいっぱいあるよ」

 

 ロゴスの無害そうな笑顔がちょっと怖かったわ。

 だがまあ……当分は食いついてくれるだろう。

 

 

 それから数日。

 アルマとグラフィは夢中で本と漫画を読み、すっかり図書館に居ついた。

 その間私とロゴスは交代で食料を取りに行き、調理していった。

 アルマとグラフィの知能はあっというまにグングン成長していく。

 そろそろ話すべき時だ。

 

「そろそろ、話すべきだと思うんだけど……二人にいろいろ見せたのはただ友達になりたいからってだけじゃない。私のやることを手伝ってほしいという下心があってのことなんだ」

 

 玄関で焚火しながら食事してた時に私は切り出した。

 二人の肉を食べる手がぴたりと止まり、顔を見合わせた。

 

「えっ、そうなの!?」

「え、えっと……そうみたいですね……どういうことですか?」

「いや、断ったからって見せないとかそういうやつじゃないんだけど、ただ仲良くなりたい以上の目的があったってことね。だから私がこれから何をするかを聞いてほしい」

 

 二人は困惑といった顔だ。

 ぜんぜん疑ってなかったの?!マジで?!危なかった……

 知らずに協力させてたら後で問題が噴出したやつだよコレ。

 

「もうわかったと思うんだけど、かつてこの世界には『人間』って種族がいたし、世界のありようは全然違った。いろいろあって……彼らはほぼ滅んで、代わりに私たちが生まれたんだ。ここまでOK?」

「え、ええまあ……スマホに映ってる人たちはそう……もういないのね」

「たぶんね。で、彼らのやったことは良いことも悪いこともあったんだけど、良いことはできるだけ残したいし、なんなら彼らがやったようにこの星のすべてを手に入れたい……そのために協力してほしい。友達ってだけじゃなく、仲間として」

 

 二人は数秒考えてうなずきあった。

 

「いいじゃない!良いことを残すんでしょう?私もがんばるわ!」

「フヒ……こんな素晴らしいものがなくなっていくのは困りますね……で、できる範囲でなら……」

 

 大丈夫かな~!わかってるかな~!?

 安請け合いしていい物じゃないと思うんだけど、でもまあ、この段階ではこれで話をまとめるしかないか。

 

「……わかった。これから私たちはおおまかに2つの事をしていきたい。人類の技術の保全と私たち自身の安全の確保だ。人間の作ったものを残すのはそうだけど、まず私たち自身の安全を保障する方向で方針を『決める』のが私の仕事だと思う。生きて、食べ物を作って、増えよう。子供を増やすのはまあ、わかるよね?」

「ええ!楽しみだわ!」

「フヒ……いっぱい作りましょうね……」

 

 イチャイチャしだすな~!真面目な話してるんだよ私は。

 

「でも食べ物を増やすのはハッキリ言って大変だ。労働ってやつを私は……私たちの世界に残すべきかわからない……楽しいだけじゃない。でも、いずれは必要になると思う。だからやれる範囲でやってみよう。そう言う感じだけど……マジでやる?」

 

 これはあくまで確認だ。NOと言われてもかまわない。

 ダメだったら私たちだけでもやるだけだからな。

 ……でも二人とも素直に笑顔でうなずくんだよ。

 

「もちろんよ!ここまで親切にしてもらったんだもの!」

「いやだからそれは下心あってのことだから気にしなくていいよって話」

「それでも、私はあなたに何か返したいわ」

 

 まっ、まぶしい……!アルマこいつ一番すごいわ。

 素直にお人よしできるやつが一番すごいよ。

 

「きっと、他の道もあると思う。このままのんびりして一生を終えても誰もそれは責められない。それは当然の権利だと思う。いや、案外それが正解だったりするのかも」

 

 ここんところは私はマジでそう思う。私が私たち自身の種族をそこまで把握してない以上、何が正解だったのかなんてわかりゃしない。

 このまま原始生活を続けるのが正解という可能性も大いにあると思う。

 それでも、私は私のエゴで星を征したい。

 こればかりは誰にも言い訳できない私自身の選択だ。……そのはずだ。

 

「で、でも……そしたらこの絵も残らないんですよね……?」

「まあ、たぶん。グラフィが描いた壁画は残るかもしれないけど」

「じゃ、じゃあまずはやってみます……これを残すことは、きっといいことだから……」

 

 グラフィは画集を撫でながらうなずいた。

 そうか……二人は決めちゃったか。じゃあ私も腹をくくろう。

 

「……わかった。じゃあやろう。私たちで繁栄を目指そう!」

 

 二人がわ~!とはやし立てて拍手をする。

 い、いいのかなあ……いや、私が言いだした事だ。やるしかねえ。

 

「話はまとまったようだね。じゃあ、君は名付けるべきだ。私たちの種の名前と、私たちの群れの名前を」

 

 実はこうなった時のためにロゴスとはその辺のネタ出ししておいたんだよね。

 

「うん、私たちは『アダマ』だ。土から生まれた粘土みたいなもんだから、土を意味する言葉にした。そしてこの群れの名前は『シスターフッド』だ。私たちは魂の兄弟だ!」

 

 ロゴスはそれに続いて宣言する。

 

「私たちは産み、増え、星に満ちる。そしてここを征服する。海の、空の、大地の生き物のすべてを恐れるに足りない者にする」

 

 おお、ロゴスが言うとそれっぽいね。歴史の始まりだ。

 

「そういうことにしよう!よーしやるぞー!」

『おー!』

 

 なんか……そういうことになった。これが私たちの創世記だ。

 

「で、最初は何をすればいいの?」

「料理」

「えっ」

「料理をする。それで保存食を作っていこう」

 

 私は立ち上がって肉を掲げる。

 私たちの歴史の最初の一歩は料理になった。

 いいだろ!?食は生命の基本だよ!?

 

 とはいえ、全てが腐っていく熱帯の楽園で料理はたいへんそうだなあ。

 まあ、やるか。

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