(やべぇ、小さい箱ならまだしも、大きいフェスのリハーサルどう描写すればいいのか分からない…あっ!通しリハーサルなら楽じゃん!)
となり書きました。どうぞお楽しみください。
※前話に頂いた誤字修正報告ありがとうございます!
八月某日。天気は快晴。
辺り一面向日葵が咲き誇っているにもかかわらず、アブラゼミやクマゼミの鳴く声がどこからとも無く聞こえる中、私達飛行者天国は『サンフラワーフェスティバルin太陽の畑』の通しリハーサルに臨んでいた。
今回出るバンドは四組。
一組目はなんとまさかの鳥獣伎楽。
何でも、ミスティアさんのお友達のリグル・ナイトバグという蟲の妖怪がメンバーの二人に風見幽香さんへのパイプを繋げ、幽香さんの脚にまとわりつくレベルで懇願したことで、今回出してもらえることとなったらしい。うちのバンド以上に音楽聴く人の好みが別れてる印象あるけど大丈夫かなぁ……。
二組目はBlood Devil's Kisses。
まぁ名前で分かると思うけどレミリアさんのバンドだ。組んでまだ半年経ってないくらいのバンドが出てくるなんて、権力で出番を捩じ込んだのか〜?
と、思わせといて実は、このバンドは潤沢な資金によるPRの成功、プリズムリバー楽団とうちのバンドとはキャラが被らない、そんな絶妙なラインのジャンルを攻めた事が功を奏し、固定のフォロワーを獲得することに成功したのだ。
なお、メンバー二人の都合上夜にしかライブをやれないのにサンフラワーフェスに呼ばれた理由は不明。
三組目は我々飛行者天国。
花の妖怪イチオシ! (らしい)、自称脱魂ロックバンド。
ココ最近は色々巻き込まれがちだったけど、声を掛けてもらった時からずっとこのステージに立つことを楽しみにしていたのだ。古今東西、野外フェスとスリーピースロックバンドの組み合わせは最強ってコトを皆に知らしめようではないか〜!
四組目にしてトリ、プリズムリバーwithH。
幻想郷の音楽シーンの顔役、みんな大好きPLwH。
メンバー4人のうち3人が騒霊という特性を活かした、複雑ながらも耳に残る楽曲がウリのベテランである。対バンするなら大きい場所でしたいわ。 という義姉の謎のこだわりにより、対バンするのは今回が初めて。
百戦錬磨のこのバンドならトリに相応しいと思います!
雷鼓姐、出番連続だけど頑張れ!
……
楽屋のテントで共演者(ほぼ知り合いではある)と挨拶した後、私は義姉と共にプリズムリバー三姉妹の元へと向かった。
「おはようございます、飛行者天国の九十九八橋です。今回は宜しくお願いしますね!」
「九十九弁々よ、よろしくお願いするわ」
「あぁ、どうも。
ルナサ・プリズムリバーよ。ヨロシクね」
「その妹のメルランでーす! 雷鼓から話は聞いてるよ! よろしく!」
「さらにその妹のリリカだよ。 よろしくね〜」
やっとこの三人と知り合いになれた。
今まで会う機会がなさすぎて雷鼓姐の話に出てくる空想上の存在だと思ってたもん。多分だけど、向こうも私たちに対して同じ事を思ってたのでは?
そんな失礼なことを考えていると、早速メルランさんが
「ホントに居たんだねぇ!今まで対バンしたこともないし、雷鼓の話でしか聞かなかったからイマジナリー的な何かだと思ってたよ!」
とズバッと言い放ち、他のふたりに余計なこと言わないで!と怒られていた。大丈夫です!多分メルランさんが言わなかったとしても、うちの義姉が同じこと言ってたと思うので!
プリズムリバー姉妹に挨拶を済ませたので、スタッフの方々にも挨拶をしておいた。こういう場では礼儀正しくして損することは無いよね!
ちなみに今回のフェスに際して、メインステージ、楽屋テント、バンドのグッズや飲食物などの売店スペース、観客席と音響卓のテントの設置場所については予め幽香さんがスペースを空けていてくれたため、犠牲になった向日葵はいない。
そして、会場の各地にゴミを捨てるための袋も設置されているため、ポイ捨て対策もバッチリである。
もし仮にポイ捨てしたら殺されるからね、文字通りに。
……
こちら現在鳥獣伎楽のリハーサル中。
ある意味一番の注目枠ということもあり、共演者、スタッフ、地主が見届ける中、彼女たちは自分らしさを見せつけ続けていた。
前に対バンした時は色んな意味でとんでもないユニットだったので、花フェスに出演が決まった際は大丈夫なのかコレと思ったけど、可愛く歌ってると油断した時にデスボイスのシャウトが入るという、緩急の鋭いアプローチの仕方などが上手くなっていてお互い成長したね……と内心しみじみ思ってしまう。後で二人には本番も頑張ろうねって一言かけてあげよう。
……
二組目のBlood Devil's Kissesのリハに入るとき、キーボード担当のパチュリーさんが
「あーあー、キーボードです。ボーカルとリズムギターのために魔法で空を曇らせてもいいかしら」
というライブのリハではまず聞かない質問をして、許可を得ると同時に陽の光がほぼ届かないくらいには空を曇らせてしまった。ああ、だから河童達が暗くなってもみれるようによく分からない光る棒を設置してたのね。
メンバーがステージ入りする中、それを見てた出演者たちがすごーい! と笑いながら言っていたが、それまでホントにスカーレット姉妹がどうするのか心配だった私は思わずホッとしてしまった。
ちなみにこれは余談も余談なのだが、パチュリーさんが使っているキーボードはかつて私が無縁塚で遭遇した付喪神のキーボードである。
霊夢さんによる供養を受けたあと、買取目的*1で香霖堂へ送られたそれは、やがて悪魔の館に引き取られることとなったのだ。退治した魔理沙はバンドメンバーだし、ギターも私の一番弟子のレミリアさんだしでとんだ巡り合わせだと思う。
このバンド、何回か対バンしたけど聞き馴染みのない言語で歌うからそれにハマる人続出なんだよね。何言ってるかわかんないから一周回って聴きやすいとは、幻想郷の音楽評論家ことはたてさんの評価である。キャッチーだから聴きやすいし、ド派手なリードギターがいるのでちゃんとギターロックしてるのが好き。*2
ルナサさんが、霧雨魔理沙はどうやってあんなに弾けるようになったのかしら……と言っていたので、彼女は独学ですと教えると仰天していた。
まりちゃん人の子努力の子。
……
そしていよいよ、私達のバンド・飛行者天国のリハーサル。
本番じゃないとはいえども、緊張する〜!
まぁ、音響のにとりさんにはいつものセットでと伝えているので大丈夫だよね。
本番でのセトリ順は、
『付喪神の引越し』
『妖怪ロック』
『祟られた!?』
『丑三つ時の琵琶法師』
『地獄の沙汰も閻魔次第』
『地獄百三十六ヶ所巡礼』
『飛行者天国思案中』
『月ひとつ』
である。
本番当日のタイムテーブルを決める際に割と早い段階で一部のスタッフたちから、
「このバンドは曲が長いから一時間尺にして欲しい!!」
という、もしかしてファンの方? と思うような要望があり、相談の上で前半の鳥獣伎楽、Blood Devil's Kissesが45分、後半枠の私たちとPLwHは一時間尺ということとなった。
さてそのリハーサルの内容はというと、三人とも入り後の挨拶回りと紅魔バンドの出番時以外はずっとステージ裏楽屋テントの外に設置された腰掛けに座って向日葵と共に光合成していたのもあり、まるで本番当日かと思うくらいには頗る調子が良く、緊張もどっか行くくらいの演奏ができた。
そして、ノリに乗った我々が『巡礼』で嵐のごとく弾きまくったことによってハイテンションになってしまった、たまたまそこらを飛んでいたひまわり妖精達が弾幕を撃ち始めた。しかし、自らを警備員として雇えと実行委員会へと売り込んだ博麗の巫女の見事な仕事っぷりにより、彼女たちは皆一回休みにされることとなった。
最後のプリズムリバーwithHはまぁ、言うことなしだろう。ただただ、幻想郷一のバンドに相応しい演奏をしていた。曲の中に散りばめられたユニゾンの重なり方が本当に気持ちいいのだ。それをできるのはやはり個々の技量だけではなく、姉妹の絆ならではなんだろうなぁ〜!
あと、リハの前日にそこそこ弱音を吐いていた雷鼓姐はめちゃくちゃイキイキしながら叩いてた。光合成の効果かな?
ちなみにPLwHは今回のライブが初披露だという、例の憑依異変の時の曲のアレンジバージョン*3を念入りに確認していたのだが、個人的には袖から観ていた際にルナサさんがいつものバイオリンのみならず、エキゾチックな弦楽器とベースを同時に操り始めた時には鳥肌が浮かび上がってきた。
あの人は本当になんでも弾けるよね。
尊敬してます! 義姉と雷鼓姐の次に!
そんな調子で朝から晩まで続いた花フェスのリハーサルは終わり、皆で幽香さんが用意してくれた夕食を食べつつ決起集会的なものを行い、あとは三日後に控えた本番を待つのみとなった。
集会中に遠くから見えた花火、誰があげてたのか分からないけど縁起いいなぁ。
よし! 良いもの見たし気合い入れてこー!
……
太陽の畑で決起集会が行われている頃、一方こちらは名も知れぬ目立たない場所。今日、ここに集うは今話題の脱魂ロックバンド・飛行者天国に出禁にされた悲しき者達である。不穏なオーラを放ちながら密談するその姿は、なにか一波乱起こしてやろうという気概に充ちている様子。
「なぁ、オマエら。ライブ出禁にされて悲しくないのかよ?」
メンバーその1、鬼人正邪。
人里でメンバー3人とすれ違った際、つい逆張りしたくなる性分故にお前ら、最近調子いいらしいじゃねぇかと自分から絡みに行き、しまいには『誰がお前らのライブなんか観に行くか!』と啖呵を切ってしまい、セルフ出禁。
なお、本当のところは出禁になったと正邪が勝手に思い込んでいるだけであり、メンバー達はなんだ? と驚きはしたものの、バンドからは出禁扱いはされていない。
「そりゃ悲しいよ〜。わたし、ウォークマン買うお金もないからライブの音漏れでしか音楽聴けないもん」
「それなのにせっかく私がチケット手に入れて観に行ったライブと、あの忌々しい命蓮寺での縁日、姉さんが2回も問題起こしたせいでなぜか私まで出禁にされたでしょうが!!!」
メンバーその2、依神姉妹の紫苑と女苑。
だいたいセットでいる最凶のふたり。
姉のほうだけが明確な実害を出したが、何故か妹も含め姉妹揃ってブラックリスト入り。
「私は別に聴かないし良いわよ。そもそも出禁になったことすら知らなかったわ」
メンバーその3、比那名居天子
親愛なる紫苑の為と行動を起こした結果、寺のスーパー住職によって防がれたものの、危うく幻想郷を吹き飛ばしかけるというやらかしをしたため、ブラックリスト入り。
今日は紫苑の送迎だけだと思ったら謎の計画に組み入れられていた。
とまぁ、そんなメンツである。
多分おそらくきっとこの集まりの仕切り役であろう正邪がこう問う。
「お前ら、アイツらに一泡吹かせたくないか」
「うん!」「まぁ、そうね!」「……いや別に」
『え?』
「ハ、ハァ!? 天人サマ、なんでお前はそんな乗り気じゃないんだよ!」
「言ってるじゃない。私は元々別にそのバンド好きじゃないから。あと仕返しするなら要石を割った坊主連中の方がいいし」
「なんだよ! 普段あんな大口叩いてるくせして使えねぇな!」
「あ? 何よ、アンタこそ口だけのなんにも出来ないタチのくせして生意気なのよ! 誰に口聞いてると思ってんのよ!」
「なんだとテメェ!!! 言っていい事と悪いことがあるだろうが!! 表出ろや!」
「もう出てるでしょうが! 御託はいいからさっさとかかってきなさいよ!!」
激しい応酬の後、完全にやる気モードになってしまった天子と正邪はあっという間に空へと飛び上がり、割とマジな感じで弾幕ごっこを始めてしまった。
「「……」」
「……なんかあの二人見てたらどうでもよくなっちゃった。お家帰る? 姉さん」
「そうだね」
「夕飯、塩むすびで大丈夫?」
「いいよ。付け合わせが雑草じゃなければなんでも」
勝手に盛り上がられ、置いていかれてしまった厄介姉妹。
当初正邪に焚き付けられノリノリだった二人も、流石にこの展開にはついていけなかった。結局、この二人は如何にも貧乏神、疫病神らしい会話をしながら、上空で戦う二人を置いてさっさと帰っていってしまった。
そして、肝心の勝負の結果はというと、まぁ案の定というか予想通りというか、緋想の剣を携えた天子の完封勝ちである。
「けっ、この天人である比那名居天子様に対して二度と生意気な口聞くんじゃないわよ。格ってやつが違うのよ格が!」
そう言うと、天子は自身の新しい要石に乗ってふわーっと夜空へ上昇していき、自分の住処である天界へと帰っていった。
翌日、依神姉妹の二人によるライブ中の問題行動の謝罪、出禁の取り消しを請願する文*4が九十九家の郵便受けに投函されており、人里から少し離れた岩陰で、見るも無惨な程にボロボロになって力尽きている鬼人正邪*5が里の子供によって発見された。
某横浜星球団の夢オチコピペみたいなオチになってしまった!
この人でなし!
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