九十九弁々思い立つ。   作:聖徳王の笏

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とりあえず、見る側の視点で書いてみたかった。
いよいよフラワーフェス当日でございます。
お楽しみください。





藤原特派員のエクステンド花フェスリポート その1

 

 

 

夏だ! 海だ! 夏フェスだぁ〜! 

 

「幻想郷に海はねーよ」

 

「さぁ妹紅さん! 今回、いよいよ、満を持して! 我々の応援している飛行者天国が『サンフラワーフェスティバルin太陽の畑特設ステージ』に出ますよ!」

 

「おいなんだよはたてちゃん、さっきから続けてるその変なノリは……」

 

「そりゃあだって、折角取材するんだからこれぐらい張り切っていった方がいいのよ!」

 

「そうなのか……?」

「そ〜なの!」

 

 

 

 

 私の名前は藤原妹紅。自分で言うのもなんだが、とにかく音楽が好きなしがない不死人だ。今回のフェスはまぁ、一般の枠で慧音と一緒に観に行こう……初めはそう思っていた──────のだが。

 

「妹紅さん! これ、良かったらどうぞ!」

「ん? ありが……!? なッ、バカ、八橋ちゃんこれ、花フェスのバックステージパスじゃないか!! こんなの貰っちゃ悪いよ!」

「いつも来て頂いてるお礼です! お世話になってる人達に配ってるんですよー! それじゃ、当日よろしくお願いしますー!」

「えっ、ちょっと待て! おーい! ……行っちゃったよ」

 

 困った私はそれを非公式ファンクラブの重鎮の二人である霧雨魔理沙、姫海棠はたてに相談したところ、

 

 

「良いんじゃないか?

 それを言うなら私なんて出演者だからな」

「そういやそうだった……」

 

「え! じゃあ一緒にフェスのレポートやろうよ!」

「いや、私はそういうのはいいよ」

「ダメ、絶対連れていく」

「…………分かった」

 

 

 

 という流れがあり、今に至るワケだ。

 グッズのサングラスをかけた私たちは人里で合流したあと、現在は目的地である太陽の畑へと飛んで向かっている。

 

 

「はたてちゃん、地上に出来た列を見る限りだけど、なんか去年より人が多くないか?」

「確かにそうね。 もしかしたら今年は出演者が増えたから、今までプリズムリバー楽団にはそこまで関心がなかったけど、去年の秋以降に活動し始めたバンドは好きっていう人達が来てるのかも」

「あぁ、そういうことか。私はプリズムリバーwithHも好きだからそこら辺を気にしたこと無かったな」

「私も同じ立場よ。でも妹紅、ナイスな疑問よ! この時点でリポートのネタがひとつ出来たわ!」

「お、おう……、そうか良かったな……」

 

 そう言って手帖に要点をメモするはたてちゃん。

 そしてしばらく飛んでいると、

 

『Welcome to Kazami Garden』

 

 と書かれた大看板と共に、辺り一面に広がる向日葵畑が私たちを出迎えてくれた。ここで地上に降りると、はたてちゃんが横でパシャパシャ写真を撮りまくっているので、私は邪魔しないように待ってあげよう。

 

 入退場口から少し進むとバンドの物販や人里で名前をみかける食事処が屋台で出店しており、物販スペースには既に長蛇の列が出来ていた。

 

 

「グッズは買わなくていいのか?」

「いや〜、私たちもう買えるグッズなんてないでしょ?」

「でもこの会場限定の法被が出てるらしいよ」

「え!? ほんとに!? 急いで並ぶわよ!」

 

 

 ジャーナリストなんだからもうちょいちゃんとリサーチしとけよ……と思いつつ、慌てて二人で物販列に並ぶことにした。並んでいる途中、空から突然現れた虹色のヘンな服を着たやつが

 

『ここから市場の香りがするわ! 私の縄張りにピッタリね!』

 

 とかなんとか言って騒ぎ始めたので一時場が騒然としたが、すっ飛んできた警備員によってコテンパンにやられた後、どこかへと連れていかれた。

 

 警備員が博麗の巫女なのはちょっと贅沢すぎやしないか? 

 

 

 

 バンドの物販で二人とも希望した寸法の法被を手に入れられたので、それを羽織ったあと買ってきた昼食を食べつつ来た道を戻る。

 暫く歩いていると、ボランティアスタッフがチケットの確認を行っていた。それを見て私が普通にそちらへ行こうとすると、はたてちゃんにちょっと待って! と止められた。

 

「なに?」

「そこは関係者枠の入口じゃなくて一般客用よ! それに、こういう時は記者らしく入らないと!」

「ああごめん。でも私が記者になった記憶は無いぞ」

「何を言うとるか〜! 今日のあなたは花果子念報所属の藤原妹紅特派員でしょ!」

「えぇ……? もしかして私肩書きついてたのか?」

「当たり前でしょ!」

 

 彼女がこっちよ! といいながら関係者用の入場口に近づいていったので急いで後ろについて行く。

 

 

 ……

 

 

「お名前とバックステージパスの提示をお願いします」

 

「『花果子念報』の記者、姫海棠はたてです」

「えーっと……助手の藤原妹紅だ」

 

「名簿を確認致しますね。

 ……はい! お二人共に名前が確認できましたので、通過していただいて大丈夫です!」

 

「ありがとうございます!」

「ありがとう」

 

 

 中に入ると、既に外からも見えていた巨大なステージが改めて私たちを出迎える。思えば数年前に起きた、花が咲き乱れた異変の頃に見た小さなステージから随分とまぁレベルアップしたものだ。

 

 

 バックステージに向かう人と一般客の進路は被らないように紐で仕切られており、まぁ余程おつむが弱くない限りはこちら側に侵入したりとかはないだろう。ステージ脇を抜け、いよいよバックステージに入るとそこには射命丸文がいた。

 

「あれ! 文じゃない! なんでここに?」

 

「仕事よ、仕事。今日のMC担当なのよ。貴方、だいぶ浮かれた様子だけれど大丈夫なの?」

「私はこれでいいの! どうせ新聞の内容はアンタのやつよりは間違いなくしっかりしてるんだから!」

「あややっ!? ホントに失礼な奴ね!」

 

 同行者がライバルをみつけ、人目を気にせずにカァカァ騒ぎ始めたため、

 

「……おい二人とも、焼鳥になりたくなければここでドンパチするのはやめてくれ。他の人だって沢山いるんだからな」

 

 というと

 

「「はい……」」

 

 という返事が帰ってきた。よろしい。

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 取材許可済みの腕章を着けた私達は、まず初めに今回招待してくれた九十九姉妹の元に向かった。ステージの裏側なんて入ったのは今回が初めてであり、恥ずかしいからこんな事を人には言えないが、正直めちゃくちゃウキウキしてる。

 バックステージには出演バンドそれぞれの楽屋や機材置き、スタッフの待機所などの様々な用途で使用されるテントが何張りも立ち並んでいる。そのため、これじゃあ探すのも困難かな……と二人で話していたところ、少し離れた場所でグラサンを掛けた三人が長椅子に座っているところを発見した。

 もしや瞑想中か? と思い、様子を見ようとした瞬間

 

「皆さん! お疲れ様です〜!」

 

 と、はたてちゃんが話しかけに行ってしまった。

 すると、彼女たちはうん? と顔を上げて

 

「あっ、妹紅にはたてだ。おはよう!」

「ふわぁ〜、あらおはようお二人共」

「あっ、お二人共わざわざ来てくれたんですね! おはようございます!」

「おはよう皆。もしかして三人で瞑想とかしてた?」

「え? いや、ここで光合成してたら眠くなって寝ちゃってただけです!」

 

「……光合成?」

「はい、周りの向日葵みたいに陽の光を浴びれば調子が良くなるんですよ!」

 

 それってただの日向ぼっこじゃないか? と私が訝しんでいる間にも、八橋ちゃんは気にせず陽の光を浴びることの良さについてペラペラ喋っていた。

 

「アッハッハ! アーティスティックな感性ってやつですかね! 知らないですけど!」

 

 

 

 ……

 

 

 

 あの後、無事に三人の意気込みだとか色々な話を聴けたので、私たちは次に誰の話を聞こうかと作戦会議をしていた。すると、背後から

 

「おはよーございます!」

 

 と強烈な一声! 

なんだ!? と思い振り返ると、そこには本日の一番手である鳥獣伎楽の二人がいた。

 

 

「あの、もしかして花果子念報の取材中ですか?」

「えぇ、そうよ!」

「やっぱり! もし時間があるなら私達も取材してもらえたりしますか!?」

「モチロンOKよ! 

 ゴホン! ソレじゃ、まずは響子さんのほうから意気込みを聞かせてもらえますか?」

 

「ヤッター! 

 鳥獣伎楽の幽谷響子です! トップバッターとして観客の皆さんを盛り上げられるように全身全霊かけて吼えますよー!」

「山彦らしい意気込みありがとうございます! それじゃあ次はミスティアさん!」

 

「どうもー、鳥獣伎楽のミスティア・ローレライです。みんな、私の歌で狂わないよう注意してね♡」

「大人の魅力! 流石屋台の女将小慣れてるゥ! 

 ミスティアさん、ありがとうございます!」

 

「なぁみすちー、正直お前の歌を聴かされたヤツらは狂気を避けられないと思うんだが」

「チッチッチ、甘いわね妹紅。 私の歌でお客さんがおかしくならないよう、この人がサポートしてくれることになったのよ!」

「やっほー妹紅! 腕章、似合ってるわね!」

 

「鈴仙ちゃん! 確かに、鈴仙ちゃんが居れば安心だな!」

「まぁ、私的にはかなりハードな仕事だけどね」

 

 何でも、元々鈴仙ちゃんは体調不良者の発生に備えてモブ因幡達と共に永遠亭から派遣されたらしいが、それに目をつけたミスティアに能力で何とかして欲しいと懇願されたらしい。

 

「こう言っちゃ無責任なやつみたいで嫌だけど、まぁ頑張れよ」

「うん、頑張るわ私」

 

 そんな話を鈴仙ちゃん、みすちーとしていると、

 

「ミスティア! 二人一緒の写真撮りたいらしいからこっち来て!」

 

 と響子が呼ぶ声が聞こえたためみすちーは離れていき、はたてちゃんの指示に従って二人でメロイックサインを作ってポーズを決めているのが見えた。あの二人によるステージがどうなるかは私には分からないが、まぁちゃんとリハーサルもやってるだろうし大丈夫だろう。

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 鳥獣伎楽の二人、鈴仙ちゃんと別れた私たちは次なる出演者の元へと向かう。

 

「次いくとしたら吸血鬼バンドかしらね!」

「でも今のところ一度もメンバーを見てないけどほんとにココに居るのか?」

「居なかったら問題になるでしょ……」

 

「とりあえず楽屋テントに行ってみるか」

「そうね!」

 

 楽屋の前につき、はたてちゃんが素性を名乗り入室の許可を願うとソッと入口が開き、私ら二人は中へと入った。すると中にはスタイリッシュな衣装で着飾ったメンバー達が勢揃いしていた。が、それよりもまず気になったのは、中で漂うイヤな匂い。私も自分の能力故によく嗅ぐ匂いだ。

 

 

「ね、ねぇ妹紅……この匂い」

「あぁ……間違いなく何か生き物が焦げた匂いだ」

 

「ご名答。流石はフェニックスの異名を持つ蓬莱人ね」

 

 目の前に座る吸血鬼、レミリア・スカーレットがそう言う。従者である咲夜によって自身の羽に包帯をまかれながら。

 

「どうした、何があったんだ」

 

 まぁ何となく予想はできるとはいえ、心配になって私が理由を聞くと、レミリアはいつもの感じで語り出す。

 

「ちょっとした隙をついてやられたわ……。空に浮かぶ忌々しい"アイツ"にね!!!」

 

 ピシィッ! と天井を指さすレミリア。周りのバンドメンバー達が皆顔を手で覆う中、包帯を巻いていた咲夜が手を止めて話し始めた。

 

「……ステージ裏は陽当たりが悪いから大丈夫! と言って、日傘も持たずに外に出ようとしたのです。結果的に言うと、たまたま陽の光が差していた為、お嬢様の翼の一部分が少し焼かれてしまいました」

「ちょっと咲夜! なんでソレを言うのよ!」

 

「オイオイレミリア、あの時誰も賛成してなかっただろ。それなのにそんな事したんじゃあ擁護のしようも無いぜ」

「そうだよお姉様。今の時間に出たら太陽に殺られる、なんてことは産まれたての吸血鬼でも分かるわ」

「ぐうう……!」

 

 皆の言うことが的を得ているせいで何も言えないって顔してんな、あの吸血鬼。そりゃあそうなるだろとしか言えないから黙るしかなく、テントの中は嫌な沈黙に包まれた。

 

 

 

「……バンマスのレミリア・スカーレットは多くを語らなかった。しかし彼女は自身の体質を忘れ、日傘を持たずに外に出ようとするほどにやる気に満ち溢れていた……っと」

「お願いそれだけは書くのをやめて!?」

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 結局、あの何だか居た堪れない空気感がキツくて、私たちは魔理沙にちょっと話を聞いた後に出てきてしまった。気を取り直して取材の続きとやらをやることにしよう。

 開始前に出演者に話を聞くのもこれが最後だ。私の一推し、プリズムリバーwithHにね。

 

 

「え? 取材? 良いですよ!」

「やった! ありがとうございます!」

 

 

「……あれ、そういえば雷鼓さんがいませんけど……」

「はたてちゃん、雷鼓なら外で寝てたよ」

「えぇあの人まだ寝てんの……?」

 

「とりあえず姉妹3人で受ければいいよ!」

「そうね。多分向こうのバンドでコメント出してるだろうし」

「私も雷鼓の所行こうかな〜……」

『メルラン(姉さん)!』

 

 

「……演奏とプライベートのギャップにビックリするわよね。このバンドって」「それがいいんだよ」

 

「えーっと、それでは今回の意気込みの方を皆様に聞かせて頂きたいのですが」

 

「トリに相応しい演奏を皆に聴かせるわ」

「普段やらない曲もやるから楽しみにしてね!」

「ふわぁあ、いつも通りやりまーす!」

 

「はい、ありがとうございます! 本番の方も楽しみにしています!」

 

「……一人欠伸してんのは大丈夫なのか?」

「全く、恥ずかしい限りだわ……」

「もー、本番ちゃんとやるからいいの!」

 

 

 

 ……

 

 

 

「これであらかた巡ったか?」

「そうね! あとは実際に演奏を聴いてそのレポートを書くのと、終わった後に感想を聞くって流れになるわ」

「そうか。ちなみに今の時間は?」

「13:45ね。10分後から開会の挨拶だからそろそろよ」

「分かった。ありがとう」

 

 

 ちなみに今日のスケジュールは

 

 

 13:55~14:00開会の挨拶

 

 14:00~14:45 鳥獣伎楽

 

 15:05~15:50 Blood Devil's Kisses

 

 15:50~16:30 転換・トークタイム

 

 16:30~17:30 飛行者天国

 

 18:00~19:00 プリズムリバーwithH

 

 19:00~19:10 閉会の挨拶

 

 という内容だ。

 

 始まるまでたかが10分、されど10分。この絶妙な間があってこそ、ライブの良さが感じられるんだと私は考えているが、どうやらそれは一般の客達にとっても同じらしい。太陽の畑を包む今日この日だけの熱気を肌に感じながら、私たちは開演を待った。

 

 

 






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