九十九弁々思い立つ。   作:聖徳王の笏

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堂々とした立ち振る舞いでサラサラと答えながらインタビュー受ける人よりも、頭の中で言葉を反芻しながらじっくりしゃべる人の方が好きなんですよね。まず、九十九姉妹とは(ネットリ)

そんな話です。



スポイラーの独占インタビュー

 

はじめてのライブから1ヶ月と半月が経ち、12月も中頃。

 

世間が師走の喧騒の中で段々と慌ただしくなる中、私達はひたすらにドサ回りをすることで顔を覚えてもらおう!作戦を実行していた為、正直師走とかそんなの関係なくない?みたいな感じで日々を過ごしていた。

そして、私達の地道な活動によって結果が実ったのか、有難い事に先日我が家の郵便受けを見た所、とある鴉天狗からバンドメンバー三人に話を聞きたいので取材を申し込みたい!との熱意のこもった手紙が投函されていたため、メンバーで相談したうえで依頼を受ける旨の手紙を送ったのだ!

 

 

 

 

「新聞にインタビュー記事載せてもらえるなんて夢みたいよね。私新聞記事に載るの夢だったのよ」

なんて義姉が言い出したため、

 

 

「そうなんだ、でも私たち新聞自体には何回か載ってるけどね。悪い意味で」

 

 

「八橋、それ自分で言ってて悲しくないの?」

 

いつものノリで義姉に返事を返したところを雷鼓姐に突っ込まれて、思わずはっ!となる。

たしかに、もう今の私達義姉妹は昔とは違う。

あの頃のようなやらかして世間を賑やかすだけの存在ではないのだから。

 

 

 

 

 

「文々。新聞に載れるなんて嬉しいわね〜」

 

 

ではない…よね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当日。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは皆さん、改めまして初めまして〜!

私『花果子念報』という新聞を普段書かせていただいている姫海棠はたてと申します!皆さん今日はインタビューをお引き受けくださりありが……

 

ナニコレ…?」

 

早口で捲し立てるツインテールの鴉天狗、姫海棠はたてさんがこちら三人を見て呆然とする。

その理由は私から説明します。

 

 

 

 

 

まずその一。

体調不良が一周回ってぽけーと明後日の方向を向いている、重度の二日酔いに陥ったドラマー。

曰く、昨日の夜に里で出会った鬼に何故かうちのバンドの曲を褒められ、手持ちの瓢箪から酒をガブガブと飲まされたらしい。そばに居て救出してくれた妹紅さんが言っていた。

多分やったのはかつて私達もお世話になったあのお方だろう。哀れ。

 

 

 

 

そしてその二。

 

インタビューしてくれる新聞が普段愛読している文々。新聞ではなかったことを当日に知って落ち込み、静かにサングラスを掛けて地蔵のように動かなくなったベース。

いやあの義姉さんさ、お手紙貰った時点の相談でちゃんと向こうのお名前だしてるし、勝手に勘違いして自滅して落ち込んでいるのは相手に失礼だからやめてほしいんですけど。

 

 

 

最後。

 

このもはや問題児そのものとなってしまった二人を、妖怪の山にあるはたてさんの事務所兼ご自宅へと無理矢理引っ張りながら連れてこさせ、疲れで顔面が蒼白となった私こと九十九八橋である。

 

 

いや、相手もビックリだよね。

なんだか分からないけど私達のことをとにかくテンション高めで迎え入れてくれて、お茶まで用意してくれていざインタビューしよう!って思ったらコレだもんね。

 

私が同じ立場なら普通に落ち込むよ。

ていうか、まさか一人で喋ることになるなんて想定していなかった。そもそも、うちのバンドは普段のライブのときに初めと終わりの挨拶以外ほぼMC入れないし…。

 

はたてさんがコミュニケーション強者っぽいからなんとかなる気もするけど、不安すぎるのである。

 

 

 

「えっと…大丈夫?なんか顔色が悪いけど…」

 

 

 

「ああ、いや、大丈夫です…。いつも通りなので」

 

 

 

いつも通りじゃないでしょ…何言ってんだろ、私。

 

 

 

「あのさ…、インタビューしちゃって大丈夫なの?」

 

 

「おねがいします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、コホン。

それではまずはじめに、1stEPレコードの地獄百三十六ヶ所巡礼の発売おめでとうございます!良ければ制作の背景などをお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

 

「あのー、えっと、そうですね。初めてライブでやった時からかなり手応えがあったんですけど、あのーその時の音響担当の河城にとりさんがどうやらご知り合いの山童の方に伝えてくれたみたいでですね。でえっと、山童の皆様にご協力頂いて4日間録音作業をして、そのテープを河童のエンジニア部門に渡してって感じで作りました。はい」

 

河童カンパニーのエンジニア部門とは、ほぼプリズムリバーwithHの専門機関と化していた、ミックス・マスタリング作業を行い、レコード盤製作も山童といがみ合いながら共同で行う部署である。最近特に作業もなく暇していた所を今回の録音に招集され、鬼に支配されていた時代もびっくりするレベルで馬車馬の如く働かされたのである。

 

「最後のはあの河童たちが川で溺れるほどに疲労したという噂のマスタリング作業のことですね。

…ところであのー、本当に調子悪そうですけど大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です」

このバンド、活動に巻き込まれた人含めて全員満身創痍である。

 

 

 

 

 

 

「えーとそれじゃあ、今回は全体的にかなり強行軍での制作となったということですね。」

 

 

「そうですね、まぁ、あのー、わたしたちとしては全然年明けに発表するのでも良かったんですけど、山童のたかねさんが『なぁお前ら!絶対コレは今年中に出した方がいいよ!!!』とね、まぁ激推ししてきてくださったので、そう言ってくれるならじゃあそうしようか!なんて3人で言いながら河童の皆さんにお願いしました」

 

「(アイツ、山童たちに面倒事押し付けようとして大失敗したわね…まぁ、こうやって話で聞くぶんには面白いからいいけど♪)

…そうだったんですね!ライブに出演する度にお客の方が増えていらしている印象のある『飛行者天国』ですが、楽曲の音源化を待ち望んでいたという声も多かったのではないでしょうか。

そこについての反応などはどうでしたか?」

 

 

「うーん、そうですね。まぁ私達のバンドは妖怪の方々によく聴いていただいてるんですが、例えばはたてさんのようにちゃんとしたお家に住んでいて、かつレコードプレーヤーをもっている方とかなら良いんですけど、あのー、常にふらふら移動してるタイプの人達には、そもそもレコードを聴いてもらえる環境がないので、そこをどうしたもんかなって相談をにとりさんとかたかねさんとはよくしてます」

 

 

「リスナーの方第一にって考え方が話を伺っているだけでも伝わってきますね。流石の余裕です」

 

 

「まぁ……やっぱり音楽って人に聴かせる以前に自分たちが満足出来るかってところなので…そこで満足いってる以上は聴く人達の目線で物考えた方がいいかなって…私思うんですよね!ハイ」

 

 

「おぉ……。

(たまたま一度観てからファンになっちゃったから思い切って取材を申し込んだワケだけど、この人達ってこんなにしっかり考えてるんだ。

…………最初はどうなるかと思ったけど、正直このインタビューは宝の山を見つけた気分になるわ)」

 

 

「それではここまでボーカルの八橋さんにここまで話を伺っていたので、他のおふたりにも話を聞きたいと思います。」

(あっ、聞くんだ…)

 

 

「ベースの弁々さん、今回初めてのレコーディングだったとお伺いしました。初めてのレコーディングはどうでしたか?」

 

 

 

「…………………スゥー…ハァー…」

 

 

 

 

 

「えっと………いや本当にどうしたものかなぁ。前念写した面霊気みたいな顔になっちゃってる…」

 

 

「あの、私に質問する形のままで大丈夫です。多分暫くこの状態だと思うので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません…。それでは気を取り直してインタビューの方に戻らせていただきますね。

 

…このインタビューに先立ち私も音源の方を聴かせて頂きました。メンバー全員が楽器の付喪神ということもあり、非常に完成度の高い盤になったのではないかと思いました。八橋さんはご自身の中で、曲作りで大切にした事などはありますか?」

 

 

「そうですね…。あのー…、うちのバンドの曲はその時のノリみたいな部分から出来るのがほとんどなんです。例えば、スタジオでの練習中にセッションが始まってあれ、今やったのいいんじゃないの?みたいな。

そういう、なんか……なんかいいよねっていう気持ちを忘れないようにしながら曲作りをするようにしてます」

 

 

「その感覚、聴いている身としてもよく分かります!

ライブとはまた違った魅力があるって言うか〜……あっ!!!

ってそう!友人が言っていました!」

 

 

「へぇ〜、ご友人の方が…」

 

「鴉天狗の方でも私たちの曲を聴いてくださってるんですね…。妖怪の方って、なんというか特徴がはっきりしてる方が多いので、出来る限りライブに来てくださる場合は覚えようとしてますが…そんな感じの雰囲気の方って居たかなぁ…」

 

 

 

(流石に髪もおろしててマスクもしてるし全身ジャージなら私って気付かれないはず…)

 

 

天狗の人達っていつも新聞くれる射命丸さんもそうだけど、端正な顔立ちの人多いし思い出すならすぐだよなぁ…。

そう思いながら良く来てくれるお客さんの顔を思い出そうとしていると、今の今までずっと上の空だった雷鼓姐が隣でモゾモゾと動き出した。

 

 

「ん゛あ〜、あだまいだい………アレ、よく見たらはたてさんってさ、よくライブ来てくれる紫のジャージの人じゃない?」

 

 

「「え???」」

 

 

思わぬ乱入者。いや正確にはバンドへの取材なので乱入ではないものの、まさか突然口を開くとは誰も思わず、二人は素っ頓狂な声を上げる。

 

 

 

「え?八橋気付かない?ほらこの前のライブにも来てくれて最前で見てくれてた…多分、何回か来てくれてるはずだよ」

 

 

「え〜っと…あぁ、あの時の。……確かに、言われてみれば見覚えのある雰囲気…」

 

 

「え!?わー!わー!恥ずかしい!最近ハマってるバンドの本人達の前で身バレするなんて!

しかもバレた原因の雷鼓さんはもう寝てるしー!モー!!何この人!」

「スヤァ」

 

 

 

「雷鼓姐はそういうところあるから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、はたてさんが身バレした時以外のインタビューの間、二人は本当にただの地蔵のままであった。大股開いて項垂れたり、起きたかと思えばはたてさんの出してくれたお茶菓子を食べて、これ美味しい…と一言言った後に気絶していたり。

 

インタビューの後、横二人が面白いから写真を使いたいと言われて、まぁ別に良いですよと答えたり、二人をたたき起こして上着を着させ、外に置いてあるベンチに寒さに縮こまりながら腰かけてる所を斜め横から撮ってもらったりした。

 

 

はたてさんがジャーナリストとしての誇りを掛けて挑んだはずのインタビューはほぼ私の話したことしかネタになるものがなく、私も私で疲労が抜けずに普段の私らしくない受け答えになってしまった。というか今は隣にいる存在がネタ枠の二人をどう書くのかが心配でたまらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、練習も日雇い労働もない完全オフの日。

義姉妹二人で自宅にてせっせこ洗濯作業をしていると、玄関前の方から声が聞こえた。

 

 

「ごめんくださーい!花果子念報の姫海棠はたてですー!」

 

 

 

どうやら例のヤバいインタビューについての記事の原稿が書き終わったのだそうで、それを見せにわざわざここまでやってきてくれたのだ。

 

ちなみにはたてさんが来た時に横から義姉が

 

「八橋、この方って?」

 

と聞いてきた為、肘で脇腹をどついておいた。

 

 

「取材とかでお忙しい中、わざわざこんな所に出向かせてしまってすみません…」

 

 

と私がいうと、はたてさんは

 

 

「いいんですいいんです!

私普段は家で持ってる念写の能力を使って話題になりそうな人を片っ端から念写して、それを頼りに記事を書いてるので!」

 

 

と、綺麗なサムズアップを見せつけて若干心配になる内容の返事を返してきた。

この人、意外と出不精なのかな…。

 

 

「ところで、肝心の記事なんですけど…こんな感じになりました!」

 

 

そう言ってはたてさんはふんふんとしながら手に持っていた革の鞄から原稿を取り出し、私達へと差し出した。そしてそれを受け取った私たちは縁側へと腰かけ、その原稿に目を通す。

 

 

「どれどれ?

 

『花果子念報独占インタビュー!

新進気鋭の怪物バンド・飛行者天国は幻想郷一を夢見るか?』

 

わぁ、見て義姉さん!ホントに私達が載ってるわ!」

 

「凄いわね、八橋。

まぁ私、全然インタビュー受けた記憶ないのだけど」

 

 

「そりゃあ、だって義姉さんは気絶してたじゃない。

いつも読んでる文々。新聞じゃないのにショック受けて」

 

 

「そうだったかしら」

「そうだったのよ」

 

(八橋さん家は文の新聞を取ってるのね…、

この記事で絶対ウチに乗り換えさせてやるわ!!!)

 

 

「えっと、続きは…

 

『 飛行者天国は先月の初めに結成されたばかりの三人組ロックバンドである。

メンバーは、泥臭さのあるプレイと独自の世界観のある詩を書く魅惑のギターボーカル・九十九八橋、ムダのない静かな佇まいと、それに反比例する狂暴なラインを弾く寡黙なベース・九十九弁々、複雑な曲構成であるPLWHの時とは正反対の正確なエイトビートを刻み、前に立つ二人を裏で支えるドラムス・堀川雷鼓の三人で構成されている。』

 

…義姉さん、寡黙だったっけ?」

 

「こう書かれてるってことはつまりそういう事でしょ?」

 

「そうですよ!ほら!バンドをやる上でのキャラ付けにもなるし良いかな〜って思って!」

 

「ほら八橋、はたてさんもそう言ってるわ」

「じゃあいいかぁ」

 

 

そんな会話を三人でしつつ、更に原稿を読み進めると、私が真っ白な顔であのーとかそのーとか言いまくりながら質問に答えているところだけではなく、何度か質問されたのに一切ソレに答えなかった義姉さんの部分や、雷鼓姐の会心の一言の部分も何故かちゃんと載っかっていたため、この人、ホントにうちのバンドのこと気に入ってくれてるんだなぁ…とニコニコの表情で確認作業をしているはたてさんを横目で見ながらしみじみ思った。

 

 

 

 

「あ、そろそろ終わりの項ですね。えーっと?

 

『 活躍中の飛行者天国がつい先日に出した1stEPレコード・地獄百三十六ヶ所巡礼は妖怪ロック、地獄の沙汰も閻魔次第、思兼の白い粉、地獄百三十六ヶ所巡礼の全4曲が収録済みである。レコードは山童カンパニーの直売所、人里○○丁目+-番地♪♪号にある飛行者天国事務局にて取り扱い中。

 

この記事を読み、一度でも興味を持ってくれた音楽好きの方は是非この盤を手に取って聴いて見てほしい。』

 

……凄い!凄いよ義姉さん!こんなにしっかりと私達のこと書いてくれてるよ!はたてさん、ありがとうございます!」

 

 

「ふふん、褒めても記事しかでないんだからね!

 

それで、どうですか?

ここまで見て書かれたら困る!みたいな事とかは特にないですか?」

 

「私は大丈夫です!義姉さんも大丈夫よね?」

「………」

 

 

「…義姉さん?どうしたの?」

 

「いや、私は寡黙な最強ベーシストだから黙ってようかなって」

 

 

 

「「…今は喋っていいんだからね!?」」

 

「あら、そうなのね」

 

 

 

 

 

 

 

「今日はいきなり押しかけちゃってすみませんでした!

新聞として刷ったら最初に持ってきますね!それでは!!」

 

 

「こちらこそわざわざここまで来てくださりありがとうございました!

義姉共々楽しみにしていますね!」

 

 

はたてさんがびゅーんと飛んでいくのを見届けた後、

 

「八橋、私達って周りの人達に恵まれてるわね」

 

と、義姉が言ったので、間違いなくそうだねと返して二人で家の中へと戻った。

 

 

 

そして二日後、珍しく義姉妹揃って寝坊してしまったため、慌ただしくしているとはたてさんがやってきて、なんと新聞を10部も持ってきてくれた。

曰く、玄関前にカゴを掛けてそこに新聞を入れておけば、気になった人が読んでくれるかも!との事だったので、インタビューのページを切り抜いたものを貼り付け、用意した籠に何部か入れておくことにした。

すると、早速それの効果があったのか、昼過ぎ頃から我が家に人が訪ねてくるようになった。

 

「新聞に目を通したら二人の事が載っててびっくらこいちゃったよ!良かったら1枚おくれ!」

 

「八百屋のおじさん、わざわざありがとう!一枚千五百円です!」

 

「安いねぇ!これは掘り出し物の予感がするからご近所さんにも勧めとくよ!」

 

「えぇ!?そんな、流石に悪いですよ!」 「いいのいいの、じゃあね!」

 

 

と、こんな調子でわたし達義姉妹は出したばかりのレコードを売ることに成功し、新聞の宣伝効果えげつない!!と、インタビュー記事を書いてくれたはたてさんへの感謝の念を感じ入ることとなったのだった。

 





ありがとうございました。

ちなみにバンドの事務局は二人の家です。
それにしても思兼の白い粉、色々ヤバそうな曲名すぎるな。

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