九十九弁々思い立つ。   作:聖徳王の笏

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閑話色強めの本編です。
頑張れ、にとり!負けるな!にとり!




Dr.キューカンバーの眠れない仕事

玄武の沢・河童の総合研究所にて、研究所の責任者である河城にとりは目の下に大きなクマを作るほどに何日も寝ないまま、自身に課せられた作業を淡々とこなし続けていた。

ここ1ヶ月のあいだの彼女と言えば、音響担当として訪れた先々で例の付喪神達が奏でる音の暴力に身を晒されたり、アンプからもギターからも音が出なくなった!!と言ってそれらを持って魔理沙が訪ねてきた際に道具達からは何一つ異常が見つからず、念の為電池の交換やコンセントへの刺し直しをした所普通に動いたので、

 

「盟友、お前例の太陽光バッテリーボックスはちゃんと晴れの日に外に置いていたのかい?」

 

と聞いた所、

 

「あの電気箱のことか?置いてないぜ」

 

と返事が返ってきて、そりゃあ電池切れするわなという結論で落ち着き、ただただ無駄な時間を過ごしてしまったり…。

 

そして、極めつけはやはりあの付喪神バンドによるデス・レコーディングだろう。

正直、聴くぶんにはあのバンドはにとりも好きだ。だが、レコーディングとなると話は別なのだ。奴らの同業他者(まぁどっちとも関わってる雷鼓が居るが)ことプリズムリバーwithHの場合、一曲一曲の曲の長さはそこまでなのだが、この付喪神バンド・飛行者天国はと言うと、1曲4分30秒以上がデフォルトであり、また、スカスカな演奏をしてると思えば、突然悪鬼の叫びが如き轟音を鳴らし始めたりするため、恐ろしいほどまでに録音作業に気を遣わねばならぬのだ。

最後の曲なんか、ライブだと7分くらいの曲だったはずが、ヤツらの『なんとなく』という一言からなんと25分もの長さとなり、聴いているだけで白目を剥き、涎を垂らしてしまいそうなトランス状態に陥りかけながら作業したのは記憶に新しい。

コイツら、作る曲が依存性高すぎて危険だけど、そろそろ妖怪の賢者とかに怒られないのかな?と、レコーディング中にたかねが言っていたが、にとりは知っている。プレミックスが終わった段階の時、耳元に空いたスキマから

 

「それ、1枚焼いて下さる…?」

 

と、あの八雲紫が聞いてきたのだ。

 

どうやら賢者サマはヤツらの練習を死角から覗き見するのが好きなようで、最近の趣味はソレと胸を張って言えるのだそう。気持ち悪い!!

 

ということは、だ。このバンドが如何に妖怪達の強烈なファンを捕まえ、トランスさせ続けたとしても、このたった一人のファンのもつ力によって、幻想郷の他の賢者連中にヤツらが裁かれることはほぼ無いに等しいのだ。

あの時、熱心にバンドの魅力を語り続けてきた八雲紫は普段の胡散臭さの欠片もなく、コレが素なんじゃないか???と思わせてくるくらいには、所謂ただのバンギャだった。

 

とまぁそういったことでにとりには心身共に疲労が溜まっており、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

「あー!もう!普段ならこんなの全然苦労しないのに!あいつらの音楽が頭から離れないせいでビジョンが見えないよ!!!」

 

このままじゃ埒があかないし、きゅうりを一服してくるか…。

そう考え席を立った時、研究室の扉がノックされる。どうぞと答えると、研究員の河童が失礼しますと言って部屋へと入ってきた。

 

 

「あのー、所長」

 

 

「…何?今からあたし休憩しに行こうかと思ったんだけど」

 

 

「いや、その、お客様が…」

 

 

「えぇ?今日アポイント取ってた人なんていた?」

 

 

「いやそれが…」

 

 

「おっす!にとり、遊びに来たぜ」

「こんにちは!にとりさん」

 

薄々この二人だろうなって気はしてた!

 

 

「あのさ、ごめん2人とも………、一本だけきゅうり食べてきてもいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、それで前八橋が提案してくれた携帯式のレコードプレーヤーをどういうふうに作ればいいか考えてた所だったんだ」

 

 

「ほぉー?そんなの出来るもんなのか?」

 

 

「そう簡単にできたら今苦労してないよ…」

 

 

「つまり、あまり研究の方は進められて無いって事?」

 

「そうなるね…」

 

「そっかぁ…ごめんねにとりさん、私があんなこと言ったばかりに」

 

「いや謝らなくていいんだ。我々としても挑戦しがいのある提案だったしね…」

 

 

実現出来るか分からなくなったことで、なんとも言えないような雰囲気になった室内。私たち二人で項垂れていると、横で考え事をしていた魔理沙が

 

「ああッ!!

おい、お前ら!アテになる奴らを思い出したぞ!!」

 

と言いだした。

 

 

幻想郷一の技術者こと河童を差し置いて頼りになるやつなんているか?とにとりさんが言うと、魔理沙は怪しい笑みを浮かべ

 

 

「おいおい、わたし達はべつに関係ないが、お前の場合はもう少し言葉遣いを改めた方がいいんじゃないか?

少なくともそういう立場の者の所に行くんだからな」

 

と言って、肩掛けカバンを掛け直したあと、自慢のとんがり帽子を被ってどこかへ行く支度をし始めた。なんだか分からないが、とりあえずそれに置いていかれまいと私たち二人も慌てて外へ出る支度にかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ盟友、何処に行くんだ?

どんどん高度を上げてるけど月にでも行くつもりかい?」

 

 

「なんだまだ気付かないのか?

直属の部下なのに察しの悪いやつだぜ」

 

 

「……!?まさか!」

 

 

「そうだ!わたし達はこれから守矢神社へと行くぞ!アイツらなら外の世界の技術を多少なりとも知っているからな!

急げよ二人とも!早くしないと椛がこっちに来ちまうぞ!」

 

 

こうして私達は時折後ろから聞こえて来る、そこの三人〜!止まりなさ〜い!という声を無視して山頂へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

「うっわぁ〜…淒い景色…」

 

追手を振り切って山頂へと到著すると、そこには博麗神社にも勝るほどの荘厳なる大きな神社と、その背に広がる広大な湖が目に入る。

 

「おーい!早苗ー!居ないのかー?早苗ー!」

 

魔理沙が何方かの名前を呼んでいるとその刹那、なんとも言い表せないようなバチッとした力が周囲の空気に混じり始める。

それを感じとった魔理沙がお、来たな!と言うと、空の上から1人の女性が胡座をかきながら降りてきた。

 

「そこの三人、初詣に来るにはあまりにも早すぎるし、神である私に対する挨拶も無く境内で騒ぐとは。

些か礼儀ってモノが足りないのではないか?」

 

 

「参拝のことか?あいにく、私には魅魔様がいるからな。神さまは信じてないんだ」

 「ひゅいっ!?八坂さま…!ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません!!」

 

二人はあの人と面識があるのか〜。

そんなことを考えていると、注連縄を背負った件の人がこちらを見て

 

「…おや、初めて見る顔だね。一応自己紹介しとくか

 

我が名は八坂神奈子!この守谷神社の祭神であり、戦と風を司る神霊である!そこのお前、名は何という?

 

と名乗りを上げた。

 

え?

ひ、ひえええ!この人神様じゃん!

言わないと、やられる!!

 

「えっと、私は琴の付喪神の九十九八橋といいます!

まぁ、今はギターに憑いてるので正確にはギターの付喪神ですけど…。

あの!八百万の神の末席に座るものではありますが、どうぞこれからよろしくお願い致します!!!」

 

ビビりながらも何とか自己紹介成功!

義姉さんが居たら余計なこと言って相手を怒らせそうだし、連れてこなくて正解だったわ…!

そんな調子でほっとため息をつくと、それを見ていた八坂様が

 

「……ぷっ、ははは!なにもそんなにオドオドしなくても良いよ!別に取って食うわけじゃないしね!!

アタシのことは好きに呼んでくれて構わないよ。

 

それにしても、妖力があるのに少しだけ神力もあるから何かと思ったら付喪神だったのか!

八百万の神の一柱として君を歓迎しよう」

 

ふぅ、最初怖い方かとおもったけど優しそうな方でよかったぁ〜。

一瞬本当に緊張しちゃった。

 

一転して和やかなムードになる境内。

しかし、そこからさらに一転して神奈子様とはまた別の強い気配が場に漂い始める。

 

 

「おい神奈子、そんなにその子をビビらせたら可哀想じゃあないか」

 

 

そんな一言が聞こえたあと、不思議な帽子をかぶった人が本殿の屋根の上をぴょんぴょんと飛び跳ねながらこちらへとやってきた。

 

「そうは言ってもさ諏訪子、流石に最初くらいは神として威厳を示さないと」

 

「そう言ってこの前も参拝に来たガキンチョのこと怖がらせて最終的に泣かれてたじゃあないか」

「ちょ!?ソレは言わない約束でしょ!」

 

 

「…あの、貴女は…?」

 

 

「あぁ、コレは失礼!

アタシは洩矢諏訪子。守谷神社で祀られてるもう一柱の神さ。気軽に諏訪子ちゃんって呼んでね!」

 

 

諏訪子ちゃん…様?

 

 

「彼女はギターと琴の付喪神の九十九八橋。何でも私らに用があるらしくあそこの二人と来たらしいぞ」

 

自己紹介しようとしたら神奈子様が代わりに私のことを紹介してくれた。嬉しい。

 

 

「そうなの?

アタシ達が役立てることならなんでも手伝うよ。神サマってのは頼られるの大好きだしさ!ね!神奈子!」

 

「そうね。助けに応えることこそ力強き神の本懐ってモノだわ。

それで八橋、貴女は何を頼りに来たの?」

 

 

「お二人は外の世界から来たと魔理沙から伺ったんですけど…、携帯式のレコードプレーヤーをこの幻想郷で作れると思いますか?」

 

「「携帯式のレコードプレーヤー???」」

 

「はい。

私は義姉と友人の三人でバンドをやっていて、この前一枚目のレコードをだしたんです。」

 

「「ほう?」」

 

「…でも、私のバンドのファンにはそもそも家すら持っていない妖怪の方も多いので、もし携帯式のレコードプレーヤーを作ることができたら、そんな方々も私達や他のバンドの曲を自分の好きな時に聞けるんじゃないかなって思ったんです!」

 

 

「確かにね。しかし、携帯型のレコードプレーヤーねぇ…」

 

「……あっ!!神奈子!

早苗が出かけるときに肩身離さず持っていくあの箱は!?」

 

「…ああっ、アレか!!」

 

 

何かを思い出し、ゲコゲコ言わんばかりにぴょんぴょん飛び跳ねる諏訪子ちゃん様。それに続いて神奈子様も何かを思い出す。

 

 

「あの、お二方とも一体何を思い出されたんですか?」

 

「ちょっと待ってね!今早苗を呼び戻すから!あの子なら君の求めてるものを持ってるはずだよ!

…実はアタシと早苗は先祖と子孫の関係だから血縁の力で呼び戻せるんだよ!」

 

 

もしかして、まさかの念話能力!?何それカッコよすぎる!

 

 

 私がそんなことを思っていると諏訪子ちゃん様は人里がある方向へと歩き出し、神奈子様もそれに続いたので私もあとを追いかける。

すると二人は横一列に並び、神奈子様が強い風を巻き起こした。

その瞬間、諏訪子ちゃん様が

 

早苗ーー!!!戻ってこーい!!!

 

と、地面が震えるほどに大きな声を出して早苗さんとやらを呼び出す。

いや、あの流れで念話じゃないんかーい!

 

 

 

 

 

 

 

 

神奈子の神力の流れた風に乗ったことで、諏訪子の声は神社から遠く離れた人里へといともたやすく届く。

ちょうどその時、里にて日課の信者勧誘を行っていた守矢神社の風祝・東風谷早苗はその声を聞き逃さなかった。

 

「これは…、諏訪子様が呼んでる!行かなきゃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、その前に演説用のお立ち台片付けないと…」

 

 

そう言って早苗は側面に[守矢]と書かれたお立ち台を片付ける。

常識にとらわれない山の巫女も、世間体は気にするのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神奈子様と諏訪子ちゃん様曰く、里から神社までは飛んでもそこそこの時間がかかり、しかもこの時期の境内は人を待つにはあまりにも寒いらしい。なので、用件が済むまで本宮から少し離れた神社の関係者三人の住む家の中に入って待ってくれても構わないよとお二人が許可を出してくれた。

 

「師走ともなるとさすがに日が沈むのが早すぎるのぜ」

 

外を見ながら魔理沙がそう一言漏らす。それにつられて私もまた外の景色を眺め、魔理沙の言う通りだなーとしみじみ思った。

近くに置かれた時計にはどういう仕組みなのかわからないが16:30と書かれている。

 

 

時計に表示された時間が17:20となったころ、主神二柱と一緒になってわたし達三人も炬燵へと入り、まるで自宅のようにくつろいでいると、玄関のほうから

 

「すみません諏訪子様ー!!!遅くなってしまいました!!」

 

と声が聞こえてきた。

そして、どたどたと足音を立ててこちらの部屋に近づいてくると、開口一番に

 

「諏訪子様!急に呼び出して何か緊急事態ですか!?それとも…またアイス買ってきてとか変なお願いのためだけなら許しませんよ!!」

 

というので、それを聞いた魔理沙とにとりがぶうううっと噴き出した。秘密をばらされた諏訪子ちゃん様が恥ずかしそうに照れて頭を掻きながら

 

「違うよ早苗、早苗の留守中に来客がきたんだ」

 

というと、早苗さんはこちらの存在に気づき、

 

 

「そうだったのですね!はじめまして、私はこの守矢神社の風祝を務めている東風谷早苗といいます。」

 

 

とあいさつしてくれたので、こちらもまた立ち上がりあいさつをする。

 

 

「はじめまして、付喪神の九十九八橋といいます!よろしくお願いします」

 

 

「八橋さんですね、こちらこそよろしくお願い致します!」

 

 

お互いの挨拶が終わると、間髪入れずに魔理沙が

 

「おい、早苗!お前、箱を出してくれ!」

 

とまるで亭主関白の親父のような注文をしたものの、早苗さんはイマイチピンときてない様子だった。

ムクリと起きた神奈子様があの音楽が聴ける箱だよーと言うと、早苗さんは頭に大きなびっくりマークが見えそうなほどにハッとした表情で

 

「ウォークマンのことですね!!!」

 

と大きい声を出したのでちょっとだけびっくりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なるほど、それで私のウォークマンが八橋さん達が求めてるものに限りなく近いと踏んだってことですね」

 

「…レコードを聞けるようにするとばかり考えてたけど、コンパクトなテープに録音した物を機械で聞けるようにするって手があったのか…」

 

にとりさんが早苗さんのウォークマンを眺めながら自身の研究の方向性がズレていた事に落ち込んでいるのを見ると、何かいたたまれない気持ちになる私である。正直、機械に関しては専門外すぎるので、どういう仕組みなんだろと考えながら眺めていると、共に眺めていたにとりさんが声を震わせながら、

 

「…なぁ、早苗ちゃん。このウォークマンとやらを私の研究の犠牲にすることは可能かい?」

 

と早苗さんに質問した。

わざわざ暗い表現で質問したのは、大事なものを使えなくさせてしまうことと、成果を出せずに失敗するかもしれない事への恐怖故だろう。

早苗さんは目を閉じてうーん…と唸ると、静かに喋りだした。

 

「実はこれは私のお母さんの形見なんです。私には母代わりであるお二人が今もそちらにいますが…。

母の遺したウォークマンと、私の好きなアイドルの曲をダビングしたテープ……。実母と私の繋がりの証となる物はコレだけです…」

 

「そ、そうだよな…。肩身離さず持ち歩くって聞いた時からもしやって気がしてたよ、ゴメン…」

「でも」

 

「…!」

 

「…今の私はただの諏訪市の高校生ではなく、幻想郷の、守矢神社の風祝・東風谷早苗です。私の今の家族は神奈子様と諏訪子様のお二人であり、生みの母はとうの昔に別れました。

だから…私のウォークマンによって幻想郷の多くの人が音楽を身近なモノとして感じられるようになるのなら、私は喜んで協力させていただきます!」

 

「ほんとに?…本当の本当の本当に良いんだね?」

 

覚悟を決めた早苗さんに対し、にとりさんが何度も確認をする。

 

「はい!だってにとりさん、私達が出した依頼でヘマした事ないじゃないですか。信頼できる方だからこそ、ですよ!」

 

早苗さんからの言葉を聞いたにとりさんはうぅ〜と唸り、目を拭いながらありがとう、ありがとうとだけ言葉を漏らし、涙を流した。

にとりさんがおちつくまで、早苗さんはずっとその横でにとりさんの背中をさすってあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あっ!おい見ろよ、雪降ってきたぜ!」 「えっ!ほんとに!?」

 

 

「こりゃあ大変だ、三人とも今日はもうウチに泊まっていきなよ」

「そうした方がいい、下山中に遭難されでもしたら困るからね」

 

 

「急に押しかけた上に早苗に迷惑かけちまったんだぞ、いいのか諏訪子?」

 

 

「そりゃあもう歓迎よ!早苗の事はあの子が決めたことだし、ウチにはあったかいお風呂もあるしね!」

 

「わーい!」「よっしゃあー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日からもう3ヶ月程が経った。

 

早苗によってにとりへと手渡されたウォークマンは河童、山童の連合による選りすぐりのエンジニア達によって昼夜を問わずに解析された。解析作業はえらく順調に進み、あたしらもだけど、あんたら流石の実力だね!とお互いを励まし合いながら作業を進めていた。

 

因みに、たまに一服するモノの話でキュウリの方が美味しい、いや、コウゾの実の方が美味いというようなあまりにもどうでもよすぎる内容で揉めた。このプロジェクトに参加した河童いわく

 

「あいつら、コウゾなんてニッチすぎる実で天下のキュウリ相手に張り合おうとしやがって!!」

 

と言った感じで、河童・山童特有の相撲での喧嘩が起きたりもしたらしい。

しかし、他の部分での妙な相性の良さで、チームはまず瞬く間にコンパクトテープと小型化したテープレコーダーなどの開発に成功する。そして、開発主任のにとりの枕元に『デモ盤 ありがとう』という妙に可愛らしい文字が書かれた付箋とともに、早苗が持っていたウォークマンと同機種の取り扱い説明書が置かれていたことが、このプロジェクトへの王手となった。正直、ここまで来たらあとは消化試合である。選抜チームはヘッドフォン製作と本体の製作に分かれ、風呂すらも入らなくなるほどに競って製作を続けた。

 

そして、ついにその時が訪れる。

 

「それじゃあ、行くぞ?みんな、準備は出来ているな?」

 

ヘッドホンを着けたにとりが皆に確認すると、各々が頷き返したため、にとりは再生ボタンをカチッと押す。すると、たかねによる取り扱いの解説音声が耳の横から流れ始めた。にとりがよしっ!とガッツポーズをして周りのもの達に回して聞かせていき、聞いたもの達から次々と歓声があがることとなった。

 

感動を噛み締めたあと、これは世に売っても恥ずかしくないぞと制作チームが考えたところで、まずは原案を出した九十九八橋、研究に多大なる貢献をした東風谷早苗、オマケでまたアポ無しでやってきた霧雨魔理沙に成果を見せ、それぞれに飛行者天国1stEPが収録されたカセットテープと共にプレゼントすることにした。耳元で流れる音楽に対して各々が三者三様の反応を示したものの、そのあと

 

「「「(ここまで再現できるなんて、)すごいです!(んだぜ)!!!」」」

と皆好意的なリアクションを見せてくれた。

 

 

こうして発売が決定されたウォークマンは人妖問わず入手困難になるほどの人気商品となり、委託販売を行った各地で売り切れが続出するほどであった。

 

 

 

 

 

 

「今日こそは!あのウォークマンとやらを幽々子さまの分まで手に入れてみせます!」

 

そう言って香霖堂までやってきたのは半人半霊の庭師、魂魄妖夢。

ここもまた委託販売を行う店の一つなのだ。

 

「あら、妖夢。こんな所で会うなんて奇遇ね」

「咲夜!」

 

そして店の前でたまたま遭遇したのは完璧なる瀟洒な従者、十六夜咲夜。

 

「貴方ももしかして、アレを?」「えぇ、アレです」

 

従者がやる事はどこも同じである。

多くを語らずに二人は死地へと突入する。

 

 

 

 

店の中は信じられない程にぎゅうぎゅうであり、咲夜でも能力を使えないほどの混み具合であった。そして、何よりも…

 

「こーりんこれくださいなのかー」

 

「33,000円だね」

 

「はいなのか〜」

 

 

((ルーミア!?あの子、何処でそんなお金を……ん!?まさか!?))

 

店から出ていく後ろ姿を思わず二度見してしまう二人。

 

「今ので本日最後の在庫となります。待っていただいた方には申し訳ないけどもこればかりは許して欲しい」

 

店に入った瞬間にウォークマンが売り切れたのだ。

しかも、買ったのはあのただふよふよ飛んでるだけの印象しかない人喰い妖怪、ルーミアである。

 

 

 

 

「また買えなかったァ〜〜…これじゃ、流行に乗り遅れちゃうし幽々子さまにも怒られちゃう…」

 

「私も帰ったらお嬢様に怒られてしまうわね。『なんで咲夜は持ってるのに私は全然買えないのよ!!!』ってね」

 

「ん、あれ?咲夜は持ってるんだ?」

 

「出てすぐの時に自分のお給金で買ったのよ。いくらお嬢様相手でも流石にそれは渡したくないわ」

 

「咲夜ってそこら辺冷たいなぁ…」

 

「仕事は仕事、プライベートはプライベートよ。それじゃあ妖夢、私はこっちの道だから、またね。」

 

「じゃあね、咲夜!」

 





ルーミアちゃん、一体どこでお金を手に入れたんでしょうねぇ…。

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