九十九弁々思い立つ。   作:聖徳王の笏

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棒 は 注釈の入れ方 を おぼえた!!!

書いていて(アッすっげえ長くなる!)と感じたので分けます。

前半のなんかレトロでスペクティブなやつらは歴史的事象に絡めさせたくなる病を発症した私の趣味です。一部幻想郷仕様ですが…




九十九弁々の冒険 ① 

 にとりの大発明から少し時を巻き戻し、年末大晦日の人里。朝、私が縁側に座って寛いでいると、最近よく見ていたイカつい格好ではなく、普通の格好をした義姉が背負子に琵琶の入った木箱を入れ、出掛けようとしているのに気付いた。

 

 

「あれ、義姉さん。今日はベースじゃなくて琵琶を持って出るの?」

「えぇ。そろそろ今年も終わりでしょう? 今日は一日自由に出来るし、色んな所を周って琵琶を弾こうと思ったの。貴方も着いてくる?」

「いや、わたしは今日はいいかな。

 それに、わたしたちいつも二人で行動してるし、たまには別々の事をする日があってもいいと思うよ!」

 

「分かったわ。それじゃ、行ってくるわね」

「はーい、行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 家を出て、人里で何処か演奏するのに丁度いい所を探していると、義姉妹でよく行く甘味処が目に入った。このお店はよく来てくれるからって理由だけで私達のバンドが新聞に取材を受けた時の切り抜きを飾ってくれてるし、とりあえず頼むだけ頼んでみようかしら。

 

「いらっしゃいませー! あっ、弁々さん! いつものやつにしますか?」

「お願い。それと、急で悪いのだけれど、今日は一日かけて幻想郷の色々な所で琵琶を弾こうと思ってて……お店の方が大丈夫なら外の長椅子の所で琵琶を演奏してもいいかしら」

「大丈夫ですよ! 最近注目されてる弁々さんの演奏なら他のお客様も文句ないと思いますよ!」

「ありがとう。助かるわ」

 

 

 隣で大量の菓子を食べている桃色の髪にシニヨンを着けた女性を横目に見ながらお茶と羊羹を食べて一息ついたあと、私はケースから琵琶と撥を取り出し、弾き語りの準備を始める。

 

 そうね……演目は羅生門にしようかしら。

 何かこれをやるべきな気がするわ。

 

 この話は、かの酒呑童子*1を倒した源頼光の部下である渡辺綱が、橋の上にて美女に化けた鬼に襲いかかられて咄嗟にその腕を切り落とした。それに怒り狂った鬼が腕を取り戻すために彼の伯母へと化け、綱へと接近するが失敗。慌てて故郷の山へと逃げ帰るという内容の話だ。

 

 

 私が琵琶の調律を行っていると、

 

「おお、琵琶の演奏だぞ!」 「ちょっと聴いていこうよ!」

 

 といった調子で物珍しさからか、どんどん人集りが出来始める。

 横に座って相変わらず一服していた女性が

 

「……え!? ちょっ! コレじゃ出られないじゃない!」

 

 と慌てているが、まぁしょうがないわよね。

 調律が終わったので、そろそろ演目に入りましょうか。

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 そうして弾き語りが終わり締めの挨拶をすると、初めから聴いてくれた人達がたまたま自分の前に置いていたケースに銭を入れてくれた。

 あの人、結局隣から動けなかったわね。と思って横を見ると、向こうもこちらを見ているではないか。何故かじとっとした目つきに、包帯巻きの右腕を摩りながら。

 

「あの、何か?」

「……私の事、知っていましたか?」

「え? どこかでお会いしたかしら」

 

「────なら、良いんです。……演奏! 良かったですよ」

当時の自分の恥ずかしい行動を思い出したけど……

 

「あぁ、それは良かったわ。ありがとう」

 

 短い会話の後、彼女は会計して足早に立ち去っていった。

 

 演奏が気に食わなかったとか、真横で突然やり始めるな! とか文句を言ってくるのかと思ったけど違かったみたい。妙に顔を赤らめていたのだけが不思議だったけれど。

 さて、私もそろそろ出ようかしらね。

 

「お疲れ様でした! カッコよかったですよ!」

「急なお願いだったのに受け入れてくれて助かったわ。また来るわね」

「はーい! またのお越しを!」

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 気付けば私は歩いて妖怪の山の麓まで来ていた。

 自然の中孤独に演るのも悪くないわね……。そう思いながら再度調律していると、空の上から見知った顔が現れた。

 

「あやややや! コレはコレは弁々さんではありませんか、こんなところで一体何を?」

「あら、射命丸さん。自宅以外で会うのは初めてね。実は、かくかくしかじか」

「これこれうまうまって事ですね! 全然分かりません!」

「まぁ、やってみた方が早いわね」

 

 つむじ風のような勢いのある射命丸さんに合う題材としたらコレかしら。平家物語の源平争乱、一ノ谷の戦いの老馬の部分から鵯越の逆落としまでにしましょう。

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 語り終わり目を開けると、普段とは雰囲気の違う射命丸さんと、どこからか聴きつけてやってきたはたてさんと白狼天狗の方がいた。

 

「あやや……まさかよりにもよって遮那王の話を聞かされるなんて……」

「文のその表情みるの、久しぶりだわ〜。懐かしい話よね」

「特定の概念に縛られない射命丸さんらしい題材にしたわ。あまり良くなかったかしら」

 

 

「──────えっ! いや、弁々さんの語りは素晴らしかったですよ! けれど、その……」

 

 

「……実は子供の頃の九郎義経に鞍馬山で稽古を付けたのは「はたて!!! 余計なこと言わないの!!! 」うわうるさ!」

 

「……まぁ、弟子は師に似るって事ですよね、文さん。あっ、申し遅れました。私は白狼天狗の犬走椛です」 「九十九弁々よ、よろしくね」

五月蝿いわよ椛! 仕事増やすからね! 

「うるさいって……。 さっきから騒いでるのは文だけでしょ!」

 

 

 なんか射命丸さん、後から来た天狗二人におちょくられてないかしら。普段逆の立場の人がこういう目にあってるのって新鮮で面白いわよね。

 

「じゃあ私、そろそろ次の場所に行くわ」

 

「承知しました。お気をつけて!」

「文のだけじゃなくてうちの新聞も宜しくねー!」

 

 多分、あの三人は所謂腐れ縁ってヤツね……。

 珍しく暴走モードな射命丸さんを二人がかりで止めようとして、もみくちゃになっているのを後ろで感じながら私は山から出た。

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 次は何処に行こうかしら……。そう思って歩いていると、今度は気付けば霧の湖まで来ていた。

 ここら辺ってあんまり詳しくないのよね。わかさぎ姫ちゃんが湖のほとりにある風情のある掘っ建て小屋に住んでいるのと、なんかゲテモノ系の色した洋館があるって話は聞いたことがあるわ。

 そう考えていると、突然目の前に銀髪の女性が現れた。

 

「九十九弁々さまですね? お嬢様がお待ちですので紅魔館にいらっしゃってください」

「はぁ……それはまた急なお願いね。まぁ、良いけど。館の場所が分からないから案内して貰えると嬉しいわ」

「かしこまりました」

 

 こうして、私はいつの間にかウワサの館の目の前へと到着していた。ゆっくり目指す間も無く突然目の前で目にしたのも相まって、最強の私でもちょっとビビるくらいの禍々しい気配がするわね。

 当初出かけた時とは目的が変わってしまいそうだけれど、中に入りましょうか。

 

 

 ……

 

 

 

 

「此方がお嬢様のお部屋です」

 

 ついにここまで来たわね。

 先を進んでいた十六夜さんが扉をノックする。

 

「お嬢様! 咲夜です。お客様がお見えになられましたのでお知らせ致します」

「入っていいわ!」

「かしこまりました」

 

 中に入ると、館の主にしてはだいぶ可愛い子がソファへと腰掛けていた。

 

「来たわね! 私がこの館の主にして、名門スカーレット家の当主、レミリア・スカーレットよ!」

 

 ああ、そういうきゃらってヤツね。

 じゃあ、私も自己紹介しようかしら。

 

「それに対するこの私こそが、飛行者天国のベーシストにして最強の付喪神、九十九弁々よ。担当楽器は琵琶とベースよ、宜しく」

 

 即行で考えたポーズも決まったわね。

 私、アドリブ得意だし。

 

「……ねぇ、咲夜。アイツ、ここに来るまでもあんな調子だったの?」

「いえ、静かに私の後を着いてきてもらっていただけでした」

「妹とやらにコンタクトとった方が良かったかしら」

「わかりません」

 

 相手もびっくりした表情だし

 この勝負、私の勝ちね。

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

「それで、私達のようにバンドを始めたいけど、肝心のやり方が分からないから私に声をかけたのね」

「そうよ! 1回だけ私も貴女達のライブを見てその後香霖堂でギターも買ったのよ! コレ!」

 

 そう言って彼女が指を指す先にあるのは、義妹の枯れた赤とは真逆の真紅の、二つほどへの字のような穴が空いているボディで、弦を通すブリッジには義妹とは違ったタイプの発振機構が搭載されているギター*2だった。

 

「あっこの頭の部分の紋と読めない文字、私の義妹が憑いたギターとお揃いだわ」

「Gibsonね。ちなみにそれ、買った時に店主にも言われたわ」

「コレで幻想郷にギター奏者がまた一人増えたってことになるのかしら」

「そうよ!騒霊姉妹の長女、アナタの妹、そして私!」

 

「あと魔理沙もいるわ」

 

 

「───────え???」

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 私が依代を変える時に一緒に見つけたギターを彼女にあげたという話を聞かせると、レミリアちゃんは初めて魔理沙に経験で負けた……と、かなり落ち込み始めた。そんな姿を横目に見ると私の後ろからメイドの十六夜さんが話しかけてくる。

 

「魔理沙はウチの図書館からよく魔導書を盗んでいくの。でも最近、その被害がかなり減ったから住民達皆が不思議に思ってたのよ」

「新しいおもちゃを与えた私のおかげってことになるのかしら」

「そうかもしれないわね」

 

「ところで貴方、喋り方はそれで良いの?」

「良いのよ。言っておくけど、私たち初対面じゃないんだから」

「??? どこかであったかしら?」

「あら、覚えてない? あの異変の時、私が堀川雷鼓を倒したのよ。その道中で邪魔してきたのはどこの姉妹だったかしら?」

「あぁ……あの時の。

 たしかあの時は雷鼓からの呪法の伝授を受けて舞い上がってたのよね。

 そのせいか忘れてしまっていたわ、ごめんなさい」

「思い出してくれたのならいいのよ」

 

 そんな雑談をしていると、正気に戻ったレミリアちゃんがそうだわ! と何か思い出したかのように言う。

 

「ねぇ! あなた達のライブの時みたいにこのギターで大きな音を鳴らすにはどうしたらいいの?」

「普通にアンプに繋ぐだけよ。河童に頼めば作って送ってくれるわ」

「……アンプってなに!?」

「かくかくしかじかよ」

「全てわかったわ!!」

 

 なんかこの子、勢いが凄いから話してて面白いわ。

 そうだ、実際に目の前で使うところを見せればいいんじゃないかしら。

 

 

 

 ……

 

 

 

 

「そろそろお昼の時間だし、ご飯作らないとね〜!」

 

 そう言いながら食材を用意していると、なんだか隣の部屋が騒がしい。カタカタと音がするのだ。えっ……泥棒!? と思いながら部屋を覗くと、小刻みに震えながら空を飛ぶベースと周辺機材、泡を吹いて倒れている鬼人正邪がいた。

 

 何!? このカオス空間は……。てかホントに泥棒居るじゃん!!! そう思っている間にもベースたちは開いていた引き戸から外へと飛んでいき、謎に倒れていた天邪鬼だけが部屋に取り残された。

 

 

「…別に良かったんだよ、私を助けてくれなくてもさ」

「いくら貴方でも流石に心配だったからさぁ……それに、その食べっぷりからも見て分かるけど、しばらくまともに食べてなかったんでしょ?」

「うっ、そんなことない! 貧乏神に憑かれた訳じゃあるまいし」

(憑かれたのね……)

 

「……けっ、しょぼい飯だな! 貰うだけ貰ってやる!」

「ありがとう〜、おかわりあるから言ってね」

(チッ……! 調子狂うぜ……)

 

 

「おい、お前」

「何?」

「もし、また下克上するって言ったらお前とお前のアネキはどうする?」

「いや、別にいいかなぁ。わたしたちこう見えてもかなり強くなれたし」

「ちっ、聞かなきゃ良かった。

 

……ところで飯、ありがとうな」

 

 箸を置いた天邪鬼が立ち上がり、そう言って玄関へと向かう。

 

 

「……ん? この場合なんて返事すればいいの?」

「っ、本心だよ、バカが!  言わせるな恥ずかしい……

 

 

 あっ、本心もちゃんと言えるんだ。

 てか、飛んで行ったベースたちを追わないと!!!

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

「来たわね。アレが私の機材よ」

 

 

 弁々が急に『いまから私の機材をここに呼ぶから』とか言い出したので、パッとテレポートでもしてくるのかな、カッコイイ! と思っていたら、お昼ご飯を皆で食べる時間があるくらいには全然来なくて、期待外れでちょっと落ち込んでいるレミリア。その後、空を飛ぶ不思議な物体が館の近くに現れたという報告をパチュリーと美鈴から受け、こうしてバルコニーで日傘をさしながら待っていたのだ。

 

 デリバリーされてきた機材たちをレミリアの部屋に持ち込み、弁々が説明を始める。

 

「これがベース。

 最初は見つけた時に張られていた弦をそのまま張っていたけれど、今は魔力で出した弦を張っているわ。私とほぼ一心同体だから、私の体調が崩れるとそれに連動してネックがイヤな反り方をするわ」

「これがアンプ。

 河城さんに頼んで作ってもらったわ。一緒に貰ったこの太陽光発電の蓄電器に接続して、ベースとは魔力で紐付けする事で音を出せるようになるわ。こんな風にね」

 そう言ってアンプのメモリをあげる弁々。

 

 体調不良に連動するネックの反りって何!? と思い、全くその後の説明を聞いていなかったレミリアは、突然鳴った ブーン という大きな音に驚いてギャッ! と変な声を出してしまった。それに対して、普段から大きな音を出し慣れている弁々はこれくらいもろともせずに手癖のフレーズを弾いていく。そして一通り弾いたあと、

 

「いつもの格好じゃないと調子が出ないわ」

 

 といい、いやそれがいつもの格好じゃないの? とレミリアと咲夜の二人にツッコまれた。

 

 

 

 ……

 

 

 

「ほら、レミリアちゃん。このギターにこのケーブルを繋ぐのよ」

「わかった。……ねぇ弁々、私のことレミリアちゃんって言わないでよ! こう見えても500年生きてるのよ、私!」

「あら、そうなの? 私は……そうね、道具としての琵琶の頃も含めれば多分1000歳を超えてるわ」

 

「…………」

「うー……それは反則でしょ……」

 

 そんなことを言いながらセッティングをして、ようやく音を鳴らす準備が出来た。

 

「ねェ、これってベース用のアンプよね? ギター繋いで大丈夫なの?」

「大丈夫よ、こういうのは音が出ればいいんだから。お姉さんに任せなさい」

 

((大丈夫なんだろうけど不安になる……))

 

「じゃあ、ちょっと弾いてみて」

「分かったわ」

 

 そう言うとレミリアちゃんは膝にギターを乗せた後に右手の親指に何かを填め、指3本を使って軽快に弾き始めた。

 

「すごい! いつも弾く時より音が大きい! 

 ここのツマミってボリューム調整するところだったのね!」

「そうよ、そっちはトーン。こもった音からクリアな音までそこの調整次第で出せるわ」

「へぇ〜!」

 

 

 ……

 

 

 レミリアちゃんが満足するまで弾かせてその後片付けをしていると、彼女が私に質問してきた。

 

「どうだった!? 私の演奏は?」

「…………上手い。けど……そうね、なんかよく分からないけど、とても牧歌的に感じたわ」「!?」

「なんかこう……馬に乗って草原をかけたり、ツナギを着て白黒の牛の世話をしたりとか……そういう、生まれてこの方一度も見たことないような景色が見えたわ」

「えぇ!? なんで……!?」

 

 そんな会話をしていると、話は聞かせてもらいました! という聞き覚えのある大きな声が部屋の外から聞こえ、間もなく扉がバンッと開かれる。

 

「あの……、そういう開け方はしないでもらえると助かるのですが……」

「あっすみません」

 

 

 

 

 

「ゴホン、その理由は私が説明します!」

*1
萃香「ぐおー!やーらーれーたー!」

*2
Gibson ES-345 BTTFのロケで使われた個体。今現在も行方知れず





バンドやそれに準ずる存在を増やさないと首が締まる。

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