今年度から受験生。いつもより更新頻度が遅くなると思いますが、それでもかまへんと言う方がいてくれたら嬉しくなります
これが今年度最初の投稿だー!
十草がジャンヌと戦い更に二ヶ月経った。
世間では入学式なり始業式なりそういったシーズンになってきたがこの男には一切関係ないーーーー
「兄さん。この通り武偵中学に入学することに成功しましたがどうすればいいのでしょうか?」
ーーーーこともなかった。
十草の目の前にいる少女は金髪をロングにしており、やや垂れ目がちな碧眼を有しており、とても名前と一応容姿からして日本人な十草とは似ても似つかぬ風貌であった。
その少女は見た目こそ似ているようには見えないが、紛うことなき十草の妹である。
名を鑢茎十と言った。
「なんか窮屈な部屋だな。満足に動けやしない」
「ええ、鍛治設備も充実してませんし、正直なとこクソですね。壊してしまいたい気分です。それにこの服。機能性を重視したのかどうかは知りませんが動きにくいったらありません。私好みにしてもいいでしょうか」
「制服とかいうのの範囲を逸脱しないのならいいんじゃないか?り……リコリスとか言うのもあの動きにくい服を更にフリフリしたのを無駄に追加して更に動きにくそうになってたし」
「バカですかその人は。しかしそうですか。改造していいのなら私なりに改造してみますか。それで兄さん。私はここでどうしておけばいいのでしょうか」
茎十は最初の質問を繰り返した。
まず何故彼女がここにいるかと言うと兄であり唯一自分がマトモに覚えておける相手である十草が、武偵中学に入学してほしいと言ってきたのだ。
彼女としては兄である彼の言うことであるならば聞くことは普通のことである。だが今更になって何でこのようなことを言い聞かせたのか不思議に思ったのだ。
「あー、それな。まあ大体わかっているだろうけど『教授』の差金だ。確か……ああ、茎十の存在は主人公たちにヒントを与える役割だとかなんだとか言ってたな。サッパリ意味わかんねえけど」
「成る程。つまり私が兄さんのことを来たるべき時に教えればいいと。承りました」
茎十は兄がわかっていないこともわかってしまった。
どうやら兄と妹では妹の方が頭の出来がいいようである。
「そういや釵はどうしたんだ?お前が入学したんだからあいつもどうにかしなきゃいけなかったはずだが。確か武偵って帯銃、帯剣義務があるんだよな?お前の武器として登録したのか?」
彼は妹が鍛えた刀を思い出す。
彼も茎十の兄ということで慕われていたがそんな彼女がどうしているのか気になったのだ。
「釵なら武器として登録するよりは人とした方が通りが良さそうなので武偵高校の一年として入学しているはずです。私みたいな中学生よりよほど手っ取り早く、えぇっと……そう、神崎・ホームレス・アリアのことが調べられると思いますよ」
まかり間違ってもミドルネームが家無しだなんてことはない。
「そうか。なら俺は潜水艦に戻っておくが、何かあったら釵経由で頼む」
「ええ、それでは。兄さん」
十草は一頻り話した後に武偵中学の女子寮から抜け出し、夜闇に紛れてイ・ウーが保有している潜水艦に向かった。
「少し、いいかしら?」
イ・ウーに帰り着いたと同時に女の声が聞こえる。
十草は女の声がした方を振り向くとそこには余計な装飾語がいらない、ただ美しいとだけ称されるような美人がいた。
だが彼はそんな美人を見て
「なんで女の格好なんかしてるんだ?遠山金一」
と言った。
それに対し美人は
「あら?何の事かしら」
と、本当に何を言っているのかわからないと言った具合に首を傾げる。
それを見た彼は不思議に思ったが、そういうものだと考えることを放棄した。
「で、何の用だ?」
「貴方が二ヶ月前に倒したジャンヌの敵討ちと言ったところかしらね?まあ、ただの個人的興味の結果かしら。明日、私と戦ってくださる?」
「まあいいけどよ。あんたもじ……ジェリコみたいに戦闘前に時間をかけるのか?」
「ジェリコじゃなくてジャンヌね。さっき私が言ったんだけどなあ。私はそんなことないわよ?朝一に戦ってもいいわ」
「じゃあ明日適当に呼んでくれ。戦ってやるから」
十草としては今日はもうとっとと寝たいという気分であったので適当に返事した。
彼曰く遠山金一は見る者によっては天使のような、そして悪魔のような笑みを浮かべるのだった。
「本当に朝一なのな」
「だってその方が集中できるでしょう?誰かに見られて集中出来なくなるよりマシだわ。まあ、私も貴方もそういうのは無頓着なのでしょうけど」
彼、いや、彼女……?はクスクスと笑い十草を見ている。
少しばかり調子が狂うのか、それともいつものように面倒臭がってるのかはわからないが、十草は頭をボリボリと掻く。恐らくは後者なのだろうが。
「そういやあんたが金一じゃないと言うのなら俺はなんて呼べばいいんだ?」
純粋な疑問。
十草が昨日、目の前の人物に金一と呼び掛けたところ、本気で何言っているのかわかんないみたいな顔をされたのででは何と呼べばいいのかを聞く。
「あら、名乗ってなかったかしら。それはごめんなさいね。私はカナよ」
彼なの彼女なのか、ええい、もう彼女でいいや!は自分のことをカナと称した。
十草にとってはどうせあんたという呼び方になるだろうが、一応名前は覚えた……はず。
「さて、それじゃあ始めましょうか。私と貴方の輪舞曲を」
ここに無刀の剣士と遠山侍……いや違うか、遠山乙女……?の試合が相成った。
十草はいつものようにとは違うが、虚刀流の構えの一つ、無花果をする。
傍目には何も構えていないように見えるが、これも立派な構えの一つだ。
彼からすれば一度対峙し、出すことは『教授』の下にいればないだろうが、全力を出さずに勝った相手だ。
故に今回も勝つのは簡たーーーー
パァン!
「ーーーー……あ?」
突如として銃声が鳴り響き、そして左腕に僅かな痛みが走りそれを見てみると、銃創が出来ていた。
改めてカナを見直すといつの間にやら銃を持っている。
「ふふふ、大成功ー。流石に初見で見抜かれることはなかったわねー。どう?私の『不可視の銃撃』のお味は」
『不可視の銃撃』、遠山金一がカナになった時にのみ出来る技。
文字通り、撃った瞬間が全く見えない技だ。
現に十草はいつの間に拳銃が握られていたことを訝しがっている。
「けどこれ抜き撃ちなのよねー。だからまたホルスターに収めないといけないのよ」
そう言うとカナは十草が見ている目の前で太腿に巻いたホルスターに拳銃を入れ直す。大胆な行為である。
「ああ、成る程な……。そっちがあんたの本当の実力ってわけか。俺はあんたのことを見誤っていたようだ」
十草は遠山金一もといカナの実力に対する自分の認識をかなり上方修正する。
船での一戦は金一にとって全力を出せない状況での一戦だった故にあそこまで一方的に勝てたのだ。
なら彼も少しばかり本気になってもいいと判断した。
そこで二度目の銃撃。
だがそれは十草に当たることはなかった。
「あら、避けられちゃった。今まで見破られたことがないのが自慢だったんだけどなー」
などと言う割にはそこまで悔しそうな表情を浮かべないカナ。まるで見切られることが前提として使っていたみたいだ。
「じゃあこんな小細工なしに戦いましょうか。さあ、今度こそ輪舞曲の始まりよ?」
「いいぜ。ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうけどな」
まず動いたのは十草。
持ち前の身体能力を十全に発揮し一気にカナに近付き、そのまま一撃をーーーー叩き込めなかった。
十草は既に傷ついていた左腕を自分の体を庇うように前方に出していた。
そこには銃創だけではなく、いつの間にやら切り傷が無数についていた。
「なんか入れてんな、その髪」
「一度受ければわかるわよね。私のこの三つ編みには金属片が大量に仕込まれているのよ。まあもうこの状態では使わないけどね」
そう言うとカナは三つ編みを解く。
すると、中からカナの言葉通り金属片が複数落ちてきてそれが組み合わさっていく。
完全に組み合わさった時に彼女の手にはまるで死神が用いそうな大鎌・スコルピオが握られていた。
「そういやさっき小細工なしとか言ってなかったか?」
「あら、そうかしら?女は嘘を吐く生き物なのよ?」
いや、お前性別的には女じゃないだろうということは十草は面倒なことになるのがわかっているので言わない。本人も言うのが面倒だというのはあるが。
「まあいいか。流石に隠し札はもうないだろうし」
そう言って十草はクラウチングスタートのような構えである七の構え・杜若からカナに向かい走り出した。
十草はどんどん加速し、カナに肉薄する。
そしてカナから177.7cmに入った時に大鎌が振るわれる。
それは対象を切り裂くと言うよりは引っ掛けるように振るわれていた。
それを十草は左腕でガード。
しかしガードの感触が軽い。見ればカナはガードされたと同時にすかさず鎌を引き、今度は柄で叩こうとする。
それを十草は右腕でいなし近付こうとする。と、カナが拳銃による牽制射撃。
十草は足を引き銃弾を躱し、引いた足を首筋に叩き込もうと蹴りを放つ。それをカナは鎌でガード。だが余りの威力に大きく右に動かされてしまう。
「いっ……つつ。私の殺傷圏は半径177.7cmのほぼ完全な球状……だったはずなんだけどなあ。今のところ小技しかマトモに当てれてないなんて自信なくしちゃうなあ」
「俺の攻撃防いでおいてよく言うぜ。このままじゃ埒あかないから少し本気を出させてもらうぞ」
彼は手を銃の形に似せカナに向ける。
「あら、鳳仙花だったかしら?空気を弾いて弾となす技……。残念だけど私なら避けることなんて容易に出来るわよ?」
「だろうな。だからこうするんだよ」
彼は銃の形に似せた手を崩す。
親指を折り曲げ、薬指と小指を伸ばす。
それは彼がよく使う手刀の形。
カナはそれを訝しみ、そしてある発想に辿り着き、咄嗟に大きく横に跳ぶ。
ズザァァァァァ!
カナが先程まで立っていた場所を何かが通り過ぎ、それは壁に当たる前に霧散する。が、それが通り過ぎたと思われる場所には確かに斬られたような跡があった。
「……ジャンヌから聞いた何でも斬れるとか言う裏奥義の柊と空気を弾く裏奥義の鳳仙花を組み合わせたわね?さしずめ何でも斬れる空気の刃ってとこかしら。……凶悪な技を持っているわね」
「誰も出来ないとは言ってないしなあ。本当は使う予定なんてなかったんだが、あんたが予想より強かったから使わざるを得なかったんだ」
「それは褒められているのかしら?」
「ああ、褒めてる褒めてる」
彼はおざなりに褒めると改めて手刀を構える。
そして今度は右手で一振り、左手で一振り。計二振りの空気の刃がカナに襲い掛かる。
最初の一振りは余裕をもって横に跳び回避。次に来る一振りは回避してすぐのことなのでマトモな回避行動だとどう頑張っても足が巻き込まれる。
そう判断し、カナはスコルピオを地面に叩きつけることで棒高跳びの要領で跳ぶ。
だが途中で空気の刃が来たため、スコルピオが半分にされてしまう。跳ぼうとしていた最中に体重をかけていた物が無くなってしまったため、バランスを崩してしまう。
そこに十草が接近。回避行動が取れないと悟ったカナは半分になってしまったスコルピオの柄で防御行動をとる。
だがそんなのは無意味とばかりに柄を蹴り飛ばす。そこに十草は掌底を叩き込もうと腕を振りかぶる。
蹴り飛ばされた衝撃で腕ごと持っていかれたが、十草の行動を見て飛ばされた腕を無理やり戻す。
カナは腕をクロスしてガード。そこに十草は両手で掌底を叩き込む。
「虚刀流奥義・飛花落葉!」
叩き込まれた腕から衝撃が迸る。
カナは今まで以上の衝撃に吹き飛ばされるーーーーことはなかった。
「あら……?」
衝撃は確かに来た。その感触も感じ取れた。だが何故か吹き飛んでいない。
この状態でも全く訳がわからずに疑問符を浮かべるが十草の言葉で疑問が氷解する。
「飛花落葉は相手の表面にダメージを与える技だ。まあ鎧崩しってやつだな」
鎧崩しという言葉を受けて己の服の状態を見る。
すると服はズダボロになっていて隠し切れなくなった鍛え上げられた肉体がよく見えるようになっていた。
「とても凄い技ね。裏じゃない奥義もここまで強いものなのねー」
カナが着ていたのは武偵高の制服。
それは犯罪者との武力衝突を前提として制服が作られているため、当然のことながら防弾且つ防刃仕様のそんじょそこらの服とは違う一品となっている。
それをまさか掌底の一撃でズタボロにしてしまうのは予想できていなかった。表においては。
「うーん、これは私の負けよね。スコルピオもこんなになっちゃったし……。まあ楽しかったし良しとしましょう。それじゃあね、十草」
カナはツカツカとその場から立ち去る。
一人残された十草は自分の左腕を見て
「全力じゃないとはいえ傷付けられたのは久し振りだっけか。あれが本来のひ……ヒストリアモードってわけか」
一文字違うだけで大分違う。断じて歴史には関わりがない。
彼は左腕に空いた銃創に指を突っ込み弾を抜き取るとボソリと呟く。
「虚刀流裏奥義・竜胆」
するとたちまち十草の左腕の傷が塞がっていく。
スコルピオがまだ金属片だった時に付けられた切り傷も、『不可視の銃撃』により穿たれた穴も。
そして完全に治ったのを確認し、一度グルンと大きく腕を回すと納得したのか十草もその場から立ち去る。
その顔には僅かに笑みが浮かんでいるような気がした。
後日、何故だか鑢十草ホモ疑惑が流れたが否定もせず肯定もせずでイ・ウーに疑惑の渦が巻き起こったのだがそれは別のお話。
また新たな虚刀流裏奥義のお披露目。
今度は一応王刀・鋸が元ネタの裏奥義です。まあ効果のほどは大分強いというか悪刀・鐚混じってね?と思われるでしょうが、そんなことはないんじゃないかな?(震え声)
この話の裏で原作主人公たるキンジがアリアと一緒に峰理子リュパン四世を倒しています。まあどうでもいいね。
次回はついに原作主人公と対面する……かも