すまんがありゃ嘘だ。
主人公は出したが新キャラ……と言うほど真新しくは感じないかな。まあ出させてもらったよ。
「はぁ……」
俺こと遠山キンジは昼休みに学食を食べに食堂にいた。
溜息を吐いているのはここ最近面倒なことばかり起きているからだ。
理子が武偵殺しだったり、白雪が暴走したりと色々だ。
「何を溜息を吐いているのだ、遠山」
俺がハンバーグ定食を、同じテーブルに座っていたアリアが持ち込んだ桃まんをモソモソと食べている時に近付いてくる女がいた。
二人見知った男を連れてきて。
「不知火と武藤は分かる。けどなんでお前がこっちに来てんだよ、飛騨とがめ」
「おやおや、同じ探偵科の仲ではないか。いかんぞー。如何に遠山が女嫌いなどという渾名で呼ばれようとも、判りやすい女性差別の言は慎むべきだぞ?」
「あー、はいはい。分かりましたー」
不知火と武藤に挟まれる形になっているとがめはフンス、と胸を張る。
こいつも理子みたいなトランジスタグラマーというわけではない……とは思う。
けど、アリアより2cmしか身長が高くないのにその胸囲はアリアより遥かに大きい。まさに驚異的な胸囲格差ってやつだ。
んで、不知火ってのはイケメンの方で、俺が一年の時に所属していた強襲科でよくパーティーを組んでいたクラスメートだ。
武偵ランクはA。つまり武偵として優秀ってこった。俺なんかとは違ってな。
武藤も同じく武偵ランクはAなんだが、武藤が所属しているのは車輌科なんで、畑が違う。
で、飛騨とがめはというと……俺と同じE。
けど俺とは違う点が一個ある。
それは俺が試験をボイコットした結果Eランクになったのに対して、とがめは試験を受けて尚Eランクというものだからだ。
けどこいつは俺なんかと違ってそれなりの実力を有しているように思える。いや、なんとなくだけど。
「あんた、妙な容姿してるわね」
「おいっ、バカ!」
桃まんを食べるのを一区切りつけたのか、アリアがとがめの容姿を指摘する。
俺がそれに対してバカと言ったことで銃を突きつけられた。理不尽だ。
「よく言われるよ。そりゃあ髪が真白で、左右の瞳の色が違い、更に左の瞳孔の形が十字とくれば好奇の視線で見られるのも無理はない。だが、思っても口にしないというのも大切だぞ?神崎」
「アルビノってわけじゃなさそうね。アルビノだったら瞳の色も白くなるはずだから。なら心的要因ってとこかしら?」
へえ、そうだったのか。
俺はてっきりアルビノだから髪の毛真っ白なのかと思ってた。
というか、アリアが推理しているところを見るとホームズの子孫なんだなって思えてくる。
「そうだな。例えば私の母が無実の罪を着せられて捕まっているとかな。それなら母が捕まったことのショックでこんな髪になってしまってもおかしくあるまい?」
「……っ⁉︎」
とがめの言葉にアリアが反応する。
そりゃそうだろうな。
とがめが言ったことは偶然なのかどうかは知らないが、アリアが現在陥っている状況と同じだからな。
「或いは、そうだな。尊敬していた兄がシージャックされて殺されてしまった、とかでもありだぞ?」
今度は俺のかよ……!
こいつ、実は知ってるんじゃねえか?
アリアのことも、俺のことも。
「それか激しい憎悪に身を焦がし、結果この髪になったと考えてもいい。考えるだけならいくらでも出来るからな」
こいつ、前々から思っていたけど何者なんだ?まさかかなえさんに罪を被せた奴らの仲間か?
謎は尽きないな、ホントに。
「フフン、存分に悩むがいい。乙女の中は秘密でいっぱいなのだ。ではな、若人よ。私は既に昼餉をとったのでな。戻らせてもらおう」
そう言い残してとがめはスタスタと去って行った。
見た目も言動もどこかおかしく感じてしまう。アリアの件に関わったからか?
「なんであんな奴と一緒に来たんだ?武藤、不知火」
「気付いたらいつの間に、と言ったところかな。僕は武藤君と話しながらここに来てたんだけど、気付いたら僕と武藤君の間に飛騨さんがいたんだよ」
「そうそう。あれはマジでビビったわ。あいつ、本当にEランクか?ランク詐欺じゃね?」
「知るかんなもん。俺の方が知りたいわ」
不知火と武藤が俺たちと同じテーブルに座り、そこで白雪のことを訊かれたり、アドシアードについて話し合ったりして今日という日は終わった。
……飛騨とがめ。
あいつと知り合ったのはここ最近だが、あいつにも注意を払うべきか?
「今頃、遠山に神崎は私の存在を訝しんでいるのだろうな。あんな(意味深)が付きそうな会話をしていたら私もイ・ウーの一員かと思われたかもしれん。まあ、今はそんな些事はどうでもいい。重要なことじゃない」
東京武偵中学の女子寮に足を進める少女がいた。
その少女とは先程遠山キンジらと会話していた飛騨とがめである。
彼女は道中ブツブツと独り言をしながら、その歩みを弛ませることなく向かっていた。
暫くして、女子寮に着き、ネームプレートを確認することをせずにある一室へと向かう。
その一室の扉の前に立つとインターホンを鳴らすことなく扉を開けた。
ガチャッ。
鍵がかかっていなかったのか、アッサリと扉が開き、中への進入を許してしまう。
とがめはそのままズカズカと中に入っていき、そこで一人の少女と邂逅する。
「お待ちしておりました。稗田トングさん……でしたっけ?」
「苗字も違えば名前も違う。私は飛騨とがめだ。以後間違えることのないようにな」
「それはお約束できかねます。私は兄以外の人間を把握することが困難でして。兄もまた、同様です」
部屋の中にいた少女の名は、鑢茎十。
現在イ・ウーに所属している鑢十草の妹であり、唯一の肉親でもある。
「それにしても私が来ることがわかっていたようだが、私のことを調べてくれたのか?。いや、そうではないな」
「ええ。私は未来を観ることができますから。貴女が来ることは把握してました。尤も、どんな用件かは知りませんが」
「お命頂戴しに仕った……と言えばどうする?」
「それは怖いですね。私は兄ほど強くありませんから、貴女には敵わないやもしれません。ですが、私じゃなければいいだけの話です」
そう言ったと同時に床板を豪快に突き破って何かが現れる。
その何かは茎十の前に立ち、彼女を護るようにとがめの前に立ちはだかった。
「大丈夫?茎十」
「ええ、今のところは何も問題ないですよ、釵」
「お主は強襲科に入った一年で武偵ランクはSの新田釵か?どうにも怪しいと思っていたが、まさか再現……いや、改修したのか。完成形変体刀を」
とがめが完成形変体刀という名前を口にした時に茎十の眼が見開いた。
その名前を知っている者は数少ないと言うのに。
「一体どこでその名をお聞きになったんですか?私達や完成形変体刀は歴史に葬られた存在であると言うのに」
「なに、私にもそれなりの情報収集源はあるということだ。そして私がここに来た目的はお主の兄、鑢十草と言ったか?彼を我が手中に収めることだ。まさしく『虚刀・鑢』は生きている武器だ。今の私は武偵という身である以上、表立って人殺しが出来ぬのでな。彼さえいれば私の目的に一歩どころか二歩、三歩も近付く。で、お主の兄は何処にいるのだ?」
「残念ですが、武偵高にはいませんよ。兄はイ・ウーにいますから」
「なんだと?しまったな、そうだとわかっていたのなら遠山や神崎を挑発するようなことを言うんじゃなかった。……いや、彼奴らの行動を逐一チェックしておけばいいのか。どうせ彼奴らなら今後ともイ・ウーと関わりを持つのであろうからな」
とがめは顎に手を当て少しの間考え込み、新たな結論を出す。
それから茎十と釵に向き直り、提案を持ちかけた。
「鑢茎十、新田釵よ。私と『戦姉妹』になろうではないか」
「アミバ、ですか?」
「違う。自称天才ではないぞ。アミカとは簡単に言えば指導システムだな。後輩を先輩が指導してよりよい武偵にするシステムと思えばよい。そこで私は新田釵。お主を戦妹にしたいと思っている」
「私?それは一体どうして?と言うか何か意味があるの?」
「意味ならある。私がお主と接触しても不自然に思われない。同様にお主もまた然り、だ。そしてお主は強襲科だ。なれば武器の整備なり改造なりで装備科に世話になることだろう。そこで、茎十の出番だ。お主は装備科なのであろう?それに釵の造り手、いや、鍛え手でもある。更には腕もいいときた。それならば如何に中学生とて装備の整備なりを頼むのはなんらおかしい話ではない。これで強襲科の釵と、装備科の茎十とで接点が出来るわけだ」
フンスと胸を張りながら自らの提案を語るとがめ。
しかし、茎十には魅力的とは到底思えなかった。
「成る程、確かにそれならば私達が一同に会していても不自然はないでしょう。ですが、それをすることの利点が私にはわかりませんが?」
「ふむ、利点、利点か……。そうだな、利点ならあるぞ」
「それは一体?」
「お主の兄に司法取引を持ちかけさせることができる。如何様な理由でイ・ウーなんぞに属したかは知らぬが、私の予想が正しければ、お主の兄はイ・ウーを売らないだろう?」
とがめの予想を聞き、茎十は頷く。
確かにあの兄ならイ・ウーの情報を我が身可愛さに売ることはないだろう。
「となるとだ。イ・ウーに属してしまっている以上、大なり小なり犯罪行為に加担していることは明白だ。そんな犯罪者に与えられるのは、確実に重い罰だろうよ。だが、私のこの冴え渡る頭脳があれば、お主の兄の罪を有耶無耶に出来る」
「……随分と自信に満ち溢れているね?化物揃いとされる教師陣を、貴女が出し抜けるの?」
黙って聞いていた釵が疑問の意を表する。
それは、とがめの能力を疑問視し、教師陣の能力を高く評価する内容だった。
「無論、是だ。それに化物揃いとて、それはあくまで武偵の実力としての話だ。一応は人間である以上、出し抜くことは可能だ。そして、私ならそれが出来ると自負している」
釵の眼を真正面から受け止め、見つめ返すとがめ。
その眼は真剣そのものであり、彼女が本気で言っていることを伺わせた。
「……ふむ。釵。十勝さんと阿弥陀を組みなさい」
「えっ、いいの?茎十?」
「だから私の名前はとがめだと言っとるだろうが!」
「ええ、構いませんよ。兄がもし捕まってしまったら脱獄なんて真似もしないでしょうから。簡単に抜け出せますけどね。なら、この鶏冠さんの考えに乗ってあげるのも悪くはないと思いまして」
「と・が・めだ!」
「茎十がそこまで言うんだったら……。けど、手続きとかは貴女がしてよね。私はそういう情報をインプットする必要性が感じられないから」
「あ、ああ。承知した。これで私とお主は戦姉妹だ。これからビシバシと指導してやるからな」
とがめはどうにか札を手に入れたことに安堵した。
このままトントン拍子で事が進めばいいのだが……そう上手くはいかないのが世の常だろう。
今はただ虚刀流当主をどのように手中に収めるか。
それだけを、考えていた。
まあ、ガバガバだねえ。
茎十ちゃんが乗らなかったらその時点でアウトだし。別に免罪がどうのこうのは交渉材料としては弱すぎるし。
話の都合上致し方なしってことで