感想でアスタルテが異世界食堂に行っててユンヌが狡いと拗ねそうという意見があったので…
アスタルテとユンヌがオルティナに異世界食堂に連れて行かれる話です(エルランも)
テリウス大陸で巻き起こった戦争………暁の女神アスタテューヌから別れた正の女神アスタルテと負の女神ユンヌの戦争はアスタルテの勝利で終結した。
アスタルテ側には三雄と後に呼ばれる3人の傑物………
竜鱗族の黒竜王デギンハンザー
獣牙族の獅子王ソーン
そして、ベオクでありながら武勇でこの2人に並んだ後のベグニオン王国初代女王、暁の剣聖・始祖オルティナの姿があった。
なお、オルティナの側には鷺の民でありながら黒翼を持つ男がいつも隣にいたがその事を知る者はもはやデギンハンザーくらいである。
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もはや討滅を待つばかりであった負の女神ユンヌ、しかし、ひとりの黒鷺の民の男が現れてユンヌの助命を嘆願したのだ。
「悪いのはユンヌではなく争いを起こす人の方。人の代表として、これ以上争いは起こさないと約束するのでユンヌを消滅させないでほしい」と。
すると男の側で様子を伺っていたオルティナも「あんた達女神を連れて行きたい場所がある、滅ぼすにせよ生かすにせよ行ってからでも遅くはない。今日はドヨウの日だしな」と。
すると感情が無いはずのアスタルテに喜びの様なものが浮かぶのをユンヌは見た、どうせ滅ばされるのならば…とユンヌも手慣れた様子で宙に浮く扉を呼び出したオルティナの後に続くのだった。
扉の向こうは文字通りの楽園であった、ベオクとラグズの思い浮かべる理想郷、この世に於ける善きものの結晶、御伽話でも語り尽くせぬ絶景。
同時にユンヌは理解した、これらは全てオルティナと仲間達に与えられたモノであり自分達が負けた理由だと。
オルティナの振るう双剣は極光と共にユンヌの群勢を纏めて薙ぎ払った、紛れもなくこの世界で造り出された聖剣である。
オルティナは群勢をあらぬ場所から出現させてはユンヌの群勢を滅茶苦茶にした、この世界に群勢を待機させていたのだろう。
オルティナの群勢は精強であった、この世界に成っている黄金の林檎を食べていたのだろう。
つまり、オルティナを味方に出来なかった時点でユンヌの敗北は決まっていたのだ、世の中は女神に対しても不公平である。
そうしてユンヌが内心で拗ねていると目の前に黒い樫で出来た扉が現れた、三毛猫と異国の文字の書かれたプレートが下がっている。
オルティナが特に気負う事もなく扉を開くと、そこは飲食店であろうか… おそらく魔法の力で照らされたどこか暖かみのある店内、並べられたテーブルと椅子はよく手入れがされておりつややかな光沢を放っている。
「おや、オルティナさんエルランさんアスタルテさんいらっしゃい、新顔さんもいるみたいですね」
「店主、このふたりにコーヒーゼリーと飲み物はカフェオレを頼む」
「私は………オルティナは何も頼まないのですか?」
「今日は食事よりも話がしたい、店主!エスプレッソを一つ追加だ!」
「では、私も無しで、オレンジジュースを一つお願いします」
そして、4人がけのテーブルに腰をかけて料理が来るのを待つ一同、手持ち無沙汰になったユンヌが周囲を見渡すとテリウス大陸にもいない種族…直立二足歩行する蜥蜴や耳が長い人間が皆幸せそうな表情で思い想いに料理を頬張っているのであった。
異種族が争いを続けたテリウスでは絶対にお目にかかれない光景にユンヌは眩しいものを見た気になった。
横に座っているアスタルテは何処かそわそわしている………感情は私に別れた筈だったのでは?
「お待たせしました、コーヒーゼリーとカフェオレになります」
そうしてユンヌとアスタルテの目の前に運ばれて来たのは今まで見た事も無い料理であった。
黒色をしていて、表面は大理石のようにつるりとしている塊が刻まれていて、テリウスではまだまだお目にかかれない透明な硝子の器によそわれているのだ…すぐ横には白濁した液体の入った小さな壺が置かれている。
そっとスプーンで突いてみると石の様な見た目とは裏腹に確かな弾力が返って来た…困惑して横のアスタルテを見るとアスタルテは手慣れた様子で瓶の中身を黒い塊にかけて嬉しそうにスプーンで口に運んでいるではないか。
ええい!ままよ!とスプーンを刺そうとするとオルティナが「まずは白い液体と黒い塊を別々に味見してくれ」と言うのでその通りにしてみる………白い液体はどうやらミルクらしい、ミルクにしてはトロッとしているが。
だが、黒い塊は違った、口の中でとろけるような柔らかさと、磨き上げられた石のようなつるりとした滑らかさがユンヌの舌の上を滑り、喉を通って胃の中に落ちていく。
そして口いっぱいに甘さとほろ苦さ、そして何とも言えない良い香りが広がったのだ。
「美味いだろう?今度は生クリーム…ミルクをかけて食べてみてくれ」
言われた通りに黒い塊にミルク…生クリームというらしい、をかけると透き通った黒い塊と、白くて濃厚なナマクリーム、そしてその二つが混ざり合った茶色の3色に変化した。
口に運んでみると………ユンヌは驚愕した、三色の入り混じるこの状態こそが、コーヒーゼリーの完成形だと気づいたのだ。
さっぱりとしたコーヒーの味に、乳の風味が加わり、されど最初は完全には混じり合わず、それぞれの味を感じさせる。
最初に白い乳の味を強く感じ、ついでその下にあるコーヒーの旨みを感じ、最後にそれらが混じりあった、この世界で言うところのカフェオレ風の味を感じさせる。
わずか一口の間に三つもの味を楽しませるのが、このコーヒーゼリーの素晴らしいところだ。
夢中になってゼリーを口に運ぶユンヌ、食べ終わる頃には暖かい飲み物が欲しくなり丁度良い温度になったコーヒーゼリーと同じ味がするカフェオレを飲み、ほう…と一息ついた。
しかし、ユンヌにはオルティナが急に敵である自分にこうしたのかが理解出来ない…困惑しているとオルティナは「今度はこのエスプレッソを飲んでみてくれ」と言うので彼女の差し出す黒い液体を口にする。
「〜〜〜〜〜!!!!?」
しかし、エスプレッソは外見通りお子様舌のユンヌには口に合わなかった、堪らぬ苦味で一口で飲むのをやめてしまう、「うえーっ」とする表情をしたユンヌをオルティナは微笑と共に眺めている。
「知っているか?あんた達が今食べたコーヒーゼリーもカフェオレもエスプレッソも同じコーヒーから作られていてそこにはミルクが不可欠なんだ」
「何が言いたいの?」
「ヒトの心も同じだ…負と言うコーヒーと正というミルクが混じり合い、初めて「ヒト」という存在が完成する。そこにはベオクもラグズの差も存在しない」
「!!」
オルティナは語る………ヒトの心など悪というコーヒーと善というミルクが良い塩梅で混じり合い初めて完成する美味いカフェオレなのだと、それ以外でも清濁併せ飲んでダブスタと呼ばれて初めて成立する生物なのだと、どちらかを分離する事は不可能だしどちらか一方しかない存在は「歪」でしかないと。
悪人がいつも悪いことをするとは限らないし、善人がいつも良いことをするとも限らない………そもそもかつて当たり前に一つであった正と負を別けてどちらかが間違いだと決めつける行為こそがナンセンスだと言うのだ。
「アスタルテについたベオクの言うことだとは思えないわ………アスタテューヌのせいで大洪水は起きたのよ!?」
「悔やんでいるのならばもうしなければ良い、この世に間違いをしない者は神であっても存在しない、それにアスタテューヌは俺の知ってる神でもマシな方だ」
しれっと答えるオルティナにユンヌは何も言えない………現代世界で生きたからこそ他の神々を知っているので言える台詞である。
ロクでなし筆頭下半神ゼウス…理不尽に人間を弄ぶギリシャの神々…1日1000人ぶっ殺すウーマン伊邪那美命…そもそも見るなと言われていたのに見ちゃった伊邪那岐命…知識の為なら倫理観ZEROオーディン…心臓よこせカニバ推奨テスカトリポカ…気に食わない奴はすぐに罰する神聖四文字…世界を滅ぼしてナンボのインフレの極みインド…
そう、神々とは基本的に「ロクでなし」なのだ、メジャー神話の主神クラスを少し挙げただけでもこの有り様である…メガテンかFGOをプレイしている人間ならばお分かりだろう。
だからこそテリウスで蘇ったオルティナは思うのだ、「アスタテューヌはマシな女神であり、そもそも正と負のどちらかを悪しように扱う事が間違いだと」。
自らの配下の不敬ともとれる台詞にアスタルテは何も言わない、オルティナが「真に賢き者」「異なる価値観を持つ世界より来た者」である事を知っているからだ。
そして、全ての料理を食べ終え飲み物を頂いた一行はオルティナの奢りで戦場に戻った、そこでエルランと三雄によって「女神とヒトの誓約」が交わされる事になる。
メダリオンに封印される時、ユンヌはオルティナに『お願い』をした。
「今度、私が目覚める時は暖かいカフェオレと冷たいコーヒーゼリーが食べたい」と。
眠りにつくアスタルテも「目覚めたらねこやに行ってご馳走が食べたい」と願った、元が同じ女神なだけはある…
オルティナもそれを快諾、いつかまたドヨウの日にねこやに連れて行くことを約束したのだ………封印されるユンヌ、そして眠りにつくアスタルテは笑顔であった。
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「ふぅ…随分と懐かしい夢を見ていたものです」
そう呟くのはクリミアの民兵を治療した事で投獄された巡礼僧の男…正体はベグニオン帝国宰相セフェランである、最も更に言うと始祖オルティナの伴侶である黒鷺の民エルランであるが。
彼は自分の過ちで蒔いてしまった戦乱の火がどうなっているか確かめに来たのだ、その最中に投獄されて暇だったためかつての妻とユンヌの夢を見たのである。
「何故でしょうか…オルティナがすぐ側まで来ている気がします、ふふっ」
そう呟くと暇なのでまた眠りにつくセフェラン…なかなかに良い性格である、でないと1000年以上も生きてられないのだ。
というわけでユンヌも異世界食堂には来ていました、まぁアスタルテは何回も来ているので不公平っちゃ不公平ですが。
ユンヌは多分お子様舌だからエスプレッソは飲めない、アスタルテは砂糖入りならば飲めるというのが作者の考え。
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