久しぶりに覇者の剣読んだので初投稿です
いや、あのEDならこうなってもおかしくないなって
そういうわけで覇者の剣編が唐突に始まります
お気に入り100件ありがとうございます!!!
約束するよ。二度と絶望など生み出さないことを。
二度と力を奪いあわないことを。
約束守れなかったよ。絶望は絶えなかった。
俺はこの力を絶望を終わらせるために使おう。
青年は絶望していた。
ついこの間まで、青年は幸せであった。
長きに渡る冒険の末に最愛の妻と結ばれて親友たちにも恵まれた、大陸全土を巻き込んだ戦乱の世は終わり戦争で荒れた領地の再建も軌道に乗り慣れないながらも若き領主として忙しくしているのだった。
そんな彼を気遣い支えていたのは青年の第一子を懐妊した最愛の妻である、青年は膨らんで行く妻の腹に耳を当てては我が子の誕生を指折り数えて楽しみにしていた。
そんな彼を妻は「しょうがないわね」「せっかちね」と嗜め、仕事に戻るように頰をつねる、そんな姿を祝いに来た友人達にも笑われる、そんな幸せな日々が続くと心から信じていた。
前世の記憶を思い出すまでは。
この大陸名はエレブ大陸、大人気(ここ強調)シミュレーションRPGゲーム「ファイアーエムブレム封印の剣」、その前日譚にあたる「ファイアーエムブレム烈火の剣」の舞台である。
しかし、青年が転生したのは「封印の剣」のアナザーストーリーである「ファイアーエムブレム覇者の剣」の主人公であった。
「覇者の剣」とは今は亡き月刊少年ジャンプで連載されていた「ファイアーエムブレム封印の剣の外伝的作品コミカライズ」である。
序盤こそジャンプらしく少年漫画的な冒険譚の側面も強いが、徐々に大軍同士の衝突を描く戦記物としての側面も扱われるようになったのが特徴だろう。
それでいてどちらの要素も上手く両立されており、原作でのリキア同盟軍の戦績と主人公達オリジナル勢の活躍が余す事なく描かれており、 FEの魅力である登場人物の心情の交錯に少年漫画ならではのアツい戦闘や成長シーンを盛り込んでいる。
何よりもファイアーエムブレムシリーズのコミカライズとして「打ち切りエンドで終わりがちなFEコミカライズでは珍しく、(一応)原作ストーリーを完結させて大団円を迎えているのも高評価点」とファンからの人気も高い。
しかし、青年は知っていた………「封印の剣」は真エンドを迎えないと実質バッドエンドも同然だという事を。
「覇者の剣」はそのバッドエンドを辿るという事を。
記憶が戻った青年はまずリキアの盟主にして、前大戦の英雄である親友の元に向かおうとした、今ならばきっとまだ間に合うと信じて。
早馬では間に合わないとこの領地では己しか操れない飛竜を駆り、親友の治めるフェレ領に飛んだ青年であったが………
「あ、あぁ………」
青年の目に映ったのはかつての敵………戦闘竜達に無惨に踏み躙られ紅蓮の炎に灼かれたフェレ領であった、青年は戦闘竜が集まっている場所…かつてのフェレ城に戦闘竜を蹴散らしながら無理矢理降下して生き残りを探した。
「誰か!誰かいないのか!?ロイ!リリーナ!エリウッドのおっさん!この際マリナスのオッサンでも良い!!!」
物や肉が焼けた臭いが辺り一帯に漂う中、灼かれて崩壊した城を必死に探し回る青年…だが、親友の姿は何処にも無く代わりにかつての親友に仕えていた戦友達らしき鎧を纏った焼死体が虚しく転がっているだけである。
青年は貴婦人の間にかろうじてあった妻と同じくらい歳の女の亡骸を確認して、親友の骸が何処にも無い事を確認すると自らの領地に戻るべく飛竜を飛ばす。
「ロイはきっと脱出して反撃の機会を伺ってるんだ…!ぜってぇそうだ………!!俺も領地に戻って挙兵して駆けつけないと!!!」
「親友が最愛の妻を見捨てて逃げる訳が無い」そんな当たり前のことを考えないようにしながら。
◇◇◇
そこから人類が敗北するまではまるで坂道を転げ落ちるが如しであった。
誰の入れ知恵か、戦闘竜達は狡猾に立ち回り大陸に戦火を広げていった、戦闘竜は竜化するまでは人間と変わらぬ姿をしている、大陸各地に難民や移民のフリをして忍び一斉に蜂起したのだ。
尚且つ、かつて人類が竜を倒す為に用いた超兵器「神将器」が何者かに奪われて、或いは破壊されていたのだ、青年は己の宿敵たる骸黒の一族の残党…或いはベルンの亡霊の仕業だと気づいたが何も出来なかった。
人類は追い込まれ各個撃破されて行った、青年も必死に近隣の戦友達と結束して最愛の妻と領民だけでも守ろうと…「やってみなきゃ、わからねぇ!!!」と己の十八番で絶望する人間達に檄を飛ばしながら休みなく最前線を戦い続けた。
しかし、それも長くは続かなかった、奪われた「神将器」が人類に牙を剥いたのだ、操るのは骸黒の一族とベルンの亡霊達である。
キルマーは「黙示の闇」アポカリプスの闇の中に飲み込まれて青年の目の前で消滅した。
ガントは「業火の理」フォルブレイズの炎に灼かれてやはり青年の目の前で灰になった。
そして、最愛の妻ティーナは………
「お前ら!ここから先は非戦闘員達が集まっている!!ぜってぇ守り通せ!!!」
「「「「「「「了解!!!」」」」」」
戦えない人間達をせめて安全な地………ナバタ砂漠の理想郷に逃がそうと青年が率いる人類の決死隊はしんがりを務めていた、しかし主君ゼフィールを奪われたベルンの亡霊達は容赦が無い。
膨大な魔力が敵陣から立ち昇ると、見覚えのある光…かつて妻が行使した「至高の光」アーリアルが非戦闘員達が集まっていた場所を諸共に薙ぎ払う、皮肉にもかつて用いた神将器の力でティーナは青年の前で消滅したのだ。
この時、青年の中の大切なものがポッキリ折れてしまった。
「約束するよ。二度と絶望など生み出さないことを。
二度と力を奪いあわないことを。」
かつて亡き母と最期に誓った言葉である、しかし現実はどうだろうか。
竜であった母とは似ても似つかぬ作り物の心無き竜モドキが人類を滅ぼそうとし、力は奪われて、兵も民も絶望している。
青年は竜と人の混血である、青年の中に流れる竜の血は始祖竜。
神竜をも超える始祖竜の力の源は「絶望」である、皮肉にも青年はこの大陸に於いて既に誰にも止められぬ最強の存在と化していたのだ。
「◾️◾️◾️◾️◾️!!!!!」
ベルンやエトルリアの城すら超えるほどの巨大な竜と化した青年の咆哮が響く、やがて始祖竜が敵と呼べる存在をこのエレブ大陸から滅ぼし尽くすまで一年と掛からなかった。
◇◇◇
上陸した者は誰も帰って来ないと言われ「魔の島」と恐れられるエレブ大陸の南にある巨島、ヴァロール島。
其処にはかつて竜族がこの大陸より脱出する時に用いた次元門の一つ、竜の門が存在する。
其処に傷ついた一体の竜が這々の体で現れた、青年の変化した始祖竜である、青年は朧げに残った僅かな理性と「原作知識」でここまでやって来たのだ。
「やっぱりさ、本来ならば『ロイがこの世界にハッピーエンドを齎す』はずだったんだ。アトスの爺さんも最期に予知してたしな、それを俺が生まれたせいで狂わせてしまった」
光と共に竜は少しずつ人間の姿に戻って行く、誰もいなくなってしまった世界で独りぼっちの青年の慟哭も続く。
「独りぼっちは寂しいよ、でも、この孤独こそが俺に与えられた罰なんだろうな」
青年のやろうとしている事、それは身投げである。
絶望を糧とする己の存在をこの大陸から消し去るべく最期に次元の狭間に飛び込もうとしているのだ。
竜の門は竜にしか開けない、青年は己の絶望を糧にした力の全てを注ぎ込み門を開いて其処に飛び込んだ。
『おとうさま』
最期に、産まれて来れなかった我が子の声が聞こえた気がした。
◇◇◇
「うんうん、随分とビターなテイストの物語だったね!これは聖戦の系譜第1部に匹敵するんじゃないか!?」
「しかし、このまま救いが無いのは実にバッドな展開だ。連盟の在り方にも背く事になる」
「実際、ファイアーエムブレムのバッド展開はイフだからこそ皆DLC買って周回してくれる訳だしね!」
「そうだなぁ、前世の君もテリウスが好きだったようだし第2の人生を満喫してもらおう!」
「ちょうど我が王がね、君から見れば「馬鹿じゃねぇの?」みたいな危険思想に目覚めたダーリン2人に苦戦してるんだ」
「『絶望の真髄』というものを教えてやって欲しいね!」
その日、碧き覇者がエレブ大陸から妖精郷に迷い込みテリウス大陸に送られるまでの流れである。
黒詐欺よりも絶望していて(既に人類も竜族も滅亡済み)、漆黒の中の人と似たようなポジションで(混血の剣士)、尚且つ今作アイクちゃんと気が合いそうなファイアーエムブレムの主人公を出そうとしたらアルしかいないよなぁ、と思って書きました。
こんなんでも作者は覇者の剣は大好きです、みんな覇者の剣読んでね!!!
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