『毒! 飲まずにはいられないッ!』 作:稲荷寿司
──昔から、己にはおかしな衝動があった。
〝毒〟というものに、奇妙な執着心を抱いていたのだ。
何よりもややこしいのは、俺が
俺はそう、〝毒〟を克服しなければならない。ありとあらゆる毒に耐性を付け、死ぬことがないように。……どうしてそうする必要があったかまでは、思い出せないのだが。
「なぁ、アンタは覚えてるのかぃ? 自分が人間だった頃のことをよぉ」
全身腕だらけの同族に、俺は問うてみる。
──返ってきたのは咆哮と、『返せ』『邪魔をするな』という言葉。
「獲物を盗っちまったのぁ、悪ぃと思うけどよぉ。折角意味のある言葉ぁ喋れんだ。ちったぁ応えてくれてもイイんじゃねェかぃ?」
腕だらけの同族は怒り狂い、『鱗滝め』『鱗滝め』『鱗滝め』と連呼し始めた。
「俺ぁ鱗滝じゃなくてよぉ、
彼も結局、
この山には、元人間の怪物──『鬼』と呼ばれる者が多数存在している。……というより、
「………赤痢?」
そう。ちょうど今しがた背に庇っている、この少女のような──「候補生」と、戦わせるために。
「──おぃ、狐面のぉ」
「は、はい⁉︎」
「一応言っとくがよぉ、俺の名前は『赤い狸』と書いて『赫貍』だからなぁ? ──次俺を
「ひッ」
……少し脅かし過ぎたか。ひっそり反省する。
しかし
毒呑みの俺からすれば、楽園のような場所だが……他の鬼にとっては、そうじゃない。
空気は最悪。食事は極小。娯楽の一つもありゃしない。それで他の鬼達は、皆みんな狂ってしまった。
そして、送られてくる候補生はと言えば──
「気に食わねぇなぁ」
こんな場所を作った「鬼殺隊」なるものも、彼らが使う「刀」も、「毒」も──だが、何よりも。
「……戦う力のねぇ奴をいたぶる
横抱きにしていた少女を、地面に降ろす。ある程度距離は取ったので、逃げるのは止めだ。
────〝
「術式展開。
「……ぇ?」
「なッ、なんだ
藤の木々に囲まれた領域を、俺の術で異界化した。取り込まれた二人からすれば、
「テメェが逃してくれねぇから、逃げられねぇようにしてやったのさァ。
「あ、あり得ない……どうしてこんなことが──人を五◯は喰った俺ですら、
「あァ? なんだよ、テメェ。本格的に何を言ってるのかわからなくなっちまったなぁ──喰っちゃ寝してて丸々太ったテメェより、鍛錬してる俺のが強いに決まってるじゃねえか」
『いや、その理屈はおかしい』と言いかけた鬼を、俺は問答無用で殴殺した。