『毒! 飲まずにはいられないッ!』   作:稲荷寿司

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・藤襲山 ①

 

 ──昔から、己にはおかしな衝動があった。

 

 〝毒〟というものに、奇妙な執着心を抱いていたのだ。

 何故(なぜ)かはわからない。己自身でも、何故(なにゆえ)これほどまでに〝毒〟を摂取したがるのか……理路整然とした説明をすることが、できない。

 

 何よりもややこしいのは、俺が()()()()()()()()()()()()()ということである。

 

 俺はそう、〝毒〟を克服しなければならない。ありとあらゆる毒に耐性を付け、死ぬことがないように。……どうしてそうする必要があったかまでは、思い出せないのだが。

 

「なぁ、アンタは覚えてるのかぃ? 自分が人間だった頃のことをよぉ」

 

 全身腕だらけの同族に、俺は問うてみる。

 ──返ってきたのは咆哮と、『返せ』『邪魔をするな』という言葉。

 

「獲物を盗っちまったのぁ、悪ぃと思うけどよぉ。折角意味のある言葉ぁ喋れんだ。ちったぁ応えてくれてもイイんじゃねェかぃ?」

 

 腕だらけの同族は怒り狂い、『鱗滝め』『鱗滝め』『鱗滝め』と連呼し始めた。

 

「俺ぁ鱗滝じゃなくてよぉ、赫貍(せきり)っつー名前があんだけどなぁ」

 

 彼も結局、()()なってしまったか。

 この山には、元人間の怪物──『鬼』と呼ばれる者が多数存在している。……というより、()()()()()()()()()。『鬼殺隊士』なる者共の手によって。

 

「………赤痢?」

 

 そう。ちょうど今しがた背に庇っている、この少女のような──「候補生」と、戦わせるために。

 

「──おぃ、狐面のぉ」

「は、はい⁉︎」

「一応言っとくがよぉ、俺の名前は『赤い狸』と書いて『赫貍』だからなぁ? ──次俺を血屎(ちぐそ)呼ばわりしやがったらアレの前に放り出すぞクソボケがァ」

「ひッ」

 

 ……少し脅かし過ぎたか。ひっそり反省する。

 しかし()()は……「この場所」は、酷いものだ。

 毒呑みの俺からすれば、楽園のような場所だが……他の鬼にとっては、そうじゃない。

 空気は最悪。食事は極小。娯楽の一つもありゃしない。それで他の鬼達は、皆みんな狂ってしまった。

 そして、送られてくる候補生はと言えば──()()である。大多数が、年端も行かぬ少年少女。未来はまだいくらでも広がっているだろうに、どうしてこんな場所へ来る?

 

「気に食わねぇなぁ」

 

 こんな場所を作った「鬼殺隊」なるものも、彼らが使う「刀」も、「毒」も──だが、何よりも。

 

「……戦う力のねぇ奴をいたぶる()()が、俺ぁいっちゃん嫌いなんだよなぁ」

 

 横抱きにしていた少女を、地面に降ろす。ある程度距離は取ったので、逃げるのは止めだ。

 

 

 ────〝()()()

 

 

「術式展開。地獄門(じごくもん)羅刹(らせつ)

 

「……ぇ?」

「なッ、なんだ()()は!?」

 

 藤の木々に囲まれた領域を、俺の術で異界化した。取り込まれた二人からすれば、()()()()()()()()()()()のだ。困惑するのも無理はない。

 

「テメェが逃してくれねぇから、逃げられねぇようにしてやったのさァ。()()なぁ」

 

「あ、あり得ない……どうしてこんなことが──人を五◯は喰った俺ですら、()()だってのに──」

 

「あァ? なんだよ、テメェ。本格的に何を言ってるのかわからなくなっちまったなぁ──喰っちゃ寝してて丸々太ったテメェより、鍛錬してる俺のが強いに決まってるじゃねえか」

 

 『いや、その理屈はおかしい』と言いかけた鬼を、俺は問答無用で殴殺した。

 

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