『毒! 飲まずにはいられないッ!』   作:稲荷寿司

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vs鱗滝左近次①

 

「──いやぁ、助かったぜぇ鱗滝サン! 家主(アンタ)が話のわかる爺さんで良かったわァ!」

「…………うむ」

 

 カカカ。天狗面で表情は見えねェが、『つい、招き入れてしまったな……』『どうした、ものか……』という空気が全身からビンビン出ていやがる。──油断の無い、強者の気配と共に。

 

「……赫貍(せきり)、といったか」

「あァ、そうだなぁ」

「真菰を。娘を生還させてくれたこと……親代わりとして、先ずは礼を言おう。感謝する」

 

 そう言って老人は、深く頭を下げた。……ふむ。この目が蒼い少女は、真菰(まこも)という名前だったのか。

 

「……だが儂は、鬼殺隊の剣士でもある。鬼を、人を喰う存在を……野放しには、できない」

「だろうなァ」

「──まッ、待って鱗滝さん! 赫貍さんは、人を食べない鬼なの!」

 

「あァ? いや、()()()()()ぜぇ? 俺もなぁ」

 

「──え?」

 

「いや、そんなに驚くことかぁ? ()()()()()()()()なんだからよぉ。鬼を喰うってこたぁ、人間を喰ってるのと同じことじゃぁねぇかぃ?」

「そ、それは……」

 

「…………()()()。日が出ている間は、家の屋根を貸そう。──だが、外へ出れるようになったら此処を去れ。いいな?」

「構わないぜぇ、その条件でよぉ」

 

 そうして俺は、何とも言えない表情で義父を睨む少女を尻目に寝転んで──

 

 

 

 

 

「──……? ()()()()()?」

 

「……それがどうしたの」

「……真菰。そう怒るな」

「怒るよ。……だって、赫貍さんは……私を、助けてくれたのに」

「…………真菰。儂の鼻が()()のは、お前も知っているだろう?」

「……うん」

「儂には、臭いで()()が分かる。分かってしまう。……赫貍は既に、人を喰った鬼だということが……分かる」

「…………うん」

 

「──だが確かに、他の鬼とは違うのも事実らしい」

 

「……?」

「普通の鬼には、本来『眠る』という機能が無い。不死身である彼らは、肉体が休息を必要としていないからだ」

「──でも、赫貍さんは今『眠っている』」

「あぁ。……それに、臭いそのものも奇妙だ」

「それは、どんな風に?」

 

「矛盾しているようだが、()()()()()()()()()()()()()

 

「???」

 

「……通常、鬼の強さは人を喰った数に比例する」

「うん」

「そして鬼は、人を喰らった数に応じて悪臭を放つようになる」

「……? うん」

 

「だが、赫貍は……悪臭を発していないにも関わらず、強い鬼特有の空気を帯びている」

 

「……?? それって、どういうことなの?」

「……わからない。長年隊士として、鬼と戦ってきたが……このような臭気を発する鬼とは、一度も出遭ったことがない」

 

「……じゃあ、斬らない?」

 

「……あぁ。その一点に於いては、約束しよう」

 

 

 

 

 

 ──明かりが灯る、独特な音。

 

「ん……もう夜かぁ」

「……あぁ」

「案ずるなよなぁ、約束ぁ守るからよぉ──世話になったぜぇ」

 

「──待て」

「? どうしたよぉ」

 

「……今までに喰った、人間の数を……お前は、言うことができるか?」

 

「あァ……? あ゛ー……成りたてで最初に喰った同族が一匹。んでそのあとは、すぐに山送りにされたから……ひぃ、ふぅ、みぃ──」

 

「……もういい。質問の仕方を変える。──お前は今までに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「あ゛ぁ……? なんだってんだぁ? さっきからよぉ、ワケのわからねぇ質問ばかりしやがって──返答次第じゃ、今この場で叩き斬るってぇのかぃ?」

 

「──鱗滝さん?」

「…………」

 

「キヒヒ。真菰だったかぁ? 育ての親を、そんな眼で見てやるなよなぁ。そいつぁ何も、嘘ぁ言ってねぇんだぜぇ?」

 

「……どういうこと?」

 

「そいつぁ初めから、()()()()しかしてなかった筈だぜぇ? 日が暮れた後──もっと言えば、俺がこの家を出た瞬間かぁ? それ以降はもう、俺達ぁただの『鬼と鬼狩り』に戻らなきゃぁならねぇからなぁ」

 

「……鱗滝さん?」

「…………」

「ねぇ、ウソでしょ? 何か言ってよ……!」

 

「クケッ。イイぜぇ? ()()()も俺好みの展開だァ……。アンタ程の強者を前にして、仲良しこよしで『またいつか』なんて言われた日にゃぁよぉ──それこそ欲求不満で、()()()()ってヤツを襲っちまうかもしれねぇからよぉぉ……!!」

 

「……貴様が()()()なのか、見定めさせてもらう」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 明治コソコソ噂話

 赫貍を捕えた鬼狩りは、『酔っ払いのクセにやたら強い金髪の剣士』だったらしいぞ。

 ただし終盤は油断を突いて刀をぶっ飛ばし、殴り合いの泥試合になっていたらしいぞ!!

 

 ……え? そんなヤツが藤の山送りで済んだ理由?

 知らねぇなぁ。本人に聞いてくれやぁそんなこたぁよぉ……。

 

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