旧ドイツ帝国軍人、キヴォトスへ出征す 作:フルール・ド・ガリア
しかしモチーフがフランスな学校がまだ出ていないのが悲しいですね
いつか出ることを願っています(小並感)
*ゲヘナ学園 駅前*
今日は気分転換にゲヘナ中央駅前に向かうことにした。
夏の暑さの中、徒歩でここから駅前に向かうのはあまりにもこの体では厳しいものがあるからタクシーを使おうとも思ったが、その旨を執事に話したところ
「ゲヘナのタクシーは危険です。価格を釣り上げたり、怒鳴りつけて高くせしめたりと、ヨアさまにとって不適切極まりない乗り物です」
と猛反対を受け断念、護送車を連れての移動となった。
リムジン………という非常に長い車からの景色は非常に————
不愉快だった。ゲヘナの都市風景は美しく、自然も時折顔を見せたりと悪くはないのだが、あまりに下品な目でこちらを見るゲヘナの不良だとか、ロボット(と言うらしい)、手榴弾などを投げ込んでくる奴らが多すぎる。
入学式の「歓迎」は、ゲヘナ中等部の一部の暴発ではなく、これが大衆一般的なゲヘナの歓迎なのか、そう思うとここは我らがライヒというよりはセルビアだ。
さながら私は護衛を引き連れ遊覧する皇太子だろうか。
この中央駅に降り立とうとした時、狙撃の気配をふと感じた。
誰かに狙われている——水面に光?しかし太陽は…………
そこか。見つけたぞ。
鋼鉄製の鞄を思い切り振り上げ、狙撃を誘発させる。
目論見通り、自分から見て左後ろ…つまり東側からの強い衝撃が鋼鉄から肉体へと伝播され、前世からその多くを削り取られた筋肉が振動する。
そしてそれを見た付近の護衛ロボットらは即時私の付近に盾を置き、私を守ろうとするがおそらく………
「30度近く左に散開、50から60度で盾を展開せよ!」
狙撃兵が同じ位置に居るとは思えない。
一度射撃を開始すれば基本その場所を去り「x軸」と「y軸」、そして「時間」を多少なりとも変更して射撃、そしてまた去り……を繰り返すのが狙撃兵の基本だ。
せっかくだ、対決と行こうか。背中がラックのように改造されたロボットに取り付けられているEhrengarde*1を手に取り、カウンタースナイプを構えを取る。
腕の上に小銃を乗せ、アイアンサイトから大体の距離感を掴む。
発射炎、私の命令通りに動いたロボットの盾に命中。対象は大体………400ミル右辺に移動……窓は二択、しかし片方は格子窓…
捉えたぞ、忌々しき狙撃兵よ
「……
割れていたガラスをさらに突き破り、スコープの光は完全に沈黙、狙撃兵の脅威は無くなったと言ってもいいだろう。
まさかここまでうまくいくとは思わなかった、春からずっと遠距離狙撃の練習をしてきた甲斐があった。
何故狙撃の練習か、と言うならば「こういう」狙撃による襲撃が常に起きるからだ。
自動小銃のNeue Eid *2では対抗がまともにできず、逃げ隠れることしかできなかった。
それは私にとってだけではなく、護衛ロボットにとっても屈辱であり、家に対しての宣戦布告ですらあった。
私の前職はただの軽歩兵であったから、こう言った狙撃の単位…ミル*3であったりだとか、気圧、海抜…と覚えることが非常に多かったが、名誉のためを思えば不思議と苦ではなくなった。
仲間を守ること、それは私があの地獄で得た唯一の哲学であり、希望であることをもう一度私に示したのだ。
話が逸れたが、カウンタースナイプの後、私の周りからはおそらくたかろうとしていたゲヘナの生徒は早急に離れ、「日常」を演習することに躍起になっていた。
怯えながらこちらを伺うもの、仲間なのか思い切り詰め寄ろうとし諌められているもの……と、私は平穏と共に私に対する排斥感に包まれた。
「送迎感謝します。これからは私一人で動きますので、ご心配なさらず…」
「承知いたしました。何かあればすぐ、連絡を入れてください。すぐさま駆けつけます」
護衛隊長は私に跪き、静かに命令を受け取った。
*ゲヘナ学園 中央駅内
あまりに外が暑く、心身ともに居心地も非常に悪かったがために涼しい空気を求め駅内に足を踏み入れると、大量の雑踏とカートのキャスターの軽快な音、そしてハイランダー鉄道学園…の生徒とゲヘナ生徒が口論*4をしているという情報が一度に詰め込まれた。
「涼しい……」
近くの塗装が剥がれたベンチに座りながら、自動販売機で買ったバニラアイスを食べながら涼んでいると、西門の方で遠目でひったくり…いや恐喝か——にあっている白い制服を着た、綺麗な白い羽を持つ生徒が見えた。
「…これ、助けるべきかぁ?」
ちょうどアイスを食べ終わったところだし、ちょっと見にいくことにする。
プラスチックのアイスの棒は……まあ持っていればいいか。最悪CQCにつかえるだろ。
ああ、やらかした。
私は絶望の淵にいた。理由はいくつかあるのだが……
電車のホームを取り違えて、駅員さんに怒鳴られて、結局そのままゲヘナに来てしまった。
そこら各地で怒鳴り声は聞こえるし、キャスターの音は粗野な轟音を立ててタイルに情け容赦もなく傷跡をつけているし、足音はうるさいし…
「なあ嬢ちゃん、あんたトリニティのお偉いさんだろ?痛い目に遭いたくないなら、さっさと金目のモノ出せよ」
「そうそう、こっちだって荒い真似はしたくねえんだ。財布から紙切れ出すだけだぜ?」
後ろを恐る恐る振り向くと、ゲヘナの生徒が私に拳銃を突きつけて脅しをかけていた。
助けをすがるように私は首を左右に振って周りを見渡すが、誰も助けやしない。
むしろ、「もっとやれ」、「トリニティの生徒の身包みを剥がせ」、と過激な主張をする人が集まってきた。
嫌だ、嫌だ。こんなところで………私が何をしたって……
「嫌…やめて…」
震えた声で、すがるように許しを乞うたが、むしろそれは彼女らを興奮させるだけであった。
背中を強く蹴られ、鞄を無理矢理奪おうと私に手を伸ばした瞬間——
強奪の手は吹き飛ばされた。
「見ていられないな……同じ同族として、反吐が出る」
8mmのモーゼルが荷物を奪おうとする手に勢いよく着弾し、キヴォトス人の手を文字通り「消し飛ばした」
Neue Eidは赤黒い光が銃の隙間から漏れ出し、ヘイローが煌々と周りを照らしていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!痛え!お、お前…お前!何をしやがった!」
「他人から搾取してまで生きながらえたいのなら、お前の左手も泣き別れだ。選択肢はたった一つ、さっさと失せろ!」
私はもう、冷静ではいられなかった。
もし私に妻子がいたのならば、大体この年代の子供がいたはずだ。
では、もし子供が人前で毒牙に掛かろうとしていたら、どうするか?
簡単な話、親はなんとしてでも止めにかかるだろう。
同じことだ。
セミオートからフルオートに切り替え、
彼女らがさってしばらくしたが、私は動かなかった。
否、動けずにいた。
数分の緊張がよほどのプレッシャーになったのか、足から腕に至るまでの神経が私の命令を拒絶し続けているのだ。
「あ、あの!」
「…………ああ、どうした?」
クソ、過労かストレスかなんだか知らないが、頭が回らねえ…
「助けてくださり、ありがとうございました!本当に…どうしようかと…」
彼女は私にしがみついて、泣き始めた。
非常に絵面がよろしくない。
しかも体の融通も効かないから、無理に剥がすこともできないし、動いたとして剥がして怪我でもされたら面倒極まりない。
「ああ、大丈夫だ…もう安全だ。ただ少し、慣れないことをしてしまったからか足が動かないんだ。あそこの…赤っぽいベンチに運んでくれないか?」
そういうと、彼女は優しく翼で私を包んで肩を貸してきた。
ああ、この子はなんと強いのだろうか、私へのフォローか、視線を遮ってくれている。
自分が辛い思いをしたというのに!
ベンチに座って話を聞くと、彼女はトリニティ総合学園の貴族なのだという。
曰く、乗る電車を間違えてゲヘナに来てしまったのだという。
……まあ、これくらいは許してくれるだろう。
「すいません、電話にでる必要が出てきたので一旦失礼します」
「もしもし、アルノルト執事ですか。一つ頼み事があるのですが……」
*ゲヘナ-トリニティ境界付近*
「本当に、今日はありがとうございました」
執事に電話で「トリニティの付近に行きたい、迷ってきた人がいるんだ」と伝えると、執事は二つ返事で許可を出してくれた。
本当に執事には頭が上がらない。
「いえいえ、ただすべきことをしただけですよ。そういえば名前を聞いてませんでしたね。なんと?」
私の問いに、彼女は顔を上げて、こう言った。
「私の名前は——」
「なるほど……さん、モモトークでも交換しませんか?理由や場所はどうであれ、あそこで合ったのも何かの縁でしょうし…」
「ええ、構いませんよ。ヨアさん、さようなら」
そういえば、彼女とはどこかで会ったような気がする…
「クックックッ…なるほど、これは非常に興味深い……」
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