旧ドイツ帝国軍人、キヴォトスへ出征す   作:フルール・ド・ガリア

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お久しぶりです。
そして久しぶりの投稿内容が重いですが是非ご覧ください


Nicht organisiert(不条理)

*ゲヘナ学園 路地裏*

入学からもう早いもので6ヶ月が経ったそうだ。

あいにく家にしばらく帰っていないから、聞きずてでの情報であるのだが。

 

何故、私が家にいないのか、それは…確か1ヶ月前に遡る必要がある。

 

*2ヶ月前*

ある夏の日だった。

その日は暑く、太陽がヒノム火山を登りアスファルトの黒色をゆらめかせていて、そのせいか普段ならいやでも目につく広告を出すぼったくり屋台でさえ店を畳んでいた。

ゲヘナ一の大通りはこの中でも活気を保ち、毎日のように熱射病で倒れるものが頻発したそうだ。

私は部屋の中にあるエアコンを朝からつけていたから、熱気は窓の付近にでも訪れない限りは感じることはなく、非常に快適な生活をしていた…と思う。

当時の私は、というよりは一年生はよく不良に絡まれたから、多くの人の恨みを買っていたのだろう。

 

 

屋敷が燃やされたのだ。

 

炎は恐ろしいくらいに広まり、微かな甘い匂いが鼻に触れた。

発火点は今でも分かり得ないが、少なくともキッチンで彼女らがミスを犯したわけではないと言うことは確かであった。

部屋の窓から見えた景色は、笑いながらポリタンクと火炎放射器を持って逃げる数十人のゲヘナ人だった。

両手に愛銃を二つ構え、窓を蹴破ってすぐにでもシュニッツェル *1にしてやりたかったが、私には執事らを守る義務がある。

親が雇ったとは言え、今いない以上責任は私にある。

アルノルト執事、エドガーシェフ…後はわからないが、10人以上の雇人がいるので、とりあえず近くの部屋にいるものを集めて逃がそうとした。

施錠されたドアは蹴破って無理矢理開け、早急に事情を伝えると彼らはすぐさま、私どもは大丈夫です、だとか私が消火活動を行います、と言った。

 

その後私は彼らに頼まれた消化器を集めた。

彼らは懸命に火を消そうと取り組んだが、灯油による延焼はもう多くの部屋に佇んで消えることはなかった。

遠くで消化器の中に溜まったガスか何かに誘爆して誰かが死ぬのを見た。

アルノルト執事だった。

 

もう彼の近くには火がたかっていて、あれが確かに執事だったのかの確証はなかったが、確信があった。

彼は古い機種だったようで、動きがぎこちない時が多かった。

 

確認できたのは完全に屋敷が焼け落ちて、私が外に呆然と、夜の孤独と共に佇んでいた時だった。彼らは…「彼らだった」

ただ一つは酷く表面は焼けつき、溶けていた。

 

鉄塊を集めたら何クレジットになるか、ふと考えた。

溶けて若干の酸化が見られるそれらは、表面を磨けば高値で売れるだろうと脳は結論づけて、また星のように消えていった。

 

焼けた木材を退かして、何か使えない家具や家財道具がないかと探して40分が経った頃だろうか、昼に見たゲヘナ人の集団が現れ出た。

 

もう何も思わなかった。

ただ喧嘩を売ってきて。そして私は彼女らを殲滅して、銃を叩き壊した。

彼女らの荷物の一部を引き剥がしてから、彼女達が持ってきたポリタンクに沈めてから焼き払おうとしたところで、風紀委員会がやってきた。

 

4月に見たあの少女もやってきて、あの時のか、何があった?と聞いてきた。

私は…申し訳ないことだが、ぶっきらぼうに家が燃やされたと言った。

彼女達の上官…と言うよりは見習いは私に同情をくれたのか、今回の暴動は正当防衛だ、生徒会が保険を出してくれるはずだと言った。

 

「保険、か………結構だ。資材は金じゃ治せん」

「だが家はどうするんだ?寮なんてないようなもんだからどうにもできないだろ」

 

私は答えに迷い、屋敷の残骸を眺めた。

新品上官は私の答えを黙って待っているようだ。

それに班員も同調し完全な沈黙が森の中に降り積もった。

 

「この残骸を売ればいくらになる」

「………は?え?……いや、そこまでは知らないが。………ああ、疲れて居るのに聞いてすまなかった。とりあえずうちの兵舎で泊まらないか?答えは明日聞くさ。いや、泊まるべきだ」

 

彼女は凄んで私の答えを固定しようと躍起になった。

班員が私を取り囲んだ。逃す気はないらしい。

 

「………家財道具が盗まれないように確認だけしたい。良いな?」

「それくらいなら。手伝うからさっさと終わらせろ」

 

彼女らと一緒に探して、武器庫は無傷であったことが判明した。

Kar98k、G3、PPK、MP40、SIGSG550…*2曰く、高価なものもこれらの他にもあったらしかった。

明日質屋に売り払う、どこに置いておけば良いかと聞けば、風紀委員会の小隊がここを警備するらしく、それで盗難は防がれる、と返ってきた。

 

風紀委員の常駐を確認して、私は風紀委員会のオペル・ブリッツ*3の荷台に乗った。

月は雲に隠れ、光はわずかに顔を覗かせている。

山々は夜空をアトラスのように抱え、今にも崩れそうなバランスを我々に誇示した。

 

私は揺られながら煙と灰の残り香を嗅いでいた。

火の跡は少し離れた広場からも感じ取れて、驚くべき漆黒を灯していた。

街の人はスマホを持ち写真を食い入るように撮り続け、ネットの海にそれを放流していった。

 

養殖された単一の魚を頬張るより、偶然とれた一級品の方が良い時代は終わったのだろうか。それとも、私の生きた時代ではそれが幸福であって、今は情報に食いつぶされることが幸福になるのだろうか。

 

兵舎についてから私は倒れるように寝た。

寝る前に飲んだカフェオレの味はわからなかった。美味しかったと思う。

 

朝になって、かつての家に向かった。

バスをいくつか使って行ったから多少は金を使ったがもうどうでも良いだろう。

近くに落ちていた輜重車*4を引いていくことにした。

 

少し長い道を歩いていくと、見物人がちらほらと見えた。

犬の獣人にこんにちはと言うと、彼は挨拶を返した。

それからいくつか話を聞いた。

あまり面白い話は聞かなかった。

 

獣人の話を聞き流して居ると、常駐の風紀委員が私を見つけ手招いた。

輜重車を引いて向かうと、兵器は昨日の状態のまま残っていた。

 

いくつかのライフルや拳銃、弾薬に砲弾を置くと輜重車は悲鳴をあげ始めたから、やはりトラックを借りて搬入することにした。

 

「彼らたち」も一緒に搬入して質屋に売ったところ、多くの資金が手に入った。

一部の食器以外も全て売り払った。

かつての感覚が呼び起こされたか、不思議と涙は出なかった。

 

金なんてあっても何にもならないってのに。

生徒会銀行に金を預けて、ゲヘナ中心街の外れにあるスラムに住居を移した。

また不良に絡まれて、倒して。

今度は恨みが湧かないように徹底的に装備も財産も破棄させた。

 

中等部にはちょくちょく顔を出して最低限の単位は取っているから、退学や留年の心配もない。

最初は心配もされたが、私の反応がよほどつまらなかったのか2日程度で彼女らは離れて行った。彼女らがスマホを片手に持っていたところから察するに、どうせ話のネタ作りだったのだろう。

 

約束通りフウカのところに行って試作品を食したが、味がわからなくなっていたためにいい反応を出せなかった。

フウカは少し悲しんだが、私の味覚を復活させられるくらい美味しい料理を作る、と意気込んでいた。

 

素晴らしいことだ。

私はスラムで一定の地位を手に入れ、住居に侵入する余所者は完全に、髪の毛一本残さず来なくなった。

 

時々、不良にカツアゲされている生徒も見かけるから助けていくことも多くなった。

そうやって匿ったり助けたりしているうちに、「戦い方を教えてほしい」と志願する人が増えて行った。

何人かはコツを掴んで救援活動を自主的に行うようになって、簡単な共同体が私たちの中でできた。

 

 

そして私たちは、当初思った目的とは違えど、「自由軍団」を結成することになった。

*1
ドイツの肉料理

*2
ドイツ、スイスのライフルや拳銃、サブマシンガン等

*3
第二次世界大戦で使われたトラックの一種

*4
補給に使用する車両。ここでは39式輜重車に近いもの

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