はじめの一歩 Beyond Glory   作:紅乃 晴@小説アカ

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青春の風(2)

 

 

「あーあー、ボッコボコにやられちゃってるじゃないか」

 

冗談めかした口調だが、獅子御の手つきは妙に丁寧だった。バケツの水で濡らしたタオルを絞り、木村の腫れ上がった頬をそっと押さえる。

 

青木には切れた唇に消毒をしながら、少し眉を寄せた。

 

「うっせぇー!」

 

木村が気丈に返すが、その声の奥に滲むのは悔しさだ。殴られすぎて鈍くなった頬の感覚、耳の奥でまだ残響するパンチの衝撃。それらが、笑い飛ばすには重すぎる。

 

「次は1発、あの顔に決めてやるんだ」

 

青木の言葉は虚勢とも、決意ともつかない響きを帯びていた。

 

「……そっか」

 

獅子御は短く応えると、ゆっくりタオルを畳んだ。

 

「じゃあ、とにかく今は自分の思ったようにやるべきだ」

 

それ以上は何も言わない。あえて何かを教えるでもなく、否定するでもなく、まるで、何かを待っているような沈黙。

 

二人の中で、何かが変わるその瞬間を。

それからの日々、木村と青木は鷹村とのスパーリングに毎日挑み続けた。ゴングが鳴っても、次の瞬間には視界がぐらつき、足元が揺れる。

 

攻めようとしても、拳は空を切り、逆に鮮やかなカウンターをもらって崩れ落ちる。

 

ほぼ毎日、何もできないままリングに沈む。

 

だが、その瞳の奥の火だけは、日に日に濃く燃え上がっていった。

 

それは獅子御にも、はっきりと見えていた。

 

いい一発を喰らって、マウスピースを吐き出しながらマットに沈む二人。セコンドにいた獅子御は、汗で濡れた髪を払い、タオルで青木の顔を拭く。意識が朦朧としている木村には、水を少しずつ口に含ませる。

 

二人がどんな夢を見ているのかはわからない。

 

ただ、その拳はまだ「止まって」いない。

そう感じていた。

 

「獅子御くん、いいのかい?」

 

背後から、篠田トレーナーの低い声が飛んできた。

何も助言せず、ただミット打ちとサンドバッグ、筋トレ、ロードワークに打ち込ませる日々。

 

鷹村への具体的な対策を伝えることもなく、ただ様子を見続ける。

 

そのやり方に、篠田は疑問を投げかけたのだ。

 

「もうすこし、この二人に考えさせたいんです」

 

獅子御はタオルを握ったまま、視線をリングに向けた。

 

「こういうのは、本人たちが気付かないと意味がないですから。答えだけ渡しても、身にはならない」

 

短い沈黙の後、篠田は小さく笑った。

 

「……そうか。なら、待つか」

 

そして、1ヶ月後。

 

青木が鷹村とリングで真正面から撃ち合っていた。

汗が飛び散り、ロープ際で足が絡む。呼吸は荒く、拳は鈍り始めているが、目の奥は死んでいない。

 

「おらおらどうしたぁ!左を突き出せばいいってもんじゃねぇぞ!」

 

鷹村の煽りは、いつもならただの挑発だ。

だが今日は、その声の奥に妙な熱があった。

 

「ぎゃーぎゃーうるせえぞこらぁ!」

 

青木の返しは荒っぽくも、確かに前へ出る力を持っていた。

 

「その負けん気を活かせ!手数を出して打ち合いに巻き込むんだ!」

 

鷹村が叫ぶ。

その瞬間、ガスッと腹の奥に突き刺さる音。強烈なボディブローで、青木は無意識に膝を折り、視界が白く霞んだ。

 

続いて木村の番。

 

アウトレンジを得意とし、リズムと距離感で勝負する男だ。本来なら撃ち合いは避け、冷静に戦うタイプ。だが、鷹村はそれを見透かしていた。

 

「撃たれても熱くなるなぁ!お前にはスピードがある!無理に打ち合わず、リズムで対抗しろぉ!!」

 

一瞬、木村のステップが鋭くなり、間合いが広がったが、次の刹那、獣じみた踏み込みとともに鷹村の剛腕が炸裂。

 

首が吹き飛ぶような衝撃に、木村もまたマットに沈んだ。

 

リング下からその光景を見つめる獅子御の表情は、笑いでも、哀れみでもない。

 

ただ、微かに口角を上げ、心の奥で静かに呟いた。

 

もう少しだ、と。

 

翌朝。

 

まだ街が完全に目を覚ます前、河川敷を三人の足音が駆け抜ける。川面には淡い朝日が差し込み、揺れる水面が金色に染まっていた。

 

空気はひんやりと澄み、吐く息が白く伸びる。後方から聞こえる息遣いに、獅子御は耳を傾ける。

 

木村と青木が並んで走りながら、ぶつぶつと呟いていた。

 

「手数だ……数打たなきゃ当たらねぇ」

 

「もっと動き回らなきゃ……もっと!!」

 

その声は息の乱れに混じっても、昨日までのような焦りや空回りではない。自分の課題を言葉にし、それを身体に刻み込むような重みがあった。足の運びも、呼吸の整え方も、以前とは明らかに違う。

 

以前なら中盤でペースが落ち、足が重くなっていた二人が、今日は獅子御の速めのペースに食らいつく。

 

むしろ、時折スピードを上げる瞬間すらあり、互いに視線を交わしては、また前へ踏み込んでいく。

その顔には、疲労の奥に薄く笑みが浮かんでいた。

 

「……変わったな」

 

獅子御は心の中で呟く。体力や技術以上に、闘うための“芯”が固まり始めている。

 

それこそが、本物の成長だった。

 

朝日が高く昇り、河川敷の草の先端が光を帯びる。川の流れがきらめき、遠くでジョギングをする人々の影が揺れる。

 

獅子御は走りながら視線を前の二人に向け、静かに決意を固めた。

 

「そろそろ……次のステップに進むか」

 

その声は、川の流れと朝の風にかき消されていった。だが、彼の胸の中では新たな一日が、確かに始まっていた。

 

 

 

 

「え、獅子御のやつが……スパーリンググローブ……?」

 

朝のロードワーク、縄跳び、シャドウ。

 

一通りのメニューを終え、息を整えた木村と青木は、その異様な光景に目を奪われた。

 

普段はパンチミットやサンドバッグの補助に徹している獅子御が、珍しく自分の手にグローブをはめている。しかも、それは16オンスの分厚いスパーリング用。

 

「誰とやるつもりだ……?」

 

青木が呟くと、近くのジム生も同じように首をかしげ、ざわめきが広がっていく。サンドバッグを叩く音や縄跳びのリズムが、いつもより耳に刺さる。

 

やがて、準備を終えた獅子御がリング脇に立ち、低く声を響かせた。

 

「木村、青木、リングに上がれ」

 

その瞬間、真っ先に反応したのは鷹村だ。

 

「おい!誠司!まさかスパーやるつもりか!?」

 

獲物を見つけた猛獣のような目を光らせ、ロープ際に詰め寄る。

 

「これはスパーリングじゃなくて指導!守くんは大人しくしてて!」

 

「チッ!」

 

鷹村は盛大に舌打ちし、睨みを利かせながらも引き下がる。そんな視線を軽く受け流し、獅子御は先に青木をリングへ促した。

 

ロープを跨ぎながら、青木はまだ状況を掴みきれない。

 

「なんだよ、鷹村対策でも教えてくれるってのか?」

 

「いや、違う。ただ……ある程度の完成形をイメージできないと、と思ってな」

 

「完成形だぁ?」

 

「構えろ、青木。そして、よく見るんだ」

 

青木が構えを取った瞬間、その様子をジムの端で見ていた宮田一郎は、思わず眉をひそめた。

 

(……基本に則ったオーソドックス。普段の獅子御さんのスタイルじゃない)

 

考えを巡らせる間もなく、先に動いたのは獅子御だった。軽く踏み込み、最初のジャブ。ただの一発のはずなのに、青木のガードに重く響く。

 

「……っ!」

 

獅子御は、滅多にスパーリングをしない。

 

青木もそのことは知っていたし、普段の練習ぶりからして只者じゃないとは思っていた。

 

だが……まさか、ここまでとは。

 

軽く踏み込み、最初のジャブ。

 

ただの一発のはずなのに、ガード越しでも骨に響くような重さ。

 

(な、なんだ……!?)

 

反射的に足が下がる。

その一歩を逃さず、獅子御がさらに詰めてくる。

 

「ぶへぇ!がはっ!」

 

顔面、ボディ、また顔面。打ち込むリズムは単純なのに、寸分の狂いもなく、全てが芯を食ってくる。

 

(嘘だろ……全部見えてるのに、避けられねぇ!)

 

奇抜なフェイントも、不可解な軌道もない。

あるのは、正面から、真っ直ぐ押し潰すような撃ち合いだけ。

 

それなのに、圧力が桁違いだった。

 

ロープが背中に触れた瞬間、獅子御がわずかに距離を取る。

 

嵐のような連打の中、ほんの一瞬だけ、呼吸を整えるように攻撃が止んだ。

 

その間合いで、獅子御が静かに青木を見据える。

 

まるで「この先を知りたきゃ、越えてみろ」とでも言いたげな眼差しだった。

 

青木の奥歯が軋む。

 

(……上等だ!撃ち返してやる!)

 

踏み込み、拳を突き出す。

 

よくも好き放題打ちやがったな!と、そう言わんばかりに、前へと出ようとした瞬間。それを待っていたかのように、獅子御の右拳が一直線に走った。

 

「……っ!」

 

視界の端が一気に暗くなる。ダメ押しの右ストレートが顔面を貫き、青木の意識はそこで断ち切られた。

 

仰向けに崩れ落ちる直前、脳裏に焼き付いたのは、獅子御のブレない構えと、圧倒的な完成形のイメージ。

 

青木の体がマットに落ちる音がジム内に響く。

 

獅子御はグローブを軽く打ち合わせ、口調だけはやけに軽かった。

 

「よし、こんな感じだな。……次、木村。リングに上がれ」

 

その声の奥に隠された意図を、青木はまだ知らなかった。自分の負けん気を引き出すため、この“お手本”が示されたことを。

 

リングに上がった木村に獅子御は軽やかなステップを踏み始める。

 

その動きはまるで別人のようだった。

 

宮田は横目でその様子を見つめながら考えた。

 

(この数ヶ月でわかったこと。青木さんは搦め手は使うけど愚直なオーソドックスなファイターで、木村さんは特に尖った武器があるわけじゃないが、どこでもそつなくこなせるオールラウンダーだ……)

 

だが今、目の前の獅子御はそんな木村の特徴を見抜きつつ、そのスタイルの「完成形」を体現するかのように動いていた。

 

木村が焦りを見せて手を出すが、獅子御は軽快な足運びでインとアウトを自在に行き来し始める。

 

(スタイルが青木の時とは全然違う……!)

 

木村が驚くほど、その動きはまるで別人だった。

宮田もまた、その変わりように驚きを隠せなかった。

 

(これもだ!普段の獅子御とはまるで違う……)

 

以前、自分がスパーリングを交わした時は、拳だけで相手を幻惑し、動き回ることも少なかった。

 

しかし今目の前の獅子御は、多彩なフェイントと流れるようなステップを駆使し、確実に木村を翻弄していた。

 

獅子御の足運びとリズムは木村を遥かに凌駕していた。一歩ごとの踏み込みは無駄なく、まるで音楽のようにリズムを刻み、木村の視界と呼吸を狂わせていく。

 

(何だ、この動きは……!)

 

木村の胸中に、驚きと戸惑いが入り混じっていた。計算し尽くされたステップと攻撃の連携。焦りが彼の体を包み込む。

 

「くそが!全然捉えられねぇ!」

 

そう思って手を出すが、獅子御の動きはそれを嘲笑うかのように自在だった。

 

逃げ場のないリングの上で、木村の視界の端から獅子御が滑り込む。一瞬の死角から、鋭く顎へ差し込む一撃が襲いかかる。

 

「ぐっ……!」

 

反応が遅れ、バランスを崩しながらそのままリングに沈む木村。防御も反撃も許されないまま、完全に押し込まれてしまった。

 

獅子御は淡々とグローブを外し、まるで何事もなかったかのように軽くつぶやく。

 

「まぁ、こんなもんでしょ。目が覚めたらいつものミット打ちとサンドバッグ、筋トレをするよ」

 

その言葉とは裏腹に、青木と木村、二人の顔には疲労と悔しさが深く刻まれている。

 

「ち、ちくしょー……鷹村もやべぇけど……」

 

青木は唇を噛みしめながら呻く。

 

「獅子御もやべぇ……」

 

木村もまた、息を整えつつ獅子御の圧倒的な強さを痛感していた。だが、そんな感嘆の余韻も束の間、ジムには怒声が響き渡る。

 

「手数はどうしたぁ!!」

 

「足使えって言っただろうが!!」

 

鷹村の厳しい声がジムに響くと、二人は再び剛腕の前に沈んでいった。

 

その攻撃に翻弄され、何度もリングに倒れ込む日々が続く。

 

午前は獅子御の指導……いや、圧倒的な実力に打ちのめされ、午後は鷹村との過酷なスパーリングでボコボコにされる。

 

「くそぉ!負けてたまるか!」

 

青木の拳が震え、唇を噛みしめるその声には、屈辱と闘志が入り混じっていた。

 

何度も倒されては這い上がり、全身の筋肉が悲鳴をあげる中でも、決して諦めることはなかった。

 

「もっと動き回って、差し合いを制するんだ!」

 

木村の目はギラリと光り、汗と息遣いで滲む視界の中で獅子御の動きを見逃すまいと集中していた。

 

自分の武器はどこにあるのか。

どの瞬間に優位を掴めるのか。

迷いを振り切り、足を動かし続ける。

 

青木は獅子御との打ち合いの中で、ただ力任せにぶつかるのではなく、相手のリズムを読み取り、主導権を握ることを意識し始めていた。

 

身体が覚えた感覚を頼りに、相手のパンチを避け、反撃のチャンスを伺う。

 

一方、木村は以前よりも激しく足を動かし、左の差し合いに全神経を集中させる。

 

相手のパンチが届く前に距離を変え、巧みにリズムを崩し、フェイントで揺さぶる。

 

心拍数は上がり続け、呼吸は荒くなるが、それでも動きを止めることはなかった。

 

彼らは打ち合いの中で逃げ方、躱し方を体に染み込ませ、さらに相手を惑わすためのフェイントモーションやフットワークをひたすら磨いた。

汗まみれの顔に決意が刻まれていく。

 

午前の獅子御からの厳しい指導。それはまるで、身体と頭に新たな回路を刻み込む「インプット」の時間だった。

 

そして午後の鷹村とのスパーリングで、それまでに得たものを即座に実践する「アウトプット」の場が与えられる。

 

この繰り返しの中で、青木と木村のスタイルは確実に変化を遂げていった。

 

ただ漠然と技を覚えるのではなく、彼らの体と頭に染み付いた感覚が、日々目覚ましい速度で進化していたのだ。

 

考えて、試して、改善する。拳に込められる力はより鋭く、技術は確実に研ぎ澄まされていく。そんな彼らの変化に、ジム内の雰囲気は日に日に熱を帯びていった。

 

ある日、宮田がふと声をかけた。

 

「獅子御さん、俺も混ぜてよ」

 

意外な申し出に獅子御は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。メンバーに宮田を迎え入れ、宮田相手には本来の自分のスタイルで指導を始めた。

 

その動きは青木や木村に見せていたものとは異なる、もっと洗練されたものだった。

 

開始点から着弾点まで、まるでパンチがワープするかのように瞬時に移動し、連続するリードカウンターのタイミング、そしてスイッチする足の切り替え。

 

獅子御の動きには計算し尽くされたリズムがあり、見る者を圧倒する力強さと柔軟さを兼ね備えていた。

 

宮田はそのすべてを貪欲に吸収しようと、目を逸らすことなく食らいついた。

 

一つ一つの動作を、自分の身体に刻み込みながら、己のスタイルにどう活かすかを必死に考えていた。パンチの軌道、足の運び、タイミング。細部にまで神経を研ぎ澄まし、何度も何度も繰り返す。

 

その姿はまさに戦いのために自分を鍛え直す者のそれだった。

 

獅子御はそんな彼らの様子を、ほんの少しだけ目を細めて見つめた。

 

「お前ら、それぞれの武器をもっと研ぎ澄ませ。俺が相手してやるから、どこまで強くなれるか見せてみろ」

 

冷静ながらも、どこか熱を帯びたその言葉は、三人の闘志に火をつける。

 

ジムの空気は一層熱くなり、拳を交わすたびに新たな高みを目指す三人の息づかいが響き渡った。

 

そして、その練習が始まり、1ヶ月が過ぎた頃。

 

木村も青木も、獅子御の真意を深く理解していた。

 

夜の公園。街灯が柔らかな橙色の光を投げかけ、遠くで虫の鳴き声が響く中、木村と青木はベンチに腰を下ろし、手にした缶コーヒーをそっと傾けていた。

 

「獅子御の野郎、俺や青木、宮田に対して、それぞれ違うスタイルで相手してやがるぜ」

 

木村は暗闇に溶け込むように低く呟く。

 

「そうだな……しかもどのスタイルも一級品だ。あいつにできねぇことって、一体なんだろうな」

 

青木も静かに応えた。

 

「でも、だんだん分かってきた気がする。あの動きの意味や狙いが」

 

「ああ。まだあの鷹村には1発も当てれていないが……なんかこう、相手の動きが分かるっつーか。そういう勘みたいなのが確実に高まってると思う」

 

青木の声には、ほんのりとした自信が滲んでいた。二人の間に夜の静けさが包み込み、遠くで車の音がかすかに響く。

 

「悔しいけど、確かに何か実感が湧いてきてるんだ」

 

木村が微かな笑みを浮かべて言う。

 

「ああ、まだまだこれからだが……確かに、少しずつ強くなってるって手応えはある」

 

青木も静かに頷き、最後の一口をコーヒーから飲み干した。夜の闇に包まれた公園のベンチで、二人は未来の戦いに胸を熱くし、静かに決意を固めていた。

 

そんな二人とは対照的に、ジムの隅で黙々と片付けをしていた獅子御に、鷹村が声をかける。

 

「あの二人、出来の悪いやつだと思ってたが……最近はよく動くようになってきたじゃねぇか」

 

「強大な相手がいるからこそ、吸収したものを試さずにはいられないんだよ」

 

「やっぱりそうか。てめぇはいつも変わんねぇな」

 

「そういう守くんも、不器用な優しさは相変わらずだよね」

 

二人のやり取りは互いを認め合う、淡い信頼の証のようだった。

 

その様子を遠くから見守るのは、鴨川会長と篠田トレーナー。彼らは若きボクサーたちが懸命に研鑽を積み重ねる姿に、満足そうな微笑みを浮かべていた。

 

「まだまだ伸びしろがあるな……」

 

篠田トレーナーが呟くと、鴨川会長も静かに頷いた。

 

若者たちの熱意と成長を感じながら、彼らはこれからの道をどう作るか。その思いを馳せていた。

 

 

 

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