異世界建国「哲学好きな僕が王様に成り上がった話」   作:アサシン・零

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第10話「雨と街道の夢」

リーフ村の秋、冷たい雨が館の石壁を叩く。イグニス(17歳、王太子)は、悪魔の森の古い館を改修した執務室で、書類に目を通していた。燭台の火が揺れ、青銅製のペンがかすかな音を立てる。アスナがそばで茶を淹れ、微弱な光魔法で部屋を照らした。彼女の内気な目は、かつての怯えが薄れ、静かな信頼に変わりつつあった。「イグニス…これ、間違ってない?」アスナが書類を指す。食料備蓄の計算だ。イグニスは微笑み、訂正した。「助かるよ、アスナ。君の目、細かいな」彼女は頬を赤らめ、目を伏せた。ビョルン・スタルフェルト侯爵(40代半ば、軍師・執事)が部屋に入り、言った。「小麦の備蓄は完璧だ。大根とジャガイモも植えた。冬を越せる」

 

イグニスは頷き、窓の外を見た。雨に濡れた村は、1階・2階建ての家が並び、集会所は改築済み。壁と見張り台が帝国の国境線から村を守る。バイコーン8頭は柵の中で大人しくなり、子が生まれた。「繁殖が進めば、農作業と水運が楽になる」イグニスは呟き、日本の記憶を思い出した。京都の図書館で読んだ歴史書。東海道、山陽道、山陰道――日本の街道は、町と村を結び、経済と軍事を支えた。「王国にも…交通網を」イグニスは決意し、計画を練った。リーフ村から王都アルデンベルク、周辺の村々を結ぶ街道。戦争でも内政でも有利になる。彼はビョルンに相談した。「王太子の権力を使い、許可を取る。ルシウスと陛下に話したい」

 

 

アルデンベルクの王宮、雨が石畳を濡らす。イグニスはルシウス(52歳、革新派、緑の目・白髪交じりの緑髪)とシグルド12世(50代)の前に立った。「王国を結ぶ街道を造る。リーフ村から始め、交易と軍事の基盤にします」彼の声は力強く、書庫で得た知識に裏打ちされていた。保守派の貴族――ゲラルト・シーグリス男爵(26歳)とエリス・カーマイン(35歳、闇魔法使い)などが反発した。「辺境のよそ者に、王国の金を使わせる気か!」だが、革新派の貴族たちは輝く目でイグニスを見た。ルシウスが微笑んだ。「これは王国を救う。賛同する」シグルドは疲れた目で頷き、言った。「イグニス、許可する。だが、結果を出せ」

 

イグニスはマキャベリの『君主論』を思い出した。「君主は機会を逃さず、運命を掴む」。保守派の反発は予想通りだが、革新派の支持は心強い。彼は書庫に戻り、街道の設計図を書き上げた。ルシウスが肩を叩き、言った。「お前は…セリーナに似ている。民を思う心だ」

 

リーフ村に戻ると、イグニスは採掘場へ向かった。鉄と銅の鉱脈は安定し、鍛冶屋が鉄を鋼に錬成。別の坑道で、銀と金の鉱脈を発見した。イグニスは慎重に指示した。「銀は害がある。金は過剰摂取で体を壊す。精錬は丁寧にやれ」鍛冶屋は頷き、鋼製の農具と武器、瓦を量産。村の家はさらに強化された。バイコーンの子は元気に育ち、柵の中で母と走る。カイル(15歳)が笑った。「こいつら、農作業に使えるな!」リナ(12歳、土魔法)が農地を広げ、エリ(10歳、風魔法)が風で種を運んだ。セレノア・ディスタリアが村の生活に溶け込み、子供たちに読み書きを教えた。彼女の頬の傷――ハラルドの暴行の跡――は癒えつつあったが、目は決意に燃えていた。イグニスは館の執務室で、セレノアに尋ねた。「なぜ…ここに留まる?」彼女は答えた。「父は戦場で戦う。私はここで、王国を変える力になりたい。貴方の街道計画…素晴らしいよ」イグニスは頷き、プラトンの言葉を思い出した。「正義とは、皆が互いを助け合うこと」。村は希望の地になりつつあった。

 

王都アルデンベルク、夜の隠れ家。ハラルドは保守派の貴族たちと密談していた。ゲラルト、エリス、オーラズ・ハヴリンドバイド男爵(30代、「狂犬」)が並ぶ。「イグニスの街道計画…王国を強化する気だ」ハラルドは唸り、知略を巡らせた。「戦争の混乱を利用する。オーラズ、お前がリーフ村を叩け」オーラズが大剣を手に笑った。「辺境の村なら、俺の部下で潰せる。イグニスごとだ」エリスが冷たく付け加えた。「だが、彼の知識は脅威。闇魔法で動きを封じましょう」ハラルドは頷き、野心を燃やした。「王太子の座は私のものだ。父上も…消す」

 

リーフ村、夜。イグニスは館の窓から雨を見下ろした。アスナがそばに立ち、微弱な光魔法で彼の手元を照らす。「イグニス…王国を変えるの、怖くない?」彼は答えた。「怖いさ。だけど、君や村を守る。それが私の正義だ」京都の孤独――アンドリュー、西野航、金子愛子の嘲笑――が遠い記憶に変わる。彼は『君主論』を思い出した。「敵を知り、味方を増やす」。フォレストエルフとの交易、ウェアウルフとの交渉、帝国の魔物研究の謎。セラの「帝国の鍵」、アスナの父の秘密が頭を離れない。カントの言葉が響く。「人は目的そのものであり、手段ではない」。街道計画は、王国の未来を切り開く第一歩だった。

 

 

 

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