異世界建国「哲学好きな僕が王様に成り上がった話」 作:アサシン・零
少し前リーフ村の初夏、朝霧が川面を覆う。館の執務室で、イグニス(17歳、王太子)は書類に目を通していた。燭台の火が揺れ、鉄製のペンが滑る。隣でアスナが書類を整理し、微弱な光魔法で部屋を照らす。彼女は新たに強化魔法「フィジカルエンチャントアビリティ」と回復魔法「ライブ」を習得し、自信を少しずつ取り戻していた。「イグニス…これ、間違ってるよ」彼女が指した計算を、イグニスは微笑んで訂正した。「助かる、アスナ。君の目は頼りになる」ビョルン・スタルフェルト侯爵(40代半ば、軍師・執事)が部屋に入り、報告した。「小麦の備蓄は十分だ。大根とジャガイモも育ち、夏向けにナスとネギを植えた。バイコーンからは子が生まれ、繁殖が進む」イグニスは頷き、村の進捗を確認した。鋼製の農具と武器、瓦で強化された家、改築された集会所。帝国の国境線に近い村を守る壁と見張り台も機能している。イグニスは鍛錬場へ向かい、汗と剣の音に身を委ねた。アドルフの指導で磨いた片手剣と大剣の技に加え、独学で強化魔法「スピードエンチャントアビリティ」を習得。移動速度が上がり、戦闘での機敏さが向上した。鍛錬後、彼は執務室に戻り、ビョルンに尋ねた。「フォレストエルフ…どんな種族だ? 交易は可能か?」
ビョルンは革の長コートを整え、答えた。「気難しい連中だ。森を愛し、よそ者を嫌う。独立した都市国家を北東に持ち、交易には消極的だ」イグニスは目を細めた。「それでも、星鋼は必要だ。リーフ村も王国も、交易が生命線になる」彼は日本の街道――東海道や山陽道――を思い出した。村と王都、都市国家を結ぶ交通網は、戦争と内政の鍵だ。「水運を使えば、川で効率的に動ける」とイグニスが提案すると、ビョルンは首を振った。「陸路でも行ける。バイコーンの時速は60キロ。リーフ村は王国の北西、フォレストエルフの都市は北東。距離は約200キロ、4時間弱だ」イグニスは計算し、決意した。「なら、陸路で向かう。カイル、リナ、アスナ、ビョルン、俺で行こう」
準備は迅速だった。カイル(15歳、鋼製大剣)、リナ(12歳、鋼製片手斧)、アスナ、エリ(10歳、風魔法)は村の守りをセレノアとマリアに任せ、バイコーンに引かせた馬車で北東へ出発。イグニスは鋼製片手剣を手に、スピードエンチャントアビリティを試した。風を切る速さに、カイルが笑った。「王太子、速すぎだろ!」アスナがライブで疲れを癒し、リナが土魔法で道を整えた。道中、イグニスは京都の記憶を思い出した。虐められ、図書館に逃げ込んだ日々。アンドリュー、西野航、金子愛子の嘲笑が遠い過去に変わる。「この村と王国を…守る」彼は呟き、マキャベリの『君主論』を思い出した。「君主は敵を知り、味方を増やす」。フォレストエルフとの交易は、星鋼と信頼を得る第一歩だ。
フォレストエルフの都市国家「シルヴァナス」、北東の深い森に囲まれた石と木の街。高い塔と精巧な彫刻が、種族の誇りを物語る。門番のエルフ、鋭い目の弓使いが一行を止めた。「よそ者、何の用だ?」イグニスは冷静に答えた。「アスデガルド王国の王太子、イグニスだ。交易を求めて来た。星鋼と食料を交換したい」門番は嘲笑した。「人間が我々の星鋼を? 帰れ」ビョルンが進み出た。「彼はリーフ村を救った賢者だ。話を聞け」リナの土魔法で地面に模様を描き、エルフの注意を引いた。アスナがライブで門番の疲れを癒すと、態度が軟化した。「…族長に話す。待て」
族長ラエリス(女性、200歳、風魔法使い)が現れた。銀髪と緑の目が、森の神秘を宿す。「人間の王太子、目的は?」イグニスは答えた。「リーフ村は貧困だった。だが、食料と鋼で復興した。星鋼があれば、村も王国も強くなる。貴方の民に、食料と技術を提供する」ラエリスは目を細め、言った。「人間は欲深い。だが…試してみよう。3日間、街に滞在し、誠意を見せろ」イグニスたちはシルヴァナスに滞在し、エルフの生活を学んだ。カイルが木材加工を教え、リナが土魔法で農地を改良。アスナのライブがエルフの子供を癒し、イグニスの知識が族長を驚かせた。交易の交渉は進み、星鋼の提供が約束された。イグニスはプラトンの言葉を思い出した。「正義とは、皆が互いを助け合うこと」。エルフとの絆は、王国の未来を切り開く。
王都アルデンベルク、夜の隠れ家。ハラルドは保守派の貴族――ゲラルト、エリス、オーラズ・ハヴリンドバイド(「狂犬」)――と密談していた。「イグニスがエルフと交易だと? 奴の影響力を潰す」オーラズが大剣を手に笑った。「リーフ村を襲えば、終わりだ。俺の部下が動く」エリスが闇魔法を帯びた手を握り、言った。「戦争の混乱を利用しましょう。シグルド12世の暗殺も、間近だ」セレノアはリーフ村で、子供たちに読み書きを教えながら、イグニスの帰りを待った。彼女はハラルドの暴行の傷を抱え、呟いた。「イグニス…王国を変えて」ルシウス(王都)は革新派をまとめ、イグニスの街道計画を推進。アドルフは戦場で帝国の強化魔物と戦い、疲弊していた。
リーフ村、交易の準備が進む。イグニスはシルヴァナスから戻り、星鋼のサンプルを手に入れた。鋼製武器を星鋼で強化し、村の防衛力を高める計画を立てた。アスナがライブで彼の疲れを癒し、言った。「イグニス…私、役に立ってる?」彼は微笑んだ。「君の魔法は、村の希望だ」イグニスは川辺で星空を見上げ、京都の孤独を思い出した。だが、今、彼は王太子であり、領主だ。『君主論』が浮かぶ。「敵を知り、味方を増やす」。オーラズの襲撃、帝国の魔物研究、シグルドの暗殺計画――試練が迫る。彼は剣を握り、呟いた。「リーフ村を守る。それが私の正義だ」