異世界建国「哲学好きな僕が王様に成り上がった話」 作:アサシン・零
リーフ村の秋、冷たい風が壁と見張り台を揺らす。館の執務室で、イグニス(17歳、王太子)はミスリル製の片手剣を手に、書類に目を通していた。赤いミスリル腕輪が燭台の光に輝く。フォレストエルフの族長ラエリスから得たミスリル――水晶鋼――は、村の武器と農具を強化し、希望の象徴だった。アスナがそばで書類を整理し、回復魔法「ライブ」で彼の疲れを癒した。「イグニス…大丈夫?」彼女の内気な目は、信頼と不安が交錯していた。ビョルン・スタルフェルト侯爵(40代半ば、軍師・執事)が報告した。「ミスリルの鋳造が進む。バイコーンの子も育ち、街道の基礎工事(王国内のごく一部)は順調だ」イグニスは頷き、フォレストエルフとの交易を思い出した。シルヴァナスの大杉と黒樫、ミスリルの装飾品は、リーフ村と王国を結ぶ鍵だ。だが、静寂を破る馬蹄の音が響いた。
見張り台からエリ(10歳、風魔法、片手剣・弓装備)が叫んだ。「大軍が来る! アドルフ侯爵の旗だ!」イグニスは広場へ急ぎ、3000人の兵を率いるアドルフ・ディスタリア侯爵(30代、革新派)を迎えた。鎧は泥と血に汚れ、彼はやつれていた。「イグニス…陛下が死んだ。ハラルドの暗殺だ」彼の声は重く、兵たちの目は疲弊していた。さらに、ルシウス(52歳、宰相、革新派)が馬車で到着。緑がかった白髪が乱れ、だが目は燃えていた。「王都はハラルドに握られた。私は…逃げてきた」イグニスは両名の無事を喜び、休息を命じた。「アドルフ、ルシウス、村で休んでくれ。戦いはこれからだ」セレノアがアドルフに駆け寄り、頬の傷を隠した。「父…無事でよかった」
王都アルデンベルク、夜の王宮。ハラルド(20代後半、廃嫡された元王太子)は玉座に座り、即位を宣言した。保守派の貴族――ゲラルト・シーグリス(26歳)、エリス・カーマイン(35歳、闇魔法使い)、オーラズ・ハヴリンドバイド(30代、「狂犬」)――が彼を囲む。「父上は死に、王国は私のものだ。イグニスを潰す!」ハラルドの声は傲慢だったが、知略が光る。オーラズが大剣を手に笑った。「リーフ村を襲う。私の部下なら、半日で終わる」エリスが冷たく言った。「イグニスのフォレストエルフとの絆、街道計画…脅威だ。闇魔法で動きを封じましょう」ゲラルトが付け加えた。「帝国との戦争も利用できる。イグニスが西で孤立すれば、終わりだ」ハラルドは頷き、野心を燃やした。「西の王国は私のもの。西のよそ者は死ぬ」
リーフ村から東3キロ、要塞街「ストーンヴァル」の中規模な城。石壁と鉄門がそびえ、かつての防衛拠点だった。イグニスはここで即位を決意。リーフ村は防衛力が心許なく、城が最適だった。ルシウスとビョルンが王冠を手に現れ、兵と村人たちが集まった。アドルフが剣を掲げ、宣言した。「イグニス、王太子にして我らの王! 西の王国を率い、ハラルドを討つ!」イグニスはミスリル製の片手剣を握り、王冠を受け取った。スピードエンチャントアビリティで動きは軽く、フィジカルエンチャントアビリティで力が増していた。「私は…王国を、民を守る」彼の声は静かだが、決意に満ちていた。アスナがライブで兵の疲れを癒し、カイル(15歳、鋼製大剣)、リナ(12歳、鋼製片手斧)、エリが武器を構えた。セレノアが読み書きを教えた子供たちも、希望の目でイグニスを見た。
フォレストエルフの使者、ラエリスの部下(男性、風魔法使い)が到着。「シルヴァナスはイグニス王を支持する。ミスリルと木材を供給し、挟撃の準備は整った」イグニスは赤いミスリル腕輪を握り、頷いた。「ラエリスに感謝を。共にハラルドを討つ」アスデガルド王国は分裂した。東のハラルド、西のイグニス。内戦の火蓋が切られた。
リーフ村、夜。イグニスは要塞街の城に戻り、作戦を練った。アドルフが地図を広げ、言った。「ハラルドは王都を抑え、保守派の騎士爵ヴィクトル・グランサー(元リーフ村領主)の領地を拠点に動く。帝国の強化魔物も脅威だ」ルシウスが付け加えた。「街道を完成させ、フォレストエルフと連携。リーフ村を要塞化しろ」イグニスは日本の記憶を思い出した。京都の図書館で読んだ戦史――関ヶ原の戦い、街道の重要性。「街道で補給を確保し、シルヴァナスと挟撃する。リーフ村は…希望の要だ」彼はマキャベリの『君主論』を思い出した。「君主は恐れられつつ愛されるべき」。ハラルドとの戦いは、知略と団結の試練だった。アスナがそばに立ち、フィジカルエンチャントアビリティで剣を握った。「イグニス…私も戦う」彼女の光魔法はまだ弱いが、ライブで兵を癒し、強化魔法で力を増していた。イグニスは微笑んだ。「君は村の希望だ。一緒に戦おう」
国境線、夜の戦場。アドルフの部下、フリードリヒ(22歳、剣士)とイーディス(25歳、魔法使い)が帝国の強化魔物と戦っていた。アイスウルフの咆哮が響き、帝国の騎士爵が闇魔法を放つ。フリードリヒが叫んだ。「イグニス王を信じる! 持ちこたえろ!」イーディスが風魔法で援護し、戦線を維持した。リーフ村では、セレノアが子供たちに剣術を教え始めた。彼女の頬の傷――ハラルドの暴行の跡――は癒えつつあったが、目は決意に燃える。「イグニス王…私は貴方を信じる」カイルとリナがミスリル製の武器を手に訓練し、エリが弓で村を守った。
イグニスは城の窓から星空を見上げ、シグルドの笑顔を思い出した。「養父上…貴方の意志を継ぐ」カントの言葉が響く。「人は目的そのものであり、手段ではない」。焔の雫、帝国の魔物研究、ハラルドの裏切り――敵は多い。だが、ミスリルの剣、フォレストエルフの絆、村人たちの信頼が彼を支えた。イグニスは呟いた。「リーフ村を守り、王国を救う。それが私の正義だ」