異世界建国「哲学好きな僕が王様に成り上がった話」 作:アサシン・零
第17話「王の決断と農地の希望」
アルデンベルクの王宮、冬の雪が石壁を覆う。玉座の間は松明の光に暖められ、イグニス(17歳、アスデガルド王)はミスリル製の片手剣を脇に置き、戦後処理の書類に目を通していた。赤いミスリル腕輪が光を放ち、王妃アスナがそばで書類を整理。彼女の回復魔法「ライブ」が、イグニスの疲れを癒した。「陛下…休んでください」とアスナが呟き、微弱な光魔法で部屋を照らす。イグニスは微笑んだ。「君がいるから、頑張れるよ」
ルシウス(52歳、宰相、緑がかった白髪)が報告した。「街道は9割完成。フォレストエルフの木材とリーフ村の技術で、交易が活性化している。だが、王国の農地は痩せ、産業はリーフ村に及ばない」イグニスは京都の記憶――小麦と大麦の輪作、灌漑技術――を思い出した。「日本の農法を応用する。リーフ村の成功を全国に広げる」
王宮の大広間で、イグニスは奴隷制度の廃止を検討した。「この国に奴隷はふさわしくない。民は自由であるべきだ」だが、ルシウスが慎重に進言した。「陛下、奴隷制度は経済と雇用を支えている。即時廃止は混乱を招く。段階的に進めるべきだ」イグニスは日本の歴史――奴隷制度の不在――を思い、渋々頷いた。「…分かった。だが、民の苦しみを減らす施策を急ぐ」
その夜、ゲラルト・シーグリス(26歳)とエリス・カーマイン(35歳、闇魔法使い)が逮捕された。偽名で辺境に潜伏していたが、ビョルン・スタルフェルト侯爵(40代半ば、軍師)の斥候が捕らえた。大広間で、イグニスは判決を下した。「ゲラルト、反逆罪で終身刑。エリス、闇魔法の罪で地下牢18年」ゲラルトが叫んだ。「ハラルド様の仇が…王国を乗っ取った!」エリスは冷たく笑い、「闇は消えない」と呟いた。イグニスは目を細め、マキャベリの『君主論』を思い出した。「君主は敵を根絶し、味方を増やす」。保守派の残党も一掃され、王都は静けさを取り戻した。
ルシウスが新たな魔法「メッセージ」を教えた。離れた者と会話できる魔法だ。イグニス、アスナ、カイル(15歳、ミスリル製大剣)が習得。イグニスは早速、リーフ村の村長アーロン(エリの父、40代)と連絡を取った。青い光の魔法陣が浮かび、アーロンの声が響く。「陛下、村は順調だ。バイコーンは子が育ち、農作業を支える。炭鉱は鉄と銅を産出し、小麦、ナス、ネギが豊作だ」イグニスは安堵し、指示した。「大麦でビールを醸造しろ。交易の目玉になる。エリと村人に任せる」アーロンが答えた。「了解した。エリは弓と剣で村を守り、子供たちも成長してる」イグニスは微笑み、京都の地ビールを思い出した。「リーフ村は希望の光だ」
リーフ村では、終戦で男手が戻り、近隣の町や村からの移住民が増加。人口は40人を超え、活気が戻っていた。カイルがイグニスの推薦で平民初の官僚に就任。ミスリル製大剣を手に、王宮で農地改良の計画を進めた。「陛下、俺、平民でも王国を変えられる!」カイルの目は輝き、イグニスは頷いた。「お前ならできる。リーフ村の誇りだ」
アドルフ(30代、革新派)はストーンヴァルで防衛を固め、セレノアが民の教育を続けた。彼女の頬の傷は薄れ、笑顔が増えた。「陛下、父と共に貴方を支える」エリ(10歳、風魔法、片手剣・弓)は村の守りを強化し、リナ(12歳、土魔法)は農地を改良。フォレストエルフのシルヴァナスからミスリルと木材が届き、交易が王国を支えた。
王宮の夜、ルシウスとビョルンがイグニスに進言した。「陛下、アスナ殿との結婚式を。王国の団結の象徴だ」イグニスは頷き、アスナを呼んだ。「アスナ、君を幸せにする。共に王国を築こう」アスナは目を潤ませ、答えた。「陛下を一生支えます」彼女の光魔法は未だ弱いが、ライブで民を癒し、フィジカルエンチャントアビリティで力仕事を支えた。セレノア、カイル、リナ、エリが祝福に駆けつけた。結婚式は王宮の大広間で執り行われた。アスナは白いドレスにミスリル装飾をまとい、イグニスは赤いミスリル腕輪を輝かせた。民が集まり、統一と平和を祝った。イグニスは宣言した。「アスナと共に、王国を豊かにする。民の笑顔が私の正義だ」
だが、課題は山積だった。王国の農地は痩せ、産業はリーフ村に及ばない。イグニスは日本の輪作や灌漑をモデルに、農地改良を全国に広めた。川の水運で種と肥料を運び、フォレストエルフの木材で水車を建設。ビール醸造はリーフ村から始まり、交易の目玉として広がった。
焔の雫の「帝国の鍵」、アスナの父の秘密、魔物研究の謎が頭を離れない。イグニスは皇帝レオニダスの言葉を思い出した。「魔物研究には光と影がある」。カントの言葉が響く。「人は目的そのものであり、手段ではない」。彼はアスナに尋ねた。「君の父…何を知っていた?」アスナは目を伏せ、呟いた。「父は…帝国の学者と働いていた。魔物の力が、王国を壊すと恐れてた」
夜、王宮の窓から雪を見上げ、イグニスは呟いた。「シグルド、養父上…王国を一つにした。次は民を豊かにする」『君主論』が浮かぶ。「君主は機会を逃さず、運命を掴む」。ゲラルトとエリスの判決、帝国の動向、魔物研究の謎が新たな試練だった。だが、アスナの笑顔、フォレストエルフの絆、リーフ村の成長が彼を支えた。「養父上、どうか私たちに力を!!」