異世界建国「哲学好きな僕が王様に成り上がった話」   作:アサシン・零

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第18話「編入と旅立ち」

アルデンベルクの王宮、冬の雪が大広間の窓を白く染める。イグニス(17歳、アスデガルド王)は玉座に座り、ミスリル製の片手剣を脇に置いていた。赤いミスリル腕輪が松明の光に輝き、王妃アスナがそばで書類を整理。彼女の回復魔法「ライブ」が、イグニスの疲れを癒した。「陛下…今日は忙しいね」とアスナが呟き、微弱な光魔法で書類を照らす。イグニスは微笑んだ。「君がいるから乗り切れるよ、アスナ」

 

執務室で、イグニスはルシウス(52歳、宰相、緑がかった白髪)に提案した。「日本の歴史を思い出した。奈良、京都、東京と遷都を繰り返した。アスデガルドもリーフ村に遷都できないか?」日本の記憶――明治維新の混乱と東京への遷都――が頭をよぎった。ルシウスは眉をひそめ、答えた。「陛下、無理です。理由は三つ。まず、リーフ村は帝国の国境に近すぎる。次に、館はあるが城がない。最後に、遷都には膨大な費用がかかり、今の王国には重すぎる」

 

イグニスは苦笑いし、京都の図書館で読んだ歴史書の重みを思い出した。「…分かった。遷都は見送ろう。民の生活を優先する」ルシウスが頷き、言った。「賢明な判断です。街道と農地改良を進めましょう」

 

 

大広間に、フォレストエルフの族長ラエリス(200歳、風魔法使い、銀髪・緑の目)が一団を率いて現れた。彼女の威厳ある姿に、広間が静まり返る。「イグニス王、シルヴァナスをアスデガルド王国に編入してほしい。統一は我々の民にも利益だ」イグニスはルシウス、ビョルン・スタルフェルト侯爵(40代半ば、軍師)と視線を交わし、調印式を決めた。

 

調印の席で、イグニスは奴隷制度について謝罪した。「ラエリス、フォレストエルフが奴隷にされているのは私の恥だ。だが、経済と雇用が安定するまで、段階的な改革が必要だ」ラエリスは目を細め、答えた。「理解する。エルフも民も、繁栄を望む。協力しよう」調印が終わり、シルヴァナスは王国の一部となった。ミスリルと木材の供給がさらに安定し、街道と建築が加速する。

 

ラエリスが続けた。「我が娘、リリエル(50歳、エルフなので若い、風魔法使い)を第2王妃に選んでほしい。エルフと人間の絆を深めるためだ」イグニスはアスナをちらりと見て、断れぬ政治的意義を感じた。「…受け入れる。リリエル殿を敬うよ」アスナが微笑み、言った。「陛下の決断なら…私も支える」ラエリスは満足げに頷き、リリエルが現れた。金髪と青い目が輝き、若々しい声で言った。「イグニス王、シルヴァナスと共に王国を盛り上げるよ」

 

イグニスはリザードマン族との交渉と王国視察の旅を決めた。東の沼地に住むリザードマンは、交易と同盟の可能性を秘める。カイル(15歳、平民初の官僚、ミスリル製大剣)が同行を志願。「陛下、俺も行く! 王国の未来を見たい!」イグニスは笑い、頷いた。「カイル、お前の目が必要だ。一緒にいこう」

 

ビョルンが地図を広げ、助言した。「リザードマンは沼地を支配し、水運を握る。交易の鍵だ。だが、気性が荒い。慎重に交渉しろ」アスナがメッセージ魔法を準備し、言った。「陛下、離れていても話せるよ。リーフ村とも繋がる」イグニスはリーフ村の村長アーロン(エリの父、40代)とメッセージ魔法で連絡。「アーロン、ビール醸造とバイコーンは順調か?」

 

アーロンの声が響いた。「陛下、ビールは試作品が完成。バイコーンは20頭に増え、農作業を支える。炭鉱も安定だ」イグニスは安堵し、指示した。「ビールを交易の目玉に。エリとリナに任せる」エリ(10歳、風魔法、片手剣・弓)がメッセージ越しに叫んだ。「陛下、村を守るよ!」

 

王国の農地は依然として痩せていた。イグニスは日本の輪作――小麦と大麦の交互栽培、堆肥の活用――を全国に広めた。川の水運で肥料と種を運び、フォレストエルフの木材で水車を増設。リーフ村の成功をモデルに、旧ヴィクトル領で農地改良が始まった。カイルが官僚として計画を管理し、言った。「陛下、平民の俺でも王国を変えられる!」

 

アドルフはストーンヴァルで防衛を維持し、セレノアが民の教育を進めた。彼女は読み書きを教え、子供たちに希望を与えた。「陛下、父と共に貴方を支える。民の笑顔が増えたよ」ルシウスは内政を強化し、街道の完成を急がせた。フリードリヒ(22歳、剣士)とイーディス(25歳、魔法使い)は南西方面の戦線の監視を続け、帝国の動向に目を光らせた。

 

夜、王宮の執務室。イグニスはアスナとリリエルに話した。「リザードマンとの交渉は、交易と平和の鍵だ。だが、帝国の魔物研究…焔の雫の『帝国の鍵』が気になる」アスナが呟いた。「私の父…魔物の力を恐れてた。陛下、真相を」リリエルが風魔法で書類を整理し、言った。「シルヴァナスも協力する。魔物の謎、解こうよ」イグニスは京都の孤独――アンドリュー、西野航、金子愛子の嘲笑――を思い出した。だが、今、彼は王だ。『君主論』が響く。「君主は機会を逃さず、運命を掴む」。カントの言葉も浮かぶ。「人は目的そのものであり、手段ではない」。彼は窓から雪を見上げ、呟いた。「アスナ、リリエル、民のために王国を豊かにする。それが私の正義だ」

 

旅の準備を終え、イグニスはカイル、アスナ、リリエルを連れ、東の沼地へ向かった。リザードマンとの交渉、王国の視察――新たな試練が待っていた。

 

 

 

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